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Charaが常にフレッシュであり続ける理由|「音楽愛」が紡ぐ、若手アーティストとの感性の共振

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Chara
ニューアルバム『Baby Bump』では、現行のUSのR&B、生音とエレクトロを融合したヒップホップなどとも共振するダンスミュージックを届けてくれたChara。キャリア初期からその時代ごとにクラブDJから注目される作品をコンスタントに発表してきた彼女のアップデートされ続けるセンスがここ最近の作品の中で最もジャストに反映された内容でもある。 本作のサウンドプロデュースには、長年、Chara作品に関わってきたmabanuaを始め、フレッシュなところではKai Takahashi(LUCKY TAPES)、TENDRE、Seihoらが名前を連ねる。彼らとのコラボレーションの経緯を始め、新しい音楽やアーティストと感性が共振する理由とはなんだろう。ちなみにこの取材後に入ったインフォメーションとして、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が主宰する音楽アワード「APPLE VINEGAR-Music Award」の選考委員も務める。 まずは4月に開催されるTOKYO FMをはじめとするJFN主催イベント<TOKYO FM&JFN present EARTH×HEART LIVE 30th Annivaersary〜SONG OF MOTHER EARTH〜>出演に際する思い、今期、出演するフェスティバルへの抱負から、デビュー27年目を迎えた今も彼女がフレッシュかつオルタナティブなアーティストであり続ける真意を紐解く。

Interview:Chara

——<EARTH×HEART>には「アースコンシャス〜地球を愛し、感じるこころ〜」というコンセプトがあり、30回目を数える今回は「SONG OF MOTHER EARTH(母なる地球をつなぐ歌)というテーマで開催されますが、Charaさんが共感する部分はどういうところですか? まぁ、生きていたら愛しかないから。別にそんなに宗教心がなくても、お母さんになったら特に感じやすいことだと思うし、子供の未来のことも不思議と考えるようになる。散歩で通り過ぎてた道端で、コンクリートの隙間から一生懸命生えてるタンポポとかも気になるというか、そこから自分の生命力とかいろいろなことを考えると思うし。こういうイベントだと、普段音楽を愛する人だったら、生きてて当然のことを触れやすいし理解しやすいから、いいことだなと思うし。 ——あまり大げさなことより日常的なことにより関心が? そうですね。自分自身の音楽活動で世界は変えられない。中には革命家みたいなタイプの人もあり得ると思うんだけど、私はそのタイプじゃない。一人一人、たまたま私の音楽を聴いてくれるとか、このイベントで時間や音楽を共有できる仲間の方たち、足を運んでくださる方たちと触れ合うことができると、もしかしたらほんのちょっとのことなんですけど、心を燃やすお手伝い、勇気を与える仕事? 私はそっちのタイプだから。世界は変えられないけど、そういう“光”がたくさん集まると、すごく明るくなったりするから。 ——確かに。 あとは全然関係ないようであるようなちょっと神様っぽい感じ——神様には会ったことないけど、自分の中の信じる心が神様なのかもしれない。なんかそういう見えないものに似てる。音楽もゼロから作って、自分の力を信じてクリエイトしていくから、全然違うわけではなくて、神秘的な感じだから、そういう共通点が少し感じられるのかなと思うけど。 ——人間も自然の一部ですし。 そうそう。自分でもうわかるでしょ? っていうか、自分の中の“マザー感”じゃないけど、それが人間には大事かなと。誰に教わらなくてもわかるでしょ? そういうのかなと思いますね。 ——そういう意味で男性にも母性はありますし。 変わってきてるかもね。特に日本だと育てられ方、教育でだいぶ違うのはみんなわかると思うけど、「男は男らしく」とかさ。でもよくよく考えたら、すごく繊細なお仕事とか、男性に素晴らしい才能を持った方がたくさんいたり。育ち方で圧をかけなければ、いろいろな個性があるんだろうなっていうのは思う。女の人の場合は機嫌がいいのがいいと私は思ってるから、機嫌のいい女が増えたらいいよねっていうのは思うかな(笑)。あと、昔だったらそんな遠くのことまで知らなかったけど、今ってメディアの発達で、いろいろな情報があるから大変じゃないですか。いっぱい考えなくちゃいけないけど、でもそれがストレスじゃなくて、イマジネーションっていうか、さっきの話に戻るけど自分で「わかるでしょ?」っていうことだと思うから。 ——ストレスに感じるのではなく、遠いどこかの誰かのことも想像できるということですね。大きな問題も身近なことも結局繋がってるし、自分がそれに対してどう接するか? だと。 そうですね。私の場合、割と音楽的に生きてるから、一つずつ接するって今おっしゃったみたいに、「この方がいいと思うな」っていう自分のイメージがあったら諦めないんですね。そういうのってちっちゃいことでもいいんだけど、諦めないで達成するところまで決めて、信じる力を動かすというのは自分の成長——それが地球の成長というか(笑)、それに繋がるかなと思うから。どんな仕事しててもどんな人でも多分、行いとか似てると思う。と、いうのが50を超えた私の気持ちですね(笑)。 ——このイベント後も今年はこれからいろんなフェスへの出演が決まっています。<GREENROOM>や<森、道、市場>、<ARABAKI ROCK FEST>と全てカラーが違いますが、何か楽しみにしてることはありますか? あ、全部楽しみです。 ——<GREENROOM>のラインナップはいいですね。 1日目はLeon Bridges(レオン・ブリッジズ)が出るから普通に見に行きたい(笑)。Tom Misch(トム・ミッシュ)は単独公演も行きますし。今年、いいですよね。 ——Charaさんが出演される日はTom MischにCorinne Bailey Rae(コリーヌ・ベイリー・レイ)という素晴らしい流れが予想されます(笑)。全部楽しみということは野外フェスはお好きですか? そうですね。時々、雨ザーザーとかあるけど、皆さんそれでも一生懸命だし笑顔で。楽器のスタッフが一番大変ですけどね。あと、会場で何か事故が起きないようにとか。でも、それは……しょうがないよね、自然だから。だからなんとなく「山の神様、すいません、お騒がせしてます」とかよく思うの(笑)。 ——(笑)。大きい音出してますからね。フジロックでも苗場の山の神様もびっくりしてるんだろうなって、ちょっと感じます。 フジロックは私も毎年、割と家族旅行みたいになってる(笑)。 ——お子さんが小さい時から行ってるんですか? 行ける時は行ってますね。留学でいない時とかもあるけど。下の子は去年、彼女と一緒に行ったの。 ——あまり小さいお子さんだと耳によくないところもありますが。 家族で行ってる人もたくさん見かけるけど、でもそういう時にさ、お母さんやお父さんが守ってくれた、それもいい記憶だと思うんだよね。ちょっとしたことだけど、そこに出るじゃないですか、人間の「守られたな」って記憶が大事だからいいと思う(笑)。 ——Charaさんが色々なライブを見に行ってらっしゃるというお話はよく聞きます。 今週も一個行く。若手とかも気になったらちらっと行くから。情報は自然と入ってきますね。「早耳でいよう」とかいう感じではないんですけど、偶然聴いただけでも気になることってあるし。昔より色々便利なものいっぱいあるし、シャザムとかで調べられるしね。あと、息子とも共有してるし、世代が違う音楽を愛してる人たちが発信してる情報も見てるし。 ——20歳ぐらいの若い人たちって90年代の音楽を好きだったりしますし。 そう、好きね。なんかそんな話をちょうどKing Gnuの(常田)大希と対談で話してたんだけど、うちの息子も山下達郎さんなんかはフレッシュに感じるみたいで、弾いたり歌ったりしてる。ただ、PCとかケータイが進化してるから、それで音楽を聴くと音の構造がCDと違うから——耳の進化がそこまであるかわからないけど、音のバランスは90年代とはちょっと違う。体には悪くなさそうな気がするというか、あんまりガンガンする感じではなく、今はちっちゃいスピーカーでもバランスよく聴こえるような時代になってるから。 ——そして最新作『Baby Bump』はもう去年のリリースになりましたし、ツアーも終えられましたが、今回もまた新しい座組みで、新たなサウンドプロデューサーも参加しています。mabanuaさんはもう長くご一緒されていますが。 mabanua、長い(笑)。もうほんとに長くて、彼の人気はすごいね。これもやってる、あれもやってる、映画のサントラも! びっくりしちゃう。 ——mabanuaさんの日本語詞のアプローチはCharaさんの影響があると思います。 それはね、多分あると思うけど、そうすると何言ってるか60%ぐらい分かんなくなっちゃうから(笑)。彼、英語の響きが好きだから、そういうのはあるかもね。 ——アルバムタイトルが『Blurred』=曖昧でしたから。 そうだよね。 ——今作にはLUCKY TAPESの高橋海さんやTENDREさんがサウンドプロデュースで参加していますが、その経緯は? 常に若手の人は色々な方面からチェックをしていて(笑)。ライブ行ったり。あと、人柄もありますし、仕事でただお願いするというより「一緒に作りたいですね!」みたいのがある方がいいし。私が指示して「こんな感じにして」っていうのは面白みがないし、お互いに分かんない部分があってやる方が面白いから。すごくやってみたいとか、そういう気持ちとか、「あ、この人は音楽めっちゃ愛してるな」って人だったら大体できると思うんですけど。まぁもっとやりたい人もいたけど、たまたまつかまるとか、でもそれは運がいいとか、そういうことなんだろうっていうのもあるから。どうだったっけな? 海くん、どうだったっけな? 忘れちゃった(笑)。 ——(笑)。 レコード会社を移籍して、担当ディレクターから、「ディスコとかCharaなりのダンスミュージックで印象の強いものをうちとしてはやってほしい」ってリクエストがあったから。私もともとそういうの大好きだから、「あ、OK〜」って感じで始まって。10曲ぐらいのボリュームってなると、「あの人と、あの人と」ってピックは自分でやって。 ——今回のサウンドプロデュースなどで関わった彼らに寸評をいただきたいんですが、まずは高橋海さん。 海くんはね、『22』だっけ、あのアルバムがすごく良くて、「ちゃんとしてるな」って。しかもバンドのキーマンは彼だから。話したり色々すると、いろんな音楽すごく聴いてて。海くんはボーカルディレクションとかちゃんとしてて。「やってもらってるよ、私。言いにくいかもしれないけどどんどん言って」って言ったのね。だからちゃんとプロデュース力がある。もっとできると思う。幅の広い曲作りが色々できるなって、やってみて思った。現場で年上の先輩にビビって言わないとか、「ちょっとCharaさんの様子を見て」みたいなタイプの方もいるけど、最初から彼はプロで自分を信じる力があるなと思ったから、「あ、これはプロデューサーとして彼は成功していくかもな」って思いました。 ——ではツアーメンバーとしても参加したTENDREさんは? TENDREはちょっとシャイなのね。ただ、実際はすごいプロデュース力があるのよね。言葉で言うのが、海くんと違ってまろやかな雰囲気でやっていくから。逆になんで彼をバンマスに? って言うと言葉で言わなくても音で出すっていうようなことが理由かな。彼も今頑張ってるから、実は二人ともおんなじで成功していくと思う。 ——もう一人はジャンル的には違いますけどSeihoさん。 Seiho、頑張ってるよね。ほんとに時間ない中で家に来てくれて。二人でタイ料理のデリバリーを頼んで、もぐもぐしながら(笑)。「もっとやりたいね」って昨日とかも言ってたんだよね。 ——彼のような人がいると自然とみんなが楽しくなりそうです。 いやもう、社交的だけど紳士だしいい男ですよね。 ——音楽性や人間性が1曲1曲に出ていて楽しめるのはそういう理由かもしれないですね。 ほんとにみんな音楽愛があるよねと思って。そうすると自分とかも、リラックスはしてると思うんです。リラックスして仕事するけど、そういう「よし、やったる!」っていう人たちが持ってるものを感じると、「私、まだできるわ」じゃないけど、もうちょっと進化できるって思える。その人たちがピュアだから。私がピュアじゃないってわけじゃないけど、そういうエネルギーの若い人といると、自分もちょっと「ピュアエネルギー」になるんで、若い世代の方が私は合ってると思うんです。 ——納得です。ところでCharaさんがここ最近よく聴いている曲を3曲教えていただけますか? アイロンがけとかするときに聴く曲があって。ちなみに私、明後日この人(Clairo)のライブ行く、初来日だから。この子の声が好き(曲は“Bubble Gum”)。

clairo - bubble gum

後は“Pure Imaginetion”って、いろんな人がカバーとか、XXX Tentacionはサンプリングしてたんだけど、このDiana Pantonのバージョンがいい。これの詞が好きでピアノの弾き語りの練習もしてる。こういうテンションの低いちょっとリラックスしたやつを片付けしながらとか、そういう時に聴いてるんだけど。

Diana Panton - Pure Imagination

あと、“Like Someone in Love”ってのがあって、これもいろんな人のバージョンがあるんだけど、Bruno Majorって人のを聴いてる。これもピアノ弾き語りの練習してて。これビョークもカバーしてたりしてて、トラディショナルな曲だけど、好きですね。この冬はほんとはクリスマスアルバム作りたかったけど、色々忙しくてできなかったから、いつか出したいなと思って。そういう曲はいっぱいある、若い人のもいっぱい聴いてる。こないだmabanuaとCharaの(プレイリストを)ファンの人に言ったら作ってくれて。

Like Someone In Love

——ツイッターで公開してましたね。そしてまたツイッターネタで恐縮ですが、おうちにプリプロルームを作るというお話が……。 あ、作った。前からあるんだけどリビングに移動したから。 ——ボーカルマイクソムリエもやられるとか。 何人か集めて、ライブで使うマイクロフォンを集めて。私、ちょっと変わった声なんで、今使ってるマイクはもう廃番になっちゃって、新しいのを探してて、いろんなマイクのメーカーに問い合わせて試すっていうのをやるんです。だから何人か、若い女の子とかボーカリストを呼んで、一緒に試す、みたいな。でもこれほんとにやんないと、どっかにエンドースされてるけど、ほんとはあのマイクの方が合うとか、色々、エンジニアと音の回り込みも確認したいから。自分でやらないとなかなかやってもらえないからなんですけどね。 ——音作りの場所も共有しているんですね。 六畳一間でヘッドホンでやんないとできない、それでもすごいいい音作れるけど、ずっと何十年もそれじゃなくて、こういうやり方もやったら違うものができるよっていうのは知って悪いことじゃないし。豊かに音楽と生活が密着した感じは、私がまず実践していくから前に進めるというか。だから家のプリプロルームも、将来的には若手とか使いたかったら使っていいよみたいな感じにしたいなと思ってて。夢の一つでは、キッチンで私とかミュージシャン——料理好きなミュージシャンいっぱいいるから、キッチンで賄いのおばあちゃんとして料理作ってあげて(笑)、優秀なミュージシャンの子達のレコーディングスタジオっぽく使ってもらって、時々意見言うみたいな(笑)。 ——NPRのTiny Desk Concertを想像しました。 ああ、そうそう! うち、ちょっとそれ考えてるけど、色々できると思う。今、リビングの左がキッチンなの。だからもう、空とグリーンとキッチンと……だからお茶が1日に何回もできるし、とても素晴らしいの。スポンサー、誰かつけたいと思ってる。自主的にはちょっとはできるけど、続けるのには大変だから。「Tiny Desk Concertみたいのやらないの?」って若い子たちに聞くと、WONKの(荒田)洸とかやってるけど、限界があるから。もっと企業さんとかにも声をかけて協力してもらって、それで音楽を愛してる人に向けてやりたいなって、そういう話は若い子たちといるといつも出るんです。 ——Charaさんの周りにいる人たちやCharaさんのキャリアを掛け合わせると実現できそうに思うので期待しています。ありがとうございました。

EVENT INFORMATION

「TOKYO FM&JFN present EARTH×HEART LIVE 2019」

2019年4月15日(月) 開場18:00 / 開演19:00 一般発売3月16日(土) 会場 TOKYO DOME CITY HALL  出演 Chara/BONNIE PINK/MINMI 指定席 6,500円(税込・ドリンク代不要、3歳未満は膝上にて無料)   枚数限定親子席 9,500円(保護者1名様と小学生以下のお子様1名様のペアチケット) ※ライブの利益の一部を「鎮守の森のプロジェクト」への寄付とさせていただきます     主 催  TOKYO FM/JFN       企画制作 TOKYO FM/JFN 制作協力 サンライズプロモーション東京 イベントホームページ

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【25’s view】フォトグラファー・SAEKA SHIMADA|25人の25歳へインタビュー

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SAEKA SHIMADA

「大人でもなく子供でもない。じゃあ私たちは何者なんだろう。」

人生の分岐点といわれる25歳 その節目に何を感じているのだろうか?

写真家・Ryoskrr(リョウスケ)が 25人の25歳に「いまの答え」をインタビューし 写真に記録する連載シリーズ。

第四回目となる今回登場するのは、フォトグラファーのSAEKA SHIMADA

25's view SAEKA SHIMADA / フォトグラファー

SAEKA SHIMADA
SAEKA SHIMADA

――自己紹介をお願いします。

SAEKA SHIMADA。25歳。フォトグラファーです。

SAEKA SHIMADA
SAEKA SHIMADA

――25歳の今どんなことを感じていますか?

歳を重ねることに喜びを感じられる人生にしたいですね。 自分がそういう動きをしていれば、そうなると思うので。 だから、私は年齢という点においては 何か特別に感じていることはないですかね。 それよりも、私の場合、音楽やファッションが好き!という気持ちが強くて、 でも何をしたらいいか分からない。。という中で 勢いで上京した20代前半がすごく大変だったので、、 むしろ、「あぁやっと25歳か。25歳でやっとお仕事が貰えて、出来ているのが幸せ。」 という気持ちです。

SAEKA SHIMADA

――あなたがいま持っている、生きていく上での覚悟を教えて下さい。

”平和”に生きていくってことですね! それは、自分も、みんなも。 例えば、仕事でいうと、撮影の現場で私はみんなを笑顔にしたいし、 「撮影は楽しい!」って私がフォトグラファーで参加する現場の人達には思って欲しいんです。 自分も楽しく、周りも楽しくハッピーにさせられたらいいなあ。

SAEKA SHIMADA

――座右の銘は?

「我が道を行く」ですかね。 とにかく自分のやりたいことをやる!って感じです。 直近のことでいうと、社員だったDroptokyoを辞めて フリーになった時もすっごく不安だったし、 プライドもあったけど、 その時もあえて先のことは考えないようにしました。 それも、自分の道を切り開いて進んで行くためですね。

SAEKA SHIMADA
SAEKA SHIMADA

――最後に、5年後の自分へ一言お願います。

写真に関して言うと、自分の頭の中で作り上げている 「こういう写真を撮りたい!」という写真を、 現実のものにしていて欲しいですね。 あとは、プライベートで言うと、30歳までに結婚したいですね! 30歳の後半では、田舎で自給自足の生活をするのが夢で。 でもそれは、写真にも共通してくる部分があって、 自分の本当に撮りたい写真って何か?っていう問いの答えって、 「作り込んでないリアルなものを撮る」なんです。 私がこれまで撮ってきたストリートスナップも、もちろんそう。 だからこそ、「自給自足の生活をして、その自然を撮る」というのは、 自分の撮りたい写真にもつながってくるんです。 その自分の撮った写真で、何かを伝えらえたら嬉しいですね。 もちろん、どこへ行ってもいくつになっても、写真は一生撮りますよ!

SAEKA SHIMADA

SAEKA SHIMADA

25歳、フォトグラファー。

熊本出身、1993年生まれ。 幼少期よりHIP HOPやR&Bといった音楽を通してブラックカルチャーに大きく影響を受けてきた。 20歳で上京し写真を撮りはじめる。2015年よりウェブメディアDroptokyoにフォトグラファーとして参画。ストリートスナップやパーティーフォトを精力的に撮影し続け、東京のストリートシーンの第一線で活躍してきた。 これまでにVOGUE girlやNYLON JAPAN、ELLE girl、SHEL’TTER、Ollieといったファッション誌をはじめ、数々のブランドのルックブックやカタログ、E-girlsのオフィシャルライブフォトや会報誌、ドラマ『HiGH&LOW』のスチール撮影などを手がけるなど、その活動は多岐にわたる。 2018年7月よりフリーランスとして活動をスタート。 2019年よりLos Angelesへと拠点を移し活動予定。

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Ryoskrr(リョウスケ)

1992年生まれ。 ストリートカルチャーへのアプローチと新たな表現を求めて、NYやLA、イタリアでのスナップからフォトグラファーとしてのキャリアを開始。その他、アーティトや俳優のポートレート、ファッションフォトなど幅広い分野で活動中。渋谷西武×HIDDEN CHAMPION主催の"POP&STREET展 -AN ANNUAL- 2018"に選出されるなど、写真作家としての活動も行なっている。

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【タカハシマイ・インタビュー】『キャプテン・マーベル』の内面に見る女性の“強さ”と“美しさ”

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キャプテン・マーベル

世界興行収入 No.1 シリーズのマーベル・スタジオ最新作 『キャプテン・マーベル』が、とうとう3月15日(金)に日本で公開を迎え、2019年に公開された洋画の中でNo.1のオープニング記録を叩き出すなど、早くも大ヒットとなっている。マーベルヒーローの中で“最強”の一人として名高いキャプテン・マーベルが、いかにしてヒーローとして覚醒したのか? そしてそれが、アベンジャーズ誕生にどのように繋がるのか? 『キャプテン・マーベル』によって、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズにおける重要な1ピースがハマるとともに、本作は女性の強さ・美しさを新たな形で描いた作品と言えるだろう。 そこで今回は女性目線でこの作品を読み解くべく、Czecho No Republicのギターシンセヴォーカルを担当するタカハシマイさんにインタビュー。バンドでの活躍に留まらず、ファッションモデルやテレビ番組のMC、さらに今年は舞台『みみばしる』で女優デビューも果たした彼女に、本作の見どころや意外だったシーン、そして女性として共感する部分などを伺った。

Interview:タカハシマイ

タカハシマイ

キャプテン・マーベルのくじけない姿勢に共感

——試写を見てから少しだけ時間が空きましたが、率直な感想を聞かせてください。 私は小さい頃から映画が好きなおじいちゃんの影響でアクション系をよく見ていて、それこそジャッキー・チェンとかも好きなんですけど、アクション・シーンにめちゃくちゃ興奮して「超かっこいい!」と思いました。女性が戦うアクション映画はいろいろあると思うんですけど、とにかくキャプテン・マーベルの強さに感動しましたね。あとは、敵役のタロスとかスクラル人のキャラクターもすごく大好き。ああいう描き方もすごくいいなって。 ——ヴィラン(敵)の描き方は意外性があって、僕も好きになりました。タカハシマイさんがジャッキー・チェンを好きというのは意外ですね。 ジャッキー・チェンは「これが好き!」というよりは、おじいちゃんと一緒にいろいろ見たのを覚えている感じです。あと最近、宇宙にも興味があって。『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督によるSF映画)を観たことがきっかけなんですが、さらにこの作品を観て、「世界はこうなっていくんだな〜」って。

タカハシマイ
キャプテン・マーベル

——悟っちゃいましたか? ハハハ! なっていくというか、なればいいな〜みたいに思いました。 ——タカハシマイさんが、特にカッコいいと思ったシーンはどこでしたか? やっぱりまずはスクラル人が地球に来た時に、電車でキャプテン・マーベルと戦うシーン!あれはおばあちゃんとかも……ビックリしましたね。 ——キャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンは、この作品のためにものすごいトレーニングをしていて、ほぼ自分でアクションをこなしているそうです。メイキング映像でその様子の一部が公開されているので、まだ見ていなければぜひ。 そうなんですね、ホントにカッコよかった。それにただカッコいいだけじゃなくて、すごくコミカルで笑っちゃうシーンも多かったです。観ている時に隣の方もすごい笑ってました。

タカハシマイ
キャプテン・マーベル

——海外だともっと大爆笑しそうですね。 確かに! あと、展開がすごく早いなって感じました。こういうヒーローものって、まず力を得るところまでを描くことが多いけれど、もう最初から力を持っていてみたいな。 ——MCUシリーズにおいても、“何かを乗り越えてヒーローになる”ケースがほとんどなので、最初から強いヒーローは珍しいかと。 そうですよね。あとは彼女の気の強さというか、挫折しない姿はすごく共感しましたね。記憶のフラッシュバックのシーンで、くじけず立ち上がるところはすごくグッと来ましたし、私もそうありたいと思いました。私も気の強い部分があるし、近いと思ったからグッと来たのかも。 ——その意味では、タカハシマイさんはキャラクター的に誤解されることが多いんじゃないですか? 多いですね。何というか、着る物はワンピースとかカワイイ感じが好きですけど、中身は違うというか。だから、好きになってくれた人が「実際の私を知ってがっかりしたらどうしよう」とか思ったりも。お客さんの私に対するイメージを、そこまで壊さないようにしたいなとは思うんですけど……最近はもう出ちゃってますね、素の部分が。

キャプテン・マーベル

——本作でキャプテン・マーベルは、記憶を失っているとともに周囲から「お前はこうあらねばならぬ」という風に教育されて葛藤するわけですが、タカハシマイさんも「周りの人たちが持つイメージに合わせなきゃ」と悩んだ時期はありましたか? それは今でもありますね。でも「何のためにこの仕事をしているのか」を考えた時に、やっぱり誰かに楽しんでもらいたいとか、楽しい気持ちを共有したいからだと思って。例えばライブをしていても、お客さんと一緒にすごく高揚して、一つになったような瞬間は幸せを感じます。そういう人たちの気持ちを裏切りたくないっていうのはありますが、その人たちは私のことを、いわゆる“ゆるふわ女子”みたいに見ているかはわからないじゃないですか。そういう意味では最近、お芝居に挑戦した時に自分を見つめ直すことができて、「別にいいんじゃない」って思えるようになりました。吹っ切れたというか、もっと素直に自分を出したいなと思えたんです。

女性の媚びないエロスと、内から滲み出る美しさ

タカハシマイ

——先ほどの話で、先月までJ-WAVEと劇団ゴジゲンがコラボした舞台『みみばしる』でお芝居に初挑戦されていて、千秋楽のあとにInstagramで「表現することがより好きになった。音楽においても重要な事を学んだんだ」と仰ってましたね。 音楽の時はもちろん歌詞の内容を考えながら歌うんですけど、今までは本当の意味で「自分の人生を乗せたことが無かった」のかなと。歌詞を書く人は自分の人生を乗せて書く人が多いと思うんですけど、私はボーカルが書いたものを歌っていたので。舞台に初挑戦して、その経験から私は「歌詞に助けられながら歌っていた」ことに気づいたんです。ボーカルが書いた歌詞に私も元気付けられて、その元気付けられた私のパワーを、お客さんにも共有していた。でも今回の舞台では、自分の感情や、自分の人生をセリフに乗せていたんです。そこから音楽でも自分の人生を乗せて歌ったら、もっとお客さんに響くんじゃないかと思いました。 ——それは大きな学びであり、これからの変化が楽しみですね。 はい。あと、人に自分を表現することがもっと好きになりましたね。稽古を1ヵ月間やって、20人ぐらいのキャストとずっと時間を共にしていたら、人をすごい好きになったんですよ。「こんなに心が開けているのは久しぶり」って思うぐらい。メンバーは毎日のように会うし、兄弟みたいな感じになれているけど、例えば友だちとかは、1ヵ月とか空くとけっこう緊張しちゃって。でも舞台を経験したことで、「人と一緒にいるのってこんなに楽しいんだ」って感じましたし、そこから自分の内面を人に出すことを楽しいって思えるようになりました。

タカハシマイ

——昨年はバンドのことも含めていろいろあったと思いますが、舞台など新しいことにチャレンジしている姿を見て、吹っ切れているような印象を受けました。その意味では、本作でもキャプテン・マーベルにとって “自分らしさへの解放”が大きなテーマとなっている。解放ゆえのあの強さ……なのでタカハシマイさんも今すごく強いと思います。 ハハハ! 今たぶん私は超強いと思います。キャプテン・マーベルも、いろいろわかってきてからスゴかったし、解放してましたね。私も自分の中にある気にかけていたものを解放でき始めている気がしますし、少しずつ強くなれていることを……願っています。 ——キャプテン・マーベルも、いろいろな思惑に挟まれた結果、「私は私!」って自らを解放した姿がとても清々しかったですね。 そうですね。私の場合は、気にし過ぎている部分もあったと思います。勝手に吹っ切れてやればいい話だったのかもしれないけど、自分の中では考えちゃうところがあったんですね。

タカハシマイ

——そう簡単じゃないですよね。タカハシマイさんにとって、理想の女性像はありますか? 憧れとは違うかもしれないですけど、『(500)日のサマー』という映画で、ズーイー・デシャネルが演じるサマーのキャラは憧れますね。男性を振り回す感じとか媚びない感じがスカッとしますし、いい意味ですごくワガママなところがいいなって。そういう部分は少し見習って、やり過ぎない程度に自分を解放できればいいなって思います。

タカハシマイ

——高校を卒業して音楽をやっていこうと思ったタイミングで、椎名林檎さんに影響を受けたという話を過去のインタビューで拝見しました。あの方も媚びない女性ですよね。 確かに。でも意外とお茶目だったり、ふざけたりする一面もあって、すごく素敵だなと思います。 ——女性ヒーローの描き方で言うと、本作は監督や脚本、衣装デザインなどにも女性クリエイターが起用されていて、キャプテン・マーベルの衣装は意図的に露出を抑えているそうです。 そうなんですね。そのあたりは男性目線だと、また違ってきそう。 ——そのあたりも、まず女性であることが重要視されていない。フューリーとかをからかってみせる立ち振る舞いなども、新しい女性ヒーローの描き方のように感じました。 もちろん、露出をしてカッコいい女性も好きなんですよ。その違いって何でしょうね? セイント・ヴィンセントとかも好きで、最近はけっこう露出もしてますけど、媚びている感じじゃないですし。やっぱり内からにじみ出るものなんでしょうね。

タカハシマイ
キャプテン・マーベル

——やっぱり今回のブリー・ラーソンだと、めちゃめちゃ身体を作り上げたのに隠すっていうところに、本当のエロスが宿るんじゃないですか。 ハハハ! そこか〜。先ほど言っていた鍛えてるメイキング映像を見てみます。

タカハシマイ

イメージしていなかった新しいヒーロー映画

タカハシマイ

——本作は1990年代の懐かしい曲が印象的な場面で使われていたのですが、タカハシマイさんが気になった曲はありましたか? 正直、細かくは覚えていないんですが……ニルヴァーナ(“Come As You Are”)は気が付きました。 ——全体を通して、MCU初の女性作曲家であるパイナー・トプラクの手がけた音楽が使われているのですが、それに加えてノー・ダウトの“Just a Girl”や、holeの"Celebrity Skin"などが使われていました。 そういった部分も女性目線で作られているんですね。あと、戦闘シーンで音楽がガンガンかかっていて、キャプテン・マーベルの無敵感がスゴかった。

タカハシマイ

あれは爽快でしたね! そのほかで印象に残っているシーンはありますか? あまり言えない部分だと思うんですけど、キャプテン・マーベルたちとスクラル人たちとの意外なシーンがあって、それはすごく印象に残っています。 ——読者の方は、ぜひ劇場でそれを確かめてほしい。あ、猫のグースはいかがでしたか? あれはかわいかったし……ビックリでしたよ。 ——それも「ぜひ劇場で」というところで。 観る前に、すごく猫がかわいいって聞いていたのもあったので。

タカハシマイ

——意外性は抜群でしたね。改めて本作を観て、先日まで舞台にも出演されていましたし、「次はアクションに挑戦してみたい!」と思ったりしませんか? ああ……でも元々、小さい頃に空手をやっていたんです。小さい頃って、自分に特殊能力があると思い込んでませんでしたか? 私の場合、「私、絶対強い」みたいに思っていて。アクションとか誰かを倒すっていうのは、すごくやってみたいです。 ——ぜひその作品を観てみたいです。次はキャプテン・マーベルも出演することが決まっている、4月26日(金)公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』が迫っています。シリーズを追っている人はもちろん、本作をきっかけに「観てみよう!」と思う人も多いように感じます。 そうですね、私もすごく続きが気になりましたし、過去の作品も改めて観てみたい!

タカハシマイ
タカハシマイ

——改めて観ても、きっとキャプテン・マーベルが最強で無敵な気がします。唐突ですが、タカハシマイさんは自分が無敵だと思う瞬間はありますか? それ……自分で言いますか? ハハハハ! でもライブの熱気がすごくて、「めちゃくちゃ最高!」みたいな時は無敵……なのかな。 ——最後に、今までマーベル作品をあまり観てこなかった人に向けて、この作品の良さを伝えるとしたらどのように勧めますか? 私がイメージしていたヒーロー映画って、いろいろ過程はあるにしても、「ヒーロが敵をやっつけて、世界平和になりました」みたいな感じだったんです。でもこの作品は、まったくそうじゃ無かったのが良かったです。あとはやっぱり、女性に観てほしいですね。私自身がすごく共感できる部分が多かったし、笑える部分もグッとくる部分も詰まっていた。私が続きを観たいと思ったように、この作品を観たらマーベル作品自体にもすごく興味が湧くと思いますし、私はこのタイミングで『キャプテン・マーベル』を観られて良かったです。

キャプテン・マーベル

キャプテン・マーベル 大ヒット公開中

原題:Captain Marvel 監督:アンナ・ボーデン/ライアン・フレック 製作:ケヴィン・ファイギ 出演:ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ  全米公開:2019年3月8日 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©Marvel Studios 2019

詳細はこちら

S.H.Figuartsキャプテン・マーベル

¥6,480(tax incl.) 2019.03.30(土)発売 対象年齢:15才以上 商品特徴:頭部は「魂のデジタル彩色」で再現する圧倒的なクオリティ。交換用頭部パーツや、エフェクトパーツが付属。

発売元:BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部

S.H.Figuarts キャプテン・マーベル | 魂ウェブ

タカハシマイ

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interview&text by ラスカル(NaNo.works)

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Get To Know|Yohji Igarashi

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Yohji Igarashi

Yohji IgarashiはSTARDUST RECORDSに所属し、TRAPサウンドを軸に電波少女をはじめ数々のアーティストの楽曲プロデュースを手掛ける、今注目すべきトラックメイカー/DJの一人。OKAMOTO’Sのオカモトレイジ主宰エキシビション<YAGI>に参加したり、Qiezi MaboのライブDJを務めたりと、その活動はかなりユニークだ。 3月15日に代官山SALOONにて開催されたコラージュアーティストのYABIKU HENRIQUE YUDIの初の個展<FIRST IMPRESSION>アフターパーティーは<YAGI>がバックサポート。グッズはもちろんのこと、ラインナップには"謎の一般人"「ノザキ君」を招き入れ、doooo(CREATIVE DRUG STORE)、RIKIYA(YouthQuake)、LITTLE DEAD GIRL(tokyovitamin)、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)らがDJとして出演。かなりイケてるオーディエンスが集まる中で、ラストはオカモトレイジとYohji IgarashiによるオールジャンルB2Bで朝方5時半まで会場を盛り上げた。 彼は、好きなものを前面に、気持ち良いほど押し出しているようなイメージがある。ファッションや音楽、男の子ってこういうのが好きなんだよね、といったもの。趣味・嗜好をいかに提示するかが重要になってくる中で、シーンで注目されているCREATIVE DRUG STOREやYouthQuake、tokyovitaminなどのクルーとも親交が深く、今注目を集めるYohji Igarashiとは一体どのような人物なのだろうか?

INTERVIEW:Yohji Igarashi

先日のイベントについて

序文でも言及したイベントはかなりゲリラ的に開催された。オカモトレイジのコンセプト/ヴィジョンをサポートしながらも、新たなアイデアを足しながらパーティーを作り上げたという。「レイジ君を中心に準備は前々からやっていたんですけど、今回はゲリラ開催的にしようという方針で、情報解禁をあえてイベントの前日に行って開催しました。結果として出演者やアイテムを出展しているアーティスト、お客さんも含めて非常に良い雰囲気でイベントを行えたかなと思います。イベントラストの4時からのDJはB2Bで爆アゲしようという話も元々レイジ君と話していて、この時ばかりはお互いソロだとちょっと躊躇してしまうような曲も気にせず掛けまくってとにかく盛り上げる! 色々なフィルターを外して思いっきりパーティーDJが出来たので本当に楽しかったです。お客さんも頭のネジを外して楽しんでくれていたと思います(笑)。中でもフロアでかなりブチ上がってるお客さんが15分おき位にブースにテキーラを持ってきてくれて、普段だとありがたくそのお酒を頂くのですが、僕はこの日イベントの撤収で車を運転しなきゃいけなかったので一口も飲めなくて......。強いて言うならそこが心残りです(笑)。」 また、会場ではその日のためにスペシャルなTシャツが数量限定で販売された。ブランドの名前は“STUDY SPORTS”で「僕が中学1~2年生の時くらいにノートの隅に書いていた架空のファッションブランドで、自分自身もここ十数年その名前を忘れていたのですが、ある日何となく思い出してレイジ君に話をしたら、それ良いじゃん! YAGIで作ろうよ! ってなって。昔からずっと洋服には興味があって、そんな思春期からの妄想をすごく良い機会に具現化できました。」そのTシャツはもちろんソールドアウト。イメージを具現化して、これ以上嬉しいことはないだろう。

Yohji Igarashi

元々はMassin Compressorというトラックメイカーと共にmel houseというユニットで2013年の始め頃から活動をスタート。それ以前は渋谷club axxcisで毎月レギュラーを務める等、DJを中心に活動を行っていた。ユニットを結成してからはメジャーからインディーズまでとにかく様々なアーティストへ楽曲提供やRemix等を行いつつ、年に1~2枚のペースで自身のEPをリリースしていた。 ユニットを始めたキッカケには、TRAPを主軸にしたDJ/プロデュースユニットをやりたいという思いが重なって意気投合したことがあるという。当時日本でTRAP系のサウンドを作っていたのはWATAPACHI(PROPERPEDIGREE)やLil'Yukichiなど、数える程度しかいなかった記憶があったようだ。また、海外ではFLOSSTRADAMUSやBAAUER等が頭角を現しはじめ、その点ではすごく良いタイミングで「TRAP」というジャンルに出会えたと語る。 しかし、Yohjiはそのと当時の心境をこう振り返る。「その後、若くて優秀なトラックメイカーもどんどん出てきて、この2013~2015年位の時期は日本でもベース・ミュージックシーンの土台が徐々に固まってきた時代だったかなと思いますね。ただこの時に自分たちがこのシーンの“中”にいるという実感は全くなくて......。常にシーンと少し距離があるのを感じていました。」

Baauer - Harlem Shake [Official Audio]

また、この頃からインターネット発でどんどん新しいトラックメイカー/DJが現れるようになってきたが、いわゆるインターネット界隈的なコミュニティに馴染めず、サウンド的にもその界隈とは「一見近いようで実際には遠く」、自分たちの居場所はどこにあるのか、またどこに身を置くべきなのかを模索するようになったという。 加えて、自分自身のスタンスとしても、プロデュースに重きを置くか、mel house名義で楽曲制作に重きを置くかなどの悩みに直面。結果的にプロデュースの方に力を入れようということで活動をしていたそうだ。そんな中、突然機会が訪れることになる。2016年に電波少女のミニアルバム『パラノイア』を全曲mel houseがトラックプロデュースをすることになったのだ。

電波少女「パラノイア」Trailer

『パラノイア』では、嬉しさ反面、新たな課題を発見することになる。「電波少女とは2014年頃から一緒に楽曲制作を行ってきたのですが、単曲でなく1枚の作品を全て自分たちのトラックで作らせてもらえたのはすごく光栄でした。実際に仕上がった作品に関しても、自信を持って良いと思えるものが出来たので本当に満足しています。しかし、同時に自分の中で大きな葛藤のようなものが生じてきて、それは制作面において、その時の自分はどうしても相方に頼ってしまう部分が大きくなってしまっていて......。そういった面で自分の気持ちを戒める1枚でもありました。相方とは今でも特に仲違い等をしたわけではないのですが、自分一人でも十分満足のいく作品が作れるようにならないとダメだなということを強く感じたキッカケにもなった作品でした。」ここからソロのプロデュースワークの依頼が増えていったという。 電波少女では、ソロ名義で“21世紀難民”“MONE¥CLIP”という2曲のトラック提供を行い、“MONE¥CLIP”がっつりトロピカル・ハウスを意識。ハシシの歌声とメロディーが目立つように音数はあえて少なめで、キックの音もHOOK以外はほとんど抜かれたトラックを作られている。”21世紀難民”はHIPHOP的なタフなイメージのトラック。色で表すと"MONE¥CLIP"が白・水色で、"21世紀難民"が赤・黒のイメージとのこと。流行の音を気持ちいいくらい素直に、しかしどこか骨っぽい色をつけて取り入れるのはYohji Igarashiならではの技だ。

極onTheBeats

2017年は自身のプロデュースワークとして世にリリースされたものは多かったが、実際に楽曲を作った数としては去年の方が多かったという。Yohjiはそんな2018年を「準備期間」と捉えているようだ。 Yohjiは、シーンで極めて異彩を放っている極onTheBeatsというラッパーとデビュー時から一緒に楽曲を作ってきた。2018年にはEP『KIWAMIRAI』に数曲トラックを提供している。 「“極onTheBeats(Début)”という曲は極と一緒に作った初めての楽曲で、当時極もラップを始めて間もなかったのですが、すでに存在自体が独特の周波数を放っていて、すごい人を見つけちゃったな~と(笑)。フローもリリックもこの時からかなり最高で、極とは今後とも一緒に曲を作り続けていきたいですね。あとはもう一曲“Jack Danielleさん”という曲を作ったのですが、Hybrid Trapとでも言うのでしょうか? こういったすごくアッパーなアプローチの楽曲を元々作りたくて、是非極(きわみ)に調理してほしいと思いトラックを送ると、期待以上のラップと歌がかえってきて非常に満足な一曲になりました。」

極onTheBeats - Jack Danielleさん

『PINK』

2018年の年末には初のソロ作品『PINK』というEPのデジタルリリースを行なった。このEPは元々、2017年11月にOKAMOTO’Sのオカモトレイジ主宰の24時間限定エキシビション<YAGI>のみで発売されたEPだったが、それからちょうど1年後の2018年11月28日にデジタルリリースを解禁したそうだ。 「それまでは会場でCDを買って下さったお客さんと自分が手渡しした人しかこの音源を聴けなくて、この手のジャンルで1年間置くのってかなり危険だと思うんですけど、自分的にはそれでも十分フレッシュに格好良く聴いてもらえる自信があって、満を持してリリースしました。トラックメイク・ミックスまでは全てセルフで行っているのですが、マスタリングは自分が敬愛するGiorgio Blaise Givvnにお願いしました。GivvnさんはQiezi Maboのプロデュース等を行っている人なのですが、とにかく音楽的に驚かされることが多くて心の底からリスペクトしている先輩の一人です。Givvnさんのフィルターを通ってこの作品が完成したことを非常に嬉しく思います。」

<YAGI>は開催当時、感度の高いヘッズたちから音楽好きまで、幅広く注目を集めた。近年ではストリート系とハイブランドが近似してきているが、彼がそれを好きな理由は一貫している。「好きなブランドは本当に沢山あって中々絞るのが難しいんですけど、着る機会が多いものだと1017 ALYX 9SMやMaison Margiela、PRADA辺りですかね。あとはTTT_MSWという日本のブランドも好きでよく着ています。自分の服選びのポイントとしてはまず素材とシルエットが良いものということが前提にあって、その上でそのアイテムが持つ意味合いだったり、コンセプト、時にはメッセージ性にも注目をして選んでいます。」 「最近だとイラク出身のデザイナーが手掛ける『NAMACHEKO』のスラックスを買ったのですが、シルエットも素材もすごく好きな感じでめちゃめちゃ気に入っています。あとはもはや王道ですが、VIRGIL ABLOHが手掛けたものもすごく大好きで、その中でもストリートというよりもモード寄りなアイテムに彼の魅力を特に感じます。19SSからのLOUIS VUITTONもそうですし、Off-Whiteの中でも“TAILORING”と書かれたラインのもの等は何着か持っています。あとTHE TENシリーズの1stのブレザーもプレ値で買いました(笑)。割と物を買う時の基準で“これはHIPHOPか否か”というのが自分の中にあって、その“HIPHOP”の定義の中にも色々と要素があるのですが、VIRGILが手掛けるアイテムはモードな中にもしっかりとそういった要素が落とし込まれていて大好きです。音楽でも洋服でもそうなのですが、割と形式化された枠組みがあって、その中のディティールを今の時代に沿った形で再解釈して咀嚼されたものが自分は好きで、そこに少しの遊び心とチャラさのようなものが加わっていると尚好きです。」

Yohji Igarashi

「なので、自分の感覚としては洋服を選ぶ時も音楽を作っている時も基礎となる感覚は全部一緒で、『自分なりの合格ラインをクリアしているかどうか』というすごくシンプルな定義になります。その加点方式の中で上記のようなポイントが審査ポイントとして存在していて、それぞれの組み合わせで正解を叩き出すような感じです。ゴチャゴチャと説明してしまいましたが、すごくシンプルなお話なんです(笑)」熱量がバッチリ伝わってきただろうか? 彼の作るものが裏切らないの理由の一つはここにある。 また、シルクスクリーンの版を作って手刷りのTシャツを作るのことに最近ハマっているそうで、そのことについては「自分の手でオリジナルの服が作れる喜びが半端ないです。プリントするだけでこんなに楽しいのに、仮にパターン引いて0から服作りなんてしたらどうなっちゃうんでしょうね......。本当にブチ上がりそう。いつかそういうことも是非やってみたいです」とコメント。実現する日はそう遠くないはずだ。 ちなみに、それ以外に好きなものはサッカー。特に中村俊輔選手が好きで、「今年でもう41歳になるんですけど、いまだに背番号10を付けてJ1リーグで活躍している姿を見るとかなり心を打たれます。今はジュビロ磐田に所属しているのでなかなか頻繁に試合に足を運ぶことは出来ないのですが、関東近郊でジュビロの試合がある時はなるべく観戦しに行くようにしています。」

2019

2018年は「準備期間」でありながらも多動的な一年。「年越し〜元旦の話で、2017~2018年のWWWカウントダウンでQiezi Maboがトリの出演で僕はDJとしてライブを一緒にさせて頂いたのですが、Qiezi MaboがライブのラストにZONEの“secret base~君がくれたもの~”のカバーを歌っていて、それがすごくエモーショナルで、お客さんとも不思議な一体感があってかなり良いライブだったんですよね。結構その感動というか、あの時の高揚感みたいなものはふとした時にちょこちょこ思い出したりしていました。自分の中でもかなり思い出深いライブだったなと、ああいった感動をもう一度味わいたいなと思いながら今も生活をしております。あと、(オカモト)レイジ君に誘ってもらって「VOGUE JAPAN」の企画に「OKAMOTO’S」や「YAGI」で一緒に展示をしていた面々で一緒に誌面に出られたのが嬉しかったです。みんなそれぞれクールなものを作っていてすごくリスペクトしているのですが、彼らと同じページで肩を並べて撮影できたことがすごく良い思い出ですね」と振り返っている

Qiezi Mabo - Secret Bass(Zone Cover)

今年はとにかくアウトプットの年。楽曲リリースだけでなく、様々なところでの共通のテーマだという。先日代官山Saloonで開催されたイベントもその一つだろう。アウトプットのことについて考えるようになったのは、同世代の友達ともよく話すという“リリースすることの大切さ”がきっかけだと語る。「他のアーティストへの提供楽曲だったりすると、ある程度スケジュールが固められてやることが多いので納期までにベストなものを作るという目標で臨めるのですが、自分名義でのリリースとなると、リリースのタイミングをコントロールできる。でもそうなると逆に、あまり良い意味でなく修正を何回でも出来ちゃうし、どんどん曲も詰めていける分、結果としてリリースするタイミングがどんどん遅れていってしまったりすることもあるので、それによってアウトプットする機会が減ってしまったりすることには本当に気を付けていきたいですね。何が何でも自分で決めた納期とリリース日を厳守していき、もちろん詰めやクオリティ上げには最大限こだわりつつ、時間を有効活用して自分自身を戒めながらバランス良くやっていきたいと思っており、こういうことをよく考えるようになってから家の中でもあまりダラダラできなくなってきて、ぼーっとベッドの上にいたりすると、何かやらなきゃいけないんじゃないかという気持ちが湧いて徐々にその時間に対して罪悪感が生まれてくる、的な.....(笑)。焦りのスキルを手に入れました。」 4月10日(水)にリリースされるHONG¥O.JPのラストアルバム『Highlight』では2曲にプロデュースで参加。また「日本と韓国のラッパーと一緒に作っている曲があって、それもかなり良い感じの曲が出来そうで、自分自身のリリースとしては、夏前ぐらいにまたEPをリリースできたらなと思ってます」とのこと。彼の今後の動向に目が離せない。

Yohji Igarashi

最後に、彼が今気になっていることを教えてもらった。まずは某アーティストの楽曲をがっつり使用している例のEP。

SKIN ON SKIN / Steel City Dance Discs Volume 9

「MALL GRABが主宰する〈STEEL CITY DANCE DISCS〉からのデビュー作。最近自分が一番作りたい世界観のHOUSEでEP全体のまとまりもすごく好きでした。」

Lil Pump / Harverd Dropout

「Lil Pumpのラップのノリがすごく好きで、一枚を通して飽きずにすっと聴けました。一曲一曲が割と短くて曲数が多いっていうのもサブスク時代の作品って感じがして、今っぽくてすごく良いと思いました。」

Shurkn Pap / Trap City HIMEJI

「これは家で聴いて一人で踊りまくってます(笑)。 フローも声質もすごく格好良いですよね。元々お名前は聞いていたのですが、この曲で一気に食らいました。今一番注目してる日本人ラッパーの一人です。」

Toy Story 4|Official Trailer

「『トイ・ストーリー4(Toy Story 4)』がもうとにかく早く観たいです。 元々トイ・ストーリーが大好きで1~3まで何十回も観ましたが今回も本当に楽しみ。普通に考えたら超非現実的なストーリーですけど、作中での心理描写や実際に人間が見ていないところでストーリーが展開されていくところ等、作品に入り込んで観ていると、本当はこんな世界があるのかも…?と錯覚してしまいそうになるところが非常に素晴らしいと思います。 あと真意はわかりませんが「モノを大切に」「友達を大切に」といったメッセージ性も毎作感じることができて、僕にはまだ子供はいませんが、教育面でもすごく良い作品なんじゃないかなと思います。本当に大好きです。」

EVENT INFORMATION

AFTERPARTY by 1729

2019.03.22(金)@SOUND MUSEUM VISION 詳細はこちら

"OFFICIAL NIGHT PARTY – Amazon Fashion Week TOKYO meets CALZEDONIA x EDGE HOUSE"

2019.03.23(土)@SOUND MUSEUM VISION 詳細はこちら

TIPSY BAR vol.3

2019.04.10(水)@EBISU BATICA 詳細はこちら

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フレデリックが『フレデリズム2』で実現させた「“らしさ”を忘れない進化」

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フレデリック

古今東西のダンスミュージックを基軸としたバンド・アンサンブルと、独特のユーモアを内包する歌詞世界、そして一度聴いたら病みつきになる繰り返しのフレーズによって、「 中毒者」を続々と生み出してきた4人組バンド、フレデリック。彼らによる前作から実に2年4ヶ月ぶりのセカンド・フルアルバム『フレデリズム2』が、2月20日にリリースされた。 フレデリック 2nd Full Album「フレデリズム2」全曲トレーラー

前作『フレデリズム』では、「プレイリストのようなヴァラエティ豊かな内容」を目指した彼らだが、その振り幅の大きさは前作以上。モータウン・ビートからカントリー、ファンク、そしてEDMまで様々なジャンルのイディオムを取り入れながら、「フレデリック流」ともいうべき独自のフィルターを通した「歌ものポップス」に昇華させる力技は、あっぱれというほかない。「繰り返しのフレーズ」などの必殺技を、最小限にとどめてもなお「フレデリックらしさ」に溢れているのは、デビューから4年の間に様々なライブやフェスを通じて積み上げてきた「自信」があってこそだろう。 本作をひっさげた全国ツアーや、夏フェスへの参加も控えている彼ら。そこで今回Qeticは、アルバム『フレデリズム2』の魅力について改めて検証すべく、三原健司(Vo、Gt)と康司(Ba、Ch)の兄弟に話を聞いた。

Interview:フレデリック(三原健司/康司)

フレデリック

──『フレデリズム2』のリリースから2ヶ月が経とうとしていますが、改めて本作はお2人にとってどんなアルバムだったと思いますか? 康司 バンドの関係性みたいなものを、改めて考えさせられたアルバムだったと思います。僕と健司は双子なんですけど、僕自身に足りないことを、いつも補ってくれているのが健司だと思っていて。そういう意味では、自分のコンプレックスについて気付かされると同時に、それを埋めてくれる存在でもあるわけです。2人で「完全体」というか(笑)。そんなイメージが昔からあったんですね。 でもそれって、双子同士の関係性だけじゃないっていうことを、最近はよく思うんです。例えば僕らとお客さんとの関係もそう。僕らが楽曲を作って、それを受け取ってもらうことで初めてその音楽は成立するというか。今回のアルバムを作りながら、そんなことに思いを巡らせることが出来たのは、とても貴重な体験でした。 ──楽曲が、誰かのものになって初めて「一人歩き」するというか。 康司 まさに。色んな人たちが、色んな解釈で聞いてくれたことによって、音楽そのものが育っていく。そういう感動を、今回は教えてもらったような気がします。 ──ちなみに康司さんは、どんなことにコンプレックスを感じるんですか? 康司 基本的に僕、運動音痴だし、前に立つことよりも後ろで支える方が好きなんです。逆に健司は勉強も運動も出来るし、前に立つことも厭わない。でも、こうやって一緒にバンドをやっていると、そういうお互いの持ち味を活かすことが出来るんだなっていうことに改めて気づいて。それは僕ら兄弟だけじゃなくて、ドラムの(高橋)武くんも、ギターの(赤頭)隆児もそう。4人で長所を活かしあい、短所を補い合いながら、バンドそのものをソリッドにしていけたというか。その先に作り上げられたのが、今回の『フレデリズム2』なんですよね。 ──健司さんは、今作についてどんな風に感じていますか? 健司 僕らデビューして4年が経っていて、ファースト・アルバムを出してからもシングルやEP、ミニ・アルバムなど、様々なフォーマットで作品は出し続けてはいたので、今までフレデリックを追いかけてくれている人の中には、「フレデリックってこういう音」みたいなイメージは出来ていると思うんです。『フレデリズム2』は、そこを超えるような楽曲も作りたいと思う一方で、そんな冒険的な曲ばかりになってしまい、これまでの路線を期待していた人たちを置いてけぼりにしてしまうのも嫌だなと思ったんですよね。そういう意味で、これまでの延長線上にありつつも、ちゃんと進化しているアルバムが作りたかったんです。いざリリースして、お客さんの反応を見ると「新しいのにフレデリックっぽい」という、僕らが一番欲しかった声が多かったのでホッとしました(笑)。

フレデリック

──期待に応えつつ、予想を裏切ることも出来たと。 健司 もう一つファーストの時と違うのは、「しみる」とか「ちょっと泣けてきた」という感想が多くなったことなんです。「歌」を前面にフィーチャーした曲とか、「音楽好きだったらここは絶対に刺さって欲しいな」という歌詞とか、そういう要素をちりばめたので、そこがちゃんとピンポイントで刺さったというのも達成感もありますね。 ──前作『フレデリズム』の時は、「プレイリストを聴いているような、ヴァラエティ豊かなアルバムを目指した」とおっしゃっていましたが、今作もさらに振り幅が大きくなっていますよね。“飄々とエモーション”は構成がEDMっぽかったり、かと思えば“LIGHT”はファンクっぽかったり。リズムのヴァリエーションが豊富な上に、“かなしいうれしい”や“他所のピラニア”のトリッキーなギターソロなど、ギターのアプローチも非常に印象的です。 康司 嬉しいです。今回、ギターは色んなことを試しました。まず作曲の段階で、「これはギターで弾くべきか、それともシンセで弾くべきか?」みたいな、狹間のフレーズが結構多くて。それを隆児と話し合いながら「ここはシンセっぽい音でギターを弾いてみよう」とか、「シンセとギターをユニゾンさせたらどうか?」とか、今までやっていなかったアプローチでも積極的に試しながらアレンジを組んでいきました。

フレデリック「飄々とエモーション」Music Video -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-

フレデリック「LIGHT」Music Video / frederic “LIGHT” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-
<TVアニメ「恋と嘘」OPテーマ>フレデリック「かなしいうれしい」Music Video -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-

──例えば“対価”や“逃避行”など、シンセの音色はちょっと懐かしい80年代風で。 康司 そうなんです。以前から、ちょっとキッチュでレトロなシンセ・サウンドには惹かれていて。それを今の音像の中でどう蘇らせるか? みたいなことは考えましたね。例えば“夜にロックを聴いてしまったら”のシンセは、YMOを意識しつつ、MGMTの最新作『Little Dark Age』みたいな世界観に落とし込むにはどうしたらいいか?とか。MGMTの最新作は、アルバム制作の合間に聴きまくっていました。

フレデリック「逃避行」Music Video / frederic “Tohiko” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-

──ああ、なるほど。構成や音像感は現代のフォーマットなのに、そこに懐かしい音色を混ぜたり、J-popっぽいメロディを載せたりすることで、フレデリックらしいテクスチャが生み出されている。 康司 そうなんです。ダンスミュージックのフォーマットを、あえてバンド・アンサンブルにしたり、逆に歌を前面に出した楽曲は、エレクトロっぽいアレンジにしてみたり、そういう融合感、違和感を楽しんでいるところがあるかもしれない。

フレデリック

──“CLIMAX NUMBER”も、リズムはモータウンなのに音色はキラキラしていて。おまけにギターソロはカントリー風なんですよね。 健司 モータウン・ビートはJ-popでも割と使い古されているし、どんな角度から取り入れるのがいいか、散々迷った末に、こういう形になりました(笑)。おそらく、今まであまり聞いたことがないような組み合わせだと思います。 ──“スキライズム”はメロディラインが「和」なテイストで、フレデリックがフェイヴァリットに挙げているフジファブリックの影響を、今作で最も強く受けている楽曲なのかなと思いました。 康司 この曲の、特にイントロの部分は“オドループ”や“オワラセナイト”を踏襲しているんですけど、シンセの感じは「プリンス(Prince)っぽくしよう」みたいな話をしていました。プリンスの曲って大抵はBPM130くらいで超盛り上がるんですけど(笑)、もっと速い曲はないのかと思って探したら“デリリアス(Delirious)”という曲があって。“スキライズム”はもろ、この曲の影響を受けていますね。

フレデリック「スキライズム」Music Video / frederic “Sukiraism” -2nd Full Album「フレデリズム2」2019/2/20 Release-

健司 ミュージック・ビデオを見た人からは、「スミス(The Smiths)っぽいね」と言われたことはありますけど、この曲でフジファブリックの影響を指摘されたのは、今回が初めてなのでちょっと新鮮です(笑)。 ──“他所のピラニア”や“逃避行”では、途中にサイケっぽい展開が挿入されます。あれは、どのようなイメージだったのでしょう。 康司 このサイケっぽさは、僕らが大好きだったたまからの影響が大きいと思いますね。僕らインディーズの頃に、たまからの影響をダイレクトに受けた『うちゅうにむちゅう』というミニ・アルバムを出したんですけど、そこでやっていたアプローチをもう一度試してみたのが“他所のピラニア”なんです。 ──SEの入れ方などコミカルな要素もふんだんに散りばめていますけど、そのあたりもたまの影響? 康司 あ、それはあると僕は思いますね。コミカルな中にも、ちょっとした毒々しさがあるところとか。

──ボーカル録りをする際にどんなことを心がけましたか? 健司 ちょうどボーカル録りの時期は、歌のレベルを上げたいと思って色んなシンガーのライブに片っ端から行っていたんです。中でもジョン・レジェンド(John Legend)のライブにはメチャメチャ感銘を受けました。もちろん、スタイルは全然違うんですけど、例えば語尾の切り方でグルーヴを出したり、ソウルフルな歌い回しだったり、ちょっとしたニュアンスを参考にしつつ散りばめています。 ──そういう意味で、最もチャレンジングだった曲は? 健司 “対価”みたいな楽曲は、今までになかったかも知れない。ちょっとした「切なさ」を織り交ぜつつ、自分の声の「甘さ」みたいなところも引き出したくて。例えば、ファルセットを使って声を裏返したり、本当はまっすぐ伸ばすべき自分の声にビブラートをかけたり。そういう細かいニュアンスを付けるのが、“対価”は難しかったかも知れないです。 それに、そういった自分のこだわりが、独りよがりにはならないよう気をつけました。ちゃんと楽曲が求めている表現じゃないと意味がないというか。単にテクニカルにビブラートをするのではなく、楽曲のムードや歌詞の内容と連動した、必然性があった上でのビブラートというか。 ──なるほど。 健司 フレデリックの楽曲は、康司が作詞と作曲を担当しているので、彼の世界観がベースになっているんですけど、そこに僕ら他のメンバーが自分なりの解釈を加えることで、さらにその世界観が広がっているのだなということを、今回は改めて実感しました。今日、インタビューの最初に康司が「4人で長所を活かしあい、短所を補い合いながら、バンドそのものをソリッドにしていけた」と言ってたけど、それはボーカル録りの時にも強く感じましたね。 ──ところで、本作には“夜にロックを聴いてしまったら”という曲がありますが、「夜に聴くロック」といって思い浮かぶのは? 康司 えー(笑)。なんだろう……。レディオヘッド(Radiohead)とか、夜に聴いた方が気持ちいいですよね。特に『OK Computer』とか。 健司 僕はフィッシュマンズの“My Life”かな。昼に聴いてももちろん良い曲なんですけど、昼に聴いてから夜に聴いてみると聴こえ方の違いを実感できそう。ちなみに僕らの“幸せっていう怪物”という楽曲は、“My Life”のオマージュなんです。そういう意味で、思い入れも深いんですよ。 康司 そんな話をしていると、いろんな曲を昼と夜とで聴き比べてみたくなりますね(笑)。

RELEASE INFORMATION

『フレデリズム2』 2019年2月20日(水)リリース

初回限定盤(CD+DVD)AZZS-85 / ¥3,200(+tax)

フレデリック

通常盤(CD)AZCS-1079 / ¥2,700(+tax)

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FREDERHYTHEM TOUR 2019-2020

SEASON1

<FREDERHYTHM TOUR 2019〜夜にロックを聴いてしまったら編〜> 4月13日(土) 新木場STUDIO COAST OPEN 17:00 / START 18:00 ¥4,500(ドリンク代別)

SEASON2

<FREDERHYTHM TOUR 2019〜リリリピート編〜> 6月4日(火)兵庫 神戸 太陽と虎 6月6日(木)福岡 DRUM Be-1 6月13日(木)宮城 仙台enn 2nd 6月14日(金)新潟 CLUB RIVERST 6月21日(金)香川 高松 DIME 6月22日(土)広島 CAVE-BE 7月2日(火)大阪 BIGCAT 7月3日(水)愛知 名古屋 ElectricLadyLand 7月7日(日)北海道 札幌 COLONY 7月9日(火)東京 恵比寿LIQUIDROOM

SEASON3

<FREDERHYTHM TOUR 2019> 10月11日(金)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM 10月12日(土)広島 BLUE LIVE 10月14日(月/祝)高知 キャラバンサライ 10月18日(金)宮城 仙台Rensa 10月20日(日)新潟 LOTS 10月22日(火/祝)石川 金沢 EIGHT HALL

SEASON4

<FREDERHYTHM TOUR 2019> 11月16日(土)北海道 Zepp Sapporo 11月29日(金)愛知 Zepp Nagoya 12月7日(土)福岡 Zepp Fukuoka 12月14日(土)大阪 Zepp Osaka Bayside

FINAL

<FREDERHYTHM ARENA 2020> 2020年2月24日(月/祝)神奈川 横浜アリーナ

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PALLADIUM×HAPPY|ファッションと音楽の関係性を探る都市探索

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ファッションと音楽はなぜ密接な関係にあるのか。それは作り手にとっても受け手にとっても、その人のキャラクターをダイレクトに表すものであり、シチュエーションを彩るものであるからだと言える。だからこそ、両者は意図的なものであれ結果的なものであれ、時に作り手同士が互いに強く求め合い、いくつもの歴史を作ってきた。そしてここにまた新たなシーンが生まれようとしている。 フレンチミリタリーをルーツに持ち70年以上に渡って、さまざまな分野で挑戦を続ける人々ともに歩みながら、アウトドアライフやタウンユースに新しい風を送り続けてきたシューズブランド・PALLADIUM(パラディウム)が、現在掲げるテーマである「CITY EXPLORING - 都市探検 -」のもとにラブコールを送ったその相手は、京都府綾部市出身で都内を拠点に活動する5人組バンド・HAPPY。 HAPPY - STONE FREE(Official Video)

彼らの結成は2012年。当時リリースしていた音源は、自作のアルミホイルに包んだCDのみ。ライブもほとんどしていなかったにも関わらず、その噂は瞬く間に広がる。まだ本格的なデビュー前だった2013年には<SUMMER SONIC>に出演。2014年にリリースした1stアルバム『HELLO』は各メディアが大きくプッシュし、数々のフェスやビッグイベントに呼ばれるようになった。以降も彼らは、サイケデリック・ロックやブルーズ、レゲエやパンク、エレクトロニック・ミュージックなど、自身が影響を受けたさまざまな音楽の間を自由に往来し、独自のセンスを磨き続けてきた。 そして現在は5年振りの2ndアルバムを制作中とのこと。今回はメンバー5人全員に集まってもらい、PALLADIUMの靴を履いて渋谷の街を歩きながら、普段の生活やファッションのことについて話を聞いた。
PALLADIUM×HAPPY

PALLADIUM×HAPPY ファッションと音楽の関係性を探る都市探索

PLACE1:HOOTERS SHIBUYA

PALLADIUM×HAPPY

――今日はみなさんに渋谷を案内してもらいながら撮影をおこなう企画でした。最初に行ったHOOTERSを選んだのはなぜですか? Alec 通い詰めてるわけではないんですけど、雰囲気が楽しいじゃないですか。だから、今回のロケにあたって「どこか選んでください」って頼まれた時に、HOOTERSがおもろいんちゃうかって。最初に行ったきっかけは”HAPPY”って書いてあったからです(HOOTERSのキャッチフレーズが”HOOTERS makes you happy”)。 Ric ハンバーガーが美味い。 Alec Bobの誕生日の時も来たよな。 Ric 「こいつが誕生日なんです」って言ったら、20人くらいセクシーな店員さんが集まってきてくれて。 Alec 20人は言い過ぎちゃう? Ric それくらいの勢いはあった(笑)。 Bob びっくりしました。東京って感じ。

PALLADIUM×HAPPY

――みなさんは京都府綾部市の出身。東京に出てきてどのくらい経ちましたか? Chew 2013年の11月だったんで、約5年半ですね。 ――当初はどこへ遊びに行ってましたか? Ric 最初は忙しかったしよくわからんかったんで、呼ばれたライブで出会ったおもろい奴らとそのまま朝まで遊んでました。で、そこからいろいろ広がっていった感じです。

PALLADIUM×HAPPY
HAPPY

――新宿のROLLING STONEで何度か会いましたよね? Syu 終電逃してどうしようもなくなったら「とりあえずストーン行こか」って。 Chew あとは青山のOATHとかもよく行ってました。カッコいい音が鳴ってるところとか、おもろい人がいそうなところは、手あたり次第。 Alec 大箱より小箱ですね。当時はEDMが流行ってたんですけど、僕らは苦手やったんで、なるべくEDMのかからないところを探してたらそうなりました。で、そんな遊びも1周した頃にできたのがここ、Bar SUBTERRANEANSです(2015年オープン)。

PALLADIUM×HAPPY
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HAPPY
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PLACE2:Bar SUBTERRANEANS

PALLADIUM×HAPPY
PALLADIUM×HAPPY

――入口への階段を降りるところで時間の流れが変わるような感覚があって、開けたら実際に異世界に来たような。たまらないですね。 Alec 不思議ですよね。DJもできるしセッションもできるしグダグダもできる。だから音楽やってる友達とか海外のミージシャンと行ったら最高なんですよね。 ――わかります。私も海外の人に「どこか気軽に演奏できる場所はない?」ってよく聞かれるんで。 Alec The Stone Rosesのライブで出会ったメキシコのSei Stillってバンドを連れてきた時とか、めちゃくちゃ楽しかった。Thomas(Thomas Lamb)もそうやし、おもろい奴とはここで仲が深まるんですよね。

PALLADIUM×HAPPY

――Thomasのジャパンツアーにも出演してましたね。 Syu 音を鳴らしたい時に鳴らせる。そうやって演奏できるバーってなかなかないし、そこはめちゃくちゃ魅力的。僕らに合ってると思います。 Alec マスターも朝方になると気付いたらバーカウンターからいなくなってて、ブルースギターでセッションがはじまったり。音楽はめっちゃ好きやのに、MGMTのメンバーが来ても気付いてないとか、そういう誰が来たとか気にしてない感じもいいんですよね。渋谷の繁華街の果てにある楽園ですよ。もしかしたら地獄かもしれませんけど(笑)。

PALLADIUM×HAPPY

――HAPPYのいることころにはいつも音楽がある。今日も屋外での撮影中、スマホから音楽を流して踊っていたのが印象的でした。前はラジカセを持ち歩いてましたよね? Alec Syuが持ってきたんです。ライブ前に対バンのリハ観るのもなんだし、って。 ――どこでもパーティが始まる。 Alec どこでも踊るしどこでも寝るし。

PALLADIUM×HAPPY
PALLADIUM×HAPPY

――クラブで店じまいの時間になっても、絶対に5人の誰かが「お願い、もう1曲だけ!」とか言ってるじゃないですか。 Ric 確かに(笑)。早く帰ろうって言ってたのに、気づいたら飲んで踊ってるのが僕らだけとか。 Chew 楽しいですもん。そこはいつ頃どうだったかとか、東京とか海外とか、関係なく、いつでもどこでもそうですね。

HAPPY
HAPPY

――幼馴染でずっと音楽とともに遊んできた。それは確実に曲作りやライブに活かされていると思うんです。HAPPY独特の遊び心がある。みなさんにとっては普通のことなので言葉にしにくいかもしれませんが。 Ric 遊んでるわけではないんですけど、確実に遊びの延長ですね。音楽を聴くのもセッションするのも曲を作るのも、昔からそれとなく集まって自然にやってたんで、それが音に活きてる部分はかなりあると思います。でも、言ってくれたように当たり前のことだからそれが何かを説明するのは難しい。そうですね……、よく「HAPPYのこの曲、〇〇っぽいね」って、他のバンドの曲に例えて言われるんですけど、ちょっとズレてることが多くて。そういうことより先に、”空っぽいな”とか”橋を車で走ってる感じ”とか、5人で同じ景色を見てきたからこそシェアできる、抽象的な話を形にしていくことが根底にあって、そのなかに好きな音楽もあるって感じですね。

PALLADIUM×HAPPY
PALLADIUM×HAPPY

「MUSIC=FASION」

PALLADIUM×HAPPY

――今回は街を歩くことがテーマなので、ファッションについてもいろいろ話しを聞きたいです。私のなかでHAPPYのファッションを総称するなら、”グランジ×ウッドストック”。 Alec なるほど。いいとこ突きますね。ファッションって”その服を着たらこうなれる”みたいな、何にでもなれるもの。まあ、好きなものを好きなように着てるだけですけど。 Ric Alecは自分で買ってきたものをよくアレンジするよな。ワッペン付けたり、スタッズ付けたり、何か描いたり。いま着てるジャケットもそうやんな? Alec そうそうこれ、中学くらいから気に入って着てて、もうボロボロ。リアルグランジ(笑)。

PALLADIUM×HAPPY

Chew ファッションって時代を表すものでもありますけど、そういうことより、”人が着るもの”であることに興味があります。「その人らしいな」って、感じさせてくれるものが好きです。逆に「服はカッコいいのに……」って思うこともあるし、いろいろひっくるめてすごくリアルに”人間”が出ると思うんです。自分のことはわからないですけど。 Syu うん、そう思う。 ――Syuさんも、すごくSyuさんらしい。 Alec Syuは写真も撮るしアートも好きやし、それが服にも出てるよな。物事をちょっと違う角度から見てる感じ。 Syu 僕らが古着を好きな理由も、店頭でサイズ別に並んでる同じ商品から選びたくないってのが一つあるしな。

PALLADIUM×HAPPY

Chew 一点ものに対して「この服、俺を待ってたんや」みたいな。 Alec あとは誰かのおさがり。Bobなんてお爺ちゃんからもらった服、めっちゃ多いし。スーツとか。 Bob 祖父が渋くて体系も似てるからサイズもばっちりで。古着屋に行っても、祖父の時代、60年代のものとかに目がいきます。その服はどんなことがあって今ここに置かれてるのかとか、想像すると熱くなるんです。

――今日はみなさんが普段着ている服に、PALLADIUMの靴を合わせてもらったんですけど、どうですか? Syu さんざん古着の話をしておいてあれですけど、新しい靴っていいですね。 Alec これめちゃくちゃいいですよね。正直、みんな服には自分なりのこだわりがあるし、この靴に寄せたコーディネートを意識したわけではないんですけど、全員はまってる。こうして見てみると、これはポリエステルですけど、キャンパススニーカーっぽい雰囲気も、ミリタリブーツっぽさもある。サイバーパンクな雰囲気もあるし。シンプルだから自分でペイントしてもいいかも。 Ric アレンジ好きやなあ(笑)。 Alec しかも水に強いじゃないですか。さっき屋上で撮影した時に、昨日の雨で芝生がめっちゃ濡れてたけど問題なかった。 Syu これで<FUJI ROCK FESTIVAL>に行ったらめっちゃ楽しいやろうなあ。たぶんぜんぜん違うで。 Alec フェスにもいいし、都会ってけっこう歩くじゃないですか。
PALLADIUM×HAPPY
HAPPY

――撮影含めてトータルで5時間くらい、ほとんど座らずでしたね。かなりの距離を歩いたと思います。 Alec びっくりするくらい疲れてない。軽いしクッション性もあるし。 Ric ジャンプしたり塀から飛び降りたりしたけどぜんぜんいけた。

PALLADIUM×HAPPY

――靴って直接地面に当たる部分なので、機能によって気分や見える世界がかなりかわりますよね。 Ric そこで機能を求めたら見た目が難しいこともあるじゃないですか。そうなると気分は晴れない。

PALLADIUM×HAPPY

――ハイテクスニーカーなどを履かない人はけっこう苦労しますよね。 Ric シンプルでカッコよくて個性もあるって、なかなかないんで。 Alec そこは自分たちの音楽が理想としていることにも似ていて。音楽を作る時に機能性は意識しないけど、作る過程のなかでいくら利便性に頼っても、アナログなやり方が生む質感とかエネルギーは常に頭にあって、そのうえで現代に通用する音を出したいんです。

PALLADIUM×HAPPY

――現在、アルバムを作ってるんですよね? Alec はい。夏に出そうと思ってます。 ――昨年、アルバムを出すことをアナウンスしてツアーも組んだにもかかわらず、アルバムは出さずにツアーのテーマを変えましたが。 Chew あの段階で出そうと思ったら出せたんです。でも、どうしてもあと一歩、納得いくものにしたかった。そのぶん聴いてもらったらびっくりするような作品になると思います。 Alec そうやな。やっぱり「めっちゃカッコいい!」って驚いてもらいたいし、新鮮な気持ちになってもらいたい。今回は新しいところにいけたと思うんですよね。楽しみにしていてください。

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PALLADIUM

PALLADIUMはフレンチミリタリーをオリジンに1947年以来、機能的なシューズを開発。 現在は「CITY EXPLORING - 都市探検 -」を追求。 PALLADIUMInstagramTwitterFacebook

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PAMPA PUDDLE LITE WP + パンパ パドルライト ウォータープルーフ プラス Unisex ¥14,904(税込) パラディウムを代表する人気モデル。アッパーの縫い目にテープ処理を施した軽量レインブーツで、アウトドアやフェスでも活躍。 詳細はこちら

HAPPY

PALLADIUM×HAPPY

京都府綾部市出身、幼馴染み5人組により2012年1月11日に結成。 全員が複数のパートを担当し自由な発想で創られた楽曲がライブハウスシーンとSNSによる口コミで広まり、デビュー前にして2013年<SUMMER SONIC>出演をきっかけに注目が集まる。 HAPPYInstagramTwitter

Photo by Kodai Kobayashi Text by TAISHI IWAMI

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パラディウムのオフィシャルストア S-Rush(エスラッシュ)原宿店

東京都渋谷区神宮前3-24-1 インザストリームビル 1F・B1F TEL 03-6455-4125 営業時間 11:00~20:00 詳細はこちら

HOOTERS SHIBUYA

東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム4F TEL 03-6416-3917

営業時間 月~木 11:30~23:30 金 11:30~28:00 土 12:00~28:00 日祝 12:00~23:30 詳細はこちら

Bar SUBTERRANEANS

東京都渋谷区神南1-9-11 インタービルⅡ B1F TEL 03-6416-3967 営業時間 21:00〜05:00 詳細はこちら

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THE NOVEMBERSが最新アルバム『ANGELS』を通して語る、今の姿

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THE NOVEMBERS

THE NOVEMBERSは、唯一無二と言えるスリリングな美しさをアップデートし続けることで、常に時代を切り裂くかもしれない可能性を持ち続けてきた、サウンドスタイルの文脈からくるジャンル分けよりも、アティチュードに対して「オルタナティヴ」という言葉を送りたいバンドだ。 そんな彼らの歴史に敬意があるからこそ、ここに届いたニューアルバム『ANGELS』を安易に「最高傑作」とは言いたくない。しかし、出音一発目から、ロックバンドが今のポップシーンから見れば大きく衰退した、昨今の時代性をひっくり返すかのような 「THE NOVEMBERSらしさ」の革新的爆発を感じたこともまた事実。 いったい彼らは今作をどのような意図で作ったのか。自分たちの立ち位置をどうとらえているのか。その答えには、意外なほどに肩の力が抜けたフラットなスタンスによって獲得した、強い意志があった。

Interview:THE NOVEMBERS

THE NOVEMBERS

――今作『ANGELS』の大きな特徴の一つに、打ち込みサウンドへの大胆なアプローチが挙げられます。そこには近年隆盛を極めるヒップホップ/トラップ以降の流れもあれば、これまでにも示してきたニューウェーヴやポストパンク、エレクトロニックなどの要素もありますが、現在のポップシーンにおけるトレンドは、どのくらい作用しているのでしょうか。 Ryosuke Yoshiki(以下、Yoshiki) 世の中的に今は何がきてるとか、なんとなくは把握してますけど、だからどうってことはないですね。 Hirofumi Takamatsu(以下、Takamatsu) トレンドにはまったくもって疎いです。 Yoshiki そこはメンバーのなかで、Kobayashiくんがいちばんアンテナを張ってるよね? Yusuke Kobayashi(以下、Kobayashi) どうだろう?対トレンドとなると、僕は基本的に遅れています。それはエッジィな人と比べた謙遜的な意味ではなくて、その良さがわかるのに1、2年くらいかかるということ。例えば、D'Angeloの『Black Messiah』が出た時に「おお!すげえな」って思いはしたんですけど、自分が好きな音楽としてハマったのはけっこう先のことで。だから、僕は自分の「今」に対する価値観を信用してないんです。トレンドに適応する速度的な意味で。 ――遅れていることに自覚的、すなわち意識はしていると解釈してもいいのでしょうか。 Kobayashi トレンドはすごく大切だと思います。でも、そこと競い合おうとした瞬間、もう遅れてるってわかるから、結局僕には関係ないって感じですかね。自分が手に持っているもの、頭の中にあるもののなかで、カッコいいと思うものを作るだけ。その参照点には比較的新しい音楽も入ってくる、くらいのことです。

THE NOVEMBERS

――では「ロックバンド」についてはどうでしょう。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの4パートで鳴らすプリミティブなエネルギーに価値を置くことは、もはや古典なのか。 Kobayashi 近年よく言われることですけど、そのロックサウンド的なものがポップシーンのなかで機能していないことは確か。その理由はアップデートをしないから。発想が「古き良き」にある限り、この先永遠に今の情報には勝てないように思います。 ――そこで、THE NOVEMBERSはバンドとして、何を思い活動しているのでしょう。 Kobayashi もっとエッジィなもの、刺激的なものと、同じルールのもとで並走するのを目指してしまうと、人間が空気を震わせて演奏する生楽器のみのバンドは限界にきているように思います。もはや「ロックバンドがロックサウンドを鳴らしてロック的に機能する」ということは破綻している。張り合わないで別の良さを目指せばいいんです。だから今の僕たちは、いわゆるステレオタイプな「ロックサウンド」を求めようとする発想は持ってないんです。やりたいようにやるだけ。確実に、プログラミングとの区別はなくなってきています。 ――かと言って、オルタナティヴロックの文脈から脱したバンドなのかと考えると、私はそうではないと思っていて。 Kobayashi 近年は、「ヒップホップの人たちのほうがロックしてるよね」ってムードがあるじゃないですか。それって、ギターがトレンドだから採り入れてるアーティストが多いとか、サウンドのことじゃない。言うべきことを言うことがクールで、言いたいことを言えない奴が終わってるって話。それってもともとはロックやパンクが担ってたはずなんですけど、ポップシーンのなかでロックが形骸化していってお茶の間に入っていって、「そうですよね、タモリさん」とか言ってるうちに、そうなっちゃったと思うんですよね。タモリさんは関係ないですけど(笑)。 ――お茶の間の象徴ってことで(笑)。 Kobayashi 一昔前って、ロックは反権力とか仮想敵を作ってとか、クリシェのように言われていたじゃないですか。そこで思ったのが反権力とか言ってる時点で行き詰まり。それこそ権力によって生かされていることの象徴。僕は権力って、全然オッケーだと思うんです。加担する対象としての、選ぶ権力を間違えなければ。だから、世の中がどうだとかではなく、自分たちが自分たちらしく何かをすることで、少なくともその半径何メートルかはよくしていきたい。それが結果「今はこれがクールなんだ」って、広く世の中にも影響を与えられたら素晴らしい。そういった流れが、今はヒップホップやポップシーンの先鋭に多くて、それ以外の人が臆病に音楽をやってるんだと思います。 ――今作はその「らしさ」のアップデートがすさまじいレベルで表れていると思いました。そこで聞きたいのがリズムについて。フィジカルなドラムと打ち込みが溶け合ったり、並走したり、それぞれが威力を発揮したり。これまでも、変則性や手数の抜き差しで独特の時間軸を生むリズムは大きな特徴だったと思うんですけど、今回は「どこでどう乗るか」において、すごく多面的な楽しみ方があります。

THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERS

Kobayashi 僕らはもともとリズムの塩梅に関して繊細なところがあるんですけど、今回はいつもより「どう乗るか」を考えることに比重がありました。作っていくプロセスは、これまでに積み重ねてきたことと大きく変わってはいなくて、最初はどんなリズムを作ってもいい360度の可能性があって、そのなかの一つを選んで階層を降りたところでまた360度の可能性がいろいろある。そうやって、いらないものがおのずとふるいにかかって円が小さくなっていってピントが絞れてくる、「ここしかない」と思えるものが見つかる、みたいな。そういったプロセスを4人でやっていくわけですが、そこで大事なのは技術的なことではなく、ムードなんですよね。メンバー同士が、相手やバンドを意識しながら手を動かしていく。日本的に言うと「空気を読む」みたいなものをあえて機能させるというか。 Kengo Matsumoto(以下、Matsumoto) 「あいつ、ぜんぜん楽しそうじゃないな」とか(笑)。 Kobayashi 「リズムは気にいってないけど、音色は好きっぽいな」とか(笑)。だから曲は僕が作ってるんですけど、一人だと絶対にTHE NOVEMBERSの音楽は生まれない。それがバンドとして4人でやることの醍醐味なんだと思います。 ――その作業が生むバンドらしさ。感覚的なことですけど、あると思います。 Kobayashi 僕は自分が手を動かして作曲しているがゆえに、曲に対して愛着が湧いているし慣れもある。でも愛着や慣れは、初めて再生ボタンを押した人には何の関係もないことなんです。僕のなかでの達成度でしかない。そのことは僕が作った曲をいちばん最初に聴くメンバーの客観的な一言が物語っています。 Yoshiki となると、僕は客観的な意見を言う一人ってことになるんですけど、実はKobayashiくんの言う個人的な「達成度」にいちばん振り回されていたタイプ(笑)。でも今回は曲のテーマに合わせて臨機応変に制作していけたのが良かった。生ドラムと打ち込みを等価値に扱ったので、生ドラムを叩いてない曲もあります。 Kobayashi 僕も今回は半分くらいギターを弾いてませんし。 Yoshiki Kobayashiくんに、はっきりと「曲によっては音源は打ち込みでもいいよ。ライヴはライヴでしっかりやるし」って話しましたから。 ――打ち込みのリズムとYoshikiさんが叩く生ドラムの関係性で、私がもっともハッとしたのは“BAD DREAM”です。打ち込みのハイハットの細かい連打と、腰の据わった肉体的な生ドラム。間違えればただ乖離していくだけの音色とリズムが、絶妙な違和感になって生まれる、二つのようで一つのようなグルーヴ感がすごくおもしろかったです。 Kobayashi リズムのグルーヴにおいて頼りになるのがTakamatsuくんで、曲のBPMに関してよくヒントをくれます。ちょっとした速さの違いで体感的にはずいぶん違うとか、複雑なことをやっていても大きく取れるとか。それらは、さっき話したような「どこで乗るか」、すなわちBPMに対して半分や倍速といった考えでやるとさらに重要になってくる。そこでギリギリのラインを突いてくれるんです。

THE NOVEMBERS「BAD DREAM」(OFFICIAL MUSIC VIDEO)

――もっとも刺激的で気持ちいいポイントはそこにありますよね。 Kobayashi そして、音色やサウンドスケープのことはKengoくんが大きな役割を担っています。“BAD DREAM”のマシンによるハットと生バンドの音は、おっしゃったように、普通にやればただ別々の音が鳴ってるだけ。打ち込みと生音を、うまく溶け合わせたり、心地いい違和感を生んだりするためにはどうするか。 ――そこでMatsumotoさんとKobayashiさんの関係性も、すごくパワーアップした作品だと感じました。 Kobayashi リズムもメロディーもコード進行も、Kengoくんの感覚や持ってる機材から、どんなスケール感が出せるか想定して作っています。そして見事、豪華絢爛に鳴らしてくれる(笑)。“BAD DREAM”を例にもう少し細かく言うと、サウンドスケープを意識したときに、あの打ち込みによる「チチチチ」と細かく刻まれるハイハットの連打は、帯域が上がっていくことになるんです。なぜなら、サウンドデザインの階層的に、低いところにいるとKengoくんが出す音と当たってしまうから。でも上に行くほど生のハイハットとの距離ができてくる。そこで生まれる違和感をいい方向に転がすには、その間に誰がいて何が鳴ってるかが重要。帯域的にぶつかるところとリズム的にぶつかるところの情報の取捨選択は、Kengoくんがいて、この4人で鳴らす音があるからこその冒険なんです。 Matsumoto 去年出したEP『TODAY』を経て、Kobayashiくんの打ち込みに対するスタンスが新しくなって、よりバンドっぽく且つ思い描く世界観を立体的に表現できる可能性が広がったんじゃないかなと思います。

THE NOVEMBERS『TODAY』

――バンドとしてすごく充実していることが伝わってきますが、ご自身でも新たな地点に立てた感覚はありますか? Kobayashi 作品を作るために何かをインプットした感覚はまったくなくて、普通に暮らしていて目の前にあることと向き合って、よりよくなっていきたい、ただそう思ってたんです。そのなかにTHE NOVEMBERSとしての創作意欲があった。日々の営みのなかに、『ANGELS』という句読点が打たれたよう感じています。 ――自然体が生んだ強さなんですね。 Kobayashi 気合いを入れて特別なものを作ろうとしなくていい。日々の営みを作品に出すことが大切だし、それは意識せずとも出てしまうもの。毎日を誠実に生きていれば、きっとこの先30代、40代、50代、きっと一生目の前にはその時だからこそのスペシャルな何かがあって、ちゃんと向き合えばそれを勝ち獲ることができるんだって、確信できたことは大きかったです。同じことを繰り返そうとしたり、何かを惜しんで「あの素晴らしい愛をも言う一度」的なモードに入ったり、その反動で無理に新しいことをしようとしたりするから、破綻したり誰かを憎んだりしてしまうわけで。 ――新しい価値観が主流に取って代わる。すなわちオルタナティヴな気概を、THE NOVEMBERSに望んでいる人もいると思うんです。私もそういうベクトルで本作を聴いて「してやったり」と思いましたから。 Kobayashi さっきも言ったことですけど、せめて自分たちの半径何メートル以内かでもよくしていくために作った作品が、世の中にどう作用するかも含めて自分たちのもの。それによって救われる人もいれば、傷付く人もいるかもしれないし、いろんな人がいると思うんです。 ――表現とはそういうことだと思います。 Kobayashi それらすべての感情を引き受けることを前提とした時に、ふと思ったのが、人は少なからず群れのなかで生きているということ。特に日本人は同調圧力に弱い。その同調圧力のかかる方向や対象がすごく不健康だと感じていて。
THE NOVEMBERS

――そう思います。 Kobayashi だからいろんな差別や偏見が生まれる。世の中には違う人間同士が同じテーブルの上にいなきゃいけない、すごく狭い側面と、どこまでも見渡せる広い側面の二つがある。じゃあ後者はどこから見えるのか。それは人が人に対して寛容だったときにだけ広がる景色なんです。心が狭いとどんどん壁ができて面積が狭くなって、いよいよキャパに限界がきて、テーブルの上にすらもいられなくなる人が出てくる。そこで壁を取っ払うために、「ラブ&ピース」を掲げることは、僕は違うと思っていて。愛を与えられる対象なんてほんとうに少ないし、せめて違うまま同じテーブルについても普通だってことが、唯一必要な同調圧力なんじゃないかと。違って当然という。 ――なるほど。 Kobayashi 学校でも「あいつ、なんか違くね?」って、教室に壁が増えていくことがよくありますけど、最近、校則無くした世田谷区の学校が話題になったじゃないですか。僕はすごくいいことだと思うんです。学校の規則がなくなると、ある側面においてクラスの全員が「あいつ、なんか違くね?」な人になるわけです。違っていて当たり前。そうなるとファシストだけが逆に浮いてくる。寛容と言うのも大げさ、別にあいつはお前を食おうとしてるわけじゃないんだからいいじゃんって。そういうことって、法律とかじゃなくて空気みたいなもの。ささいな言葉とか振る舞いとかだと思うんです。 ――TwitterなどのSNS上では、それが一部なのか大半なのか掴めてないですけど、酷いことが日々起こっているじゃないですか。自分の意思で物事を切り取って自分に責任を持って発信することが、決定的に欠けている同調圧力が。 Kobayashi 自分で空気を作って発信してしまっていることに自覚のない最たる例がSNSなんだと思います。家族の前で、愛する人の前で、公園の子供たちの前で同じことをやれってなったらできないことも、架空の世界だと思って自覚なくやってしまう。ネットは現実の解釈の一つであって、架空の世界なんかじゃないのにね。SNSと言えば、Kengoくんどう? Matsumoto 僕のSNS、どうなんですかね? ――いつも興味深く見ています。 Matsumoto テーマは「上品且つエレガント」。 Kobayashi それ一緒じゃん。「甘く且つスウィートに」みたいな(笑)。 ――今作には70年代後半のニューヨークから、Suicideの代表曲“Ghost Rider”カヴァーが入ってます。この曲だけ、音の質感が根本的なところから違って、ライヴ感があるんですよね。それはメンタル的な視点からも、重要なポイントだと思うんです。 Kobayashi 僕らが大好な曲で、ここ1年くらいライブでもやってたんです。Suicideって、難解だとか、キワモノみたいな扱いが多い。でも僕は「なんでこの曲のポップさがわからんか」って、ずっと思っていて。イントロ2秒くらいでカッコいいってわかるのに。だから、いろいろ試行錯誤しながらライブで演奏することを重ねるにつれて、本家を凌ぐ勢いで、この曲に対して真剣になってるんじゃないかってくらいに、おもしろくなってきたんです。そこで、今のTHE NOVEMBERSの姿として、このアルバムの並びに入れてみることにしました。 ――「今のTHE NOVEMBERSの姿」とは、どういうものですか? Kobayashi SNSの話に戻るんですけど、僕は善意とか意味とか目的のあることを発信しようとしてしまう。それに対してKengoくんは「俺のツイートに意味を見出したお前が悪い」ってタイプ。人が頑張って組み上げた「作法」という形をしたプラモデルをボキボキと折って組み直したその形は「バカ」という文字に見えるんですけど、本人は「いや、バカじゃないです。プラモデルです」って。マルセル・デュシャンみたいなところがあるんですよね(笑)。彼のユーモアが、目的にがんじがらめになってしまう僕を救ってくれる。別の言い方をすれば、ちゃぶ台をひっくり返した先のカタルシスみたいな。それはライブを通して育ってきた、バンドにとって必要な感覚。その象徴が“Ghost Rider”なんです。かたや、意味を持ったまま「好きにやろうぜ」って言ってるのがタイトル曲の“ANGELS”。いろんな僕たちらしさが詰まった、すごく健康的なアルバムになったと思います。

THE NOVEMBERS「ANGELS」(OFFICIAL AUDIO)
THE NOVEMBERS『ANGELS』
THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERS

Text by TAISHI IWAMI Photo by Kohichi Ogasahara

RELEASE INFORMATION 『ANGELS』

【収録曲】 1. TOKYO 2. BAD DREAM 3. Everything 4. plastic 5. DOWN TO HEAVEN 6. Zoning 7. Ghost Rider 8. Close To Me 9. ANGELS

XQJH-1025 / ¥2,800円(税抜)

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THE NOVEMBERS

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LIVE INFORMATION ANGELS ONEMAN TOUR 2019

北海道 3月31日(日) 札幌 SPiCE(ex.DUCE SAPPORO)  OPEN 18:00 / START 18:30 ALL STANDING

東京 4月6日(土) マイナビBLITZ赤坂 OPEN 18:00 / START 19:00

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TOMOE TOUR 2019

出演 tacica / THE NOVEMBERS / People In The Box

宮城 5月25日(土)SENDAI CLUB JUNK BOX OPEN 17:30 / START 18:00  ALL STANDING

福岡 5月31日(金)BEAT STATION OPEN 18:30 / START 19:00  ALL STANDING

大阪 6月2日(日) 梅田CLUB QUATTRO OPEN 17:15 / START 18:00  ALL STANDING

愛知 6月9日(日) THE BOTTOM LINE OPEN 17:15 / START 18:00  ALL STANDING

東京 年6月14日(金)マイナビBLITZ赤坂 OPEN 18:15 / START 19:00

チケット 4月20日(土)よりチケットぴあ/ローソンチケット/e+にて発売。

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TARO × TAAR 対談|必然的な出会いから生まれた「共振」その内部を探る

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TARO TAAR

バンドやトラックメーカーの作る音楽の境界線が溶解し、サブスクリプション・サービスによって、よりジャンルを意識せずにダンスミュージックに接するリスナーが増えた今。YOSA&TAARがクラブイベント<MODERN DISCO>で招へいしてきた海外のアーティストの多彩さ(時にFKJやMoon Bootsら「今」を象徴する存在から、Dimitri From Parisのように黎明期のソウル〜ハウス/ディスコシーンを牽引してきたベテランDJまで)は、彼らの初フル・アルバム、その名も『Modern Disco Tours』にも通じている。 YOSA & TAAR / Perfect Fire ft. Taro from Attractions

2月にリリースされた本作には先行配信され話題を呼んだ“Fever ft. SIRUP”を始め、福岡発のロックバンドAttractionsのボーカルTARO、気鋭の女性シンガーソングライターeill、ヒップホップ・サイドからは踊Foot Worksがバンドごと、SNEEZEがラップで参加するなど、YOSA&TAARがこれまで育んできたディスコ/ハウス・ミュージックで振り幅の広いゲストを束ねることに成功している。 今回は、ゲスト達の中でも意外性の高かったfeatボーカリストであるAttractionsTAROを迎え、TAARとの対談を実施。今回のコラボレーションの経緯や、楽曲“Perfect Fire”について、また共振する部分など、この出会いの必然を紐解いていく。

Interview TARO(Attractions) × TAAR

TARO TAAR

――お二人はそもそもどうやって出会ったんですか? TAAR 彼(TARO)福岡出身なんですけど、DJをしに福岡に行く機会が一時期すごい多かったんですね。その時もうYOSAとアルバム作ろうと思ってて、「シンガーさん誰かいないかな」ってずっと探してて、それで地方行った時に地元のオーガナイザーに聞きまくってたんです。で、ちょうど福岡でtofubeatsくんとかchelmicoとか呼んでるオーガナイザーがいまして、その彼に「Attractionsって福岡のバンドがいるよ」って言われて、それが“Knock Away”出した直後ぐらいか?面白いバンドがいるからちょっと聴いてみてみたいな感じで聴かせてもらって、それで一発で「なんじゃこの声?」みたいな。 TARO あざっす!

Attractions - Knock Away(official video)

TAAR いい意味でどこの国の人かわからないテイストもあるし、絶対これ好きなもの近いわと思って、『僕らの曲で歌ってくれたらいいかも』と思ってまして。僕が一方的に聴き惚れまして、自分のラジオとかでも曲をかけてて。それから2〜3ヶ月ぐらいして共通の知り合いを通して繋いでもらいました。で、東京でライブをやる時に遊びに伺いまして、生の声を聴いて、「あ、やっぱこの人いいな」っていうのが出会い的な。 TARO 初めてライブ見てくれたのはPAELLASとのイベント? TAAR 新代田FEVERで。PAELLASは同い年だし、過去にリミックスとかもやってるんで。そういう好きなバンド同士が呼応してる感じとかも、やっぱこの人たち好きだなと。で、「初めまして」して、「実は今アルバム作ってるんですよ」っていう話をして、「ぜひ歌って欲しいんですよ」って直談判したのが馴れ初めですね。 ――福岡のシーンが盛り上がっていることも関係しているんでしょうか。 TARO 福岡は最近、盛り上がってきてはいるかなと思って。Attractionsと同世代の子たちはいないんですけど、下の方が今、すごい。Mega Shinnosukeくんとかyonawoとか、あと、ヒップホップも今すごいし。 TAAR クリエーターがどさっと福岡に移ったって時期がありましたよね。5lackもそうですし。 ――話を戻して、TAROさんは直談判されてどうでしたか? TARO や、正直、僕あんまり東京のDJ界隈、その当時そんなに知らなかったんですよ。「東京の人から声かけられた、どうしよう……」みたいな(笑)。「やべえ、めっちゃ怖い人なんやろな」と思って。依頼がきて、「じゃあ一緒にやりましょうか」って時に電話で話した感じ、やっぱクールな人なんだ〜って一瞬思って。 TAAR スカしてた? TARO スカしてはない(笑)。 TAAR もともとDJやってたでしょ? TARO そうです。 TAAR 後から知ったんですけど、クラブミュージックに対してすごい造詣があるというか、制作中にも仮歌を彼が録ってきてくれて、返ってきて聴いた瞬間に「あ、この人、ちゃんとダンスのグルーヴがわかってる人なんだ」っていうか。最近、ダンストラックっぽいものをバンドでアレンジして、それをロック的に歌うって解釈だったり、もうちょっとゆるめのをR&B的に歌うって人は他にもいっぱいいると思うんですけど、彼の歌の符割とかメロディラインっていうのはLCDサウンドシステムだったり……なんだろう? TARO !!!(chk chk chk)とか? TAAR そう、!!!(chk chk chk)とか、ダンスの文脈をちゃんと知って音楽やってるというか、僕にとっても居心地がいいメロディだったり符割だったので、「この人絶対、どっかでダンスかじってるな」とか「ダンスミュージックをどこかで食らったことがあるんだろうな」って仮歌をもらった時に思って。 TARO 自分の音楽の入り口もUKロックだったりするから、そういう音楽の話しても全然盛り上がるし、お互いにわかってもらえる関係というか。 TAAR 「あ、やっぱ好きなもの一緒だった」みたいな感じとかあって、それで一瞬で仲良くなって。プラス、TAROくん歌上手いんで、当時のUKのフラッターぽいボーカルじゃなくて、ちゃんとUSのディスコっぽい、上もちゃんと伸びるし、下も刻めるし。そういうアプローチとかもあるし、ほんとに「この人とやると楽しい」ってなって。

TARO TAAR

――TARO さんはバンドのボーカル録りと何か違いましたか? TARO やっぱ緊張感ありますね。でも仕事って感覚はあんまりないっていうか、かっこいいものを作ることに変わりないんで。 TAAR TAROくん、ガッツあるんで何回も歌わせてしまいました。 TARO いやいや、俺が下手だから何回も録らせてもらいました(笑)。 ――トラックで歌うのは初めてですか? TARO そう、ですね。ま、最近はそういうスタイルが多くなってきましたけど、自分のバンドでも。ただ完璧にダンスミュージックのトラックで歌うことは今までなかったので、逆にすごい新鮮だったし、「あ、これ使える、これ使える」ってアイデアも出せたかなと。超楽しかったです。 ――今、世界的にはバンドもコ・プロデューサーを迎えたり、客演も多いですからね。 TAAR そもそも、生楽器をレコーディングでバーン!って録って、それじゃなきゃいけないってバンドが逆に少なくなってきていて。 TARO ああ、確かにそうですね。 TAAR ちゃんとスタジオワークでプロデュースをしっかりつけて、そのアプローチの仕方自体が僕らがDTMでやってきたり、僕らは逆にDTMの中に生楽器をどう入れるか?ってアプローチをしてたんで、だからそこの差ってもうないじゃないですか。僕のレーベルの先輩の80KIDZって、多分そういう手法を10年前からやっていて。だからそこで隔たりがある感じは全くないですし。Attractionsのトラックだって、キックにめっちゃコンプかかってんなと思うし。 TARO そうですね(笑)。 TAAR あとは隔たりがなくなった分、「あ、好きだ」と思った人と音楽をすることに対して抵抗がどんどんなくなってきてる。それはメジャーだろうとインディーだろうと、日本だろうと海外だろうと。 TARO ネットのおかげであんま関係なくなってきたっていうのもありますね、今、情報の速度も早いんで、音楽に対して。ロックする人もヒップホップ聴くし、ヒップホップする人もちゃんとロック聴くような状況になってきてるから、お互いに影響し合ってる。 ――長い文章をインスタにあげてたり、SounCloudに上がってる音源は下手に話すよりセンスがわかることが多いでしょうし。 TAAR ほんとにそうです。音楽を聴いてフィールするっていうのももちろん大切ですし、その音楽をなぜ作ったのか?っていうクリエーターマインド的な部分でフィールするのが一番早いと思っていて、Attractionsに対しては僕はそれがすごくあって。一方的に思ってました。 ――Attractionsに抱くバンド像はどういうところがフィットしたんですか? TAAR 言葉でいうのは難しいですけど、うまいこと言えるかな?……ベストなアプローチをしてるっていうか、楽曲に対してもそうですし、彼らが置かれてるシーンだったり状況もそうなんですけど、もちろんかっこいいものを作るってことには哲学はそこにあるんですけど、そこに対してベストなアプローチを自分たちでちゃんと選んで、一個一個ディレクションして作り上げていってるっていう、D.I.Y.感というか。福岡だからかもしんないですけど、自分はそれを感じたのかなっていうのは思いましたね。全部自分たちがコントロールしてっていうか。今これをやったら面白いんじゃないのか?ってサウンドだったり、あと、単純に出音がカッコよかったってところもそうで。 ――確かに「今流行ってるから」って作らされてる感は全くない。 TARO ああ、それはないです。 TAAR そうですね。あとやっぱ、僕DJなんで、人よりいろんな曲を職業的に聴くんですけど、その分だけサンプリング元が大体わかるんです。このバンドはこう、とか、あのバンドはこの時代のこういう部分とこういう部分をかけ合わせてるな、と。Attractionsはそれの重なり合いの色合いがすごく綺麗。 TARO めっちゃ嬉しい。 TAAR いろんなとこからいろんなものを引用してきて、Attractionsってものを作ってる。でもそれって、やっぱ一歩引いてAttractionsってものをわかってないと。個々がAttractionsに対してプロデューサー的な立場でモノを作ってる感じ?じゃなかったら、あんな曲は書けないんじゃねえの?って僕は思いましたね。

Attractions / Hazy Boy(Music Video)

――今回の『Modern Disco Tours』は珍しいと思うんですよね。こういう、ダンスミュージック・アルバムなんだけど、この時代にあるいろんなビート、割とエンサイクロペディア的というか、そういうダンスミュージックアルバムのあり方は。YOSA&TAARとしてどんなアルバムを目指していたんでしょうか。 TAAR プロデューサーズ・アルバムというか、僕もYOSAも個人の活動で自分のアーティスト名義で作品を出してたりするので、その僕らがお互いの丸が重なったそこの部分を作ろうよっていうのはもともとあって。共作をするのは僕もYOSAも初めてだったけど、なんとなくお互いのDJとか作品も知ってるから、こういう感じにはなるんだろうな、みたいな。で、どんなフォーマットの音楽を作っても、僕らが今面白いっていうものを入れてったら、バラバラになってるけど、その中でも統一感は出るよねっていうのはあって。 TARO 一緒。うちのバンドも(笑)。 ――いわゆるひとつのジャンルのビートじゃなくて色々なものが収録されているのはそういうことなんですね。 TAAR なんか今っぽい感じっていうのは多分、客演しているボーカルの方々が出してくれてるんだと思ってて。今っぽいものを作るというよりかは歌ってくれてる人たちが今っぽくしてくれてる感じがするんですよ(笑)。 ――もともとイベントが母体になってるアルバムで、このアルバムを聴いていると飽きないパーティだろうなって想像もできるんです。 TAAR 確かに。<Modern Disco>ってイベントは来てくれた人じゃないとわかんないと思うんですけど、基本的に四つ打ちのダンスミュージックでBPM100行かないぐらいのテンションの曲もかかるんですよ。実際、そういう音楽をやってる海外のアーティスト達を招へいしてるし。一方でTodd EdwardsやDimitri From Parisなど比較的BPMの早いアーティストも呼んでるし。 ――その幅が面白いところですね。 TAAR それを一個の名前で「Modern Disco」って呼んでるから。ま、そこまでの振り幅はあってOKじゃない?って。じゃ、それって何が共通してんのかって言ったら、曲のミュージカリティ、なんていうんだろう?……ダフトパンクが言ってるんですよ、ミュージカリティって。音楽的であるっていうか、ダンスミュージックってもうちょっと肉体的でもあって。もっとね、音楽っぽい。理論だったり機能も含まれてます。テクノは違う、ディスコはそう、なんだろ?音楽的に表現できる幅が豊かっていうか。ディスコの方が豊かだって感じ。 ――極論するとテクノはビートに最もフォーカスされているけど、ディスコはメロディとか色々含まれているイメージですか? TAAR そうです。いろんな要素が含まれてて、より音楽的である、そういうものを「Modern Disco」っていうもので僕自身は追い求めてたんです。現行のダンスミュージックやリリースされる曲たちをより音楽的っていうか、音楽性豊かなものであってほしい。クラブミュージックであっても、そういう振る舞いをしているものが僕は好きなので。なんかそういうことを僕の中では一個のテーマとして作ってったのかなって思いますけど。 ――ところでTAROさんに自分のボーカルトラック以外に好きな曲を3つあげてほしいです。 TARO 難しい……eillちゃんの“Red”いいですね。始まり方がワクワクさせるというか、エロいし、すごいその曲が好きなのと、あと、5曲目の“Work in Lorsch”がムッチャ好きなんです。ベースの鳴りとかも。これ絶対盛り上がるだろうし。あと、SIRUPとの“Fever”はガラージュっぽくてすごいし。いろんなジャンルがありつつも、どれもエモーショナルにも聴けるし、すごくリラックスしても聴けるっていうか、どんな場面にも合うと思います。で、クラブでかかると絶対アガるし、俺はこれはもう宝物だし、聴ける作品になってると思います。

YOSA & TAAR / Fever ft. SIRUP

ーーTAARさんは自分でもこれはシュアショットだなという曲はありますか? TAAR “Perfect Fire”好きですし、僕も“Red”は好きかな。個人的にも今までのスキルをアップデートしつつできたかなというのはありますね。 ――ちなみに「Perfect Fire」をライブで見られることはあるんでしょうか? TARO やりたいです。僕ももう少ししたら言おうかなと思ってて。今ワンマンで忙しくて、そこまで手が回らない部分があるんで(笑)。 TAAR TAROくんがあるって言った!てことは、あります(笑)。 ――どういうやり方で? TAAR 楽譜書いて渡そうか? TARO ははは。メンバーでアレンジします(笑)。 ――ちなみにシンガーは随時探してるんですか? TAAR はい。素敵なボーカルがいればぜひやりたいと思いますし、僕、インスタで無名のシンガー探すのハマってて、今、二人ぐらいいるんですよ。いろんなシンガーとはやってみたい。ほんと、メジャー、インディー問わず、女性、男性、年齢も問わず、今この瞬間に音楽やってるシンガーとだったら誰とでもやりたいです。 ――話をちょっと大きくしちゃうんですけど、お二人とも国内に限らず活動してると思うんですが、日本に限らずどういうところまで見てますか? TARO 僕はインドネシア出身というのもあって、日本がもっともっとアジアのシーンの認識を持つべきかなと思って。なんかどことなく鎖国化してて、僕、日本に来て不思議に思ってたことがあって、MTVミュージックアワードってあるじゃないですか。あれ、ジャパンはジャパンだけなんですよね。アジアは日本以外みたいになってるの超不思議で。一緒にやればもっともっと広がるのになと思って。最近、バンドシーンもそうですけど、ヒップホップシーンも東南アジアのあの辺、勢いすごいですけど、日本は超遅れてるんで、それが悔しいから、逆に逆輸入ぐらいの勢いで海外で活動できるようになるまで、ちょっと頑張っていきたいなと思ってて。で、それをちゃんと日本に持って帰ってきて、みんなに紹介できる立場になれればいいなと思ってますね。 TAAR 僕は別にあえて海外とかは全く考えてなくて。逆に東京に生まれて東京で音楽やって、今この瞬間、音楽を楽しめてなければどこに行ったって変わんないと思うんですよ。特にダンスミュージックって、UKとかベルリン、それが良しとされる風潮があるし、そこに移住する人とかもいると思うんですけど、僕、『体のいい都落ち』って呼んでて。 TARO ははは(笑)。 TAAR いや、東京で売れるのが一番難しいし、東京で音楽続けることがすごい難しい。日本で音楽することがすごい難しいと思うんですよ。 ――これからのマーケットの縮小を考えると。 TAAR ほんとに。もうここ5年で変わったし。CDは売れない、サブスク出てる、でも音楽やってるっていう奴のほうが、絶対面白いと思うし。だから僕は日本で音楽やってるやつ、今この瞬間、日本で音楽やってる奴が一番尊いと思ってるんで。 TARO 一番ハングリーですからね。 TAAR さっきTAROくんが鎖国って言ってたけど、どっちかだと思うんですよね。鎖国感を出し、日本特有のものだっていうか、海外に直接繋がってこっちを見てもらうか。こっちから向こうに寄せるかっていうことの違いだと思うし、別にそれはあえてやる必要はないと思うし。なんか結果として引っかかってくれたらいいなぐらいしか思ってないんで。 TARO 海外のアーティストとコラボしたりはしないの? TAAR それはしたい。それは面白いじゃん。 ――こちらの「調理室」に素材として入った感じになるのが面白いのかもしれない。 TAAR そうですね。だからなんかアバンギャルドなことをやるとか、すごく簡単だと思うんですよ。振り切れることは誰でもできるんで。そうじゃなくて、僕らは音楽をする上では、絶妙なバランスをとっていたいっていうのはずっとあるかもしれないです。 ――それは大きな意味ではポップスということですか? TAAR そうですそうです。今回のアルバムはJ-POPっていうほどではないけど、ポップスを好きだし、ポップスの要素をどこまで取り入れられるか?みたいなこともなんとなく頭の中にはありましたね。 ――最後に。また二人で何かやれる機会があれば、やりたいですか? TARO もちろん。 TAAR やりたい!

TARO TAAR

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RELEASE INFORMATION

Morden Disco Tours

YOSA TAAR

YOSA & TAAR 2019年3月27日(水)リリース Track List 01. Take Off 02. Red ft. eill 03. Slave of Love ft. 向井太一 & MINMI 04. Perfect Fire ft. Taro from Attractions 05. Work in Lorsch 06. Dance in Casbah 07. Under Water City 08. Rain Down ft. SNEEEZE 09. Fever ft. SIRUP 10. HIKARI ft. 踊Foot Works 11. Transit

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癒しのピアニスト・ユップ・ベヴィンに訊く、ダークトーンの音楽を人々が求める理由

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Yellow Lounge

3月12日に「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」で開催された<Yellow Lounge Tokyo 2019>。コンサートホールを抜け出してクラブを始め、様々な会場で実施している新しいコンセプトのイベントの日本での第二回目の公演には、世界中で6000万人とも言われるフォロワーを持ち、もっともストリーミングされているコンポーザー/ピアニストのJoep Beving(ユップ・ベヴィン)をはじめ、村治佳織、伊藤ゴロー、Mari Samuelsen(マリ・サムエルセン)を招いて、ごく少数の観客とともに新鮮かつ静謐なライブ空間を共有することになった。

Yellow Lounge

今回、4年の歳月をかけて完成した3作目となるアルバム『HENOSIS(ヘノシス)』を4月5日にリリースするユップ・ベヴィンのインタビューを、公演翌日に実施。公演では『ヘノシス』から“1つの世界”、“アニマ”、“アナムネーシス”をいち早く日本のファンの前で披露。「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」に展示されている作品『人々のための岩に憑依する滝』とのコラボレーションについてや、自身の音楽が国境を超えて人々の癒しとして作用している理由などを語ってもらった。

Joep Bevin / Into The Dark Blue

Interview : Joep Beving

Yellow Lounge

ーー<Yellow Lounge>での公演、非常に面白かったです。普段とは違う環境だったと思うんですが、率直にあのスペースとのコラボレーションはいかがでしたか? 本当に素晴らしい体験でした。もともと音楽というのは雰囲気で部屋を埋め尽くすというのが目的なんですが、それに加えてあの様な映像があるというのは素晴らしかったと思います。ただ、残念ながら私は鍵盤を見ていなければならなかったので、あまりそれらの映像を楽しむ余裕はなかったんですけど、あの場で公演をできて、とても光栄に思っています。 ーーユップさんの新作『ヘノシス』は内面の宇宙に向かっている内容ですが、昨日はほとんど暗闇に近い状態で演奏されていて、何かシンクロする部分はありましたか? ちょっと難しい質問ですね(笑)。ある意味、ちょっとチャレンジングな場ではありました。というのも、楽器にアンプをつないでいなかったものですから、部屋の大きさに比べてピアノの音の大きさが小さくなってしまうようなこともあったので。ただ、ああいう環境で音楽に入りやすいということはもちろんあると思います。以前にも森の中で演奏したこともあったのですが、周りの自然の音が聴こえてきて、その中で演奏をする。そういったことは常に面白い挑戦だと思いますし、大きなことでもあります。 ーー観客はクッションに座って、しかも位置もデザインされて座っていたのですが、見た瞬間どう思われましたか? 繰り返しになりますが、光栄な気持ちでいました。私自身、ステージの上ではなくてお客さんと同じ床の上で弾くというのはとても好きですし、観客との距離感が近いという演奏方法もすごく好きです。

Yellow Lounge

――最初の村治佳織さんのギターの音はピアノよりさらに小さく聴こえたので、集中して聴いてたんですね。それからヴァイオリン、ピアノとだんだん音量は大きくなりましたが、観客が集中している感覚はありましたか? みなさん集中して聴いてくださって。そもそも日本人の方は一生懸命聴いてくださるので素晴らしいと思います。理解しようと集中してくれる。例えばオランダだと「オランダ病」といっていいか分からなないけど、演奏が始まるとお互い会話し始めてしまう、勝手に喋り始める、それは演奏者に失礼に感じることも多いので、そういう意味で日本の観客は素晴らしいと思います。 ――teamLabの映像は事前にどれぐらいご覧になりましたか? もちろん見たのですが、「深く理解しよう」とか「意味を見出そう」というほどじっくり見る時間があったわけではないんです。でも本当に触ると反応したり、素晴らしいものであるということで、すごく心に感じるものがありました。 ――デジタルですが自然を感じるような映像と、ユップさんの昨日のプログラムは関係していると思いますか? 私が昨日演奏したものは、あの環境と関係性があればいいなと思いながら演奏したんですが、ピアノというもの自身が自然とリンクしている部分があると思います。例えば森の中を歩いていると、その静寂だったり美しさだったり、心の中で親近感を得られると思うんです。それはやはりピアノも同じようなものだと思います。心地よいと感じるもの、自分が気持ち良い、親近感を感じるものという点で、ピアノと自然には関係があって、そういうところが昨日のイベントの中でも感じられたのなら良かったな、と思います。 ――基本的なことなのですが、ユップさんはteamLabの存在やクリエイションをご存知でしたか? 以前聞いたことがあったんですが、改めて昨日見て「ああ、こういうことだったんだ!」と理解しました。 ――あの展示そのものをどう感じましたか?暗闇の中を歩くこととか。 森の中で迷子になるような感覚というのは非常に面白いし、好きな感覚です。ちょっと感覚が混乱するようなところにいるのは面白いと思うし、あの様な場所は総じてパラダイス、理想的な空間だと思います。4時間程いたのですが、だんだん居心地がよく、家にいるような感じがしてきて。そういうものを人間が作れる、作ったということは凄いと思います。 ただ、近い将来か遠い未来か分かりませんが「あの様な環境の中で自然を経験するということが人間にとって普通になっていくのか?」、「技術やテクノロジーを使って居心地の良さを作っていくのだろうか?」とも感じました。逆に、テクノロジーを使わないとそういう感覚になれないということも、それはちょっとどうなのだろう? と。今ある本来の自然も大切にしながら、テクノロジーも両方うまく共存していけばいいな、と思いますね。

Yellow Lounge

――反語的に、そういうことをもしかしたらクリエーターも意図を込めているのかもしれないですね。 そうですね。そうだろうと思います。 ――昨日のプログラムは『ヘノシス』からはピアノソロの曲を、そして過去の楽曲も演奏されていましたが、選曲はどのように決められたんですか? 昨日は3曲を新しいアルバム『ヘノシス』から紹介したかったのと、あとはセカンド・アルバムの『プリヘンション』から自分が一番好きな2曲を選び、あとは上手く曲が繋がるように考えて作りました。非常に短い時間の中で組み合わせるというのは難しいことですが、先週の土曜日にオランダのギャラリーで同じセットで演奏できる機会があって。やってみたら非常に上手く繋がって良いセットリストにできたので、今回もそれで組んでみました。 ――1曲、ヴァイオリンのマリさんとブライアン・イーノ(Brian Eno)の“By This River”のカバーをされていて。個人的にも好きな曲なんです。 マリさんとはマネージャーもレーベルも一緒なのでやりやすい部分があるんです。今回、カバーしたのもとてもシンプルで印象に残るメロディで、これだけ少ない情報の中で残る、力強い演奏ができたのはいいことだったと思います。

Yellow Lounge

――ユップさんより上の世代の方にとってリアルタイムのアーティストかと思うんですが、イーノはどういう存在ですか? もちろん尊敬していますし、本当に色んなアバンギャルドな音楽や様々な音楽をやっているので好きなんです。その中でも彼の音楽は観客を落ち着かせる要素があって、そこには「私はアーティストなんだ」っていう強いエゴとか個性を押し付けてこない。あくまでも観客が聴いて、気持ちいいと感じるものを提供している。そういう部分では非常に共感する部分があって尊敬する音楽家でもありますし、今回取り上げた理由でもあります。 ――では『ヘノシス』について伺います。ユップさんはキャリアの初めにエレクトロニックな音楽表現をしていましたが、ピアノソロのシンプルな音楽性から、今回、オーケストレーションやエレクトロニックも入った音楽表現をしています。その主な理由とは? そもそも、ソロピアノで一作目を作る前はエレクトロニックなものを使った音楽を作っていたので、むしろ一作目は原点に戻った部分があったんです。そこから今回の『ヘノシス』ではエレクトロニックなものを入れたり、色々なアレンジメントを入れたのですが、2作目の『プリヘンション』を作った時に、ストリングスを入れたり色々なサウンドデザインをやりたかったんですが、なかなかうまく合致できなくて。自分の好奇心を実現すること、チャレンジすることができなかったんです。 それをいよいよ今回の『ヘノシス』では纏まって導入することができた部分はあります。ただ、作曲の方法は変わらなくて、まずはピアノと向かい合って、そこから色々な要素を足していく。ちょっと話は変わるのですが、1作目から2作目はピアノだけ、そこからだんだん世界が広がっていくというイメージで。1作目は本当に個人というか内なる世界で、今回の『ヘノシス』はもっと宇宙に向けるというか、ズームアウトしたような音楽にしたかったので、それを表現するにはストリングスやシンセサイザーがある方がより表現がしやすかったというのが理由ですね。

Yellow Lounge

――ユップさんの音楽は世界何千万人の人にとって癒しの音楽であるわけですが、どちらかというとダークなトーンだと思うんですね。今の世界の人々にとって明るい音楽よりもどちらかというと落ち着けるというのはなぜだと思いますか? いい質問ですね(笑)。まず一つには、メランコリックな感情というのは多分人間の感情のデフォルトにあるものだから。ほんとに圧縮された悲しみの感情というのは人間の一番心の中にあるものだと思うので、気付いた時に初めて信頼という感覚が生まれて、そこから落ち着いたりリラックスしたりという感覚を深いレベルで感じられるのだと思います。 もう一つは、暗闇という部分を理解する事で更に強くなれる、それを克服することができるから。暗闇があってこそ光に感謝して、気づくことができるという部分があると思います。 ――では最後の質問です。今回はユニークなシチュエーションでの演奏でしたが、今後どンなシチュエーションでの演奏やコラボレーションをしてみたいですか? プロジェクトはいくつかあるんですが、まだ言えないものもあるんですよ(笑)。色々言えないことが多いんですが、他にもアートとのコラボレーションも今後予定されています。詳しいことが言えなくてごめんなさい(笑)。 ――もしどこででも演奏ができるならどこで演奏してみたいですか? そうですね……富士山とか(笑)。 ――(笑)。頂上は意外と狭いですよ? じゃあ、もうちょっと下の方で(笑)。

Joep Beving & Mari Samuelsen & Kaori Muraji | Yellow Lounge - Live Stream - 12.03.2019, Tokyo

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HENOSIS

Yellow Lounge

Joep Beving 2019年4月5日(金)発売 CD 2枚組 483 5209 オープン・プライス / 輸入盤 LP 3枚組 479 9875 オープン・プライス / 輸入盤

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Joep Beving

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Sobsに訊く、隆盛期のアジア音楽シーンで今求められる「アイデンティティ」とは

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Sobs

韓国のヒョゴやSay Sue Me、タイのプム・ヴィプリットといった新世代の台頭もあり、 アジアのインディー・ロックがここ数年盛り上がっている。 日本からも多くのバンドがアジア・ツアーを行っているように、 アジア各地で交流の輪が広がり、新しいシーンが生まれそうな機運が高まっている。 そのなかで、シンガポールを代表するドリームポップ・バンドがSobs(ソッブス)。 さる1月に初来日した彼女たちは、かねてよりファンだったというFor Tracy Hydeと ジョイント・ツアーを敢行。東南アジアだけでなく、遠くアメリカにまでファンベースを広げている。 Sobsはどのようにして、シンガポールから自分たちの楽曲を発信しているのだろうか?  メンバー3人への取材を通じてバンドの音楽性や発信力、シンガポール独自のシーンを紐解くとともに、シンガポールというアジアとアメリカの狭間にある国で音楽活動をする彼女たちが、 現在のシーンについてどんなことを感じているか尋ねてみた。

Interview:Sobs

Sobs - Telltale Signs (Official Video)

――まず、Sobsというバンドの特徴について改めて教えてください。 ジャレッド・リム(guitar / 以下、ジャレッド) 僕たちはポップ・ミュージックが大好きなんだ。色んなジャンルの音楽を聞く。とっつきやすくてわかりやすい音楽を作りたい。 セリーヌ・オータム(vocal / 以下、セリーヌ) そう、いろんな意味でね。 ラファエル・オン(guitar / 以下、ラファエル) Facebookとかのプロフィール欄にも書いてあるように、僕らは自分たちの音楽を”Uncool Pop Music”(かっこよくないポップ・ミュージック)って呼んでる。ただポップな音楽を作りたいだけだ。 ――そのコンセプトはどうやって生まれたんですか? ジャレッド 僕とラファエルが作ったんだ。僕は最初「クールなポップ・ミュージック」って書いてたんだけどね。 ラファエル 毎回ジャレッドが「クールなポップ・ミュージック」って書くたびに、僕が「かっこわるいポップ・ミュージック」って書き直したんだ(笑)。 ジャレッド そうすると、僕がまた「究極にクールなポップ・ミュージック」って書き換えるという(笑)。 セリーヌ それ覚えてる! いまは”uncool”に落ち着いたね。 ラファエル 何かしらプロフィール文が必要だから作っただけなんだけど、今となってはみんなしっくりくると言ってくれてるよ。 セリーヌ 私たちのブランドになったの。 ――いいと思います! みなさんは現在、Sobs以外にどんな活動をしているのでしょう? セリーヌ ジャレッドは同じシンガポールで、Subsonic Eyeっていう別のドリーム・ポップ・バンドをやってる。 ラファエル 僕はバンド活動と並行して、SobsとSubsonic Eye(サブソニック・アイ)が所属しているレーベルを運営しているよ。〈Middle Class Cigars〉っていう名前で、うちのベーシストがやってるCosmic Child(コズミック・チャイルド)と合わせて3組が所属してる。 セリーヌ 私は前まで他の仕事をしてたけど、今はツアーが忙しすぎてやってないわ。 ラファエル じゃあ職業はミュージシャンだね(笑)。

Sobs

――Sobsはどんな音楽に影響を受けているのでしょう? ジャレッド チャートにあるような音楽だけじゃなくて、ポップス要素があってキャッチーなメロディを意識してるインディー・バンドだ。そういう音楽に僕は惹かれる。このバンドをやりたい一番の理由だよ。 ラファエル ポップな音楽って、退屈で深みがないってバカにしてる人が多いと思う。ポップ・ミュージックは何も悪くないって示したい。ポップスを楽しもうよって。 セリーヌ そうね。私たちはインディーとポップスをかけ合わせてる。1曲の中にもいろんな音楽の要素を組み込めるの。 ――具体的に、ルーツと言えそうなバンドを挙げてもらえますか? ジャレッド Frankie Cosmos(フランキー・コスモス)やAlvvays(オールウェイズ)とか。 セリーヌ 私はCharly Bliss(チャーリー・ブリス)やCrying(クライング)が好き。 ラファエル 僕ら3人はそれぞれ違う音楽のテイストを持ってるよね。聴いてきた様々な音楽の影響が混ざってると思う。 ジャレッド 僕はフランキー・コスモスみたいなインディーポップなバンドが好きで、ラファエルはシューゲイザーが好きだよね。 ラファエル そう、シューゲイザーは大好き。80’sのトゥイー・ポップも好きだね。 セリーヌ 私は90’sのロック・サウンドとトゥイー・ポップも好き。あと、私とジャレッドはCharli XCX(チャーリーXCX)が大好きなの。 ――どの名前も頷ける気がします。Sobsがバンド活動をする上で、いま一番刺激を受けているものは? セリーヌ ツアーで色んなところに行くこと。あと「悲しい感情」ね。自分自身の感情じゃなくても影響を受けるわ。話す価値のあることを経験している時期はそれを元に曲を書くけど、自分の人生で何も面白いことがない時は、誰かの人生で起こっている出来事を書くの。 ――経験談を聞くってことですか? セリーヌ そういう場合もあるし、誰かの状況を傍観して書くこともある。そういうときは、ただ客観的に読み取って書くわ。映画とかもそうね。 ラファエル ツアーをたくさんしてると、新たな出会いがたくさんある。それが僕にとっては大きな刺激になっているね。世界には様々な人たちがいるんだ。近所の人も、他国の異人も、違うシーンの人も。職場にだって色んな人がいる。例えば日本だって、レーベルの人と一緒に仕事ができたり、写真家、映像家、監督とかに会えたり。彼らからたくさんのことを僕らは学んでる。それを自分たちの作品に反映させたい。

Sobs

――3人にとって、自分たちが生まれ育ったシンガポールはどんな国ですか? ラファエル シンガポールはアジアの中でも、とても興味深い国だと思ってる。安定した国に住めて僕らはラッキーだ。みんな学校に行けるし、毎日生きていけるし。心配することなく夜道だって歩ける。平等に権利もある。こういう生活ができるのは素晴らしいことだよ。あと、シンガポールの食べ物はとても美味しい。 セリーヌ 私たちはまだ若いから、いろいろ物事を理解するための時間がたくさんある。 ラファエル それに音楽シーンがとても新しい。そのおかげで、僕らは新しいことに挑戦する余裕がある。同じ地方のバンドと一緒にやったり、新しいサウンドを取り入れたりね。 ジャレッド とはいえ、シンガポールの音楽シーンは発展途上でとても小さいし、バンドの数もそんなに多くないからね。ある意味で僕らにとっては好都合なのかもしれない。 ラファエル 小さいし窮屈だよね。 セリーヌ シンガポールで名前を広めるのはそこまで難しくはないわ。 ――Sobsはシンガポールを超えて世界中で注目を集めていますよね。どうやって現在のポジションに辿り着いたのでしょう? ジャレッド とにかくインターネットのおかげだと思う。 セリーヌ メディアの記事と、Spotifyのプレイリストに感謝ね。私たちの名前を広める手助けをしてくれた。 ラファエル 様々な国の人たちが、僕ら音楽を聴いててくれるから本当に驚いてるよ。 ――正直、日本にいると他のシンガポールのバンドについては見かけない気がします。Sobsと何が違うのでしょうか。 セリーヌ 私たちがとっつきやすい音楽をやっているからだと思う。シンガポールや私たちの文化を知らなくても、誰でも受け入れられて共感できる音楽にしたの。 ラファエル 僕たちは自分のことを「シンガポール人バンド」とは考えてないからね。ただのバンドだよ。音楽を作るときに国籍は関係ない。海外で聞かれることを狙ってなにか特別なことをしたわけでもない。ただ「聞きやすい音楽」ってのはいつも大事だと思ってる。まあ、強いて言うなら世界中の人とちゃんと対話するように心がけているかな。メールは必ず返すようにしてるし、世界中に新しい友たちを作ろうとしてるよ。 セリーヌ それと実際、他にもシンガポールを飛び出すバンドが現れ始めてるし、(海外進出を)目標にするバンドも増えてきてるの。 ラファエル 例えば、Forests(フォレスツ)がそうだよね。彼らも以前日本にも来てたし、シンガポールの外でファンを増やし始めている。そんなふうにインターネットも活用しながら、幅広いジャンルを網羅したり新しいことにチャレンジするニュー・ウェーヴが少しずつ出てきているんだ。 ――シンガポールに住んでいる人は、みんなストリーミングを使ってますか? セリーヌ Spotifyを使っている人が多いわね。 ――日本ではどっちも人気ですね。シンガポールの人はみんなSpotifyを入れてるんですか? ラファエル 月額料金を払える人は、ほぼみんな使ってるね。 セリーヌ CDは誰も買わなくなっちゃった。 ラファエル 最近はYouTubeが、音楽に触れる一番主流のツールになっているね。僕らの音楽を見つけてもらう手段として、YouTubeはものすごく重要なんだ。いろいろなYouTubeのキューレーターがいるけど、彼らは現代の新しいレーベルと呼んでもいいと思う。音楽を紹介して、人々が音楽を探す手助けをしてるんだから。 ――シンガポールではどんな音楽が流行ってるんですか? ジャレッド インディー・シーンの話? それとも全国での流行? ー両方でお願いします。 セリーヌ 普通の人たちはTOP40のチャートやトラップ、ヒップホップを聴いてるね。 ジャレッド ヒップホップは大人気。 ラファエル 若い音楽ファンはみんなヒップホップとR&Bに熱中してる。シンガポールのヒップホップは急成長してるよ。 セリーヌ インディー・シーンの人たちはマスロックをよく聴いてるね。 ラファエル ミッドウェスト・エモも。シンガポールも日本と似ていて、とても忙しい国だからね。だからみんなマスロックが好きなのかも。日本と同じでみんな仕事に行くのがストレスだから!

※ミッドウェスト・エモ 90年代にアメリカ中西部で発生した、インディー/ハードコア寄りのエモ。 マスロック〜ポストロックとは隣り合わせの関係にある。

Sobs

ー日本ではマスロックは、バンドマンや熱心な音楽ファンには浸透してますが、ライトな音楽ファンにはそうでもないかもしれないです。 セリーヌ シンガポールではイージー・リスナーもプログレとマスロックを聞くわ。 ラファエル と言っても、ライヴに足を運ぶようなインディー・キッズの話だけどね。マスロックのイベントはどこでもやってるよ。 セリーヌ あとハードコアも人気ね。ちゃんとシーンができてる。それ以外だと、Beach Fossils(ビーチ・フォッシルズ)やBoy Pablo(ボーイ・パブロ)とかが人気かなあ。 ――いま現在、アジアの音楽シーンについてはどんなふうに見てます? ラファエル アジアで活動できるのはとてもラッキーだと考えてる。いまのアジアはたくさんの良いものが生まれてるからね。大きい国だけじゃなくて、アジア内の小さな町でもそう。南アジアをたくさんツアーしてるけど、そこから出てくる音楽が僕らは大好きだ。フィリピンのThe Buildings(ザ・ビルディングス)っていうバンドや、インドネシアの〈Kolibri Rekords〉っていうインディポップを扱うレーベルみたいにね。 セリーヌ そうそう。今回のジャパン・ツアーだって、私たちが大好きなバンドたちと一緒にやらせてもらってるし。 ラファエル 17歳とベルリンの壁、For Tracy Hyde(フォー・トレイシー・ハイド)にLucie, Too(ルーシートゥー)とかね。中国でもワクワクする音楽がどんどん出てきてる。Chinese Football(チャイニーズ・フットボール)のメンバーは、たしか日本に住んでるんだよね。彼らもとても大好きだ。 ジャレッド 台湾の落日飛車(サンセット・ローラーコースター)とか。 セリーヌ 韓国のSay Sue Me(セイ・スー・ミー)もいいよね。 ラファエル いまはこれまでで一番、アジアの音楽が世界のシーンで活躍していると思う。たくさんの若い音楽ファンがどんどんオープンになってるし、欧米の音楽やTOP40チャート以外の音楽も聴くようになってる。僕らとか君みたいなアジア人もいい音楽が作れるんだ。これから5年、10年後にはもっとアジアのバンドが活躍してると思うし、それは可能なはずだよ。 ――逆に、アジアの音楽シーンに足りないものはなんでしょうか? ジャレッド アジア人の音楽は聴かれるようになった。Japanese Breakfast(ジャパニーズ・ブレックファスト)、Jay Som(ジェイ・ソム)、Mitski(ミツキ)とか。僕らは大好きなんだけど、彼女たちはまだ国際的なシーンでは「アジア人」として見られたり、「アジア人がアジアで作った音楽」って見られてたりしている。 ラファエル ただ別に、西洋のリーダーに認めてもらうために音楽を作る必要はないんだ。アジアにも良いリーダーがたくさんいる。西洋の国のために音楽を作る必要はなくて、アジアにいる自分たちのために音楽を作ればいい。 セリーヌ でも同時に、誰でも共感できて楽しめる音楽にしたい。 ラファエル だから、アジア独自のアイデンティティを見つけていきたいね。日本にはアイデンティティがちゃんとあると思う。日本の音楽はいつだって先進的だったしね。シンガポールや他のアジアの国は音楽のコミュニティがまだ若いから、これから自分たちのアイデンティティを探さないといけない。ただ西洋(のトレンド)に向かうんじゃなくて、国際的にアピールできる何かを見つけることが大事だと思ってる。Say Sue Meのように海外で大人気になるのも大事だけど、それだけが成功の物差しになってはいけない。 ――Sobsもアメリカで人気ですが、それについてはどう思いますか? セリーヌ 嬉しいし、素晴らしいことね! ラファエル アメリカにファンがいるのはとてもクールだと思ってる。メールが来たりもするしね。2週間ごとくらいに物販を買いたいって連絡がくるから、配送料の10ドルを(自腹で)払って送ってあげてるよ。世界の反対側にいる人が僕らのグッズを着てるなんて、めちゃくちゃクールじゃないか! ジャレッド だから、いつかアメリカにツアーしに行きたいけど……なかなか難しいんだ。 ――アジア以外でツアーしたことは? ジャレッド 東南アジア以外でやるのは今回の日本が初めてだ。 セリーヌ 実は、ジャレッドがもうすぐ徴兵に行っちゃうの。 ラファエル シンガポールは2年間の徴兵制度があって、僕はこのまえ終えたんだけどジャレッドは今年からなんだ。だから日本のツアーをやっておきたくて、急いで実現させたんだよ。これからはツアーするのが難しくなってくるからね。 ――この先2年間、ツアーはしないんですか? ジャレッド 一切できないわけじゃないなんだけど、遠くへ行くのは難しくなるね。

Sobs

――国境を越えていろんな人たちがいろんな音楽を聴くようになった今、自分たちが世界に向けて発信したいことはありますか? セリーヌ アジア人が作る音楽は、西洋の音楽に負けないぐらいいいぞって伝えたいわ。 ジャレッド 西洋の音楽に対してなにか恨みがあるわけじゃないよ! 向こうの音楽を聞いて育ったし。 セリーヌ もちろんそうよ。ただ言いたいのは、西洋のメディアに取り上げられることだけが成功の物差しじゃないってこと。 ラファエル だからこそ、このジャパンツアーは僕らにとって非常に大事なんだ。仲間と繋がれるし、一緒にワクワクするような活動ができる新たな友たちも作れる。彼らがシンガポールに来たいなら同じように歓迎するよ。 ――音楽を広めやすくなった今、YouTubeやSpotifyを使って試してみたいことは? ラファエル ボーイ・パブロはYouTubeの使い方の秘訣を見つけた一人だね。彼やPeach Pit(ピーチ・ピット)は、口を揃えてYouTubeの重要性を教えてくれる。「The Lazylazyme」っていうYouTubeチャンネルが、ピーチ・ピットのアルバムをアップロードしたらものすごい広まって。2000万再生ぐらいだよ! ピーチ・ピットのメンバーたちはそのチャンネルの人に「車でも買ってあげたい」と言ってたね。 セリーヌ 私たちはまだYoutubeの活用方法を模索中よ。一歩踏み出すごとに何が起こるか予測できないから。 ラファエル みんなまだ模索だ。だから色々学べる。特に僕は、レーベルの仕事でPRとかもやるし学ぶことだらけだ。

Sobs - Astronomy (Official Video)

ジャレッド 僕らの”Astronomy”のミュージックビデオは、セリーヌが数週間前に日本で撮影した映像なんだけど、あれは「777tv』っていうYouTubeチャンネルから配信したんだ。ボーイ・パブロのレーベルだよ。こんなふうに、どうやってリスナーが音楽を探しているのか理解しようとしてる最中だ。 ――今後アジアの音楽シーンがどんな風になったらいいと思いますか? セリーヌ シンプルね。いい音楽がもっと出てきてほしいわ。あと、シンガポールにもっとライブハウスがほしい。 ジャレッド 本当にそのとおり! セリーヌ すぐに潰れちゃうの。警察が来て潰しちゃうのよ。 ラファエル あとは、アジアを横断するコラボがもっと増えてほしい。多くのアジアのバンドは自分の国に留まっちゃうからね。たくさんの良いことや良いチャンスが外に転がってるよ。 ジャレッド 自分の国で音楽を作ってそれで終わりって考えてる人が多いからね。いい音楽を使ってできることはたくさんある。 ――最後に、Sobsがこれから2019年にやりたいことは? ジャレッド できれば今年中にEPをだしたいね。あとはツアーをもっとしたい。 ラファエル もしかしたら日本にまた来るかもね。とても忙しい年になりそうだ。物事が物凄いスピードで進んでいく。活動開始してからまだ2年経ってないなんて信じられないや。

Interview by Kazma Kobayashi photo by Kodai Kobayashi

Sobs

2017年にEP『Catflap」でデビュー。ヴォーカルのセリーヌ・オータムの魅力的な歌声と抜群のメロディーで東南アジアのみならずアメリカでも高く評価され、Bandcampの「注目のニュー・リリース」にピックアップされた。 2018年、デビュー・フル・アルバム『Telltale Signs』をリリース。

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Telltale Signs

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LIIP-1532 / ¥2,200 + 税 発売中 レーベル : Lirico / Inpartmaint

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#5 アーティスト・TaeyoungBoy|25’s view

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「大人でもなく子供でもない。じゃあ私たちは何者なんだろう。」

人生の分岐点といわれる25歳 その節目に何を感じているのだろうか?

写真家・Ryoskrr(リョウスケ)が 25人の25歳に「いまの答え」をインタビューし 写真に記録する連載シリーズ。

第五回目となる今回登場するのは、アーティストのTaeyoung Boy(テヤンボーイ)

25's view Taeyoung Boy / アーティスト

Taeyoungboy

――自己紹介をお願いします。

TaeyoungBoy 25歳。アーティストです。

Taeyoungboy

――テヤン、25歳の今どんなことを感じてる?

うーん。 自分で自分のことがちゃんと分かるようになってきましたかね。 それは、もちろん音楽もだし、自分の性格や恋愛についても。 やっぱ、大人になった感じはありますね。 でも、自分の中では音楽の比重が一番大きくて、 その音楽に関して言うと、 やっとこのタイミングで「自分の音楽」が始まった感じがしてる。 『GIRL』をリリースしてから、今回のアルバムを出す流れの中で、 それをはっきりと感じていて。 というのも、気持ちとしては、 自分は日本の音楽シーンを背負うアーティストだと思っているので。 それは、リリック・ビートアプローチ・フロウどの視点から見てもそう。 アルバムを聴いてくれた人なら分かると思うんですけど。 そういう意味では、自分の音楽が"始まった”より、 "始まっちゃった"っていう気持ちです。 ついにこの時が来ちゃったんだな、もうやるしかないんだなって。

Taeyoungboy
Taeyoungboy

――テヤンががいま持っている、生きていく上での覚悟を教えて。

自分が今のシーンを変えていかなくてはならない。 ってことには責任感、覚悟を持ってますね。 もちろん、USの音楽を取り入れてるアーティストはたくさんいるけれど、 それって結局は後発なもので、僕からすると 「いつまでそれをやってんだろう?」って気持ちです。 そして、この問題について、口であれこれ言う人はたくさんいても、 具体的に言葉に落とし込んで、 形にした人ってどれくらいいるんだろう?って考えると 「いるのかな?いないんじゃない?」ってのが素直な気持ちで。 俺は、自分の持っているものを音に全部詰め込んで、 形にして、それを変えていきたい。 そうすれば、これまでナシだったものがアリになる気がするんです。 俺がこのシーンを変えて、ナシもアリにします。 そうだなあ、そんでその時には映画とかも出たいっすね。 なんか主人公の高校生のお兄ちゃんの役とかで(笑)。

Taeyoungboy

――テヤンの座右の銘は?

「何をやるかじゃなくて誰がやるか。」 これは本当この言葉の意味そのままです。 結局は、その人自身のポテンシャルによって その行動の説得力が全然変わってくるんですよ。 それが、さっき話したナシをアリにするってことにつながるんです。 つまり、どんなことだって俺がやればアリになっちゃうってこと。 結局はそういう話だし、 まさに今も俺はそうやって生きてると思ってます。

――最後に、5年後の自分へ一言お願い。

今この瞬間に5年後の自分を目の前にしたとしたら、 当たり前に、その自分が成功して大きくなってるのを確信してるから、 「ほらな。俺が言った通り、自分のこと信じてやってきてよかっただろ。」 って言ってやりますね。

TaeyoungBoy 1st Album『HOWL OF YOUNGTIMZ』

TAEYOUNG BOY

1. YOUNG Prod.haqu 2. FALL feat.Tohji,Pablo Blasta Prod.Tepppei 3. TEACH Prod.Droittte 4. HOWL Prod.Droittte 5. TREASON feat.ACE COOL,Gucci Prince Prod.Toyoda Kazuya 6. DOGS feat.WILYWNKA Prod.Chaki Zulu 7. TURN Prod.starRo 8. WAVES Prod.Drivxs 9. BREATH feat.Shurkn Pap Prod.KM 10. WHITE feat.Friday Night Plans Prod.Drivxs

Taeyoungboy(テヤンボーイ)

1994年生まれ 東京都出身。 2015年、遊びで制作をしたラップの音源をSoundCloudにアップしたところ、予想以上の反響を受けた事から活動をスタートする。 2016年から本格的にラッパー活動を開始し、同年5月、kk、RICK NOVA と共にラップクルー MSN(メセン) を結成する。7月には自身初となる6曲入りの mixtape「good young」をSoundCloudにて公開。hiphop の枠を越えたlyricとラッパーならぬメロディーセンスでネット上でのファンを一気に獲得する。10月、MSNのコンピレーション mixtape「MESENSE」を soundcloud にて公開し、都内各所でリリースライブを行う。12月、MSN の MV「Squeeze」を YouTube に公開すると瞬く間に拡散され MSN の名が一気に知れ渡り、2017 年 1 月には 沖縄ライブを敢行し、500 人を超える来場の中、圧倒的なパフォーマンスで会場をロックした。同会場では沖縄限定で発売をした MESENSE のアップデート版「MESENSE1.5」を即完させる。 同年 2 月には出演ライブ会場限定の盤でもある「TOKYO MESENSE」を発売し、高評価を得る。 2018年人気 Youtube チャンネル「ニート TOKYO」で取り上げられる。また、4月25日(水)リリースのアルバム「SWEAR」より、4月12日にリードシングル「Fault」、4月17日に韓国のフィメールラッパー LYPLA を迎えた楽曲「Think BuQ feat. LYPLA」をリリースするなど、国内外を問わないクリエイティブフィールドで勢力的に活動している。8月1日にEP「GIRL」をリリース、9月19日には話題のシンガーFriday Night Plansを客演に迎えた「Ain’t nothing feat. Friday Night Plans」をリリースした。

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Ryoskrr(リョウスケ)

1992年生まれ。 ストリートカルチャーへのアプローチと新たな表現を求めて、NYやLA、イタリアでのスナップからフォトグラファーとしてのキャリアを開始。その他、アーティトや俳優のポートレート、ファッションフォトなど幅広い分野で活動中。渋谷西武×HIDDEN CHAMPION主催の"POP&STREET展 -AN ANNUAL- 2018"に選出されるなど、写真作家としての活動も行なっている。

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Get To Know Vol.1 FLAKE RECORDS

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DAWA FLAKE RECORDS

不定期にいま気になるレコードショップへお邪魔し、店主へ直接はなしを聞きにいく新企画「Get To Know」がスタート。第一回目は大阪のFLAKE RECORDSへ。 「FLAKEのDAWAさん」と言えば、人によっては膨大なツイートやミュージシャンとの交流(もしくは親交)など、いわずとしれたキーマン的存在だろう。LOSTAGEやPredawn、CHAIやドミコ、TENDOUJIのFLAKE独自盤、海外からはPETAL、AIMING FOR ENRIKE、SONDRE LERCHE、SUPERCRUSHなどの日本盤のリリースや来日ライブの招聘も行う。 そんな多忙なDAWAさんこと和田貴博の本拠地(!?)FLAKE RECORDS。海外のサイトBuzzfeedの「アナタが死ぬ前までに訪れるべき魅力的な世界のレコード店 27選」にもピックアップされた、大阪・堀江から今日も音楽を発信するこの店の特徴をDAWA本人の発言から探ってみた。

Interview:DAWA (FLAKE RECORDS)

DAWA FLAKE RECORDS

ーーまずFLAKE RECORDSを始めたきっかけを教えて頂いてもいいですか? もともとバンドをやっていて、その流れでCDショップでバイトを始めるんです。僕、結構早めにインターネットにハマって、自分のホームページ作って勝手に行ったライブやCDのレビューを書いたりしていたんですよ。あとは日本のメロコア、エアジャムの周りの人たちのバンドのHPに行ってチャットしてたら、同じような趣味の仲間が増えて行って、その中に他のレコード屋の店長がいたんです。そしたらそのレコード屋が事業を拡大するからこっちに来ないかーーまぁヘットハンティングでそのレコード屋に入るんですよ。そこで今やってることとほぼ同じ様なことーーバイヤーとして海外のレコードを仕入れる、レーベルを立ち上げて日本盤のCDを出す、イベントを企画する、とか。でも、そのレコード屋は潰れて。 その前のレコード屋でCDリリースを手伝ってた友達のバンドがいたんですね。そいつが、このまま辞めるのもったいないしせっかく人脈も出来たしノウハウもあるし、手伝うから一緒にやろうよみたいな感じで、準備を始めるんです。その準備期間は2年くらい、色んな所からお金を借りてきて。 ーーそういう経緯だったんですね。ところで今の主力ジャンルはどんな感じですか? コレクター気質というか、手にしておきたい傾向があるので、結局アメリカのインディーロックが安定してずっと売れてるんですよ。世間とは全然違う。いわゆる<FUJI ROCK FESTIVAL>や<SUMMER SONIC>のヘッドライナーとります、みたいなネームバリューのある人は逆にうちでは売れないですね、今の時代はどこでも買えるようになったから。 ーーニッチな、本当にコアな人が多いんですね ですね。今売れてるのはUSインディーロック。一時期はUKはギターロック新人がアークティック(・モンキーズ)以降ぶわーって出てきてて、皆7インチを出してたんですけど、今はそのカルチャーがなくなって、7インチが出ないんです、イギリスでは。 ーーFLAKE RECORDSの特色、他とは違う強みみたいなところってありますか? 強みは結局、僕個人のパワーがあるというか、僕の店みたいな部分が強いんで、その動きをちゃんと反映できればなというのと、同時にできてるからかなっていうのはあったりします。週5〜6回はライブを観に行ってるし、皆と飲みにも行くし。そこそこキャリアもあって長年やってきてるんで、ベテランの憧れられてるようなバンドの人たちとも友達だし、出てきたばっかの19や20歳くらいの子も頼ってくれるしみたいなのが、いいように見えてるような気はします。他のレコード屋の人は「誰がやってるか分からない」こともあると思うので。僕はもうFLAKE RECORDSとイコールになってるんで。フットワークもそうですし、それが反映できてるからちょっとなんとかなってんのか、とか。

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ーーバンドとちゃんとコミュニケーションを取るというか、信頼関係を築いてくっていう? でも、僕面倒くさがりやし、愛想も良くないから初対面は苦手やし。だから仲良くなる人も限られてて、仲良くなったからってその隣の人とは仲良くなれないことが多いというか、友達の友達は知らない人なんで。アーティストも、面倒臭いアーティストの方が仲良くなってるような気がします。あんまり心開かない子達、みたいな。 ーーレーベル設立のきっかけはどういった流れで? 元々レコード屋のバイヤーなので、「いいな」と思ったのを10枚仕入れて10枚売ろうっていうのの延長で、いいなと思って、じゃ日本呼びたいなとか、もっと売りたいなの延長でCDを出してるだけなので。それもしてとの交渉が纏まればですけどね。 ーーいいな、って思うポイントってどういうところですか。 そこは感覚なんですよね、僕。凄いブレるんで、時期によっても時代によっても違うから。でも別にそれがいいなと思ってて。頑固になりたくないというか。でも逆にそれが頑固に感じられるかもしれないですけど。ブレちゃいます、むっちゃくちゃ。今「いい」と思うのが「いいな」と思うんで。 ーーそれがお店の色になってるっていう事なんですね。 なってればいいですけどね。でも本当にうちのように新譜を売ってる個人店がないので。もっとニッチにーー例えばエモとかパンク寄りのお店とかはあるけど、ちょっとオーバグランドの日本のバンドも置いてたりするっていう店があんまりなくて。

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ーーFLAKEに行けば自分の好きなものが見つかりそうな感じがすごいありますよね。 どうなんでしょう(笑)。偏ってるんで。例えば日本のインディーバンド扱ってますっていっても、何となく色があって。今だと「あのへんが仲良いからあのへんが多い」とかになってきますよね。TENDOUJIとか。300人動員でなんとか頑張ってる人たち、みたいな。もうホールとかZeppとかには行ってない人たちが一番「売りやすい」、っていうと語弊があるかもしれないですけど、売れるところです。 ーーところでストリーミングにはないアナログの魅力ってどんなところだと思いますか? アナログ、っていうかフィジカルは「買った時」が究極で、その後聴くかどうかは付属の話のような気がしてて、「持っている」ということに満足感がある。「レコードは音がいい」ってそういう話があるじゃないですか、でもあれはもうハード次第というか。良い音響、良い機械、良いスピーカー、良いレコード針で聴かないと音の良さなんて分からなくて。簡易の一万円くらいのやつで聴いて音が良い訳がないんですよ。だから音の良さでレコードがいいというのは全く思ってなくて、音の悪いレコードもむっちゃあるし。とりあえずもう「買った」時にすごい満足をするというか。それがレコードの魅力と言えば魅力ですよね。でもそれはCDもカセットも一緒だと思うんですけど、それを上回るのは「ジャケットが大きい」っていうところ。 ーープレゼントとかにもいいですよね。 いいと思う、ポストカードとかと同じ様な感覚で、しかも音も聴ける訳だし。レコードのジャケットはボロボロになってもいい気がしてて。CDとかケースがボロボロだと嫌になるけど、レコードのジャケットがちょっと破れてたりっていうのも何かすごい良くて。それを誰かにあげるっていうのもすごい好きなことで。今の若い子が昔お父さんの聴いてたビートルズを聴いてる、あぁいいなぁと思う。それはデータじゃできないし。死んだ親父からMP3が何年後かに送られてきたとか、そんなん面白くないから。そういう意味ではレコードって「物」として丁度いい存在感で、CDとかカセットよりはやっぱりいいのかなぁと思ったりはします。 ーー逆にSpotifyなどのサブスクリプション・サービスは知らないことまで掘り下げれるっていう感じがしますね バイヤーとして仕入れるのにサンプル聴くのにも使えるし。仕入れってメールで文字情報だけが来るわけですよ。で、ちょっとだけ売り文句があって。で「これどんなんやろ」って思ってSpotify検索すると大概あるんですよ、先行曲とか。それ聴いて「何枚仕入れよかな」とかにも使えるし。今はうまく回ってますね、そこは。図書館みたいなものじゃないですか。自分の聴いてた古い曲もすぐ探して聴けるし。一般的には新しい音楽の方が強くて一杯あるし。僕、全部自分でコメントを書いてるので仕事にはすごい役に立ってる。 ーー「図書館」って例えはしっくりきました。すごく分かります。 僕らレンタルレコード屋とかレンタルCD屋とかもう行きまくってたんで、サブスクはレコード屋がここ(手の中)にあるようなもんなんで、すごい便利。 ーー最後の質問なんですが、和田さんにとって音楽ってどんな存在ですか? どんな……どうなんでしょう。一番の趣味というか、趣味を超えてるんで、多分ずっと、死ぬまでずっと一緒にあるものだと思う。自分が動かされているものの全ては「音楽」のような気がするので。何をするにあたっても。でも結婚して子供出来たら全部捨てるんじゃないかなとか思ったりもしてる。今すごい自由なのでこのままできてるけど、例えば子供出来たりしたら、そうならないと分からないなとは思ってて。全部を捨ててどこかに行きたいって衝動はずっとあるんですよ、駆け落ちしたいなとか(笑)。それくらいの事が起きて欲しいなっていう願望があって。だから、わかんないですけどね。でもとりあえず今は一番好きなものですね。

DAWA FLAKE RECORDS

飄々とした表情を浮かべながら本気なのかどうか、妄想?逃避願望?もちらっとこぼしたDAWAさん。SNSでよく見かけるDAWAさんはどこか架空の世界に存在するキャラクターのようだが、FLAKE RECORDSの扉を開けばそこにいる。 今回インタビューしてわかったのは、DAWAさんの人間味こそがFLAKE RECORDSの最大の魅力だということだ。彼のヒューマンパワーとセンスでセレクトされたここでしか出会えないレコードやCDが必ずあるはず。ぜひFLAKE RECORDSに足を踏み入れてみては?

Text by mao oya Photo by Kazma Kobayashi

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〒550-0015 大阪市西区南堀江1-11-9 SONO四ツ橋ビル201 http://www.flakerecords.com/

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AIMING FOR ENRIKE JAPAN TOUR 2019 -TONE FLAKES Vol.134-

MAY 12(SUN)TOKYO@AFTER HOURS TOKYO ’19 SOLD OUT MAY 13(MON)TOKYO@NINE SPICES Open 18:30 / Start 19:00 Adv ¥4,400(+1D) / Door ¥4,900(+1D) w / Yasei Collective、NENGU(O.A) ←NEW! MAY 14(TUE)TOKYO@FEVER Open 18:30 / Start 19:00 Adv ¥4,400(+1D) / Door ¥4,900(+1D) w / downy MAY 15(WED)OSAKA@UMEDA CLUB QUATTRO Open 18:30 / Start 19:00 Adv ¥4,400(+1D) / Door ¥4,900(+1D) w / Rega、WOMAN MAY 16(THU)HIROSHIMA@HIROHSHIMA CLUB QUATTRO Open 18:00 / Start 19:00 Adv ¥3,900(+1D) / Door ¥4,400(+1D) w / 世武裕子、tatalaYAVZ(O.A) MAY 17(FRI)KYOTO@GATTACA Open 18:30 / Start 19:00 Adv ¥4,400(+1D) / Door ¥4,900(+1D) w / MASS OF THE FERMENTING DREGS、tatalaYAVZ(O.A) MAY 18(SAT)SHIZUOKA@FM STAGE Open 17:00 / Start 18:00 Adv ¥3,000(+1D) / Door ¥3,500(+1D) w / MASS OF THE FERMENTING DREGS, FIXED, and more, qujaku MAY 19(SUN)KANAZAWA@GOLD CREEK Open 16:30 / Start 17:00 Adv ¥3,300(+1D) / Door ¥3,800(+1D) w / MASS OF THE FERMENTING DREGS, noid, CHIIO MAY 20(MON)TOKYO@FEVER Open 18:30 / Start 19:00 Adv ¥4,400(+1D) / Door ¥4,900(+1D) w / RiL (O.A)

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MOURN インタビュー|進化し続けるバルセロナの若き才能、感性と葛藤を紐解く

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MOURN

2015年に10代でデビューし、瑞々しいバンド・アンサンブルとエクスペリメンタルなギター・サウンドでシーンを賑わせているスペインはバルセロナ出身の男女4人組、Mourn(モーン)が待望の初来日を果たした。昨年6月にリリースしたサード・アルバム『Sorpresa Familia』は、これまで同様Sonic youth(ソニック・ユース)やHüsker Dü(ハスカー・ドゥ)辺を彷彿とさせる、ヒリヒリとしたサウンドスケープを引き継ぎつつも、より立体的で躍動感あふれるグルーヴを内包。デビューから5年経ち、精神面でも演奏面でも大きく飛躍を遂げた4人の姿がそこにはあった。 MOURN // Barcelona City Tour

「日本では、郊外の特別な場所でライブを行いたい」という本人たちのたっての希望により、神奈川県・江ノ島オッパーラにて羊文学とのツーマン・フロアライブを敢行するなど、滞在時間を大いに満喫した彼ら。本インタビューは、東京・新代田FEVERでのツアー・ファイナル直前に行われたものである。新作のこと、カタルーニャ自治州で起きた抗議デモのこと、フェミニズムのことなど、多岐にわたるトピックについて真摯に話してくれた。

Interview:MOURN

MOURN

──私たちQeticは、モーンをデビュー当時からずっと記事にしていたんですよ。なので、今日は実際にお会いできるのを楽しみにしていました。過去記事一覧全員 ありがとう。 ──まずは、昨年リリースされたサード・アルバム『Sorpresa Familia』についてですが、過去の2作との違いはどの辺りですか? Jazz Rodríguez Bueno(以下、ジャズ) もっとも大きな違いは、前の2枚を作っているときの私たちはまだアマチュア同然だったということかな。あれから5年くらい経って、ライブもたくさんやったし演奏も上達して、様々なことを学んでから臨んだのが、今作『Sorpresa Familia』だったと思う。それと本作を作る前に、もともと契約していたスペインのレーベルと揉めてしまって法廷にも立ったの。その間、私たちの周りで何が起きていたかを公の場では言えなかったから、それがものすごくストレスで。フラストレーションを全て歌詞にぶつけていたところも、これまでのアルバムとは大きく違ったかな。

MOURN // Fun At The Geysers(Official Video)

──なるほど。曲作りはいつもどんな風に行なっているのですか? ジャズ それも今作でだいぶ進化した。まずは私とカーラの2人で、とにかく無心で音を出してそれを楽しんでみるのね。そこである程度アイデアが固まってきたら、もう少しプロフェッショナルに取り組んでいく。特に歌詞を付けていく作業は慎重にね。そこで曲はグッとまとまるし、歌詞がつくことでよりパーソナルなものになると思う。私とカーラ、それぞれのパーソナリティが曲ごとに反映されていると思うわ。 Carla Pérez Vas(以下、カーラ) 今回はそういう曲作りのために、家から少し離れたスタジオを借りて行ったことも大きかった。そのおかげで作業に集中できたと思う。アルバムの50パーセントくらいはそこで作り込んだのかな。 ジャズ そうだね。Pro Toolsを持ち込んで、携帯もオフってひたすら作業してた。とにかく最初のデモ作りがすごく重要だったと思う。「この曲には何が必要で、何が必要でないか?」を見極めるまで、何度もアイデアを練ってからアントニオと妹のレイアに加わってもらったから、その先の作業もすごくスムーズだったと思う。もちろん、2人のアイデアにも触発されて、どんどん曲のスケールが広がっていったしね。 Antonio Postius Echeverría(以下、アントニオ) 曲作りって「ドミノ崩し」にも似ている気がするんだ。デモの段階でしっかり作り込まれていれば、それを聴いて僕らもイメージがしやすいし、アイデアもどんどん湧いてくる。今回はデモのクリティがすごく良かったので、それに触発されながら自分なりのスタイルのドラムを入れていくことが出来たと思うよ。

MOURN

──これまでのインタビューであなたたちは、PJハーヴェイやスリーター・キニー、パティ・スミス、キム・ゴードンをフェイヴァリットに挙げていました。今回は、メンバーそれぞれの音楽的ルーツを教えてもらえますか? カーラ やっぱりパティ・スミスかな。彼女の自伝を読んで感銘を受けたのが聴き始めたきっかけなのだけど、音楽だけじゃなく生き方や考え方も、全てひっくるめてリスペクトしている存在よ。 ジャズ 私はスローイング・ミュージズのクリスティン・ハーシュが大好き。私も彼女の『Rat Girl』っていう自叙伝を読んで、自分のパーソナリティとすごく似通ったものを感じた。それでスローイング・ミュージズを聴いてみたら、「これこそ私が聴きたかった音楽!」って思ったの。 アントニオ 僕はドラマーだからなのか、誰か特定のバンドとか音楽に影響を受けるというよりも、いろんなプレイを聴いて、それを参考にしながら自分のスタイルを確立していったという感じかな。最初はポップパンクを聴いていたのだけど、80年代のメタルミュージックに衝撃を受けた。そして、もちろんオルタナティヴ・ロック。とにかく色んな音楽を聴いて、自分の肥やしにしているよ。 Lore Nekane Billelabeitia(以下、ローレ) 私はモーンだけじゃなくて、他にもいくつかのバンドを掛け持ちしいてるの。ベラコというバンドで、2017年に来日したこともある。だから、私もアントニオと同じく誰か特定のミュージシャンに影響を受けた、っていう感じじゃないかも。ただ、強いて挙げるとしたら、やっぱりキム・ゴードンかな。彼女の自伝『GIRL IN A BAND』を読んで感動したし、ベーシストとしてだけでなく1人の女性として、アーティストとして憧れている。

MOURN

──10代でデビューしたモーンも、いまや全員20代に突入しましたよね。歌いたいこと、世の中の関心事なども変わってきましたか? カーラ 根っこの部分は変わってないけど、経験値が上がって成長したことは音楽にも表れていると思う。自分たちのことをもっと表現できるようにもなったかな。何か起きた時に、どう解決すべきか、自分に自信が持てない部分と、どう向き合い接していくか、バンドをどうやって続けていくべきか、そういう葛藤みたいなものが、そのまま音楽に表れていると思う。 ジャズ 曲作りのプロセスも変わったわ。ファースト・アルバムの頃はまだ自分自身が経験不足だったから、自分のことと言うよりも人から聞いた話や、創作したストーリーで歌詞を書いていたし、演奏はどうあれ「ファースト・テイク」の瑞々しさみたいなものを大切にしたの。セカンドアルバム『Ha, Ha, He.』の頃は、アイデアを「オーガナイズ」する術を覚えたから、いつもノートブックを持ち歩いて、思いついたアイデアを書き溜めるようにしていた。例えば、愛する人のことや、自分を傷つけた人のことについて……。よりパーソナルな要素が増えたと思う。 おかげで自分自身と向き合うようにもなれたのは良かった。ティーンエイジャーの頃は、自分が何にイラついているのすら分からず混乱していたけど、ノートブックに書き連ねることで、自分の感情を客観的に眺められるようになったわ。

MOURN - Irrational Friend(Official Video)9>

──モーンは「パンクバンド」だと僕は認識しているんですけど、社会情勢にはどのくらい関心があります? ジャズ 今話したように、私は自分の人生に起きた出来事について歌詞にしているから、社会情勢や政治にも大きな影響を受けている。ちょうど一昨日、3月8日は「国際女性デー」だったでしょう? スペインでも大規模なフェミニズムのデモがあったし、そのことへのシンパシーはもちろん感じてる。不当に虐げられている女性や、セクシャル・マイノリティーを自分たちなりの方法でサポートしたいって思っているわ。 でも同時に、あまりにもフェミニズムに寄りすぎないようには気をつけてはいるの。中にはエクストリームな人もいるしね。そういう人たちも含め、全員が相手との違いを尊重できる世の中になるべきだとは思う。世の中にはびこる「不当なタブー」は出来る限り無くしていきたいし、それを音楽でも表現したいと思っているわ。 カーラ 残念なことに、一部のフェミニストの中にはトランスセクシャルの女性を排斥するような動きもあるじゃない? 「国際女性デー」では、そのことに対する抗議デモも起きていたけど、私もそれを全面的に支持する。全てのセクシャリティが平等である世の中になって欲しいから。 ──昨年起きた、バルセロナのデモ(昨年2月、カタルーニャ自治州の独立支持派元指導者の公判を受けて、州都バルセロナで起きた20万人規模の抗議デモ)についてはどう思っています? アントニオ 以降も各地で度々デモが起きているけど、今のスペインでは表現の自由がとても脅かされていると思うんだ。 ジャズ 去年の11月にも選挙があって、カタルーニャ自治州の独立問題も争点となった。街には武装した憲兵が溢れていて、独立容認派と反対派の激しい衝突もあり、投票所が3時間も閉鎖される事態まで起きていたのよ。私自身は投票へ行く気でいたのだけど、そうした騒動に巻き込まれるんじゃないかと母と姉がものすごく心配して……それで諦めざるを得なかった。とんでもない状況だったんだけど、あろうことかサンチェス首相は「今日は絶好の投票日和です。みなさん安心して一票を投じてください」なんて言ったのよ。

MOURN

──信じられないですね。 アントニオ セクシャリティの問題にしても、カタルーニャ州独立問題にしても、今はみんなが同じ意見じゃないといけないという「同調圧力」を、とても強く感じる。だからこそ「自分がなりたいものになる」「言いたいことを言う」「やりたいことをやる」という姿勢がとても大切だし、そのためのメッセージを発するべきだと思ってるんだ。 ──さっき、キム・ゴードンやパティ・スミス、クリスティン・ハーシュからの影響も話してくれましたけど、彼女たちのような「自立した女性」になるためには、あるいはそうした女性がもっと増えるためには、社会はどうなっていくべきだと思います? カーラ そのためには、女性じゃなくて男性が変わらなきゃダメだと思う。最近はよく「女性がもっと活躍すべき」「女性がもっと自立すべき」みたいなことはが言われているけど、「なんで私たちが変わらなきゃいけないのよ?」って思う(笑)。だって、例えば今の音楽業界なんて完全な男性社会で、変えるべきはそんな社会の方なのに、私たち女性が「男性社会」に合わせて変えなきゃいけないなんておかしいじゃない?

MOURN

──全くその通りですね。 ジャズ 社会の中で「これは男性の役割」「これは女性の役割」みたいなものを、もっと無くしていくべきだと思う。私は「女」である前に「人間」だし、それは男性であっても同じじゃないかな。 1人の人間として、社会で居場所を見つけていけば、自ずと「女性の自立」なんて考えなくてもいい社会になっていくと思うのだけど。 アントニオ 男の立場からすると、確かに変化を強いられることってすごく怖いことだとは思う。今の「男性社会」を変えていくのは、男にとってとても勇気が要ることなのは分かるんだ。ただ、今はその「変化」が求められている時なんだろうね。 ローレ 実際に社会を変えるためには、私はまず「教育」を見直すべきだと思う。家庭の中でもそうだし、学校の中でもそう。まだ感受性が柔軟な子供のうちに、しっかりとした教育を受けることは、とても大切なことだと思うわ。 ──教育の大切さについての意見も同感です。最近は、IDLES(アイドルズ)やSHAME(シェイム)のような、オーセンティックなパンクバンドがシーンを賑わせていますよね。そのことについてはどう思います? ジャズ アイドルズの新しいアルバム(『Joy as an Act of Resistance.』)は大好きよ! 聴くたび興奮する。 カーラ 最近、自分たちが好きなテイストを持つバンドってすごく減ってきている気がしてたし、一時シーンがトラップ一色になってしまった時は、すごく疎外感があった。なので彼らのようなギターバンド、リアルなパンクスが再び登場したことはとても需要なことだし個人的にも嬉しいことだわ。

IDLES - DANNY NEDELKO

──ところで、レイア以外の皆さんは日本に初めて来たんですよね。楽しんでますか? ジャズ もちろん。昨日は江ノ島のあたりを散歩したの。それで「生しらす丼」を食べた。 アントニオ マジで「しらす」は最高の味だったな。 ジャズ 大阪ではタコ焼きも食べたしね。 カーラ 私、スペイン料理がダメでタコも食べられなかったんだけど、タコ焼きは全然オッケーだった。自分でもびっくりしたわ(笑)。 アントニオ 景色のギャップにも驚いたよ。大阪はとても大きな街で楽しかったし、江ノ島の街はコンパクトでビーチも近くにあって。 ジャズ 今夜は東京を散策する予定なので、今からとっても楽しみ!

MOURN

Text by Takanori Kuroda Photo by Kodai Kobayashi

『Sorpresa Familia』

Tracklist

1.Barcelona City Tour 2.Skeleton 3.Strange Ones 4.Fun At The Geysers 5.Candleman 6.Thank You For Coming Over 7.Doing It Right 8.Orange 9.Bye, Imbecile 10.Divorce 11.Epilogue 12.Sun

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Gus Dapperton インタビュー| 今最もエッジーなシンガーソングライターの思考回路

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Gus Dapperton

2019年最注目のアクトであるガス・ダパートン(Gus Dapperton)が、4月19日(金)にデビューアルバム『Where Polly People Go To Read』を〈AWAL〉からリリースする。2016年に自身初の音源を発表して以来、Vogue誌、Nylon誌といったカルチャーメディアから高く評価され、Netflixで放送中の人気ドラマ『13の理由』のサウンドトラックにも起用されるなど、活躍の場をどんどん広げている。またベルリン発のオンラインメディアであるHIGHSNOBIETYでは、“2019年に注目すべき10人のアーティスト”に選ばれており、まさにこれからの音楽シーンを背負って立つシンガーソングライターとして有望視されている存在と言っても過言ではない。 Gus Dapperton - World Class Cinema

そんなカッティング・エッジな世界観を持つ彼には一体どんなルーツがあるのだろうか? メールインタビューでそれを紐解いていくとともに、本作『Where Polly People Go To Read』で気になる点についてもうかがってみた。

Interview:Gus Dapperton

――昨年はあなたにとってどんな年でしたか? たぶん僕の人生にとってかなり重大な一年だったと思う。ものすごくいろんなところに行ったし、新しいことも色々やって、知らない場所にもたくさん行って、新しいことが色々起こったから、自分の創作活動にとってもすごく刺激的な時間だったし、環境の変化もあって、僕はあらゆることから刺激を受けるから、去年は本当にそういう刺激的な年で、すごく影響が大きかったと思う。 ――たくさんの恋愛をしてきてると思いますが、その中で一番の楽しかった思い出と悲しかった思い出を教えていただきたいです。 何だろう……ええと、この前付き合ってた人との関係は、もう全体的にかなり健康に良くなかった。具体的っていうよりあらゆる点で全然ダメだった。何だろう、まるで永遠に続いてるような気がしたし、付き合ってる間本当にずっと良くなかった。で、一番楽しかった思い出は、ガールフレンドのジェスと初めて出会った日かな。その日のことをものすごく鮮明に覚えていて、彼女を初めて見た瞬間に、自分が求めてるのはこの人だったんだと思ったんだ。 ――今回のアルバムの中で一番お気に入りの歌詞は? ええと、どれだろう……ちょっと考えさせてもらいたいけど、“My Favorite Fish”っていうのがすごく好きなんだよね。《You are my favorite fish》ってところも歌っててすごく好きだよ。

Gus Dapperton - My Favorite Fish

というか正直言うと、自分の歌詞は全部好きなんだよね(笑)。ホント全部好きだよ、だって時間をかけて書いたものだし、どれも自分にとっては偽りのないもので、だから“Coax & Botany”の歌詞もすごく好きだし、あとは“Fill Me Up Anthem”の歌詞も気に入ってるし……やっぱりどれも好きだな。それで理由は、それぞれの曲を書いていた時間というのが、自分にとっては重要で、特別な思い出を蘇らせて、すごく意味深いものなんだ。やっぱりどの曲も、それぞれに思い出深いんだ。

Gus Dapperton - Fill Me Up Anthem(Official Video)

――新しいアルバムを3つの言葉で表現すると? 3つか……ええとじゃあまず「多様」。それは、曲ごとに全然違うっていう意味でね。それで次は「未加工」。というのもヴォーカルも楽器も全部、全然加工されてなくて、そのままの音だから。で、最後はたぶん、「ソフト」かな。すごくハードな曲でさえソフトというか。というわけで「ソフト」「未加工」「多様」の3つだね。 ――ちなみにソフトというのは意図的にそうしていますか? いや、それはないよ。ほぼすべての僕の曲は意図せずソフトだと思う。理由は自分でも分からないけどね。無意識にそうやって作ってるんだと思う。強烈に叩きつけるような時でもどっかソフトなんだ。  ――あなたについて聞きたいと思います。昔はどんな子供でしたか? 家にはどんなレコードがあった? いつも走り回ってて、いつも木に登ってて、いつも着替えてた。あといつもハロウィーンの格好をしてたね。それにいろんなところにすごい勢いでぶつかりまくってたから、いつも目の周りにアザがあった。家にはレコードじゃなくてCDがいっぱいあったけど、ええと50セントの『Get Rich or Die Tryin’』とか、あとビートルズは全部あって、『ホワイト・アルバム』も『マジカル・ミステリー・ツアー』も『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』も、あと何だろう、ジャスティン・ティンバーレイクの『ジャスティファイド』とか、ブリトニー・スピアーズの『ブラックアウト』みたいなタイトルのやつとか。あとはマイケル・ジャクソンの“Billy Jean”が入ってるやつとか。 ――いま一番お気に入りのアーティストや楽曲を教えてください。 特にないなあ……友達の音楽が好きなんだ。Orion Sun、Spencer、Elijah Bank$yといったアーティストだね。 ――あなたに影響を与えている映画は? 最近で言えば『シェイプ・オブ・ウォーター』はすごく好き。あと『グッド・タイム』もすごく良かった。

『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編

【映画 予告編】 グッド・タイム

——いま、最も興味を持っているモノ・コトは? 僕が興味を持っているのはやっぱり音楽。新しい音楽を作ることと、あと音楽を聴くことも止められない。あとは、自分が大事に思ってる人たちに興味を持ってるよ。 ——最近気になったニュースは? 何か、この3年の間くらいで3000人だか4000人だかの子供が移民収容所での性的暴行被害を訴えてるとか読んだんだ。それは本当にひどい話だと思った。 ——ファッションメディアにも注目をされていますが、洋服はどこで購入することが多いですか? 好きなブランドは? 決まってないよ。リサイクル・ショップで買ったり、もっと高級なところで買ったり、あと洋服を作ってる友達もいるし、色々だよ。好きなブランドはいくつかあるけど、靴のブランドのカンペールは好きで結構持ってる。他には……やっぱりカンペールでいいや。 ——あなたにとってファッションはどんな意味を持っていますか? たぶん僕は、ファッショナブルだとかファッションについて詳しいと思われてる気がするんだけど、でも実はそうじゃなくて、僕はただ自分が何を着たいかを知っているだけなんだ。着ていて落ち着く服っていうのが自分で分かってるんだよ。つまり買い物上手なんだ。自分が好きなもの、着たいものを買ってるっていうだけだと思う。で、基本的にファッションは視覚的な自己表現のひとつで、音楽は音的に自分を表現できる手段だよね。 ——NYへ行ったらここには絶対に行った方がいいというオススメの場所を教えてください。 自分が行く場所を全部バラすのは嫌なんだけど、ええとCafé Bocadoは朝ごはんもランチもおいしい。あとBar Pittiっていうイタリアンもいいよ。 ——日本のファンへメッセージをお願いします。 日本でツアーする予定だから、心の準備をしておいて。まだ未定だけど、いずれ行くことになると思うし、僕は日本に行くのをすごく楽しみにしてるんだ。それから、自分らしく、目一杯自己表現して。たとえそれで不都合なことがあったとしてもね。

Gus Dapperton

今回のインタビューでわかったことは、自身のアイデンティティに何の引け目も感じる必要はなく、ただありのままの姿を表現することが、彼のようにオリジナルでいられる秘訣だということだ。きっとそんな飾らない姿に惹きつけられる方が多いのだろう。彼らしさが詰まったデビューアルバムもぜひチェックしてみてほしい。

INFORMATION

Gus Dapperton

Where Polly People Go to Read

2019.04.19 Release

Gus Dapperton

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Fat White Family インタビュー|サウス・ロンドン史上最凶のカルト・ヒーローがBrexit以降に表現したセルフポートレート

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Fat White Family

アグレッシブでありながら洗練された音楽性で話題を呼び、サウス・ロンドンのミュージック・シーン”史上最凶のカルト・ヒーロー”という異名を持つファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)。パンク・スピリットを全開にした圧倒的なライブ・パフォーマンスで、ロンドンだけでなく世界中の注目を集める中、楽曲「Whitest Boy On The Beach」が一昨年公開の映画『T2 トレイスポッティング』のサウンドトラックに収録されたり、アークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys)、フランツ・フェルディナンド(Franz Ferdinand)ら擁するインディー・ロックの名門レーベル〈Domino〉に移籍したりと、脚光を浴びているバンドだ。そんな彼らがレーベル移籍後初めてのニューアルバム『Serfs Up!』を4月19日(金)にリリースした。本作は元Templesのサミュエル・トムズ(Samuel Toms)が加入したことで、サイケデリックな印象が一層際立った唯一無二な内容となっている。 Fat White Family - Feet(Official Video)(Explicit)

今回は最もクローズアップされているとも言えるサウス・ロンドンのミュージック・シーンを代表する彼らに、サウス・ロンドンで活動を続ける上での心境や混迷を極めるイギリスの政治情勢について、そしてそうした状況を踏まえて制作された本作『Serfs Up!』への想いをメンバーであるLias Saoudiに語ってもらった。

Interview:Lias Saoudi(Fat White Family)

――こんにちは。今日は宜しくお願いします。今はどちらに? サウスロンドンのアパートにいるよ。 ――シェフィールドにはもう住んでないんですね? あれはアルバムのレコーディングのためだったからね。アルバムが完成したから、ロンドンに戻ってきたんだ。 ――どれくらいシェフィールドに住んでたんですか? 2年間。 ――なぜシェフィールドだったのでしょうか?またシェフィールドに移ったことが新作に大きな影響を与えたと考えていますか? 俺のもう一つのプロジェクト、ムーンランディングスを通して既にシェフィールドで活動している人たちを知っていたから。そのスタジオも安かったしね。ロンドンの一部屋の家賃でシェフィールドでは家一軒が借りれるくらい。影響かはわからないけど、5年間のツアーのあとでちょっと休憩が必要で、気分転換になった。ロンドンからちょっと離れる必要があったんだ。 ――なぜまたロンドンに戻ろうと? 南ロンドン出身ではないけど、14年間住んでるからロンドンは俺にとってホームグラウンドみたいなものなんだよね。だから戻ってきたのさ。 ――今、日本ではロックもジャズも含めて、南ロンドンに注目が集まっています。その盛り上がる前から南ロンドンをベースにしていたあなたたちから見て、今の南ロンドンはどのように映りますか? 俺たちがスタートした頃は、あまりサウスロンドンにはDIYシーンがなかったと思う。音楽はイースト・ロンドンの方が盛んだったし、それとちょっと違う俺たちは皆に阻害されながらも自分たちがやりたいことをやっていった。そしたら、ゴート・ガール(Goat Girl)とかシェイム(SHAME)とかそういったバンドたちが俺たちに続いて出てきたんだ。彼らは俺たちにとって弟や妹みたいな存在だね。

Goat Girl - The Man

Shame - One Rizla(Official Video)

――今出てきたシェイム、ゴート・ガールを含めブラック・ミディ(black midi)といったバンドがあなたたちを追うように登場してきていますが、彼らにシンパシーを感じますか? 特にブラック・ミディはあなたたちの影響を受けていると思うのですが、いかがでしょうか? 音楽とか世界観にはあまり共通点はないと思う。シンパシーを感じるのは、音楽の作り方だな。業界に流されず、自分たちが作りたい音楽を作ってる。今出てきている若いバンド達もそれを感じて嬉しく思っていてくれてるといいけど。ブラック・ミディが俺たちに影響を受けているかはわからないな。俺にとっては、彼らはもっとノイズ・バンドな感じがするから。俺たちは彼らよりもポップミュージックを書いていると思う。もしかしたら前回のアルバムは少し通じるところがあったかもしれないけどね。それはもしかしたら俺たちからの影響かもしれないな。

black midi - crow's perch

――南ロンドンの音楽シーンは、前から存在しているのに今注目されるようになったのだと思いますか?それとも今話題になっているのは南ロンドンの音楽シーンが今盛り上がってきたから? ここ5年でグンと大きくなったと思う。良くなっているのか悪くなっているのかはわからないけど。俺たちがスタートした時は20代半ばだったけど、今出てきている若いバンドたちは19とかなんだよね。そんな若い時から経験を積むわけだから、彼らのうちの何人か、何組かはこれからすごく良いミュージシャンやバンドになっていくと思うよ。俺たちが彼らにテンプレートを与えたんだと思う。自分たちを信じて音楽をやっても良いんだっていう自信を与えたというのはあるんじゃないかな。自分の世界を楽しむってことを提示して、たくさんのバンドに扉を開いたと思うね。 ――自分たちがスタートした時は今のバンド達よりも大変な環境だった? かなりね。皆、精神的な問題もあったし、金も全くなかった。全てを自分たちでやらないといけなかったから、そのステージを抜け出すまでに今の若いバンドよりもかなり長い時間がかかったと思う。今の俺たちはだいぶ良くなったよ。バンド内でもめることもなくなったし、サイドプロジェクトをやったりもして自分たちの音楽の幅を広げることができてる。だから、前よりももっとリラックスして活動が出来るようになったんだ。 ――前作から3年が経過しての新作となりますが、その間にはまずBrexit(ブレグジット)があり、ロンドンとマンチェスターではおぞましいテロも起こりました。そして、現在もEU脱退を巡って混迷を極めています。そんな3年間、あなたたちはどのように過ごし、何を考えていたのでしょうか? さっきも話した通り、俺たちはシェフィールドに住んでアルバムを作ってた。俺は今の変化は起こるべくして起こってるんだと思う。俺は脱退じゃなくて残る方に投票したけど、Brexitが最悪なこととまでは思っていないんだ。これが起こっていることで、この国で何が起こっているかを皆が知ることができたわけだから。貧富の差、教育の問題、その問題が浮き彫りになって、自分たちの状態を見つめ直すことができている時期だと思うよ。

Fat White Family

――そして、その3年間で、新作にもっとも影響を及ぼしたことはなんでしょうか? 自分が作っている期間で起こっていることから影響を受けないということは不可能だと思う。アルバムは、制作期間の記念碑みたいなものだからね。何か特定のことに影響を受けたというよりは、3年間の自分たちの経験がそのまま反映されて形になっている。アルバムは自分自身のセルフポートレートみたいなものだね。 ――あなたのどんな部分が特にこのアルバムに反映されていると、または影響を及ぼしたと思いますか? 曲はメンバー全員で書いたから他のメンバーに関してはわからないけど、俺に関して言えば、フランス文学だね。セリーヌとか。最近のお気に入りなんだ。 ――様々な音楽性が交差し、混沌としているのは新作でも変わりありませんが、ずいぶんと音が整理されて、聴きやすくなった印象を受けました。それは意図したものなのか、それとも参加した人による影響なのでしょうか? さっきも話したけど、俺たちの音楽は常に“ポップ”であってきたと思うんだけど、それをやっている上で、リスナーや業界に対して攻撃的で反抗的なものではなく、人を惹きつけ、自分自身をもっと素直に表現したものを作れるようになっていったんだ。今回はそれを達成できたと思う。もっとコミュニケーションが取れる音楽を作れるようになってきたと思うね。 ――リスナーとコミュニケーションをとることがもっと大事になってきた? そうだね。自分自身を楽しませることも大事だけど、活動を続ける上で大切なのは人と繋がることだから。 ――バクスター・デューリーが参加した経緯は? バクスターは俺たちの昔からの友人で参加してもらうことになったんだ。彼には、あの詩や語りのような独特のヴォーカルをもたらして欲しかった。アルバムには、沢山のサウス・ロンドンのミュージシャン達に参加してもらっているんだ。チャイルドフッド(childhood)っていうバンドのメンバーのベン・ロマン、インセキュア・メン(Insecure Men)のアレックス・ホワイト、あとはスウェットっていうバンドのダンテとガマリエルとか。あとブリジットっていう女の子もストリングスで参加してくれている。ビッグ・チームだったよ。みんなプロだし、友達なんだ。バンド・ミュージックを作る道を選ぶなら、コラボはかなり重要。人によって得意不得意があるからこそバンドで音楽をやるということを選択すると思うんだけど、様々な素晴らしいミュージシャン達に自分たちにはないものをもたらしてもらってより良いものを作るというのはすごく良いことだと思うね。

Childhood - Blue Velvet

Insecure Men - Teenage Toy(Official Video)

――また、プロデューサーはなぜLiam D. Mayだったんですか? セルフ・プロデュースしてたんだけど、最後の2、3個のセッションでLiamを起用した。最初は全部自分たちで全部やりたかったんだけどね。だからシェフィールドの安いスタジオで作業することにしたし、プレッシャーを感じたくなかったんだ。で、自分たちに出来ることは全部やったんだけど、やっぱり自分たちと違う目線で音楽を見てくれる人の意見も大事だと思った。彼はそれをもたらしてくれたんだ。頼んで良かったよ。彼にはダンスミュージックのバックグランドがあるから、グルーヴ、サンプリング、ドラムマシーン、そういったサウンドを加えてくれたね。彼にはそのダンスっぽい要素を持ってきて欲しかったんだ。 ――曲作りやレコーディングで、これまでと異なる手法を試しましたか? 今回のアプローチは全然違った。メンバー全員が曲を書いたし、メンバーがお互いにオープンでもっとコミュニケーションが取れていたと思う。だからもっと色々なサウンドを試すことができたんだ。前よりも断然心地よかった。制作をより楽しみながら作業をすることができたね。 ――本作で最も表現したかったこと、伝えたかったことは? 曲によってコンセプトが違うから、アルバム全体のコンセプトというのは特にない。言えるのは、どの曲も出来るだけ自分に正直に、誠実に書いたということだね。その曲のキャラクターが自分じゃないとしても、それは自分自身の経験に基づいている。全てが自分自身やその周りのことについてなんだ。 ――ファンク、それも白人によるファンクの影響が伺えますが、何か理想としていた、もしくはよく聴いていた作品はありますか? ファンクもあるしテクノもあるし、フォークもあるし、カニエっぽいのもあるし、影響は計り知れないよ。俺たちは様々な種類のレコードを聴くから。このアルバムにはそれが全部落とし込まれてる。よく聴いていた作品は、ワム!(Wham!)の“Blue (Armed With Love)”。あのレコードは俺たちが聴いていた中で最も重要な作品だと言えるね。あのレコードはかなり聴いてたし、すごくインスパイアされたんだ。是非聴いてみてくれ。あと、ジャ・ウォブル(JAH WOBBLE)もたくさん聴いてたな。 ――また、8曲目の“Rock Fishes”はサイケデリック・ダブなアプローチを見せています。各曲ごとに音楽性が違いますが、メンバーそれぞれの音楽性を民主的に曲に落とし込んでいるんでしょうか? そうだね。今回はより広がりがあると思う。あと今回は、それに加えてより洗練された、エレガントな曲も入れたかったんだ。 ――一方で、“Oh Sebastian”のようなエレガントな曲もあります。ちょっと意外でした。 その驚きが良い驚きだったらいいけど(笑)。ずっとよりソフトな曲を作りたいとは思っていたんだ。今回はサイドプロジェクトの経験もあって、それが前よりも出来るようになっていた。だから、それをファット・ホワイト・ファミリーでもやってみることにしたんだ。

FAT WHITE FAMILY - Oh sebastian('FD' acoustic session)

――タイトルの『Serfs Up!』はビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の『Surfs Up』をもじったものですか? いや、ビーチ・ボーイズをもじったわけじゃないんだよね。たまたまあれに似たタイトルになったんだ。労働者階級がもっと自由になるために伸び上がるっていうのを表現したのがあの言葉。Brexit、トランプ、そういった現代の問題を総括したものがこのタイトルなんだ。 ――前作収録の“Whitest Boy On The Beach”はトレインスポッティング2のサントラに起用されましたが、どういう経緯だったのでしょうか? 「出版から電話がかかってきて、あの映画が君たちのトラックを使いたいらしいよって言われて(笑)、お金ももらえるし、最高だと思った(笑)。映画は見たけど、映画ってやっぱり2を作るべきかわからない作品ってあるよね(笑)。『トレインスポッティング2』は作らなくてもよかったんじゃないかなと思う(笑)。ロボコップとかターミネーターはよかったけど。

Fat White Family - Whitest Boy On The Beach

――〈Domino〉に移籍した経緯と理由は? メンバーが抜けたり色々あったんだけど、〈Domino〉のオファーが一番よかったから彼らに決めたんだ。 ――最後に日本でライヴを観られる日を楽しみにしていますが、昨年の<Rock en Seine Festival>では8人での演奏でしたね。レコーディングされた音よりも、さらに攻撃的で生々しかったです。ライヴを行なう上で、最も大切にしていることは? 一番大切なのは、自分がステージで何をしているのかをきちんと意識して把握すること。自分を完全に表現しきるということだね。ステージに上がる前は未だにかなり緊張するけど、演奏を始めるとそれが吹っ飛ぶんだ。 ――ありがとうございました。 ありがとう。日本には一度も行ったことがないから、このアルバムで来日できるといいな。

このインタビューを通して、彼らの中にある音楽を作る上での強固な意志、そして地元サウス・ロンドンへの深い慈愛を感じ取ることができた。そんな彼らの魅力が詰まったニューアルバム『Serf Up!』をぜひ一聴あれ。 Fat White Family - Tastes Good With The Money(Official Video)

Fat White Family - When I Leave (Official Video)

『Serfs Up!』

Fat White Family

Release

2019.04.19

Tracklist

1. Feet 2. I Believe In Something Better 3. Vagina Dentata 4. Kim’s Sunsets 5. Fringe Runner 6. Oh Sebastian 7. Tastes Good With The Money 8. Rock Fishes 9. When I Leave 10. Bobby’s Boyfriend

Fat White Family

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Night Tempo インタビュー|Vaporwaveで80年代の最高な思い出をコレクトし続ける

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Night Tempo

VaporwaveやFuture Funk、インターネット由来の音楽を中心に活動してきたアーティスト・Night Tempo。 竹内まりやの“Plastic Love”(のちにtofubeatsやFriday Night Plansがカバー)をはじめとしたシティー・ポップの世界的なムーブメントの中心人物であり、香港を拠点とするVaporwaveやFutureFunkシーンで紅色に輝くレーベル〈Neoncity Records〉に参加、配信やカセットテープ、レコード、CDを発表している。 Takeuchi Mariya - Plastic Love(Night Tempo 100% Pure Remastered)

4月24日(水)には、Winkの楽曲を公式にリエディットしたEP『Wink- Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』をリリースすることが発表された。ブートやリエディットが文化的な手法となっているVaporwaveでは、大きな事件とも言えるだろう。 さらに、4月26日(金)には渋谷・The Millennials Shibuyaで開催されている話題の和モノDJイベント<Japanese Things>への出演も決定。東京のシーンでも特異な雰囲気を放っている和モノシーンに、Night Tempoが「ザ・昭和グルーヴ」を逆輸入する。都会のど真ん中にあるにも関わらず、どこか隔離されているような変わったロケーションで、国際的でもありながら日本の土着的な雰囲気が醸し出されているフロアで彼の音を聴けるのは素晴らしい経験になるはずだ。 イベントの数週間前から来日していたNight Tempoは、用事が済んだら中野でアニメのビンテージポスターを集め、神保町で昭和アイドルのポスターやシングル盤をディグしに行くという。そんな彼に、話を訊いた。

Interview:Night Tempo

――日本には頻繁に遊びに来られてるんですか? 日本に初めて来たのは3年前です。たまたま日本のオーガナイザーからオファーをいただいて、渋谷のClub AsiaでDJをしました。それから結構よく来ています。〈Neoncity Records〉の主宰と、前のミックステープからイラストを務めてもらっているイラストレーターtree 13はクルーのように動いていて、昭和オタクの集まりみたいな感じです。レーベルの彼とは、一緒に日本に来てハードオフやリサイクルショップを回ったり、神戸の元町商店街とかを探検しに行ってます。 ――すごいですね(笑)。昭和歌謡を好きになったきっかけはなんですか? 韓国の80年代初期では、日本で流行っていたものが4〜5年後に韓国で流行ったりすることが多かったんです。父親が海外からの仕入れなどの仕事をしていたので、偶然WALKMANや日本のCDを手に入れることができたんですね。その中に中山美穂さんのアルバムが入っていました。そこから、作品をプロデュースしてる角松敏生さんのことをディグしてネットワークを広げました。 でもその当時はネットに情報がとても少なかったのを覚えています。韓国ではネットの普及がかなり早かったのですが情報は探せなかった。ネットで実際色々聴き始めたのは2000年代後半ですね。 ――角松敏生さんはNight Tempoさんにとって音楽を作ろうと思ったきっかけにもなったアーティストなんですよね。 彼の音楽を観て聴いて、いつか僕もそういう音楽をやりたいなと思ってます。今は形は違うんですけど、角松さんの音楽に近づけたくてそういう音楽を聴いたり、サウンドを作り始めました。今のところ、角松さんのライブは2年連続で観ていて、最初は中野サンプラザでツアー最後の公演に行きました。去年は大阪でツアー初日の公演を観ました。今年も確実に観に行きます。 サウンドが昔からすごく好みで、彼のメロディーラインなど、音楽では全体的に影響を受けてます。曲を編集している時も角松さんのカットを真似することが多かったりします。80年代からスクラッチやカッティングを取り入れて、時代の先駆者です。 海外だったらダフト・パンクですね。曲調もフレンチハウスと似ているので、影響は大きいと思います。 ――ちなみにいつから音楽を作り始めましたか? 趣味で10年くらい作っていて、何かをネットにアップしたのは5年くらい前です。本気になったのは去年からです。 フューチャーファンク中心で今の形でリリースを始めたのは香港の友達がやってる〈Neoncity Records〉からです。一昨年から、モノを作るに当たって美学を持って、デザインから何までちゃんとしたものを作ってみようという試みをしています。僕はプロデュースみたいなことをやって、彼はプロダクトデザインをしています。プロダクトを作るのも作品のプロデュースの一つで、彼と失敗を繰り返しながら作ったフォーマットはいろんなところで参考にされているみたいです。彼らもアナログが好きなので共有できることも多くて、ディスカッションしながら作品を作ってもらってます。 ――Night Tempoさんは先日、カセットテープのコレクションをアップロードしてるアカウントを作られましたよね。( @citypopcassette はい。15年前くらいからカセットを集めてます。持ってるレコードは本当に好きな方々の作品で、角松敏生さんとか、竹内まりやさん、山下達郎さん、杏里さん。その辺りはだいたい持ってます。でも基本的にはカセットテープがベースで、カセットであれば大体のディスコグラフィーを持っていると思います。 ――なぜカセットテープを集めるようになったんですか? もともとWALKMANが好きだったことが大きいです。一緒にコンパクトにコレクトして行きたい。あと、自分だけ集めていることを考えたら、やっぱりカセットテープがいいんじゃないかなと思って。今は量が多くなって、自分の作業兼倉庫部屋を借りていて、そこに保管してます。ネタを取るときはカセットテープから取ることが多いです。有名な方の作品はネットにありますけど、僕が好きなアイドルの作品はあまりないんですよ。だから自分が持っているもの、ディグしたものから録音とって、使ってます。例えば僕の個人プロジェクト「Showa Idol Groove」では、全てのネタをカセットテープから取っています。 カセットテープからサンプルする人は多くないので、仲間もいなくてずっと1人です。でも最近はカセットテープやシティーポップも流行りだして、市場も盛り上がって。でも、大体持ってるものが多いので、高くなった作品とかは譲ってあげたりしてます。

――生粋のカセットテープディガーですね。 お金はほとんどカセットとか、あとCASIOの腕時計が好きで、集めたりしてます。80年代のものを集めるのが趣味で、香港に行ったり、日本も地方に行ったり、雰囲気があるところに行ってます。 80年代は僕にとって一番気楽になれる時代で、小さい頃の大切な記憶が詰まってる。その空気感や雰囲気を大事にしたいので、コレクトしています。今はあまりにも騒がしくて、忙しくて、自分の時間もないことが多い。それはキツいなと思います。 ――でもインターネットは音楽の伝達には非常に良い機能を持ってますよね。 僕の場合、お金を稼ぐために音楽を作り始めたわけではなくて、ただ自分の好きなことを始めてみたら、たまたま上手くいっただけです。すごく真剣な仕事になったら嫌になるかもしれないですけど、自分が好きな時代の音楽や文化を今の人たちが知ってくれることは嬉しいです。それで時代のストレスは和らぐと思います。 ――アメリカではすごい人気を得ていると聞きました。 ファンはアメリカやメキシコ、イギリスが多いです。ライブでも、日本や韓国でやるよりも本場のファンがいて、彼らは本当に情熱的なんですよ。コレクションしてる数とかも格が違う。サンフランシスコだったらFuture Funkのイベントだけで1,500人来たり、ニューヨークもかなりの数が集まります。 あと、彼らは文化に対しての情熱がすごい。ファッションではなくて、文化自体に対するエナジーが違いますね。音楽やファッションだけではなくて、カルチャー全体。アメリカでは中森明菜さんの曲とかをかけてます。 ――Night Tempoさんが好きなアニメや映画について教えてください。 日本の作品だと『AKIRA』が好きです。アメリカだと『マイアミ・バイス』とか。好きなシーンを選ぶのは難しいですが、ドライブのシーンが好きなんです。『AKIRA』はバイク、『マイアミバイス』はビーチサイドで車に乗るシーンが多いのですが、とても好きです。 実際に雰囲気を味わうだけでタクシーに乗ったりします。韓国はタクシーが安いので。東京は乗れないですね(笑)。 ――曲のイメージとばっちり合いますね。作品のアートワークにはピンクや濃いめの青が使われていますが、なぜですか? イメージはセル画みたいな感じです。セル画というよりは、もっと古っぽいデザインにするんですけど、僕は色を強く使って、昭和の中でもネオン東京の感覚にしたい。色使いは派手なほど近未来的になるので。 イラストの絵で参考にするのは、基本的に『セーラームーン』ですね。あと『きまぐれオレンジ☆ロード』。 ――今回リリースするEPについて教えてください。 元々はいろんな昭和歌謡のリミックスをやっていて、ご縁があり今回の企画が始まりました。Winkさんを選んだのは、単純に一番良いものができると思ったからです。ポスターとかカセット、レコードなど、自分は昔からWinkグッズのコレクションをしていたので、すごく良いきっかけだと思いました。 ――それをFuture Funkにすると。とても楽しみです。なぜVaporwaveを始めたんですか? 5~6年前にこのジャンルを見つけたんですけど、その時はシーンがまだ小さかったので、みんなで色々情報を共有ながら、ジャンルのスタイルが出来上がっていきました。最初はVaporwaveからはじまって、スタイル的にはフレンチ・ハウスに近いサウンドに寄っていったんですね。その流れで試行錯誤していった結果、サンプリングネタにイタリアン・ディスコではなくて、日本の80年代の歌謡を使うことでダフト・パンク(フレンチ・ハウスを代表するアーティスト)とはまた違う音楽を作れることに気づきました。それからスタートして、かすかな手応えを感じてました。 2年くらい前からネットでシティー・ポップとか、Vaporwave、Future Funkが流行り始めたと思います。Future Funkのことを知らない人は、だいたいVaporwaveとして捉えていると思います。でも実際は違う音楽なんですよ。 最近、Future Funk以外で作っているのは、Lo-fi Hip Hopです。あと、ニュージャックスイングとか90年代初期の音楽で、他はジャズです。 ――普段はどういう音楽を聴いてるんですか? 携帯に入ってる音源も昭和歌謡ばかりです。ネタを探したり、参考にできるような音楽をずっと聴いてます。今年は昭和グルーブを中心にライブをするので、70、80年代の昭和音楽のミックスだけをかけるようにしています。 Vaporwaveは既存の作品をコピーしたりエディットしているんですけど、それをどう使うかによってただのコピーか全く新しい文化になるかが分けられます。その文化に対していかに真剣に向き合っているかによって、Vaporwaveの世界観が変わると思います。僕は古いものを今の時代に生きている人たちが聴けるようにしたい。英語の本を翻訳するのと同じだと思います。素晴らしい文化が20~30年前にあったんですよと。変わるのはいいけど、大切なオリジンを忘れずに何かが新しく始まったら良いですよね。

Night Tempo

Wink- Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ

Night Tempo

Release

2019.04.24(水)

Tracklist

1. 淋しい熱帯魚(Night Tempo Showa Groove Mix) 2. 愛が止まらない ~Turn It Into Love~(Night Tempo Showa Groove Mix) 3. Get My Love(Night Tempo Showa Groove Mix) 4. Special To Me(Night Tempo Showa Groove Mix)

Japanese Things

Night Tempo

2019.04.26(金) OPEN・START 19:00/CLOSE 23:00 The Millennials Shibuya

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Night Tempo DJ NOTOYA にっちょめ DJ 薬師丸

Night Tempo

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Neoncity Records

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もし自分の好きな音楽が聴けなくなったら?BONE MUSIC展が発信するロマンティックなストーリー

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BONE MUSIC
© Photography: X-Ray Audio Project / Paul Heartfield

ボーン・ミュージックって?

現在の日本で今まで当然のように聴くことができた音楽を聴くことができなくなったら?――想像もできないことだが、あながち起こりえないことでもない。例えば電気グルーヴの全作品が配信/販売停止になった際、特にクラウドでのリスニングを習慣にしていた人の多くはライブラリーが完全にブランクになってしまった状況にショックを受けたはずだ。「このアーティストは問題だから、作品も聴かせない」、それは果たして誰が決定することなのか。そして近未来において、自由に音楽を聴くことができない事情が生まれるとしたら、それはどんな理由なのだろうか。起こってほしくないことだが、過去の歴史にはそんな恐ろしいことがあった。それを実感する糸口が、この「ボーン・ミュージック」だ。

ボーン・レコードの誕生

ボーン・レコード=直訳すると骨のレコード、だが、実際はレントゲン写真のフィルムに音源をカッティングしたレコードだ。40~60年代、冷戦時代のソビエト(ソ連)ではアメリカ音楽文化の象徴であるジャズやロックンロール、一部のロシア音楽を聴くことが禁止されていた。しかし若者なら国境をこえてプレスリーを聴きたかっただろう。当時はクラシック音楽以外はレコード店で入手できなかったらしい。そこで、高価なアナログレコード用の素材に代わり、1枚3分程度しか録音できないが、若者たちは使用済みのレントゲン写真のフィルムをレコードがわりに、特殊なカッティングマシーンを使って、禁止された音楽を録音し、密かに楽しんだのだ。この事実が当局に知られると刑務所行きであるにも関わらず、である。

ボーン・ミュージック・プロジェクトについて

政治的な観点から表立って聴けない音楽が生まれるという、歴史を知る上でもボーン・レコードの存在は重要だ。だが、それに加えて「そこまでして音楽を聴きたかった人々の思い」が詰まったボーン・レコードは一見、禍々しいがユニークなプロダクトでもある。このレコードを偶然発見し、世界で展示を行っているキュレーターのスティーヴン・コーツ氏は今や冷戦時代のソビエトでの出来事に限定せず、ユニバーサル・ストーリーとなったボーン・ミュージックを音楽とアナログ盤カルチャーを好む現代の若者にも楽しんでもらい、そこに秘められたロマンティックなストーリーを理解して欲しいという。

Interview:スティーヴン・コーツ

BONE MUSIC

――サンクトペテルブルグの蚤の市で初めて「ボーン・レコード」を発見した時の感想とは? 実は、初めてボーン・レコードを手にしたとき、それが何なのかわからなかったんですよ。何かしらのレコードだとはわかったんだけど、ソノシートなのか?……とにかく戸惑ったのを覚えています。今まで見たこともなかったからね。ロシア人の友達に聞いても、誰も知らなくて。それを蚤の市で売っていた当人も、全く興味がなかったみたいでした。だからボーン・レコードの第一印象は、「好奇心」と「戸惑い」です。実際ロンドンに持って帰るまで、その正体はわからないままでした。でもロンドンでそれが78回転で再生するレコードだということが判明して、独特なレコードだということがわかったんです。 ――「ボーン・レコード」は現在、どのような機器で再生できるのでしょうか。 78回転のスピードで再生できるものであれば普通のレコードプレーヤーで再生できます。全部じゃないけど、殆どのボーン・レコードは78回転で録音されてます。当時のレコードがそうだったからね。あと78回転の方が音質がいいんです。欠点は一つのレコードに長尺のものを録音できないということですね。ちなみに、針はよく古いレコードを再生するときに使う、柔らかい78回転に適したものがいいです。 ――実際に聴いてみていかがでしたか? 音質、録音されている音楽の種類など。 今のアナログレコードと変わらない音質のものもあったものの、大半が酷い音質だったようです。録音する機械自体の問題や、録音する人のスキルによってもばらつきがありますね。作るのもそう簡単じゃない。あとは録音する元の音源の種類にもよります。新しいレコードから録音したら良い音質だったし、ラジオやすごい古いレコードの音源からだと音質が悪かった。比較的新しいボーン・レコードは、同じレントゲン写真でも素材が違うから、音質も違ってきますね。どちらかというとうるさい感じになるんだけど、録音する人の腕がよければノイズも抑えられます。ちなみに状態のよくないボーン・レコードの音は、昔の蓄音機の音に近いですね。 当時ソビエトのボーン・レコードに録音されていた音楽は、検閲された音楽、禁止されていた音楽、またはお店では買えない入手困難な音楽でした。西洋の音楽、ジャズ、ロックンロールだけでなく、ロシアの音楽でも禁止されていたものもあります。例えばピョートル・レシェンコ(Pyotr Leschenko)。戦前は人気があって問題なく聴けたのに、西の方に住んでいたことがあるという理由だけで裏切り者とみなされました。若者にとって良くないとされていた音楽のジャンルもあります。例えばラテンのマンボや、タンゴ、ジプシー音楽。ロシア民族音楽、ストリートミュージック、当時の苦しい生活状況を歌った音楽、刑務所内で人気があった音楽など。いわゆるみんなに人気があるけど禁止されていたポピュラー・ミュージックが録音されていました。 ――レントゲン写真はソノシートのような材質なのでしょうか。 ボーン・レコードとソノシートはよく似ています。ボーン・レコードはソノシートの一種と言ってもいいのですが、素材は違います。ボーン・レコードの素材は写真のフィルムです。それぞれ作り方も違う。ソノシートはプレスして作るので一度に数千枚作れるけど、ボーン・レコードは一つ一つ特別な機械でカッティングするので時間がかかるんです。でも両方とも柔軟性のある素材ではあります。実際ソビエトでは様々な素材に録音されていたそうです。

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Photography by Paul Heartfield

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――レントゲン写真に録音してまで西側の音楽を聴きたかった旧ソビエトのリスナーの気持ちを想像することはできましたか? ソビエトで音楽を聴いていた人たちは、ごく一般の普通の音楽を愛する人たちでした。純粋に音楽を聴くのが好きだった。西洋の音楽、西洋のスタイルを好んだ若者たち。ジャズ、ロックンロール、あと当時禁止されていたロシアの音楽など。禁止されていた音楽を聴くだけだったらレコードを没収されるくらいで済んだものの、ボーン・レコードを作っていた人たちはヤバかった。見つかったら刑務所入り。勇敢だよね。音楽のために収監されるなんて。自分だったらそこまでしないだろうな。 ――「ボーン・レコード」のプロジェクトや実物を見て、来場者にはどんなことを感じて欲しいですか? 初めてボーン・レコードと出会った時に自分がそうだったように、みんなも魅了されて、好奇心が掻き立てられたらいいなと思います。この美しくてポエティック(詩的・空想的)なレコードを見て楽しんでほしいです。そしてボーン・レコードのストーリー自体から何かしら感じてほしい。インスピレーションを受けてほしい。音楽が好きな人たちが音楽のために知恵をはたらかせて、そして身を危険に晒しながらも奮闘するストーリーを。日本人であろうがイギリス人であろうがロシア人であろうが、このプロジェクトを通じてみんなに「気づき」を与えられたら本望です。 ――世界各地で展示をされていますが、各国の若者の反応に違いはありますか? 違いはないと思います。どこの国においてもこのストーリーに興味をもって感動してくれました。でもロシアとイスラエルのテル・アビブの反応は少し違かったかな。特にロシアの年配の方たち。モスクワだけじゃなくてロンドンで開催した時もお年を召したロシア人の方たちが足を運んでくれたんだけど、彼らにとってみれば、これは単に風変わりなレコードと禁じられた音楽の話ではなく、自分たちの人生のストーリーそのもの。彼らが若かった頃を振り返って、実際に経験したであろう話なので、彼らにとってみればエモーショナルな経験だったと思います。 ――そして実際に禁止されていたロシアの今の若者の反応はいかがでしたか? 興味深いというか、びっくりしたんだけど、実は展覧会に来た殆どのロシアの若者はこの話を知らなかったんです。少しだけ耳にしたことがある人たちもいたようだけど、実際これが彼らの国の歴史の一部だったということを誰も知らなかった。みんな驚いていたし、自分たちの国の話なんだって、ショックを受けていましたね。 ――歴史的な背景込みでの「ボーン・レコード」の魅力とは? ボーン・レコードのイメージは「痛み」と「ダメージ(損傷)」です。レントゲンは、病気か怪我をした人の体の中を写した写真ですよね。でもその上にみんなが大好きだった音楽が乗っかっている。そう考えるとものすごくポエティックなコンビネーションだと思います。「痛み」と「喜び」のね。だから、このレコードはとても貴重で大事なものだと思わせてくれるんです。ストリートで作られて、ストリートで売られていたものだけどね。 ――現代社会で、聴きたい音楽が聴けない状況というと、コーツさんはどのような状況を想像しますか? まさにこの展覧会の課題ですね。いつもこの展覧会を通してみんなに提議して想像してもらっています。普通に生活していると音楽が聴けない状況というのは想像しがたい。わたしたちは音楽が自由に聴ける社会で育ったからね。でも大好きな音楽が聴けなくなってしまったら、とてつもなく悲しいと思います。

BONE MUSIC

Photography by Paul Heartfield

BONE MUSIC

Photography by Paul Heartfield

――そして想像される状況が訪れたとき、コーツさんは音楽を聴きたいですか? また、どんな手段を使って聴くと思いますか? 昨今のテクノロジーの進化によって、音楽を禁止することは技術的に不可能だとは思います。インターネットがなくなるとか、デジタル技術が完全に抑制されるとか、大きな革命や変化がない限り、音楽を自由にコピーをしたりダウンロードしたりするのを阻止することは難しい。ただ忘れちゃいけないのは今でも自由に音楽を聴くことができない、ある音楽が禁止されている国はあるんだということ。でもそういう国でも、今やデジタルの技術が進化しているので、完全に禁止することはとうてい無理になってきています。 ――コーツさんは冷戦や戦時下の音楽の政治利用についても研究されています。歴史上、音楽が好ましくないプロパガンダに利用された事例を挙げていただけるでしょうか。現在の若者からは想像できない世界だと思うので。 冷戦時代よりも前の、第二次世界大戦中にも、音楽はプロパガンダに使われていました。ドイツではジャズが禁止されていたけど、ゲッベルスはジャズバンドを持っていて、有名な曲の歌詞を替えて、イギリスやアメリカの政治家たちをバカにした替え歌を作っていました。ラジオで流してそれを聞いた軍人たちが、洗脳されるのを期待していたみたいですね。個人的にはあまり効果がなかったとは思いますが。冷戦時代、アメリカでは反共産主義の曲がたくさん作られて、歌詞の内容は共産主義をばかにしてからかったり、反スターリン主義のものりました。ロシアでは主に愛国主義の曲が多かったですね。アメリカや西洋に対して否定的な内容を歌うより、ソビエトがなんてすばらしい国であるかを歌った曲の方が多かった。今でも政治家たちが登壇するときにBGMでポップミュージックを流すのが流行っていたりしますよね。90年代にトニー・ブレア(※元英首相)がよく“Things Can Only Get Better”という曲をかけていましたよ。 ――近年、サブスクリプションでの音楽視聴が当たり前になり、一方でアナログレコードを所有する楽しさが日本でも広まりつつあります。このような傾向は世界でも加速するとお考えでしょうか。 いい質問ですね。さあ、わからない。アナログレコードはアメリカやイギリスでも人気です。フィジカルなものと音をつなぐものとしてね。またコレクションできるものが見直されている傾向もあると思います。でもサブスクリプションサービスも便利ですよね。革新的なすばらしい発明だと思います。おそらくアナログレコード派は少数派のまま、サブスクリプションがしばらく主流なのでは。個人的には音楽を聞く方法はこだわらないけど、好きな音楽を一生聞き続けたいと思うし、音楽が我々にとって重要なものであり続けて欲しいと願っています。 ――コーツさんがもし一枚しか「ボーン・レコード」に録音できないとしたら、何を録音しますか? またいい質問ですね……何だろう……好きな曲がたくさんありすぎて、一枚だけに絞るのは無理です。仮に今日一曲選んだとしても、明日選ぶ一曲とは違うだろうし。そんな究極の一枚の選択をしなくてはいけない日が、一生訪れないことを祈っているよ。

BONE MUSIC

Photo:Ivan Erofeev ©Garage Museum of Contemporary Art

BONE MUSIC

Photo:Ivan Erofeev ©Garage Museum of Contemporary Art

BONE MUSIC

Photo:Ivan Erofeev ©Garage Museum of Contemporary Art

この展示のサブタイトルでもある“僕らはレコードを聴きたかった”には、時代を超えて通じるメッセージがある。ぜひ、今回の展示を通して当たり前に音楽が聴ける事は本当に当たり前なのか? そして、プロダクトとしても少し怖いようで美しいボーン・レコードを通して、様々な想像を巡らせてみたい。 Text by Yuka Ishizumi

BONE MUSIC

BONE MUSIC 展 ~僕らはレコードを聴きたかった~

会期

2019.04.27(土)~05.12(日)

会場

表参道 BA-TSU ART GALLERY

時間

11:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)

料金

前売 ¥1,200|当日 ¥1,400|プレミアムチケット ¥2,400円

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原淳之助 インタビュー|体験に起きる違和感の間を探求する

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原淳之助

半蔵門ANAGRAにて開催された原 淳之助による個展<≃>(ニアリーイコール)。 デカルトは間違いない事実を探した結果「われ思う、ゆえにわれ在り」と残している。自分が考え思っていることだけは疑いようがない。本展では、自分が見ているものは本当に他人にもそう見えているのか。その見え方は正しいものなのかということをコンセプトに、Instagramの#workout(筋トレの自撮り)などを基にしたグレートーンの展示が行われた。SNSの解釈を問うアートは多くあるが、その中でもかなりシュールな個展だったはずだ。 彼は物事をどう捉えているのだろうか。現在大学で助手業をしながら、作品を制作しているという原 淳之助に話を伺った。

原淳之助

ーー現在の作風について教えてください。 私たちとイメージとの関わりや、ものの見方をテーマにした作品を作っています。最近作っている立体物は、鑑賞者だけでなく、カメラからの見え方を考えて、 ある一点にカメラを置いた時以外は波打つように歪んだ形状に見えるようにコンピュータ上で計算し、 計算結果を3Dプリンターで出力しています。 立体物の中に、鑑賞者以外の視点、カメラの視点を織り込むことで、 それら複数の視点からの見え方を重ねる運動を起こす場を作ることを試みています。 ーーなぜ、今のようなスタイルになったのですか? 学生の頃から、あまり自分のこれってスタイルがずっと無くて、あちこちに手を出しながら色々な実験みたいなことをやっていました。でも、去年の夏ぐらいに今の作品のやり方を発見しまして、自分でも手応えを感じられたので、珍しく続けています。 ーーご自身のスタイルに影響を与えたと思う人はいますか? ネットサーフィンや、展示をまわっているときに見た作品だけではなくて、友人との会話や、テレビゲームや映画など、日常の色々なところで影響は受けてると思います。 今回の作品では、オリバー・ラリックの作品の影響が大きいです。

ーー今最も気になっているモノ・コトは? よく気になるのは、何かと何かの間です。例えば、「遠い」「近い」って感覚の境目はどの辺かってことが気になったりします。 ちょっと立体を作るのに疲れたので、以前実験で作った「I’m Sorry」っていう謝罪してる総理の顔が自分の顔に 入れ替わっている映像を発展させられたらと思ってます。 自分が見ている人間は誰なのかわからなくなる感じがすごくいいなと思ってます。

ーー挑戦したいアイデア・テーマはありますか? 顔を入れ替える動画を作る時に「Fake Porn」の技術が気になって試しました。 ポルノ動画の女優の顔を、ハリウッドセレブの顔に入れ替えた、 いわゆる「アイコラ」の動画版で、海外で流行っちゃって問題になったみたいです。 でも、そのおかげで元々あった顔を入れ替える機械学習の技術を「Fake Porn」作成用に 誰かがパッケージングしたり、チュートリアルをあげてくれたり、 すごく使いやすくしてくれてるんです。 おかげで自分レベルの技術力でも試せました。 ーーInstagramについて何か思うことはありますか? Instagramという媒体に合わせて文化が発展しているのが面白いなと思ってます。 それで良いことも良くないこともあると思うんですが、 変化を見るのは楽しいですね。 作品は、「インスタ映え」をやたらと叩く人たちを見て、嫌な気持ちになったことがきっかけですね。 「インスタ映え」を気にして現実の行動が変わったりするのって、 興味深い事象だと思うので、頭ごなしに否定するのではなく、 何かそこから拾えるのではないかと思って制作しました。

原淳之助
原淳之助
原淳之助
原淳之助

ーー今後の未来、SNSというメディアはどうなっていくと思いますか? 自分が高校生の時、mixiやモバゲーが流行っていたけど、 今はもう廃れているように、またInstagramもどっかで廃れて、 新しいプラットフォームができてっていうのを繰り返すと思います。 その度に、そのプラットフォームに合わせた変化が起きるのが楽しみです。 ーー原さん自身は、SNSをどのような気持ちで使っていますか? 他の人がどう使ってるかわからないですけど、 自分はその媒体に合わせて自分が変わることを楽しみながら使ってます。 ーー好きなもの・趣味・ハマってるモノ・コトを教えてください。 テレビゲームは大好きです。最近、オープンワールドのゲームが多いから特にですけど、 みんな同じ敵キャラに苦戦した話をして盛り上がる時があっても、 それぞれ違うステータス、違う装備、違う操作で戦ってるから、 違う体験をしているんだなと気づいて、面白いなと思いました。 「Detroit:Become Human」ってゲームは特にストーリーの分岐が多くて、 人と話した時にめちゃめちゃ面白いです。 展示準備で積みゲーがいっぱいあるので、これからずっとゲームする期間に入りたいです。 ーー今後、どうなっていきたいと考えていますか? 今回の作品のスタイルは気に入っているので、まだ続けるつもりですけど、 あまりスタイルを定めずに、色々なことをやっていきたいなと思ってます。 年寄りになっても完全新作を作れるような作家でいたいです。

原淳之助

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観たいけど観たくない『エンドゲーム』への想いと“歌舞伎版アベンジャーズ”

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尾上松也

最強の、逆襲“アベンジ”へーー世界興行収入No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作 『アベンジャーズ/エンドゲーム』が、ついに4月26(金)、日本で公開を迎えてしまう。“しまう”という表現は、この記事を最後まで読んでくれれば、理解してくれるだろう。この作品でどんな結末を迎えようとも、僕らが愛してやまないこのメンバーでのアベンジャーズは、最後を迎えるのだから。 事実、ファンの熱気の高まりは今、最高潮へ。昨年の12月7日に配信された予告編は、24時間の間に2億8900万回の再生を記録。1位の記録を保持していた前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2億3000万回)を大きく上回る新記録を打ち立てた。 最凶の敵・サノスによって全宇宙の生命は半分に消し去られたものの、アベンジャーズで生き残ったキャプテン・アメリカ、ソー、ブラック・ウィドウ、ハルク、ホークアイ、そして宇宙を当てもなくさまよい、新たなスーツを開発するアイアンマンは、アントマンや“最強の新ヒーロー”キャプテン・マーベルらとともに、失った仲間たちと35億人の人々を取り戻すため、最大にして最後の戦いに挑む。 今回はこの歴史に残るであろう一作の公開前に、業界屈指のマーベルファンで知られる歌舞伎俳優の尾上松也さんにインタビューを敢行。マーベルおよびMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に興味を持ったきっかけ、アベンジャーズの魅力、そして何よりラストに向かう今の想いを、マーベルファンを代表して語ってもらった。

Interview:尾上松也

尾上松也
endgame

ヒーローが抱える闇と、キャプテン・アメリカへの憧れ

(携帯電話のケースカバーを見せて)これ、マーベルです。

——ニヤリとされましたね、さすがです。松也さんがマーベルに詳しいのは有名な話なのですが、そもそも興味を持ったきっかけは? 何がきっかけかと言うと、マーベルに限らずヒーロー自体に興味を持ったんです。マーベルのヒーローが映画などで実写化されたのは、アメリカン・コミックスの中ではあとの方なので。マーベルのきっかけはやっぱり、このMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)がまさにそれですが、いろいろなキャラクターが登場するので「これは誰だ……?」って気になるでしょ。それと、僕がそれまで見ていたヒーロー作品と圧倒的に違ったのは、キャラクターたちの心の闇の面があるところ。敵が強すぎてどうこうみたいのではなく、本人が抱えている葛藤がしっかりと描かれていて、時代や社会への風刺なども反映されているところが、世代を問わず楽しめる理由なのかなと思います。そういった一つ一つに興味を持つようになって、いろいろ知るようになりました。 ——MCUの始まりは2008年に公開された『アイアンマン』ですが、松也さんは当時観たときの印象を覚えてますか? 覚えてますね。その時点でアイアンマンの存在は知っていましたが、キャラクターを詳しく把握していなかったんです。でも、そのころは今ほどマーベルのキャラクターが世の中に認知されていなかったですし、『アイアンマン』がスタートした時点でまさかここまで壮大なシリーズとして続くとも思っていなかった。あと正直、コミックスのアイアンマンを個人的にそれほどカッコいいとは思っていなかったので、観る前は「あのアイアンマンをどうやって……」という気持ちが強かったです。ですが、観た感想としては本当に面白かった。ロバート・ダウニーJr.が見事にアイアンマンというヒーローの魅力を体現していましたし、そこはキャスティングの力を感じましたね。

尾上松也
エンドゲーム

——マーベル・スタジオのプロデューサー兼プレジデントのケヴィン・ファイギも、「MCUは、ロバート・ダウニーJr.なしでは存在しなかった」と語っていますしね。ただ、松也さんの推しヒーローはキャプテン・アメリカですよね? はい、キャプテンは好きですね。僕は歌舞伎の自主公演を主宰したり、プライベートでもフットサルチームでキャプテンをやったりとか、たまたまそういう立場になることが多いのですが、何かを率いている人を見てしまう。それは勉強のためなのかもしれませんが、そういう意味でキャプテン・アメリカは僕の憧れの一人ですね。(取材時に用意されていた『アベンジャーズ/エンドゲーム』のパネルを指差して)これ見てください! ヒーローたちの真ん中で堂々とするキャプテン・アメリカを。この中でキャプテン・アメリカは、純粋な能力値は決して高くないんですよ。ビームが出せるわけでもない、飛べるわけでもない。本来なら「お前さ〜」って言われてリスペクトを得られない可能性もあるのに、持ち前のキャプテンシーで荒くれ者たちをまとめてきた。そのキャプテンシーに男気を感じますし、もうカッコいい以外の何者でもないですよね。 ——キャプテン・アメリカのキャプテンシーを支える要素として、どういった部分が優れていると感じますか? 自分をしっかりと把握しているのがすごいですね。自分の能力をどこで、どうやって役立てるべきかを冷静に分析している。自分が出過ぎず、人を使うときは使う。リーダーというのは、ずっと先頭を走ればいいというわけではないことを、キャプテンを見るとよくわかります。これは以前にQeticさんでインタビューを受けたときにも言ったと思いますが、『アベンジャーズ』でブラック・ウィドウを信じて、彼女をチタウリの乗り物に飛び込ませて……その様子を見てるっていう。乗らんのかい! って、でもあれもキャプテンらしいですよね。 ——『アベンジャーズ/インフィニティ・フォー』でもキャプテン・アメリカはあまり前に出ずに、みんなに任せていた部分もありましたよね。 ですが『インフィニティ・フォー』に関してはサノスの強さが際立っていたし、キャプテンどうこうの話ではなくなっていましたよね。ああいう作品は、結局は善が勝つと思われている中で、サノスのように「どうしよう……強すぎる……」という展開に持っていくのは大変だと思う。しかもここまで長く続いているシリーズで。でも『インフィニティ・フォー』はいい意味で救いがなくて、あれこそアメリカン・コミックスらしさが出たし、よくやってくれたと思いました。もちろん悲しいですし、キャラクターによってはこれから面白くなりそうだったのに「ああ……消えた……」ってなりましたよ。ですが同時にどこかで「ここまでやってくれないと納得しないよな」という気持ちもありましたし、制作陣はよく勇気を出してやってくれたと感動しましたね。 ——終わったあとの劇場の雰囲気ったら……あんな映画なかったですよね。その衝撃作のあとに『アントマン&ワスプ』、そして先月公開された『キャプテン・マーベル』が続き、『インフィニティ・フォー』には出ていなかったヒーローたちも『エンドゲーム』には登場します。 いやー特にキャプテン・マーベル。ここでキャプテン・マーベルを出してくる意味はすごく大きい。あの強さ、ワクワクしかないですよ。同時に、「なんでもっと早く来なかったんだ」「何してるフューリー」と。その辺りも面白いですし、キャプテン・マーベルはアベンジャーズの中でも確実に一番強いでしょ。あの強さには笑いすら出ましたよ。

尾上松也
エンドゲーム
エンドゲーム

——ヒーローの中ではソーも強いですが、キャプテン・マーベルの強さには確かに笑いすら出ました。強力な仲間を得たアベンジャーズですが、予告編などでもやはり精神的な支柱としてキャプテン・アメリカの存在が際立っているようにも感じました。 やっぱり、再び立ち上がるときにみんなを鼓舞するのはキャプテン。僕は予告編でキャプテンを先頭に、ヒーローたちがスローモーションで歩いていくシーンが大好きなんですよ。「キャプテン!! 」って声をかけたくなる。まさにあれが僕の理想とする姿。 ——そうすると『エンドゲーム』では、キャプテンがガンガン前に出ていく場面も……。 いやいや! それはないです。アイアンマン行けですよ。今まで自分が主役の作品では最後は締めていましたが、『アベンジャーズ』シリーズに関してはキャプテンがトドメを刺したことはないですから。キャプテンはそれでいいんです。でもポスターとかでこれだけ真ん中にいるってことは……きっと何かあるのかもしれませんね。

尾上松也

アベンジャーズの魅力と、迫るラストへの偽らざる感情

——アベンジャーズの魅力についてもっと掘り下げていきたいのですが、松也さんはアベンジャーズがここまでファンの心を惹きつけるのはなぜだと思いますか? 同じコミックスのヒーローとして、これだけのキャラクターが一緒に活躍する。そういう描き方はアメリカではポピュラーなんでしょうが、日本ではMCU以前にはあまりなかったと思うんですよ。そういう意味では「ヒーローたちが同じ世界観を共有している」ことの面白さを、MCU、そしてアベンジャーズが教えてくれた。日本ではコミックスを知らない方が多い中でこれだけ人気なのも、そういうところに理由があると思います。あのスペシャル感は魅力的ですし、物語の繋げ方も見事だなと。シリーズが長く続くと、普通だったらもっとダレてしまうはずなんですけどね。新しいヒーローが出てきて「ガーディアンズ? 面白いの〜? 」なんて思っても、結果的にとても面白いわけですから。期待を常に超えてくるのはすごいですよね。 ——MCUにおける“世界観の共有”という手法と、アベンジャーズにおける“ヒーロー大集結”へのワクワク感。それらは日本の映画ファンにとっても新鮮だったと思います。 それまでもそういう作品がまったくなかったわけではないですけど、これだけ成功したシリーズはなかった。うらやましいですよね、続けようと思えば永遠にできるわけで。

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エンドゲーム
endgame

——例えば、歌舞伎の世界にそういう作品やシリーズはありますか? 人物として似ていることはありますけど、同じ人物でも作品ごとに設定やキャラクターが違うので、世界観を共有していることはないですね。ただ、僕はあってもいいと思っていて、前からやりたいのは歌舞伎の世界のヒーローを大集結させた“歌舞伎版アベンジャーズ”。それはずっと考えています。歌舞伎にはそれだけのキャラクターがいますので、いつかは実現してみたいです。 ——キャラクターで何人か目星は付いていますか? 例えばキャプテン・アメリカとか。 いくつか候補はいますね。やっぱり能力値的にはそれほど高くないけど、キャプテンシーを持っているという点で言えば、5月に『め組の喧嘩』というお芝居を上演するのですが、そこに出てくるとび職の辰五郎。『め組の喧嘩』はお相撲さんとの喧嘩のお話で、棟梁の辰五郎が先陣を切って大勢の若い衆を引き連れていくんです。ですので主役の辰五郎が、キャプテンシーを持ってヒーローたちを集める……っていうのがいいんじゃないかなと。あとハルクみたいなキャラクターだと、鎌倉権五郎という人物が歌舞伎の『暫』っていうお話に出てくるんですよ。鎌倉権五郎は、まあとにかくデカい。動きは遅いけどパワーがすごくて、一振りで何十人の首をはねてしまうぐらい。 ——“歌舞伎版アベンジャーズ”できそうですね……キャプテン辰五郎。 キャプテン辰五郎はぜひやりたいですね。 ——松也さんは、アベンジャーズのヒーローの中でキャラクター的に誰が自分に一番近いと思いますか? そうありたいのはキャプテンですけど、わりといい加減なところはいい加減なのでアントマンですかね。トニー・スタークは何も考えてないようですごく考えてますし、ほかのみんなもしっかり考えてますけど、アントマンだけはどこか「ノリだけでここまできた」みたいなところがあるじゃないですか。どちらかというと僕はそっちのタイプですね(笑)。 ——あと、松也さんの友人でヒーローっぽい人はいますか? 例えば、松也さんは山崎育三郎さん、城田優さんとIMYというプロジェクトを始動されましたが、そのお二人はいかがですか? うーん……育三郎はトニー・スタークかな。チャラチャラして適当っぽいんだけど、やるときはやるっていう。優も普段はトニー・スタークっぽい要素があるけど、基本はネガティブ思考なところがあったりするので、意外とハルクっぽいかもしれないですね(笑)。

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——それは意外ですね。あと歌舞伎の世界の方で、松也さんの代表作の一つでもある『三人吉三』では中村勘九郎さんと中村七之助さんとご一緒されていますが、そのお二人は? 七之助さんもトニー・スタークっぽいですね。勘九郎さんは……ピーター・クイルっぽいかな。やっぱり僕は闇が深いのでピーター・クイルかもしれないですね。基本的には楽観的だけど、実は傷つきやすいみたいな。そう考えるとキャプテン・アメリカみたいなキャラはいないですね。チームのキャプテンとしては必要だけど、プライベートはちょっと……みたいな感じなのかもしれない。まさにトニー・スタークとの関係で、認め合っているけど……。 ——ただ『エンドゲーム』ではその二人が固い握手を交わします。 そうですね。間もなく公開ですけど、もちろんとっても楽しみですし、『キャプテン・マーベル』を観てからワクワクは倍増しました。キャプテン・マーベルたちが加わったアベンジャーズがサノスとどう戦うのか、どういう風にアベンジャーズが一致団結し、どんな結末を迎えるのか。正直、このチーム、このメンバーでのアベンジャーズが最後というのはやはり寂しいですよ。いろいろなことを含めて永遠にはできないし、このときが来るのをわかってはいた。観たいけど観たくない、そんな気持ちです。できれば『エンドゲーム前編・後編』とかにしてほしいぐらいで、どこかでそれに期待している自分がいます。

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——『キャプテン・マーベル』からのスパンも短かったので、心の準備がまだできていないファンも多いかもしれません。 このあとに若いヒーローたちの新たなフェーズが始まるとしても、やはりこれだけ長い期間に渡って見てきたので、このメンバーを超えるアベンジャーズを今は想像できない。このメンバーはすべてがベストな感じがするので、終わってしまうのがとにかく寂しいですね。 ——ファン一人一人の思い入れは強いですね。逆にまだMCU、そしてアベンジャーズを知らない人もいるわけで、そういった人たちに一言かけるとしたらなんと言いますか? いやもう、うらやましいしかないですよ。「観てないの!? 楽しいぞ〜! 」って感じです。今からこの壮大なシリーズを、新鮮な気持ちで見られるわけですから。でも、ファンも『エンドゲーム』のあとに、最初からもう一回観ちゃうと思いますけどね。 ——そうですね。とにもかくにも『エンドゲーム』の結末、その“希望”を見届け、次へ進みましょう。MCUのフェーズ4以降ですが、例えば日本人ヒーローは現れますかね? どうでしょうね……あるとして侍とか忍者とかしかないんでしょうね、世界的に考えると。やっぱ日本特有のそういうキャラクターになるのかな。 ——なかなか難しそうなので、ぜひ歌舞伎版アベンジャーズを実現してほしいです。 やりたいですね。賛同してくれる方はいると思うんですけど。それかアベンジャーズを歌舞伎として成り立たせるしかないですよね。……アイアンマン難しいなぁ。 ——(一同)ハハハハハ!

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アベンジャーズ/エンド・ゲーム 4月26日(金)全国公開

監督:アンソニー&ジョー・ルッソ 製作:ケヴィン・ファィギ  出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン 原題:Avengers: Endgame 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©2019Marvel

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オフィシャルサイト

photo by 大石隼土

interview&text by ラスカル(NaNo.works)

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鬼才ジョヴァンニ・ソリッマが挑む型破りなコンサート。 100人ものチェロ奏者が一堂に会する<100チェロ>について訊く。

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「月刊flowers」(小学館)にて連載中の人気コミック『僕のジョバンニ』は、チェロをめぐる2人の少年の物語。作者の穂積氏はジョヴァンニ・ソッリマが作曲した“チェロよ、歌え!”にインスピレーションを受けてこの作品を書いたという(作中に登場するジョバンニ・バッツォーニのモデルは言うまでもなくソッリマだ)。 Giovanni Sollima, "Violoncelles, vibrez!"
ジョヴァンニ・ソッリマ氏の「チェロよ、歌え」を初めて聴いた時、そのドラマ性と静かに畳み掛けるようなミニマル・ミュージックの調べに魅了され「こんな漫画が描きたい!」と、筆を取ってしまった次第です。全く未知の世界だったチェロについて、勉強を重ねながら、そのあまりの深さに四苦八苦することもありますが何か迷った時、「チェロよ、歌え」を聴くと、不思議と次への指針を示されたような気持ちになります。一人でも多くの日本人にソッリマの音楽を聴いてほしい、そしてソッリマが毎年日本に来たくなっちゃうくらい、日本でのソッリマ人気が爆発してほしい、と心から願っています。

穂積 漫画家(月刊flowersにて「僕のジョバンニ」連載中) 100チェロ・コンサートのオフィシャル・サイトより チェロの音が紡ぐ、二人の少年の魂の物語

ソッリマは、クラシック音楽の中心的なレパートリーはもちろんのこと、バロック音楽やロック、ワールド・ミュージックなど、ジャンルの垣根を軽々と超えて活動する。技術の高さは折り紙付きで、あのヨーヨー・マも絶賛するほどの才能の持ち主である。 Giovanni Sollima, "Daydream"(Sogno ad occhi aperti)
だが、なによりもソッリマが型破りなのは、<100チェロ>という前代未聞のプロジェクトにチャレンジしているところ。100人ものチェロが一堂に会する。それだけでも耳を疑うようなアイディアだが、その100人のメンバーはプロもアマチュアも関係なし、国境も世代もキャリアを超えて、だれもが参加できる。 そして、100人はいっしょにアンサンブルを組むだけではなくクリエーションを行なう。100人といえば、標準的な編成のオーケストラよりもさらに人数が多いくらいの人数だ。そんな大勢がチェロというたった一種類の楽器でアンサンブルを組むのだから、尋常ではない。 100チェロ 穂積氏を大いに魅了する、“チェロよ、歌え”の作者ジョヴァンニ・ソッリマとは、そして、この夏来日するソッリマのプロジェクト<100チェロ>とは? 前代未聞のプロジェクトについて、ソッリマに話を聞いた。

Interview:ジョヴァンニ・ソッリマ

──100人ものチェロが一堂に会する。いったいどうしてそんな途方もないアイディアを思いついたのでしょうか。ローマにある歴史的な劇場、テアトロ・ヴァッレの閉鎖がきっかけになったというのは本当ですか。劇場の閉鎖に反対した大勢のアーティストや市民たちが劇場を占拠して、勝手に劇場を運営したと聞いています。 2012年の冬のことです。当時、私はローマのサンタ・チェチーリア音楽院で教えていました。すでに一年前からテアトロ・ヴァッレの占拠は始まっていて、私はここでソロ・コンサートをするように頼まれました。ある晩、作曲家でチェリスト、プロデューサーでもあるエンリコ・メロッツィにバーで会いました。ワインのボトルを置いて、メロッツィは私にテアトロ・ヴァッレに出演してほしいと頼んできたのです。そこで、こう答えたのです。「どうしてひとりで出なきゃいけないんだ? この経験をみんなでシェアしたらすばらしいじゃないか」。そこで、まずはメロッツィとデュオをやろうと考えた。ワインをどんどんと飲み続けているうちに、話は大きくなって、デュオじゃなくて、カルテットにしよう、いやカルテットじゃなくて12人にしたらどうか。そうやってワインのボトルを空け続けて、ついにワインがなくなったときは「100人のチェロ」になっていました。もしワインがまだ残っていたら、もっと人数が増えていたかもしれませんね。 100チェロ ──チェロというひとつの楽器だけでアンサンブルを組むのは珍しいですよね。ベルリン・フィルには12人のチェリストたちというアンサンブルがありますが、100人とは前代未聞です。いったいどんな人たちが集まったのでしょう。 実はチェロ・アンサンブルには古くからの歴史があるのです。16世紀や17世紀のヴィオラ・ダ・ガンバのコンソート(合奏)に始まって、フレスコバルディやダウランド、パーセルといった作曲家たちの音楽があり、その後、クレンゲルやゴルターマン、フランショーム、ヴィラ=ロボス、カザルスらによって、世紀を超えて受け継がれてきました。<100チェロ>の参加者はまったくばらばらです。年齢は6歳から75歳まで。プロもいればアマチュアもいる、学生もいれば初心者もいる。2日前にチェロを買ってYouTubeで勉強したという人までいましたよ。実に多種多様な参加者で、信じられないくらいエキサイティングなグループができあがりました。 Giovanni Sollima & 100 Cellos, "Hallelujah" by Leonard Cohen
Giovanni Sollima & the 100 Cellos: “Bourrée” by Johann Sebastian Bach
──その100人でなにを演奏したのでしょう。 メロッツィと私はレパートリーを作り出す必要性を感じました。<100チェロ>ではオリジナルの楽曲と既存の楽曲のアレンジをレパートリーにしています。最初は集団即興からスタートしました。まずは劇場で、次にストリートで。フラッシュモブ・パフォーマンスをしたり、私たちはいろいろな場所に繰り出しました。真の目的は、人々が音楽や文化に接したり学んだりする権利を守るため、チェロの魅力をみんなに広めるため、そしてテアトロ・ヴァッレをはじめとするイタリア文化の発信地の危機的な状況をどうにしかしたい、ということでした。私たちは劇場でいっしょに寝泊まりし、すべてを共有したのです。たくさんのチェロの教師たちが、生徒を連れて参加してくれました。みんなボランティアです。集まったのはイタリア人だけじゃありません。バロック、クラシック、ロック、ジャズ、現代音楽など様々なバックグラウンドを持ったチェリストたちが集まりました。それからの3日間は嵐のようでした。公開リハーサル、ソロ・パフォーマンス、少人数のアンサンブル、作曲コンテスト、そして<100チェロ>のファイナル・コンサート。歌手やソリスト、ポップスからもゲストを迎えました。だれもが打ち解けて、圧倒的なエネルギーと熱意に溢れていました。これは新しい一年に向けて「バッテリーをチャージ」したのだ。そんなふうに感じたので、次の年も同じことを繰り返して、今に至っているのです。 100チェロ ──<100チェロ>プロジェクトは、日本でも参加者を募って行われますが、なぜプロもアマチュアも公開で募集するのでしょうか。プレーヤーの技術の差が問題を引き起こしませんか。 <100チェロ>はあらゆるレベル、あらゆる経歴の人にオープンな、真の愛の結晶なんです。プレーヤーのレベルの差など気にしません。もちろん、レベルが違うことによる難しさはありますよ。だから、いろんなプログラムを準備して、とても難しいパートもとても簡単なパートも用意しているのです。2012年から現在に至るまで、開催場所にもよりますが、だいたい20人ほどの決まったメンバーがいて、ありがたいことに彼らが新しいチェリストたち、特に若い人や子供たちの指導役に回ってくれています。また、マリオ・ブルネロを始め、大勢の著名なチェリストたちがこのプロジェクトに参加してくれました。 ──これまでの<100チェロ>のリハーサルはどのように進行されるのでしょう。オーケストラのリハーサルみたいな感じでしょうか。指揮者はいますか。 そう、リハーサルは最初からオーディエンスに公開していて、これが本当に楽しい! たくさん試行錯誤しながら進めています。いわばシンフォニーオーケストラと巨大なロックバンドの融合のようなものですね。指揮は私とエンリコ・メロッツィが担当しています。 100チェロ ──100人のチェリストはパートごとに分かれるのでしょうか。たとえば音域によって、ソプラノ、アルト、テナー、バスみたいに? まさに基本はその通り。弦楽四重奏のように4パートがあったり、場合によっては5、6パートに分かれます。ソロ・パートもたくさんあります。 ──<100チェロ>のレパートリーはクラシックにとどまらず、すべてのジャンルにおよびます。そしてソッリマさん自身のオリジナル曲もありますね。楽曲を選ぶうえで大切な点はなんでしょうか。 やはりドラマティックなフレーズがある楽曲が必須です。ロックやフォーク、そして私やメロッツィの新しい楽曲と、古典的な音楽が交互に演奏されてストーリーになるように構成しています。 ──<100チェロ>はヨーロッパでなんども開催されていますが、どのような反応がありましたか。また、この夏の日本公演ではどんなことが起きると思いますか。 <100チェロ>では、いつも熱狂的な反応が届きます。これは特定の曲や音楽についてだけではなく、このプロジェクトの社会的、文化的、政治的な意義への熱狂なのでしょう。私が思うに、このプロジェクトではたとえクラシック音楽を演奏していても、ある意味でクラシックのコンサートの確立された型を壊しているようなところがあります。だからこそ、さまざまな人の心に響いているのではないでしょうか。日本には歴史と先進性、伝統とモダンが理想的に混じり合ったすばらしい文化がありますよね。だから、きっと日本でも同じような熱狂が訪れると期待しています。        Giovanni Sollima & the 100 Cellos, "Another Brick in the Wall" by Pink Floyd

Text by Yoichi Iio

ジョヴァンニ・ソッリマ

100チェロ 1962年イタリア・シチリア州パレルモ出身。音楽家一家に生まれたソッリマは、パレルモ音楽院で、Giovanni Perrieraからチェロを、父エリオドロ・ソッリマから作曲を学んだ。優秀な成績で卒業後、シュトゥットガルト音楽大学とモーツァルテウム音楽大学で、チェロをアントニオ・ヤニグロに、作曲をミルコ・ケレメンについて学んだ。これまでクラウディオ・アバド、フィリップ・グラス、ヨーヨー・マなど多くの巨匠と共演。アメリカではパティ・スミスとのコラボレーションも行い、ピーター・グリーナウェイ監督の映画『レンブラントの夜警』には、ソッリマの作曲した“チェロよ歌え!”、“Spasimo”が随所に使用されている。2013年と2014年の2年続けてイタリアの<La Notte della Taranta>フェスティバル(13万人動員)のディレクター/指揮兼コンサートマスターを努め、近年は<100チェロ>というプロジェクトも行っている。

EVENT INFORMATION

ジョヴァンニ・ソッリマ 100チェロコンサート

2019年8月12日(月・祝) 開演18:00(開場17:15) すみだトリフォニーホール 大ホール 全席指定 6,000円/中学生以下3,000円 すみだ区割(区在住在勤)4,800円、すみだ学割(区在住在学の小・中・高校生)1,000円 100チェロコンサート 公式HP

RELEASE INFORMATION

来日記念盤『We Were Trees』

ジョヴァンニ・ソッリマ featuring:モニカ・レスコヴァル、カレイドスコープ・ソロイスツ・アンサンブル、パティ・スミス 2019年6月23日発売 2,700円(+消費税) 解説:松山晋也/VIVO-474 代表曲「チェロよ歌え!」の新録を収録。 詳細はこちら

INFORMATION

『僕のジョバンニ』

穂積 (著) 小学館「月刊flowers」にて連載中 詳細はこちら

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