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chop the onion × BASI(韻シスト) 対談|変化する「ヒップホップ」その自由さと魅力

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chop the onion × BASI

大阪を拠点に00年代初めよりビートメイカーとして活動するchop the onionが、自身の名義では2枚目となるアルバム『CONDUCTOR』をリリースした。

ソウルやファンク、ジャズといったブラック・ミュージックを下敷きにした、90年代のヒップホップ/ブーンバップの洗礼を受けた、豊かな音楽性とスリリングなオルタナティヴ感覚を持ち合わせた彼の生み出すビート。それらに出自も年齢もさまざまなフィーチャリング・アーティストたちの個性が乗ることで、ジャンルや時代を往来することのできる一本の道のような作品となっている。

今回は彼と同じく大阪を拠点に活動し、今作の“シールドマシン”にLIBROとともに参加した、韻シストのフロントマンでありソロとしても活躍するBASIにも参加してもらい、二人が歩んできた歴史を経ての現在地について、語ってもらった。

Talk session chop the onion × BASI(韻シスト)

――お二人は付き合いも長いと思うんですけど、そもそもの出会いはいつ頃ですか?

chop the onion 僕が韻シストにも在籍していたFUNKYMICと交流があって、彼のソロ・プロジェクトFUNKYMIC and the Saturdays Rismにも参加してたんです。その初ライヴが、韻シストの2ndミニ・アルバム『Relax Oneself 』のリリース・パーティで、確か2002年のこと。でも、その時は韻シストのライヴは観たけど、特にBASIと話すこともなく。あれ?最初に喋ったのいつやったっけ?

BASI 覚えてないなあ。

chop the onion 新金岡のジョリーパスタで飯食ったことあったよな。

BASI それは覚えてる。「chopってカルボナーラ食べるんや」って思った。

chop the onion カルボナーラがそんなに珍しかったん?

BASI 何を食べるとか、そんなことぜんぜん知らんかったから。今もそんな感じで、お互いのプライヴェートとかはほとんど知らないんですけど、音楽に関するやりとりはよくやってて、chopが作ったビートは、たぶん300曲くらいは聴いてます。「デモできたから聴いて。で、なんかあったら歌って」みたいな。

chop the onion × BASI

chop the onion

――ではchop the onionさんの音楽性については、どのような印象をお持ちですか?

BASI 基盤にジャズとかソウルとか、ブラック・ミュージックがあって、ヒップホップで言うと、ブーンバップということになると思うんですけど、90年代寄りのサウンドを作るビートメイカーって感じですね。

――chop the onionさんがBASIさんに持っているイメージは?

chop the onion 僕が韻シストの存在を知った90年代の後半~00年代の初めと、今の韻シストはメンバーも変わってますし、ぜんぜん違うものだと思うんです。いろいろと変化しながら、それぞれの時代にフィットした表現をしてるなって、思います。でも、フロントマンのBASI、サッコンもそうですけど、顔になる存在が変わってないこともあって、真ん中にある「韻シストめっちゃかっこいいな」っていう印象はずっとあります。

――韻シストの変わりゆくスタイルと変わらない魅力。そこと、BASIさんの大阪に対するレペゼン意識との関係性についてはどうですか?

BASI そういう気持ちも確実に変化してますね。韻シストを初めた頃は、レペゼンとか大阪とか、根付かせたい、認識してもらいたいっていう気持ちが強くて、それがモチベーションに繋がってました。でも今は、そういう意識はなくなったと言うか、見ているものは確実に変わりました。

chop the onion × BASI

BASI

――どのように変わったのでしょう。

BASI 漠然と”音楽”そのものを見ているような感じ。過去に自分のなかで掲げていたヒップホップとか大阪とか、そういう項目みたいなものが、音楽だけになってます。ちょっと抽象的過ぎますかね?

――いえ、なんとなく掴めます。そこで、具体的にBASIさんから出てくるものはどう変わってきましたか?

BASI シンプルに”愛”だけになってます。そこには、いろんな愛があると思うんで、それらを一つひとつ表現していきたいなと。

――大阪という土地やヒップホップを背負うことも、愛ではないのですか?

BASI そうかもしれません。でも、僕はそれを愛とは認識してなかった。勢いとか若気の至りとかが前面に出てたからだと思います。で、20年経っていろんな皮がめくれていって、真ん中にある一貫した愛というものを、明確に感じられるようになりました。

chop the onion 1周回って、みたいな?いろいろ経て大きなテーマが見えたっていう感じなんかな?

BASI どうやろ。頭にも手にも足にも鎧をいっぱいつけてたんやけど、「あれもこれもいらんのちゃうか」てなって、一つになったような。不安な気持ちとか、臆病になることとか、虚勢を張ってたことで、ついてきた感情がいっぱいあったと思うんやけど、今はそれがない。

chop the onion なるほど。僕は20年前と今で、やってることって、ほとんど変わってなくて、その間に聴いた音楽から感じたこととか、自分に足りてないと思ったことを、ほんまに微調整するくらいの感じ。ただ単に、よくモチベーション持って今もやってるなって。でも、BASIの言ってること、なんとなくわかるねん。すごいどんくさいんやけど、20年かかって、ようやく自分の音を出せるようになってきた気がするから。

――やっていることはほとんど変わっていない、ということですが、chop the onionさんは、時代ごとの潮流をどうとらえていたのですか?

chop the onion 00年代の始めくらいにジャジー・ヒップホップが流行ったり、LAのアンダーグラウンドのヒップホップが注目されたり、今だとトラップがメインストリームに与える影響とか、いろいろあると思うんですけど、対時代の流れということで言うと、10年くらい前に沼のような時期があったんです。正直、続けていくのが厳しいかも、と思ってました。

――時代の変化に惑わされた、ということでしょうか。

chop the onion カッコいい曲を聴くと、「こんなん作りたいなあ」って、ジェラシーを感じたことも少なくなかった。でも僕の場合、いろいろと採り入れようとすればするほど、作るものがどんどん良くない方向にいっちゃうんですよね。消化しきれずに二番煎じ、三番煎じ丸出しで、ダサくなるんです。モチベーションもどんどん下がってきました。それでもなんとか続けていくうちに、自分の好きなことを好きなようにやろうって、あらためて思うようになったんです。ここ2、3年は、誰かが作った曲をカッコいいと思っても、それはそれとして、素直に受け入れられるようになったし、自分やからこそできることをやれているように思います。

――自分だからこそ、できることとは何ですか?

chop the onion 言葉にするのはめっちゃ難しいですね。そうですね、自分がもっとも聴きたい音楽が、自分の作ったものになってきてるのかもしれないです。

――なるほど。今のお二人の話を聞いて思ったのが、お二人とも経緯やアプローチこそ違うんですけど、メンタルの純度が高くなったという意味では近い部分もあると。そこで、2018年秋にリリースされた、chop the onionさんが作曲したBASIさんの“愛のままに feat.唾奇”は、すごくいいタイミングだったんじゃないかと。

BASI / 愛のままに feat.唾奇 (Official Music Video)

chop the onion さっきもBASIが言ってくれたみたいに、僕は1回で何人かに何曲ものデモ音源を送るんです。そこで、BASIがいちばん最初に手を挙げてくれた曲。ほかにも、この曲を選んでくれた人がいて、BASIとの完成形を聴いた時に「これ、あの時のビートだよね?悔しい」って言ってくれたりも。そんな感じで、いろんな人から好評だったんですけど、自分では、まとめてデモを送ったなかの1曲で、特別に飛び抜けた何かがあるとは思ってなかったんですよね。

BASI 単純にビビッときたんよな。車を運転しながら聴いてたんやけど、この曲になった瞬間に車を止めて、chopにすぐ電話した。

chop the onion 「絶対取っといてな」って、すごい念押しされたのは覚えてる。だから、ほんまにBASIがひらめいたんかなって。

――「愛のままに」というタイトルの言葉通り、ナチュラル且つ強い気持ちに溢れた曲だと思いました。

BASI そう思ってもらえたなら、よかったです。それで、今日chopとの対談があるから、この曲についても、そんな感じで質問してもらえるかもって、いろいろ思い起こしてたしてたんですけど、このビートを聴いて”ウワッ”てなったこと以外、リリックをどうやって書いたのかとか、覚えてないんですよね。それだけ夢中になってたんやと思います。

――唾奇さんとのやりとりは、どんな感じだったんでしょう。

BASI 唾奇がフィーチャリングするときのスタンスは、一貫して、依頼した人からのイメージを先にヒアリングして、忠実に寄せていくタイプらしいんです。だから、そこでのやりとりは記憶はあるんですけど、自分自身がリリックを書いた時のこととか、やっぱり夢中になってた、ってことですかね。

――そして、今度はchop the onionさんのアルバム『CONDUCTOR』の“シールドマシン”にBASIさんがLIBROさんとともに参加されました。まず、BASIさんがアルバム全体を通して感じたことについて、お話を聞かせてもらえますか?

chop the onion / シールドマシン feat. LIBRO & BASI(韻シスト)

BASI 先に90年代とかいろいろ言いましたけど、chopの魅力はとにかく「このネタ何?」とか「どっから取ってきたの?」って聞きたくなる『ディグ力』やと思うんです。それがchopと一緒にやる時のモチベーション。大ネタとかじゃなくて、何かわからんけどすごくいい。それが前面に出たアルバムやなあと。あとは、いい意味でローファイのヒップホップも保ってるし、さすが職人って感じですね。

chop the onion スタンダードなサンプリングの方法とか、定番ネタを多用して作っていったら、僕の場合はゴミみたいなビートばっかになると思うんですよ。ドラムのニュアンスとか、細かいテクニカルなことを計算してできるタイプではなくて、感覚で作ってしまうんで。引っ張ってきたものに対して、「この音は合うかな」とか、「これをこういうふうに食い合わせたらおもしろいかな」とか、そういうアイデアがすべてやし、それで間違いないって、ここ何年かで思えるようになってきた。だからBASIがそう言ってくれることは嬉しいし納得できます。

――『CONDUCTOR』というタイトルは、chop the onionさんの音が引っ張る音楽の旅のようなイメージですか?

chop the onion おっしゃったように、自分の音で案内していきたいとか、フィーチャリングしてくれた人をコーディネートしたいという意味もあるんですけど、もう一つ、もっと本質的な自分の音を伝えたいっていう、伝導体的な”熱を通す”という意味もあります。

――そのchop the onionさんの自分の音、熱とは?

chop the onion シーンからは離れたところでやってるんで、ほかに聴いたことのない感じはあると思うんです。だから、僕と同世代の人たちもですけど、若い人たちにもぜひ聴いてもらいたい。例えば、今のブーンバップと僕のブーンバップって、ニュアンスが違う。

――そのニュアンス、すごく興味深いです。

chop the onion ローファイということで言えば、今って機械の技術でそうしてるものが多いと思うんです。でも僕の場合は機材が古いとか、作ってる環境でそうなってるんで、その味は伝わるんじゃないかと。今はストリーミングとかがあって、無数にあるいろんな音楽と出会える良さもあるけど、逆に何を聴いていいのかわからなくて、偏ってしまうこともあると思います。そういう時代やからこそ、そこに自分の音がどう食い込めるか……、なんか落としどころを見失ってますね(笑)。

――フィーチャリング・アーティストのメンバーからも、そういう外に向いた開いたスタンスは伝わってきます。1曲目“NEO SOULE”が脇田もなりさんと、JABBA DA FOOTBALL CLUBのBAOBAB MCさんの若手二人。“シールドマシン”がBASIさんとLIBROさん。そこだけ採っても、みなさん出自もスタイルも年代も幅が広い。

chop the onion 2017年に出したアルバム『FONDUE』は、それまでに何かしら繋がりがあった人たちをメインにお願いしたんですけど、今回はまったく面識のない人にもオファーしました。脇田さんも、BAOBAB MCが僕のビートに声を入れたプリプロをくれたときに「女性ヴォーカルを入れたい。もし入れられるなら脇田さんがいい」って提案してくれて。脇田さんは、ヒップホップとかラップとか、そういう畑の人ではないですけど、ブラック・ミュージックとリンクしたことをやってるし、おもしろそうだと思ってお願いしたら受けてくれたんです。

――“シールドマシン”でのLIBROさんとBASIさんの共演。曲を聴けばしっくりくるんですけど、そもそもの組み合わせは意外でした。

chop the onion もともとはLIBROさんだけにやってもらうつもりで作ったんです。それをレーベル(※OMAKE CLUB)のオーナー、TSUBAMEくんに聴かせたら、「これBASIくんが入ったらもっとおもしろいかも」ってなって。でも、ある程度完成された曲になってたんで、今さらBASIにもLIBROさんにも失礼やとは思いつつ、まずLIBROさんに話したら、ぜんぜんOKって言ってくれて、それからBASIにもおそるおそる聞いたら快く受けてくれました。

BASI めっちゃラッキーやと思った。LIBROさんとできるんやって、テンション上がって、リリック書くのも早かったなあ。

chop the onion 確かにめっちゃ早かった。タイトな中でやってくれたよな。

BASI それこそ唾奇とやったあとやったから、この曲が何を求めてるかを感じ取るみたいな、彼から吸収したものがリリックに出せたような気はする。

chop the onion そうやね。LIBROさんの世界観をしっかりキャッチしてくれたんかなって、思ってた。

BASI すごい好きなビートで、レゲエの要素があるのもよかった。chopって、ジャズにはまってたらジャズが続いたり、その時はまってるものが素直に出る。そこでレゲエ抜いてきたなって。で、そこに天才現るって感じで、LIBROさんの言葉の乗せ方に感動して。そのちょっと前に、サイプレス上野とロベルト吉野のアルバム『ドリーム銀座』に入ってる、僕が参加した曲“RUN AND GUN pt.2 feat.BASI,HUNGER”をプロデュースしてくれたのがLIBROさんで、初めて一緒に飲んだりもして、一気に距離が縮まったりとか、全部がノリノリやったんかもしれんなあ。LIBROさんが作ってた世界観に、自分が入っていくってことは、LIBROさんがテンション下がることは絶対にしたくないなって思ってたし。

――ミュージック・ビデオもすごくよかったです。リード・トラックとして、映像にもすることは、最初から決まってたんですか?

chop the onion まず、音的にすごく気にいってたんです。フックのスクラッチを入れてくれたDJ PANCHIもいい感じで、最近こういうタイプのフックってあんまりないような気もしたし、おもしろいなって。で、BASIにお願いした段階で、この二人の組み合わせを見てほしいっていう気持ちはより強くなりました。

――「シールドマシン」というタイトルもそうですし、さきほど、chop the onionさんがおっしゃっていた、”自分やからこそできること”という話にも通じてくるメッセージもあって、ビートも、ヒップホップ、ループミュージックたる魅力がダイレクトに伝わってくるものでした。

chop the onion タイトルは「掘削機」のことで、そういう突き進んで行く感じは、力強さもあるし、共感してもらえる部分もある曲やと思います。

――お二人はヒップホップというものをどうとらえているのか。アメリカではヒップホップと密接な”ラッパー”という呼称を取っ払って”ロックスター”という言葉がブームになっているような流れもあります。大雑把に言えば、ジャンル分けは意味をなさない、ということだと思うのですが。

chop the onion カテゴライズとしてはヒップホップでありループ・ミュージックだと思うんですけど、脇田さんのような、ラップ畑に人じゃない人ともやるし、一括りに何かっていうのはあまり考えてないですね。ヒップホップと言われても、ぜんぜん違う解釈をする人がいても、そこは何でもいいですね。

BASI 今おっしゃったようなアメリカの話はわかります。じゃあ僕はどうなのか。やっぱり根底にヒップホップがあるし、今までやってきたこともこれからもやっていくこともヒップホップ。でも、最初にも言ったようにそれをレペゼンするとか、そんな感じではないんです。そもそも、いろんなものに変化していくことがヒップホップやと思うんです。ロックにもなるしレゲエにもなるし、R&Bにもなる。自由、それが魅力やと思うんです。

――まさに、呼称が制約になったら、ヒップホップって本末転倒のような気がします。最後にお二人のこれからついて、話しを聞かせていただけますか?

chop the onion 基本的にビートメイカーとしてしっかり活動していきたくて、いろんな人の曲を作っていきたいです。で、自分の名義でも、インストのビート集とか、そういうアウトプットができたらと、思ってます。

BASI 今年から韻シストは<OSAKA GOOD VIBES 2019>というフェスをスタートするんで、注目いただきたいです。ソロとしては、2018年は韻シストの20周年に集中したんで、なにかフィジカルの作品をリリースしたいと思ってます。

Interview : TAISHI IWAMI

『CONDUCTOR』

chop the onion × BASI

chop the onion OMAKE-CLUB Price:¥1,500 + Tax

Tracklist 01. NEO SOLE feat. 脇田もなり & BAOBAB MC(JBFC) 02. ワンダフルライフ feat. ナオヒロック & カイオンザマイク 03. シールドマシン feat. LIBRO & BASI(韻シスト) 04. SUNSET feat. youheyhey 05. Dangerous Minds feat. Meiso 06. L.A.V sh*t feat. KN-SUN(Improve) & cleafrookie(MiLESBROS) 07. SWEET NIGHT feat. PANORAMA FAMILY 08. Rever Side Walker feat. チークタイム温度 09.すこしこのまま feat. WATT a.k.a. ヨッテルブッテル 10. MOVE feat. BAOBAB MC(JBFC)

All Track Produced by chop the onion Mixed & Mastered by Tomonao Tanaka(gouache / LongLongLabel)

 

chop the onion(チョップ ザ オニオン)

2002年よりFUNKYMIC and the Saturdays Rismのトラックメーカー、DJとして5年間活動後、ソロでトラックメイカーとして活動をスタートする。トラック提供や個展のBGM、コラボ作品などで、活動している中、2015年11月にOMAKE CLUBに加入。FREEでEP2枚を配信し、2017年1月にOMAKE CLUBより1ST ALBUM「FONDUE」をリリース。

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BASI

1998年に韻シストを結成し、結成20年目に突入。2018年8月に8枚目のフルアルバム「IN-FINITY」をリリース。2011年に自身のレーベル「BASIC MUSIC」を設立。2017年に5枚目のソロアルバム「LOVEBUM」をリリース。インディーズオリコンチャート TOP10にランクイン。最近ではCHARA、Lucky Tapseなどの作品にMC(ラッパー)として参加。"BASI & THE BASIC BAND"名義でも2017年から活動を開始しており、2018年に1st EP「Rainy EP」をリリース。そして10月には7インチ「愛のままに feat.唾奇 / 星を見上げる」を発売。

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<みんモー>を手がけるクルマ好きDJ・ピストン西沢が語る、アルファ ロメオ SUVの魅力

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2019年1月11日(金)から13日(日)まで幕張メッセにおいて東京オートサロン2019が開催された。今回は併設した野外イベント会場入場無料エリアにおいて、“みんモーSUV@TOKYO AUTO SALON SPECIAL”が行われ、そこには『Alfa Romeo Stelvio(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』、しかもトップグレードの『Quadrifoglio(クアドリフォリオ)』が姿を見せた。そこでみんモーの総合プロデューサーであり、クルマ好きのDJとしても有名なピストン西沢氏に話を伺いながら、アルファ ロメオやステルヴィオ クアドリフォリオの魅力を解き明かしてみたい。

クルマをリアルに感じられるのがみんモーの魅力

「自分で行ってみたい、遊んでみたいイベントがなかったんです。だから自分で始めました」。 なぜみんモー、みんなのモーターショーを始めたのかを尋ねると、例の軽快な喋りでピストン西沢氏は語り始める。「いろいろなクルマがたくさん走るのがいいでしょう。固いインプレッションではなく、楽しくクルマを愛でるという姿勢で、人にものを伝えることが僕にとっては大事だったんです。そうすると誰かのところで一緒にやらせてもらうのは、ちょっと手狭だと感じ、自分で立ち上げた方が早かったんです」という。 これまでのみんモーを見学しても、たくさんのクルマが会場の様々な場所に展示、あるいは走りながら、来場者を楽しませている。そこでは実際にクルマに触れ、走るという、クルマ自体を肌で感じられるリアリティがある。そこにピストン西沢氏は気付き、その楽しさを多くの人たちに伝えたいと思ったのだろう。 今回も会場には8台のSUVが集合し、同乗走行と展示が終日実施された。今最もにぎわいを見せるSUV市場。日本市場においてもそのシェアはこの5~6年で2倍以上となった。その魅力はすべての要素が適度なバランスで整えられているということが挙げられる。悪路走破性はもちろんのこと、居住性や積載性、走りにおいても最新技術の投入によりスポーツ走行も楽しめるクルマが出てきている。そんなSUVに魅力を感じる人たちが多いのは当然だ。 ピストン西沢氏も、「セダンという選択肢は徐々にマニアックになっていますね。アルファ ロメオでもSUVのステルヴィオが登場しましたし、世の中的にはSUVの方がメインになってきていると思いますよ」とコメントする。

ピストン西沢氏が最初に好きになった外国のクルマ──アルファ ロメオ

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Text:内田 俊一(Shunichi Uchida) Photos:濱上 英翔

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「Shure」開発総責任者に聞く、世界のトップ・ミュージシャンから選ばれ続ける確かな品質と魅力

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Shure

人気の『SE高遮音性イヤホンシリーズ』などを筆頭に、音楽リスナーが選ぶイヤホンの定番として高い人気を博しているShure(シュア)。米イリノイ州シカゴ近郊ナイルズに本社を構えるShureのスタートは、1920年代にまでさかのぼる。

1925年、創業者のシドニー・N・シュアは、工場製造による無線機製品が市販される以前に無線機部品キットを販売する「シュア・ラジオ・カンパニー」を設立。その後マイクロホンメーカーへと事業を拡大し、世界初の単一指向性マイクにして通称「エルヴィスマイク」と呼ばれる『Model 55 Unydine』、“スリラー”といったマイケル・ジャクソン作品のボーカル録音時にエンジニアのブルース・スウェーデンによって採用された『SM7』、そして「ハンドマイク」の最も基本的な形となった『SM58』など、様々なプロ・ミュージシャンに愛されるマイクロホンを開発した。

そして1997年には、Shure初のパーソナルモニターシステム、PSM600とE1イヤホンを発表。このE1イヤホンがShureが開発した最初のイヤホンとなる。この製品はミュージシャンたちのライブを支えるイヤモニの定番として人気を博し、さらに彼らがE1をツアーバスなどでオフ時にも使ったことで、「あのイヤホンは何?」と、一般ユーザーにも人気が波及。今では『SE高遮音性イヤホンシリーズ』を筆頭に、音楽リスナーの定番ブランドになった。

そうした歴史を持つブランドならではのShureの最大の特徴は、どのアイテムも「プロのミュージシャンのために」開発されていること。『SE高遮音性イヤホンシリーズ』の特徴となっている高い遮音性も、もともとはミュージシャンがライブで最大限のパフォーマンスを発揮するために生み出されたもの。また、Shureのアイテムのもうひとつの特徴として知られている断線時に交換可能な着脱式のケーブルシステムも、もともとは緊急を要する「ミュージシャンのライブ時の断線」に対応するため生まれたものだった。そしてもうひとつの特徴は、ミュージシャンの録音した音源を可能な限りそのままリスナーへと伝える「再現度の高い」音像。そうしたプロの現場で支持されるクオリティの高さが一般ユーザーにも広がり、2011年の発売以来イヤホンの定番としてロングセールスを続ける『SE215』を筆頭に、その上位モデル『SE315』『SE425』『SE535』『SE846』など、現在では様々な製品が人気を博している。

Shure
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SE215 ダイナミック型MicroDriver搭載で、温かみのあるディテールサウンドを再現するShureイヤホンのエントリーモデルです。より厚みのある低域を楽しめるSE215 Special Editionも展開。

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SE315 高精度MicroDriverは、低域性能を提供する最適化設計されたベースポートを搭載し、フルレンジオーディオを再現します。

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SE425 シングルツイーターとシングルウーハーの2つの高精度デュアルMicroDriverが、正確でバランスのとれたサウンドを再現します

Shure
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SE535 シングルツイーターとデュアルウーハーの3つの高精度トリプルMicroDriverが、豊かな低域を伴った奥行きあるサウンドを再現します。特に高域を強化した周波数特性にチューニングされたSE535 Special Editionも展開。

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SE846 本物のサブウーハーのレスポンスを提供する4基の高精度MicroDriverが、豊かな低域と明瞭で伸びのある高域を実現。 各イヤホンの画像元:https://www.shure.co.jp/company/about_shure

では、なぜShureのイヤホンが選ばれるのか。そして、それぞれのアイテムにはShureのどんな思いが込められているのか。1998年の入社以降米イリノイ州の本社でプロユースの製品開発にかかわり、現在はワイヤード・カテゴリー・シニアディレクターとしてマイクロホン、イヤホン/ヘッドホンなど、コンシューマー製品の開発総責任者を務めるマット・エングストローム氏に、Shure製品の魅力や、その開発秘話を聞いた。

Interview:マット・エングストローム

Shure

開発総責任者に聞く、Shure製品が選ばれ続けるその理由

――Shureのイヤホンの歴史は1997年、プロ向けのインイヤーモニターシステムからはじまっています。Shureの製品がプロに支持された理由は何だったのでしょうか?

ひとつは「耐久性」だと思う。イヤホンも、マイクもそうだけれど、プロの現場で使われる製品というのは、何十時間も続くレコーディング用のものにしても、ぶっ続けで高いパフォーマンスが求められるライブ用のものにしても、どんな状況であれ音を途切れさせるわけにはいかない。そう考えたときに、どんな状況でも音を届けることができる耐久性への信頼は、とても大切なことだと思うんだ。Shureというブランドは、その耐久性や信頼性に強みを持っているブランドで、そこが多くの方々が愛してくれた魅力なんじゃないかと思う。そしてもうひとつは、Shureが90年以上事業を続けてきた中で、たゆむことなく品質向上のために改善を続けてきたこと。マイクというのは単純な構造で出来ているものではあるものの、それでも満足することはなく、「もっと何かできるんじゃないか?」と絶えず改善を繰り返してきたことで、製品のクオリティが、世界のトップ・ミュージシャンに支持し続けてもらえるようなものになっているからだと思う。安定性も、音質のクオリティも高いことで、多くの人に使えてもらっているんじゃないかと思う。

――実際にプロの方から、印象的な感想を聞いた経験はありましたか?

もちろん色んな人たちから聴いているんだけれど……たとえば、ヘンリー・ロリンズ(ブラック・フラッグの元ボーカリストとしても知られるハードコアレジェンド)はShureの大ファンで、ハンドマイク『SM58』をずっと使ってきてくれたアーティストなんだ。彼はShureの新製品が出るたびに試してくれるんだけど、『SE846』(SE高遮音性イヤホンシリーズの最上位モデルとして知られるフラッグシップアイテム)が発売されるという噂を聞きつけて、僕の方に長文のメールを送ってきてくれたこともあった。それで彼に試してもらったら、「このイヤホンは今まで使った中で一番素晴らしい」と言ってもらえたよ。

――現在ではShureのイヤホンは一般の音楽リスナーにも人気を博していますが、プロユースに耐えうる技術を一般ユーザー向けに提供するきっかけはあったのでしょうか?

ひとつ言えるのは、僕らは決して「一般ユーザー向けに製品を開発しよう」と思ったことがないということなんだ。Shureが最初に作ったイヤホン『E1』は、プロ用の機材に付属するいちアクセサリーだった。でもそれを、ミュージシャンたちがイヤホン単体で気に入ってくれた。そこで、2002年に『E2』という製品でイヤホン単体での販売をはじめたんだ。そうすると、仕事用に使っている製品ではあったものの、多くのミュージシャンが移動中の飛行機をはじめとする様々な場所で、自分が音楽を楽しむためにShureのイヤホンを使ってくれるようになった。そこから、徐々に一般ユーザーにもShureの製品が広がっていったんだ。つまり、僕らはどのラインナップについてもプロの現場に耐えうるものを作っていて、それが一般の音楽リスナーにも受け入れられていった、ということだったと思う。当時はちょうど、iPodが世にではじめた頃で、多くの人々の音楽の聴き方が変わっていった時期だった。色々な人々が、より音楽を「持ち歩くようになった」。その頃のShureのイヤホンは5万円ほどする高額なものだったけれど、それでも多くの人々がiPodと一緒にShureのイヤホンを買ってくれたんだ。そして、2003年頃になると、生産が追い付かないような状態になった。音楽を持ち歩いて楽しむ文化がアメリカにより根付いていく中で、ただ単に安いイヤホンを使うのではなくて、いい音で、いい音楽を聴きたいと思う人々が増えていったことと、Shureの歴史がリンクしていたように思えるよ。

――リスナーが音楽を楽しむ環境がより広がったことで、Shureのイヤホンにもより注目が集まることになったのですね。現在では『SEシリーズ』を筆頭に様々な価格帯のラインナップが揃っていますが、プロ用の高い技術が使われているものを、様々な価格帯で製品化することには、苦労もあったんじゃないでしょうか?

おっしゃる通りで、『SE846』は10万円前後の価格帯のモデルだし、『SE215』だと1万円代の価格帯のイヤホンで、ラインナップには様々な幅がある。でも、どの製品に関しても「プロがステージで使える」ということに対して妥協は一切していなくて、実際、『SE215』にしても、多くのプロ・ミュージシャンが実際に仕事で使ってくれているんだ。「すべてがプロのクオリティだ」と言えるものを提供しているということだね。でも、そうしたことを実現すると、ある程度の価格帯にはなってしまう。そこで僕らが考えたのは、MMCXというコネクタを使って、イヤホンのケーブルを着脱可能にするシステムだったんだ。イヤホンの最も重要な部分はモニター部分だけれど、多くのイヤホンは、ケーブルの断線によって使えなくなってしまうことが多い。それなら、ケーブルを取り換えられるようにすることで、断線が起こってもその製品を長く使えるようなものにしようと考えたんだ。これは大きな投資だったし、初めは採算もギリギリだったけれど、そうすることで「いいイヤホンを買って、それを長く使うことができる」というラインナップ展開を実現することができたと思う。

――そのシステムの実現には、実際に一般ユーザーの声が関係していたんですか?

そういった声は一般ユーザーからもたくさん届いていたよ。ただ、僕らはプロ用の製品を作っていることもあって、最初に重要な声としてあったのは、ミュージシャンのライブの現場でケーブルが壊れたときに、すぐに対応できるということだった。そこで、もともと通信機器の高周波アンテナに使われていたコネクタを、おそらく世界で初めてイヤホンに取り入れた。それ以降、僕たちも意図しなかったことが起こっていて、人々がiPhoneで音楽を聴くようになって、ジャックの形が変わっても、ユーザーが長年の自分のお気に入りのイヤホンをずっと使い続けられるような環境が生まれていった。変わり続けるリスニング環境の変化にも対応できることになったんだ。

――Shureがそうした新たな挑戦に乗り出せるのは、なぜなのでしょう? それにはShureならではの社風や、開発環境も関係していると思いますか?

僕らが一番大切にしているのは、「お客様の声を聴く」ということなんだ。Shureの製品は、実際に使ってくれている人たちのリアルな声を聞いて、その人たちの声に応えるために開発されている。僕自身も、日本にももう15回ほど来ていて、日本のユーザーの方々とも実際に話をさせてもらったりしているんだ。そうやって実際に話を聞くことで、多くの人に受け入れてもらえるような製品を生み出すことができると思うんだ。

――いち音楽好きとして、ユーザーのリアルな要望に耳を傾けるということですね。今お話を聞いていても、マットさんは音楽好きとして気さくに話してくれる雰囲気が印象的です。

メーカーとしての人間として話すよりも、同じ音楽好きとしてフランクに話した方が、色々なことをリアルに話してくれると思うし、お客さんと同じ目線で商品が作れると思うんだ。たとえば、僕は日本でイベントに出演すると、そこに集まってくれた一般のお客さんとセルフィーを撮ったりするんだけど、それをFacebookに上げると、一日で日本のFacebookフレンドが一気に増えたりすることがある(笑)。でも、そういうことが、音楽好きが本当に求めていること、お客さんの声を丁寧に聞くことに繋がっているのかもしれないよ。

――マットさんは、普段はどういう音楽が好きなんですか? また、実際にShure製品を日常的に使ってみて感じる魅力と言いますと?

僕が最初にShure製品を使ったのは、シカゴでライブハウスのPAをしていた時のことだった。シカゴに住んでいると、Shureは地元企業としてとても身近な存在なんだ。僕自身は、インディ・ロックを中心に聴くリスナーだよ。小さい頃からピアノもやっていて、今でもピアノ音楽も聴く。シカゴのローカル・ミュージシャンの音源はたくさん聴くし、車に乗りながら、自分がレコーディングした自分の音源も聴くよ。ずっと音楽が好きな人生を歩んできて、Shureに入社して、約20年間楽しく働かせてもらっているね。

――リスニングスタイルによってその人に合うイヤホンは変わってくると思うのですが、たとえば『SE高遮音性イヤホンシリーズ』だと、それぞれのモデルが得意な音楽などはあるのでしょうか?

もちろん、ひとつひとつ特徴はあって、ある程度フラットな音像のものや、やや低域が強く出るものなど、モデルごとの特性はある。でも、一番大切なのは、どんな環境で音楽を聴いているか、ということだと思う。スマートフォンで聴いているのか、オーディオ別に持っているのか、MP3なのか、Apple MusicやSpotifyのようなストリーミングサービスで聴いているのか、ハイレゾ音源なのか――。その組み合わせによって、最適なイヤホンは変わってくる。たとえば、フラッグシップモデルの『SE846』は、インピーダンスが他のイヤホンと比べてとても低いために、ミュージシャンが録音した音に限りなく近いものを楽しむことができる。でも、その代わりきちんとしたアンプが必要になるよね。たとえば、スマートフォンはあくまで電話だから、そのアンプでは『SE846』の性能を最大限発揮することができないんだ。むしろ『SE215』なら、プロでも使えるし、スマートフォンで聴いても、ハイレゾを聴いても色んな要素にバランスよく使える商品になっているんだ。

――2011年に発売された『SE215』は、日本のイヤホン市場でもいまだに定番モデルのひとつとなっています。この人気の秘訣はどんなものだと考えていますか?

いいものを作って、それを「変えない」ということは、ひとつの秘訣なんじゃないかと思う。一般的なメーカーの場合、イヤホンは2年ほどで新しいものにモデルチェンジすることも多いけれど、『SE215』は発売から8年ほど売り続けている商品で、それを僕らはまだ売り続けている。そういったメーカーは、なかなかあるものではないんだ。でも、それは僕らにとっては特別なことではなくて、たとえば、今も多くのスタジオで使われているハンドマイク『SM58』は、もう50年以上、ずっと売れ続けているものでもある。そういうものが、Shureの製品にはたくさんあるんだ。開発期間をじっくりかけて、徹底的に製品を作り込んでいるからこそ、それをユーザーの人たちにも、長く使ってもらうことができるんだと思う。だからこそ、8年経ってもベストセラーであり続けることができているんじゃないかな。

――最後に、Shureが製品を作るうえで最も大切にしていることを教えてください。

開発において大切にしているのは、やはり、お客さんの方をしっかりと見て製品を作ること。それは何も、「お客さんの要望を言うとおりにすべて聞く」ということではなくて、意見も聞くけれど、その裏にどんな気持ちが込められているかということを、きちんと見るということなんだ。この考え方は、創業者のシドニー・N・シュアが生前に言っていたことで、彼が亡くなって年月を経た今も、みんなその言葉を信じて製品を続けているんだ。また、僕らはマイクと、イヤホンの両方を製造していて、つまり「音を吹き込んだ人」と「それを聴く人」の両方を繋ぐことが仕事になっている。音が震えて生まれた振動を、電気信号に変換して、それをふたたび音の震えに戻して耳に届けているんだよね。その際、どう頑張っても、音を電気信号に変換する限り、完璧にそのままの音を届けることは難しい。でも、僕たちは、そうやって生まれた音や、生まれた言葉を、可能な限り吹き込んだときのそのままの状態で伝えたいと思っているんだ。レコーディングスタジオで演奏しているその雰囲気や、その人が音に吹き込んだ情熱のようなものまでを、取りこぼしなく、すべて伝えたい。それが僕らがやりたいことだし、それを僕らは“Shure Sound”と呼んでいるんだ。

「プロユースの現場で培った高い技術を駆使して、音楽にかかわる人々の思い/情熱を届けたい」。そんな思いで生み出されたShureの製品は、音源を制作するミュージシャンたちにとって、どんな魅力があるものなのだろう? 後日公開予定の特集第二弾では、現在の音楽シーンで活躍するミュージシャンに、その魅力を語ってもらいます!

Text by 杉山仁

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エレナ・トンラが語る「Ex:Re」の始まりと終わり。記憶を巡る日々と元彼への想いとは?

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Cocteau Twins(コクトー・ツインズ)やLush(ラッシュ)、This Mortal Coil(ディス・モータル・コイル)らが築き上げた耽美的かつ幽玄なサウンドスケープを彷彿とさせ、「初期4ADの意志を由緒正しく継承するバンド」として今や絶大な人気を誇る、ロンドン出身の3人組みDaughter(ドーター)。その紅一点であるヴォーカル&ギターのエレナ・トンラがソロ・プロジェクト「Ex:Re(エックス:レイ)」を始動し、昨年末にセルフ・タイトルのアルバムを突如リリースした。

リヴァーブやディレイの靄がかかった「ドーター」という深い森の一部であったような、エレナのヴォーカルが本作では一転。シンプルかつオーガニックなバンド・アンサンブルの中で、儚げながらも凛とした存在感を放っている。「regarding ex(元カレについて)」 と「 X-Ray(X 線)」というダブルミーニングを持つそのプロジェクト名が象徴するように、自らの過去や内面と向き合いながら、その闇の中で一筋の光を見出そうとする「祈り」にも似た歌声が、聴く者の心を捉えて離さない。 本インタビューは1月23日、〈Revue〉と銘打たれ開催された4ADショーケース・ライブの翌日に行われたものである。深淵で静謐なアルバムの空気を内包しながら、より躍動的なパフォーマンスを披露してくれた彼女にソングライティングのプロセスなどを尋ねたが、ヒリヒリとした歌詞の内容とは裏腹に、チャーミングで優しい笑顔と歌うような話し方がとても印象的だった。

Interview:エレナ・トンラ(Ex:Re)

──昨夜のライブ、素晴らしかったです。

エレナ・トンラ(以下、エレナ) ありがとう(笑)。 ──どの曲も音源より躍動感があって新鮮でしたが、特に最後に演奏した“Romance”は、PVの舞台がナイトクラブということもあって音源よりもダンサンブルでしたね。やはりライブと音源は「別物」というふうに考えているのですか? エレナ そうね、“Romance”は歌詞もクラブでの体験を歌ったもので、他の曲よりもコンポーズの段階からダンスミュージックを意識したものだったわ。あの曲以外は、なるべく音源のムードをライブでも再現しようとは思っていたのだけど、やっぱり機材面での制限がある中、生のアンサンブルだから、そのまま再現するのは難しいところがあるのかもしれない。
──昨夜のサポートメンバーは、レコーディングでも参加していたファビアン・プリン(ドラム、パーカッション)と、以前ドーターの曲のアレンジを担当した作曲家のジョセフィーヌ・スティーブンソン(チェロ)だったのですか? エレナ そう。ジョセフィーヌはベースとコーラスも担当してくれた。それと、ギターとベースで参加してくれたのはジェスロ・フォックスを加えた4人編成ね。 ──そもそも今回、エレナさんがソロ・プロジェクトを立ち上げた経緯を教えてくれますか? エレナ ドーターはもう8年くらいやっていて、ちょっとお休みを取ることにしたの。その間、音楽以外のことを楽しもうっていう話になったのだけど、結局私はそのまま音楽をやり始めていて(笑)。でも、ソロでやるならドーターとは違うコンセプトを打ち立てようと思って、それで自分の人生について表現するプロジェクトにしたの。だから基本的には一人きりで、1年かけて作曲をしてる。で、アルバム1枚分の曲が揃った時点でフェビアンに手伝ってもらって仕上げたわ。 ──プロジェクト名「エックス:レイ」には、「元カレについて」という意味が込められているとか。 エレナ そう。最初は本当に、歌詞も元カレについて書こうと思ったのだけど、作り進めていくにつれて結局これは、「彼が不在する世界」についての歌詞だから、自分自身についての作品なんだなって気づいたの。とはいえ発端は、「元カレに宛てた手紙のような作品」というコンセプトだったから、名前もエックス:レイのままにしているの。 ──かなり赤裸々な歌詞ですが、過去に起きた辛い出来事を作品として昇華させることは、ある意味セラピー的な要素がありましたか? エレナ そう、まさにセラピーだった(笑)。作曲を通じて自分の心の中に溜まっていたものを出し切ることが、この時の私には必要だったのだと思う。 ──以前、あなたはイゴール(ドーターのリーダー)と恋人同士だったと聞いていたので、「これってひょっとしてイゴールのことを歌っているのかな」って思ったんですが。 エレナ うふふふ。イゴールとは随分前に付き合っていて、確かドーターのファースト『If You Leave』(2013年)をリリースした直後くらいに別れたから、彼が恋人だったのはかなり昔のことなの(笑)。エックス:レイで歌っている人は、イゴールとは全く関係ないのよ。 ──そうだったんですね。恋人関係を解消した後もこうしてずっと、イゴールとはバンド・メンバーとして苦楽を共にしているわけですよね。それって素敵なことだなと思いました。 エレナ 私もそう思う。彼とはバンド・メンバーとして出会い、クリエイティブな部分での強い結びつきがあって。最初はそれに圧倒されて恋心も芽生えてしまったのだけど、今はそこも通り越して再びクリエイティブな部分をお互いに尊敬し合う仲になれた。それで本当に良かったと思っているわ。 ──ドーターとエックス:レイでは、サウンドのテクスチャーのどんなところに違いがありますか? エレナ そうね、ドーターもエックス:レイも私の書いた歌詞を私が歌っているという意味では、共通点もたくさんあるのだけど、エックス:レイは「記憶」を手繰るように作っていく音楽だったので、サウンド面でもちょっと映画っぽいというか、映像的な感覚があると自分では思う。聴いた人がどう感じるかはまた別の話だけど。 ──実際に何か、既存の映像作品を思い浮かべたり、リファレンスにしたりしたのでしょうか。 エレナ うーん、特定の映像作品がこの作品に直接影響を与えたということはなかったのだけど、一昨年ドーターがビデオゲーム『Life Is Strange: Before the Storm』のサントラ(『Music From Before the Storm』)を手がけた時に、初めて自分たちは「映像に音を合わせる」という作業にチャレンジしたの。その時の経験が、結構自分の中では大きかったのかも知れない。マインドがシフトしたというか。しかも、それはエックス:レイの制作に入る直前にやっていたことだったので、本作のテクスチャーにも影響を与えていると思う。 ──とても興味深いです。確かにエックス:レイのサウンドはシンプルで、音の隙間を大事にしているというか。極限まで音をそぎ落とすことによって、聴き手の想像力を投影しやすい音楽だと思ったんですけど、それはどこかサントラ的な要素があるからなのかも知れないですね。 エレナ 例えばエックス:レイは、ドーターと比べるとリヴァーブやディレイのような空間系のエフェクターをあまり使わず、そこで鳴っている音をダイレクトに届けるようにしたの。だから、あなたの言うように行間を楽しめる音楽なのかも知れない。そこまで意識したことはなかったけど、素敵な意見だわ(笑)。 ──実際のソングライティングはどのように行ったのでしょうか。どの曲も美しく、最初に言ったようにドーターよりも抑制されたループの繰り返しが多いですよね。 エレナ そう。今回、曲を作るにあたって毎日スタジオへ通うというルーティンにして。まずはギターで簡単なリフを作ってから、それを繰り返しループさせて、その上に思いつくメロディを感情の赴くままに乗せていったの。 ──同時に、あなたのルーツであるNeil Young(ニール・ヤング)やJeff Buckley(ジェフ・バックリー)、Bob Dylan(ボブ・ディラン)などがより浮き彫りになったように思います。 エレナ 今回の作曲に関しては、最初はギターとピアノのみというクラシックなやり方から始めたので、確かに自分のルーツがドーターよりも前面に出ているかも知れない。歌とギター、もしくは歌とピアノがより密接に絡み合っているというか。で、曲の骨子が出来上がったところでファビアンと一緒にアレンジを構築していく中で、どんどんシネマティックになっていったの。あと、さっき「記憶」を辿ると言ったけど、曲を作っている時には自分がティーンエイジャーに戻ったような感覚があった。それもきっと、ルーツを強く感じさせる曲になった理由なのかも。 ──今、僕が挙げたアーティスト以外で、今回あなたに影響を与えた音楽はありますか? エレナ どうかしら。今回は、自分に起きたストーリーを体験し直す作業が多かったから、過去に交わした会話の一部を使ったり、街を歩いている時に飛び込んでくる音や、その場の雰囲気などを楽曲に取り込んだりしようとは思ったけど。ドーターの場合だと、私たち3人が普段聴いている音楽のテイストが色々混じり合って、ああいうサウンドになっているんだけど、今回は「シーン」を「キャプチャー」するという感じだったから、そういう意味でもかなり違ったものになったと思う。 ──今回、4ADのショーケース的なイベントでの来日でしたが、あなたにとって、そしてドーターにとって4ADはどんな存在ですか? エレナ 4ADに関しては、実はレーベルのことを意識する前からレッド・ハウス・ペインターズのアルバムを持っていたの。まだその時は、レーベルっていう概念もまだなかったのだけど。ただ、とっても好きで大切にしていたレコードだったし、ロゴも「かっこいいデザインだな」とは思っていた。それから10年くらいして、幸い私たちは4ADとサインを交わしたのだけど、窓口だった人がとってもいい人だったのよね。その人柄に惹かれたというか……音楽を大事にしているし、自分たちのレーベルに誇りを持って、どんなレーベルカラーを打ち出していけばいいのか、明確なビジョンを持っていたの。きっとそういうところが、自分たちにしっくりきたのかも。 ──まずは、人と人とのつながりが大切ということなんですね。 エレナ もちろん、音楽的にも素晴らしいレーベルだと思う。最近は本当に様々なスタイルのバンドが所属しているけど、どこか共通点を感じさせるというか。「質感」みたいなものがちゃんとあるの。なかなか言葉ではうまく言い表せないのだけど、例えば今回のショーケースでも、3組とも全く違う音楽性なのに、一夜のイベントとして成立するわけじゃない? そこが4ADの面白さだし魅力だと思うわ。 ──アートワークも独特ですけど、もっとも好きな4ADのレコードジャケットを聞かせてもらえますか? エレナ 難問ね。ええと……待って、いま頭の中で部屋のレコード棚を一枚一枚確認しているから(笑)。何かしら。コクトー・ツインズもピクシーズも好きだし、新しいところだとベイルートとか。でもたくさんありすぎて分からない。うーん、でもやっぱり、コクトー・ツインズのヴィジュアルは大好きよ。 ──これからまたドーターの活動も始まると思うんですけど、エックス:レイも継続してやっていく予定ですか? エレナ エックス:レイは、これで完結したと思っていて。なのでセカンド・アルバムは作らないと思う。「元カレについて」がテーマだから、逆にこれ以上作らずに済むことを祈るわ(笑)。実はすでにドーターの曲作りが始まっているので、それを引き続き進めながら、今年はエックス:レイのツアーをもう少しやる予定よ。
ElenaTonra

text by 黒田隆憲

RELEASE INFORMATION

Ex:Re

2019.02.01 Release

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SALU× SUMIRE ×BABEL LABELによる映画『LAPSE』座談会

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山田孝之がプロデュースを手掛けた映画『デイアンドナイト』や、 真野恵里菜が主演した映画『青の帰り道』など話題作が続くBABEL LABELが、オリジナル映画製作プロジェクト〈BABEL FILM〉を始動。その第一弾として『LAPSE(ラプス)』を完成させた。

本作は、アベラヒデノブ監督、〈HAVIT ART STUDIO(ハビットアートスタジオ)〉の今野里絵監督、そして志真健太郎監督という3人のディレクターによる「未来」をテーマに制作した3篇から成るオムニバス映画。「クローン」や「AI」「犯罪予知」といった、今後現実になるかも知れない未来を舞台に人はどう生きていくのかを、それぞれの視点で描く刺激的な内容だ。

映画『LAPSE ラプス』予告編

なお、主題歌「LIGHTS」を歌うのは、ラッパーのSALU。「過去を振り返らず、未来に抗え」という映画全体を貫くメッセージを、シンプルな言葉の中に見事に集約させている。

そこで今回Qeticでは、BABEL LABELの山田久人プロデューサーと、『LAPSE』の1篇『SIN』でメガフォンを取った志真健太郎監督でメガフォンを取った志真健太郎監督、HAVIT ART STUDIOによる『リンデン・バウム・ダンス』で主演を演じたSUMIRE、そしてSALUの4人に、本作にかかる意気込みや制作中のエピソードはもちろん、テーマである「未来」についてなど語り合ってもらった。

Interview SALU × SUMIRE × BABEL LABEL(山田久人・志真健太郎)

LAPSE

──まずは今回、このオムニバス作品『LAPSE』を作るに至った経緯からお聞かせください。

山田久人(以下、山田) 僕らBABEL LABELは、来年で設立10周年を迎えます。元々は自主映画を制作しながら自分たちなりのメッセージを発信していた集団だったのですが、この10年の間にディレクターが7名となり、映画やドラマ、MV、CMなど様々な分野で幅広く活動できるようになっていきました。ただその一方で、メッセージ性の高い作品を発信する機会というのが徐々に少なくなってきていたんです。それで今回は「原点回帰」というか、初心に帰るつもりでオムニバス映画を製作しようと。それも、単発ではなく定期的に継続する企画として考えているんですね。『LAPSE』はその第一弾というわけです。

──監督のセレクト、作品全体のテーマはどうやって決めたのでしょうか。

山田 今、BABEL LABELがメッセージを発信していく上で、「この人しかいない」と思う監督を3人セレクトしました。しかも、全くタイプの違う人にしたかった。アベラヒデノブ、〈HAVIT ART STUDIO〉、そして志真健太郎という3人のディレクターのうち、多くの人が驚いたのが、これが映画デビューとなる〈HAVIT ART STUDIO〉だと思います。これまで主に、ヒップホップのMVを中心に撮ってきた映像制作チームで、2年前にBABEL LABELに加入してもらった時には、まさか一緒に映画を撮ることになるとは僕らも思っていなかった。今回、「世の中を驚かせたい」というのも一つのテーマだったので、このチャレンジングな試みを行ってみました。

3人のディレクターには、それぞれ「未来についての作品を撮ってほしい」ということだけを伝えました。「未来」を題材にした映画というのは、これまでにも数多く作られてきましたが、とりわけ僕が感銘を受けたのは、小さい頃に読んだ手塚治虫さんの作品だったんです。彼の描く「未来」というのは、絵空事のような「遠い未来」では決してなく、むしろ現在と地続きになっている「近い未来」が多かったんですよね。すでに現在でも起きているような話を、未来の世界に投影させているというか。そこに衝撃を受けたのだと思います。本作『LAPSE』でも、そういう「地続きの未来」を描くことによって現代社会に強いメッセージを投げかけられたらいいなと。

SALU「LIGHTS」

──映画全体の主題歌として、SALUさんを起用した経緯は?

山田 これまでにBABEL LABELは、SALUさんのMVを制作させていただいたこともありますし、それこそ志真監督は『東京メトロ』のCMでSALUさんに楽曲を書き下ろしていただいて、本人にも出演していただいています。僕自身もSALUさんの大ファンで、未来について歌ったメッセージソング“2045”(2017年)という楽曲にもピンときていたんですよね。監督や僕らも含め同世代ということもあって、映像としては3作品ですが、僕としては主題歌込みで4本の作品で1つの作品が作れる願いを込めて是非お願いしたいなと。

LAPSE

──これまでにもSALUさんとタッグを組んできた志真監督は、彼のどんなところに魅力を感じていますか?

志真健太郎(以下、志真) 元々ヒップホップは大好きで、SALUさんの楽曲も普段からよく聴いていました。すごく「自由」を感じるんですよね。ヒップホップにはいくつかのルールやトーン、マナーがありますが、それに対してすごくチャレンジングなアーティストだなと。一緒に作る映像も、僕にとってはいつも刺激的でした。今回、撮影中に山田から「『LAPSE』の主題歌はSALUさんでいきたい」と聞いた時にはメチャメチャ嬉しかったし、この“LIGHTS”という楽曲が本編最後に流れた時の感動は、是非多くの人に味わってもらいたいです。

── SALUさんはどんな風に楽曲を制作したのですか?

LAPSE

SALU この“LIGHTS”という曲は、以前から僕が「未来」をテーマに書いていたものだったんです。途中で書けなくなってしまったんですよね。なんか、わざとらしいというか、ありきたりの言葉しか出てこなくなってしまって、ずっと寝かせてあった。今回、映画の主題歌というオファーをいただき、実際に作品を観せていただいた時からずっと、この“LIGHTS”のサビが頭の中でリピートするようになったんです。それでもう一度取り掛かってみたところ、ようやく完成させることが出来て。なので僕としては、「映画用の楽曲」というよりも、「映画によって完成させられた楽曲」という感じなんですよね。

──先ほど山田さんが仰っていた“2045”もそうですし、SALUさんがしばしば「未来」を楽曲のテーマにする理由は?

SALU 僕、四六時中未来のことばっかり考えているんですよ(笑)。この曲は、「過去にはもう戻れない」ということについても歌っていますが、「生きる」ことは常に「選択の連続」じゃないですか。一つの道を選択することにより、選ばれなかったもう一つの道も同時に生まれる。そこに想いを馳せると、なんだか切なくなるんですよね。人生って「脆いな」と。でも、その「脆さ」に注目するのではなく、「未来は自分で切り開くもの」と考えれば、そのことに対して恐れたり不安に思ったりしなくていいんじゃないかって。そんなことを歌いたかったんです。

SUMIRE 私も映画を観ていて最後にこの曲が流れてきた時、今SALUさんがおっしゃったように“俺らもう戻れない 先に進むしかない”というラインに未来へのポジティヴなメッセージを強く感じました。

山田 今回SALUさんが、志真が監督している『SIN』にかなり感銘を受けたというお話を伺っていたんですけど、“俺らもう戻れない 過去に帰る場所はない”という、そこだけ聴くとネガティヴに響くラインと、SUMIREさんもおっしゃったその後に続く“先に進むしかない”というポジティヴなラインが共存することによって、この映画そのものの深みもグッと増したような気がしました。最初はもっと爽やかな楽曲が来るのかなと予想していただけに、鋭利なナイフで胸をえぐられたというか……(笑)。それが驚きつつも、めちゃくちゃ嬉しかったですね。

──映画本編に関しては、それぞれどんなふうに感じましたか?

志真 オムニバス映画って、これまで自分が関わってきた作品も含め、一つのテーマが決められていたとしても、それぞれの作品がバラバラになってしまうことって結構あるんですよ。「これ、観た人はどんなふうに受け止めるんだろう?」と心配になるオムニバス作品もあったのですが(笑)、この『LAPSE』を構成する3作品は見事に「響き合っている」というか。「未来」というテーマに対し、僕の『SIN』は割とシリアスに、アベラ監督の『失敗人間ヒトシジュニア』は風刺的にアプローチしているのに対して、HAVIT ART STUDIO監督はすごく個人的な「死」について掘り下げているじゃないですか。内面をどんどん掘り下げていくというか。

こんな風に、全くベクトルの違う作品が並びながら、一つのテーマで貫かれていることって長編ではなかなか出来ないし、オムニバスだと散漫になってしまうことが多いのに、ちゃんと補い合いつつ、響き合っているんですよ。しかも、SALUさんの主題歌がパズルの最後のピースのように、作品の中にハマっている。もう、大好きな映画ですね(笑)。

──映画の並び順も秀逸ですよね。『失敗人間ヒトシジュニア』という、ちょっとスラップスティックな映画が冒頭にあり、詩的な『リンデン・バウム・ダンス』で一呼吸置いた後、シリアスだけど最後に一筋の希望を見せる 『SIN』で締めるという。

山田 並び順に関しては、ディレクター陣はもちろん、もう1人のプロデューサーである藤井(道人)と話し合いつつ決めました。実は、脚本の段階では違う順番で考えていたんですけど、今ではこの順番しかないなと思っています。最初の『失敗人間ヒトシジュニア』で、きっと観ている人は驚くと思うんですよね。「あ、こういうシュールで笑える感じで来るのか、BABEL LABELは」って(笑)。そこからの落差というか、いい意味での「裏切り方」を楽しんでもらいたいですね。お客さんのリアクションを劇場で見てみたい(笑)。

LAPSE

──『失敗人間ヒトシジュニア』と『リンデン・バウム・ダンス』を入れ替えたら、おそらく全然印象の違う映画になるでしょうね。SUMIREさんやSALUさんは、映画についてどんな印象を持ちましたか?

SUMIRE 『失敗人間ヒトシジュニア』は、結構アベラさん自身も楽しみながら演じてるなと思いました(笑)。クローンの使い方もちょっとアニメっぽいというか、ファンタジックな仕上がりになっている。次に来る、私が主人公を演じた『リンデン・バウム・ダンス』は、AIの支配する世界を通じて「人間の持つ生身の感情」というものを、より意識させられますよね。もっと日々を大切に生きなければいけないなって。で、さっきおっしゃったように『SIN』の最後で希望を見出すという、3つの作品が並ぶことで初めて浮き彫りになるテーマがあるところが面白かったです。

SALU 『LAPSE』で描くテクノロジーの発達した未来世界は、特に日本人にとって切実な問題定義だと思いました。さっき山田さんが手塚さんについて話されていましたが、僕も手塚作品は大好きだし「あんな昔からそんなことを考えていたのか!」って驚かされるんですけど、でも、手塚さんの作品が生まれた時代からまた時が過ぎて、今の時代からじゃないと描けない「未来」もあると思うんです。そういう意味で『LAPSE』は、これからの未来を生きる上で、僕らの指標になる映画じゃないかなと思いましたね。

──映画の中で、印象に残っているシーンは?

志真 僕は『リンデン・バウム・ダンス』のラストですね。作り手であるHAVITの今野監督は、自身の経験からこの作品を撮っているらしいのですが、「お婆ちゃんのことを、すごく愛していたんだな」というのがひしひしと伝わってくるので、観ていて身につまされました。「愛」をダイレクトに感じたというか。

SUMIRE 私は『リンデン・バウム・ダンス』の結婚式のシーンですね。全身真っ黒のドレスを着ているんですけど、家族に対する苛立ちや反抗心を服装だけでなく、目配せや仕草で表現していて。

──個人的には、冒頭でカメラに向かって話しかけるシーンもとても印象に残りました。『失敗人間ヒトシジュニア』からの落差もあって、ものすごいインパクトを放っています。

SUMIRE ありがとうございます。あのシーンは結構難しくて、演技はまだまだ勉強中だなって思いました。

SALU 僕は『SIN』の、「彼らはね、繰り返しちゃうんだよね」っていう手塚とおるさんのセリフがグサッときました。というのも、自分自身も前からそういうふうに感じていて。同じことを繰り返してしまうというのは、すごく大事な鍵だと思うんですよ。主題歌“LIGHTS”と映画『LAPSE』は別々に走り出していたんですけど、かなり同じことを題材にしているというか、シンクロしているところがあるなと。

LAPSE

──さっきSALUさんが、「生きる」というのは「選択の連続」とおっしゃっていましたが、それこそまさに『SIN』で描かれているテーマじゃないですか。まるでタイムリープのように「選ばれるはずだった選択肢」を描き、「人は繰り返してしまう」ということを強調しています。

志真 そうなんです。例えば歴史を振り返ってみても、全く同じ失敗を人類は繰り返したりするじゃないですか。教科書でもそれを教えてくれているのに、「またそれやるの?」って。「アホ過ぎるだろ、子供だってわかるのに」と思うこともある。『SIN』の中で「彼らは繰り返しちゃうんだよ」っていうセリフは、恵まれない環境で暴力が連鎖する状況を冷笑するように出てきます。でも、そんな傍観者の冷笑では、連鎖を断ち切ることなど絶対にできない。当事者が変えようとしなければ、絶対に変わらないんです。僕自身、これまで何度も同じ過ちや失敗を繰り返してきた人間だからこそ、そこからどうやったら抜けられるかを一緒に考えようよ、という気持ちで撮ったというか。なのでSALUさんの“LIGHTS”で、“先に進むしかない”というラインが出てきた時には本当に救われました。

山田 僕は、『失敗人間ヒトシジュニア』の描く「未来や世の中に全く興味のない主人公」の描写が印象に残りました。彼は自分と自分の周囲のことにしか興味がなくて、クローンなんて他人事だと思って悪気なく差別している。でも、実は自分自身がクローンだと分かった時に、ようやく世の中に目を向けるんです。世の中が他人事じゃなくて当事者だということに気づき、自発的にコミットしていく。それが、「大人になること」だと思うんですよね。きっと、若い人たちの中には社会や政治に全く興味がない人も多いと思うんですけど、実は自分とは切り離して考えられないということを、この作品は訴えているんです。

──『失敗人間ヒトシジュニア』の中で、「過去を振り返らず、未来に抗え」というセリフが出てきます。これは、3作品にも主題歌にも通じるテーマなのかなと思いました。『失敗人間』の主人公の父親や『SIN』の手塚とおるさんは、「変わらない未来」の象徴で、そこを乗り越えることで「未来」を変えていこうというメッセージなのかなと。

山田 そうですね。

LAPSE

──ここでは、クローンが反逆する未来や、AIが人の死を決定する未来、犯罪を予見して除去する未来と、ディストピアが描かれていますが、皆さんは未来は明るいと思う?暗いと思う?

SALU 未来は明るいです!(笑)

志真 僕もそう思いますね、あんな暗い映画を作っておきながら、それでも未来は明るいと信じていますし、「僕らの手で明るいものにしてやる」くらいの気持ちでいたい。

SALU そうなんですよね。明るさや希望を表現するためには闇を描かなければならないし。でも、今は「未来は明るい」としか言いたくない。

──では最後に、この映画の楽しみ方についてお聞かせください。

志真 僕は映画の楽しみ方は二つあると思っています。観終わった後に誰かと話す映画と、帰り道に「これは俺の映画だ!」って噛みしめる映画。『LAPSE』は両方あると思うんですよ(笑)。なので、色んな人と、この映画についてたくさん話してほしい。誰かと観に行ったなら、それぞれのシーンについてどう感じたのかなど話題にしやすいし、隣で一緒に観ていた人が、自分とは全く違うこと考えていた、なんていう驚きが起きやすい映画だと思うんです。オムニバスなので、映画の技術、映像、社会問題、音楽など、トピックはどんどん広がっていくでしょうし。

SUMIRE 私の出演している『リンデン・バウム・ダンス』はアート要素も強いので、アート・イベントに参加するような感覚で楽しんでもらえたら嬉しいですね。私は映画を観ると、そこで流れている音楽も気になるんですけど、この映画もSALUさんの主題歌をはじめ、良い音楽がたくさん流れているので。

Jan and Naomi - Cranberry Pie (acoustic)

──『リンデン・バウム・ダンス』では、jan and naomiの“Cranberry Pie”なども流れますしね。

SALU 僕は今回、歌を作らせていただいた立場ですが、この先の未来を担う若い世代には全員観てほしいです。映像、音楽、演技、テーマ、全て高レベルの総合芸術なので、是非とも映画館で体感してください!

LAPSE

Text 黒田隆憲 /Photo 大石隼土

SALU デニムジャケット¥12,000 デニムパンツ¥12,000共にWrangler(リー・ジャパン カスタマーサービス) 柄シャツ¥26,000/PRIMALCODE(4K[sik]) ウエスタンシャツ¥30,000/LITTLEBIG(LITTLEBIG) SUMIRE ワンピース¥33,000 白シャツ¥33,000共にmister it.(mister it.) お問い合わせ先 リー・ジャパン カスタマーサービス 東京都品川区上大崎2-24-9 IKビル2F 03-5604-8948 送本先同上 喜多様宛 4k[sik] 東京都渋谷区猿楽町2-1 アベニューサイド代官山Ⅲ 3F 03-5464-9321 送本先 〒107-0062 東京都港区南青山4-5-25 シンクレア南青山102株式会社ピットカンパニー 影山様宛 LITTLEBIG 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-9-4トーカン渋谷キャステール402 03-6427-6875 送本先同上

「SUMIRE×今野里絵インタビュー|オムニバス作品『LAPSE』で表現する“未来への抗い方”とは」

BABEL LABEL が描く3篇の未来の物語 『LAPSE(ラプス)』 2019年2月16日よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開

映画『LAPSE ラプス』予告編

SALU 主題歌『LIGHTS』コラボMV

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志真健太郎 監督・脚本 『SIN』 出演:栁俊太郎、内田慈、比嘉梨乃、 平岡亮、林田麻里、手塚とおる

アベラヒデノブ 監督・脚本 『失敗人間ヒトシジュニア』 
出演:アベラヒデノブ、中村ゆりか、清水くるみ、ねお、信江勇、根岸拓哉、深水元基

HAVIT ART STUDIO監督・脚本 『リンデン・バウム・ダンス』
 出演:SUMIRE、小川あん

 

主題歌:SALU『LIGHTS』

監督:志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO 撮影:石塚将巳/佐藤匡/大橋尚広 照明:水瀬貴寛 美術:遠藤信弥 録音:吉方淳二 音楽:岩本裕司/河合里美 助監督:滑川将人  衣装:安本侑史 ヘアメイク:白銀一太/細野裕之/中島彩花 

プロデューサー:山田久人、藤井道人 製作:BABEL LABEL 
配給:アークエンタテインメント

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【25’s view】モデル・SAKURA|25人の25歳へインタビュー

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SAKURA

「大人でもなく子供でもない。じゃあ私たちは何者なんだろう。」

人生の分岐点といわれる25歳 その節目に何を感じているのだろうか?

写真家・Ryoskrr(リョウスケ)が 25人の25歳に「いまの答え」をインタビューし 写真に記録する連載シリーズ。

第二回目となる今回登場するのは、モデル・アーティストのSAKURA

25's view SAKURA / モデル

SAKURA
SAKURA

――自己紹介をお願い。

SAKURA。25歳です。 元々ダンスをやっていて、それから今はモデルやインフルエンサー、アーティスト活動と幅広く活動してます。

SAKURA
SAKURA
SAKURA

――25歳の今どんなことを感じてる?

自分のしたいことに対して、 バランスが取れるようになってきたなと思います。 そもそも東京に出てきたの3年前で、その前は静岡にいたんですけど、 25歳になる前って漠然とした25歳への期待と不安があって。 もちろん期待の方が大きかったけれど。 それが、いざ25歳になるとこれまでと違って、 経験から考えられる力がついてきたんです。 だからこそ、良い選択ができるようになったと思う。 1歩冷静になって見られる自分がいるのかも。 20歳の頃みたいに、「行けるっしょ!やっちゃえ!」みたいな 勢いはなくなったかもしれないけど、 ファッションは変わらず好きなものを着ていたい。 でも、表現の場においてはアダルトな部分がほしい!と 思ったりもするんですよね。 そういう意味では、そのあたりは模索中なのかな。

SAKURA
SAKURA
SAKURA

――SKAURA。いま持っている、生きていく上での覚悟を教えて。

”覚悟”みたいなものはないけど、”楽しみたい”とは思っていますね。 大人になったからといって、何かを出来なくなるとかは嫌だなあ。 常識や人を思う心は持ちながら、自由に楽しみたいですね。

昨日もいきなり友達と鬼ごっこしよう!ってなって、 鬼ごっこしてましたし(笑) 最近は、年下の若い子達と遊んだりして、 フレッシュな考えやパワーをもらったり、 一方で大人の意見を聞いて取り入れたり、まあ本当バランスいいですよね。 両方見れるから。

その分たくさん考えたりしちゃうけど。 とにかく大切にしているのは”楽しむこと”。 自分がやりたいことをやりたいです。 その過程で、周りの仲間と上がっていけたらなあという意識は強いですね。

SAKURA
SAKURA

――座右の銘は?

18歳の頃に彫ったタトゥーで、 日本語だと「いい子は天国に行くけど、生意気な子はどこにでも行ける。」 って言葉ですね。

私はその生意気な子っていうのを、いい風に解釈して ただ生意気ってことじゃなくて、 自分の意思を持って世間体とかを気にしないで生きられる子は きっとどこにでも行ける!って思ってるんです。

そう考えると、その時から性格は変わってないかもですね! ノリで入れましたけど、いま見ても自分っぽいなあと思います。

SAKURA

――最後に、5年後の自分へ一言。

自分らしくやれてますか?楽しくやれてますかー?って聞きたいかな。

それから、30歳もいろいろ感じてると思うけど、 私は周りの人に支えらえている部分が大きいから、その感謝を忘れずに。 でも重く感じすぎんなよ!楽しめよ!って言いたいですね。

それと30歳になった頃には音楽でもモデルでも、 もっとたくさんの人に見てもらって、 今よりもさらに本質的なメッセージを伝えていきたいです。

そんな感じかな。

自分らしく楽しんでね!

SAKURA

SAKURA

1993年生まれ ダンサーからキャリアをスタートし、三年前に上京。 現在は様々なブランドのモデルやアーティスト活動など表現の幅を広げている。 東京のカルチャーにおいて、ネクストアイコンになる唯一無二の存在である。

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Ryoskrr(リョウスケ)

1992年生まれ。 ストリートカルチャーへのアプローチと新たな表現を求めて、NYやLA、イタリアでのスナップからフォトグラファーとしてのキャリアを開始。その他、アーティトや俳優のポートレート、ファッションフォトなど幅広い分野で活動中。渋谷西武×HIDDEN CHAMPION主催の"POP&STREET展 -AN ANNUAL- 2018"に選出されるなど、写真作家としての活動も行なっている。

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Seihoに訊く、内容非公開イベント「靉靆」とは?

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Seiho

2月8日、Seiho自身のTwitterにて突如発表した正体不明のイベント<靉靆(あいたい)>。公開された情報は、都内某所で開催されること、そして煙のようなデザインのホームページのみにもかかわらず先行チケットはあっという間にソールドアウト。

昨年からおでん屋をスタートし、夏には、アメリカツアーにて、去年最後の開催となった<Low End Theory>に出演。また、矢野顕子、KID FRESINO、Mame Kurogouchiとのコラボレーションなど、濃度の高い経験を積み重ねてきたトラックメイカーのヴィジョンはどうなっているのだろうか? またそんなSeihoが新たに始める<靉靆>とは?

気になってしょうがなかったQetic編集部は、今回のイベントについてSeihoに本人に訊いてみた。

Seiho

Interview:Seiho

Seiho

<靉靆>ってSeihoさんにとってどんなものですか?

22、3歳の時に自分でレーベルをスタートさせて、キャリアの緩やかな山みたいなのをようやく登って下り終え、この数年、いろんな方々とものづくりをし、過去の2011~2016、5年間くらいで自分が作ってきた山をいろんな人と共有させて頂いた年でした。さらに同世代のアーティストと話す機会が多かったり、自分の居場所の確認ができ30代になって次の山に行こうかなと。なので今回のショーはその最初の動きと言えるかもしれないです。

<靉靆>の核となるものは?

これから、この公演に関わってくれているクリエイターさんたちも発表されるんですけど、何を作るかというよりかは、どんなものが出てきても、その人から出てきたものであれば100%受け入れられる、信頼してるから「自分とはちょっと違うけどOK!」っていう人たちと作っています。それがこの公演にとって一番大事な部分です。

クローズドにした理由は?

今回、情報をクローズドにしたのは「自分だけが知っている」っていうことを認識してほしかったことが大きいです。各々が「情報の価値」をどうやって付けていくかが大事なんじゃないかと思っていて。その少ない情報の中で集まってくれた人たちで、ショーを作り上げたいなと思いました。


<靉靆>のコンセプトは?

<靉靆>はまどろんだ雲をイメージしています。雲って確実に存在はしてるけど、掴めないじゃないですか。「気持ち」もそうで、この人がこの話をしてるのって自分に好意を持ってくれてるからなのかなとか、ただ単に話の流れで言ってるのか、意地悪で言ってるのかなって考える時があると思うんですよね。けど、本人もそれを意識してやっているわけじゃなくて、ぼんやりそういうことをしていると思うんです。そういった、掴めない複合的な感情っていう意味合いもあります。 今回のショーをクローズドにしたのもそういったことを感じてほしくて。一方向から情報を見ても答えは見つからないし、かと言って多角的にその情報を見ても、見つかるわけでもない。根本的にどこかから見たら答えがあるんじゃないかなとか、深いところからみたらあるんじゃないかなとか探すけど答えはどこにもなくて、公演は存在してるけど、全体的にフワっとしていて正解はどこにもない。重要なのは自分が見たり感じたものの中から、自分なりの正解をどう探すかみたいな感じかな。でも<靉靆>のコンセプトからしたら、それ自体も正解じゃないんけど。

Seiho

<靉靆>で表現したいことは?

土曜日のお昼ぐらいにクラブから帰ってきて、ごはん食べてちょっとぼーっとして、寝ちゃって起きたらちょうど夕方の5時くらいみたいな。なんか1日無駄にしてしまったなっていう感情と、そのとき動かなきゃいけない、電気をつけなきゃいけないって思うけど動けない。意外とその時って気持ち良いじゃないですか? 今回のショーをやる前からずっとやりたかったのは、そのまどろんでる瞬間。「あーやってしまったな」っていうなにもない30分とか、ぼんやり考えながら天井を見つめて、時間だけが過ぎていくあの瞬間。ああいう感情の表現をしたいなと思ってて。僕の中でその時間のテーマはずっと根本的にあるんです。クラブでのパフォーマンスも、こっちがアグレッシブに動くことによって、感じる時間の長さを変えたいというか。音楽って時間芸術だから、長い時間を短くしたり、すごい短い一瞬の時間を長くしたりすることが一つの面白さとしてあると思う。僕のライブやDJでも、そこを操作しようと思って、積極的に自分が動いたり、突然動かなくなったり。生花とか牛乳のパフォーマンスもそう。時間をどうやってふんわり歪ませられるかみたいな。今回はそれが結構反映されてる気がしますね。

Seiho

今回の公演について、まだ秘密が多いですが、後悔させないよう頑張りますので、2月15日の17時からチケットの一般発売、ぜひチェックしてください!

Photo by Kazma Kobayashi

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4ADのホープ、メチル・エチルが語るドリーム・ポップの裏側と内面性

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メチル・エチル

Deerhunter(ディアハンター)、Gang Gang Dance(ギャング・ギャング・ダンス)、EX:RE(エクス:レイ)の3組が出演し、大盛況のうちに幕を閉じた〈4AD〉のショーケース・イベント<Revue>。実は同じとき、名門レーベルが誇る俊英がプライベートで東京滞在をしていた。彼の名はジェイク・ウェブ。オーストラリア出身で、Methyl Ethel(メチル・エチル)というバンドの中心人物である。

メチル・エチルはもともと、2013年にジェイクによるベッドルーム・プロジェクトとして始動。2017年のセカンド・アルバム『Everything Is Forgotten』は広く絶賛され、収録曲の「Drink Wine」は地元オーストラリアのインディー・シングル・チャートで首位を獲得。さらに、同地の音楽賞であるWAMアワードで、ベスト・アルバムとベスト・ポップ・アクトの2部門に選出されている。

そんな傑作を経て、2月15日にリリースされた待望の最新アルバム『Triage』では、30歳を迎えたジェイクの最新モードが提示されている。その音楽性を簡潔に表すなら、ダークで夢見心地のサイケデリック・ポップ。〈4AD〉のホープということで、内容はもちろん折り紙つきだ。ちなみに、タイトルに用いられたトリアージとは、「多数の患者の治療の順序を決定するため、傷に緊急度を割り当てること」を意味する医学用語。どうしてこの言葉が選ばれたのか、アルバムを聴きながら想像を膨らませるのも一興だろう。

今回はメチル・エチルの魅力をも掘り下げるために、「オーストラリアの音楽シーン」「新作『Triage』の制作背景」「ジェイク・ウェブの内面性」という3つのテーマを設けてインタヴューを実施。東京に滞在していたジェイクをキャッチし、じっくりと話を伺った。

Interview:メチル・エチル

メチル・エチル

オーストラリアの音楽シーンについて

――まず、ジェイクさんの自己紹介をお願いします。

ジェイク・ウェブ(以下ジェイク) 僕は西オーストラリアのパースに住んでいる、フルタイムの作曲家です。メチル・エチルという名義で音楽をリリースしていて、3枚目のアルバムとなる『TRIAGE』を今回リリースしました。

――オーストラリアの音楽シーンでは、最近どんなものが流行っていますか?

ジェイク パースにはシンガー・ソングライターが多いですね。フォーク音楽も再び人気が出てきています。オルタナティヴな音楽で言うと、エレクトロニカのハウスやテクノも人気です。ガレージ・バンドも結構いますし、パンクな人もいます。パースにはクリエティヴな人たちが結構多くて、その人たちが良い音楽を作っているという健全な音楽シーンが育っているという感じです。

――そのなかで、ジェイクさんが今注目しているアーティストは?

ジェイク Kirkis(カーキス)という名義で活動している男性です。ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)のメンバーが彼のライヴにサポートとして参加していて、僕のバンド・メンバーのトムがメルボルンでそのライヴを観たんです。すごくエキサイティングな音楽で、(原宿の)BIG LOVE RECORDSに行ったらカーキスのTシャツがあったので、レコードも売っていると思います。ぜひチェックしてみてください。

――ありがとうございます。例えば一緒に対バンしたりするような、同世代のアーティストはオーストラリアにいますか?

ジェイク 僕(30歳)と同世代でバンドをやっている人は結構少ないかもしれない。世代としては少し上になるんですが、Pond(ポンド)やTame Impala(テーム・インパラ)は同じパースの出身で、僕がバンドをやるきっかけにもなりました。

――オーストラリアという国やそこにあるカルチャーが、楽曲制作に影響を与えることってあるんでしょうか?

ジェイク ある意味で影響はあるとは思うんですが、それは「オーストラリア人だから」という事でしかなくて。説明しづらいですが、あるにはあると思います。

メチル・エチル

新作『Triage』の制作背景

――新しいアルバムについても伺いたいです。『Triage』はさらにエレクトロニックな音が増えて、サイケやニューウェーヴの要素も感じました。どんなことをイメージして楽曲制作を行ったんですか?

ジェイク 「曲に動きがほしい」というイメージがすごくあって。例えば曲が「見える」としたら、図形とか模様とかがあって、それが絡み合って動いていたり、反復して動いていたり、中に入ったり出たり。そういった「動き」をとにかく大事にしました。

みんな歳を取り、人々は気持ちを切り替え、前に進んだ。 再び繋がろうと、昔の友達からテキストメッセージをもらう。俺は社会的コンプレックスがあるから、他の人たちと一緒にいるのは楽しい。だが、自らに課した孤独や追放は、俺にとってエキサイティングであり、役にも立つ。それはメソッド演技法に似ていて、よく人々が活用する情動的記憶とそんなにかけ離れていない。俺は、友情や信頼という概念に疑問を持つ。俺自身が信用できない奴だと思うから。少なくとも、俺はその点において正直だ。 ー ジェイク・ウェブ(プレスリリースよりコメント引用)

――ジェイクさんがアルバムに寄せたコメントを読んで、今回の楽曲は外部からの影響よりも、自分の中にあるものを反映しているように感じました。

ジェイク なるほど。

――今回のアルバムを「感情」で表すとしたら?

ジェイク 「Pensive(=内省的)」、つまり「考え込む」とか「物思いに耽る」といったイメージです。ただ、今は僕が答えましたけど、アルバムのムードや感情というものは、あなたが感じることと僕が感じることは同じくらい正しいと思います。まだ自分でも仕上がったアルバムを解釈している途中なので、(正解は)ハッキリとはわかっていません。

――なるほど。

ジェイク だから、今まで自分の中にあっただけのものが、完成して外に出て今いろんな人が耳にして、それぞれの解釈を聞くと「あぁ、こういう風に聴く人もいるのか」ってすごく面白いんです。自分の作品は自分だけのものではなくて、もっとたくさんの人に聞いてもらいたいので。ということで、逆にあなたがどう思ったのかを聞かせてください。

――そうですね……。私も「感情」で表すとしたら、「喜怒哀楽」が全部混じっているように感じました。シーンとしては深夜、道を歩きながら一人で聴きたいですね。自分の中に閉じ込めて大事にしたくなるような、そんな楽曲だなと。

ジェイク なるほど、素敵な解釈ですね。ありがとう。

――“Scream Whole”のMVもすごく格好良いですね。コンセプトや制作背景を教えてください。

Methyl Ethel - Scream Whole

ジェイク 作ったのはTay Kaka(テイ・カカ)という僕の友人です。もともと、TVを使って人間の彫刻のようなものを作りたいというアイデアが僕の中にあって。ただ、古いTVを見つけるのって最近難しいんですよ。そんな時に、テイカカが3D、CGで作ることを提案してくれたので、こうしてコラボレーションする事になりました。結果的には実写で実際のTVを使って撮るよりも、それ以上のものが出来たので満足しています。

――あのTV、CGだったんですか!

ジェイク それが気づかれなかったのはいいことですね(笑)。

――あと、メチル・エチルはどの作品もアートワークに強いこだわりを感じます。

ジェイク 僕はアートやヴィジュアルが凄く好きなので、アートワークを選ぶプロセスも大好きで楽しんでやっています。自分が好きな絵やイメージを世界に共有できますしね。

――どんなイメージにするのか、いつもどうやって決めているのでしょう?

ジェイク 例えば自分の好きな絵があったとして。その絵が自分の作っている音楽と関連性があると感じたら、そのアーティストに連絡をとって、OKが出たらアートワークに使用する、という流れです。これまで3枚のアルバムを出してきましたが、3回ともOKを貰えました。他のアーティストのアートワークも好きなので、レコードもよく集めています。

メチル・エチル

ジェイク・ウェブの内面性

――30歳を迎えられた今、意識の変化などはありますか?

ジェイク よく人から「30歳になったら変わるよ」と言われていたのですが、自分の中ではそういった感覚はあまりなくて。特に変わったところははないと思います。というよりはむしろ、常に「変化」というものを感じていたいですね。

――幼少期から今までを振り返って頂いて、人生で最も影響を受けたアーティストは誰でしょうか?

ジェイク たくさんのアーティストに色々な影響を受けています。今の自分がどのステージにいるかっていうのもありますし、僕は「蚊」のように飛んで、誰かの血を吸って、影響を受けて、また次の血を吸いに行く。そんな感じで、本当にいろんな人の影響を受けていますね。

――ご自身を「蚊」に例えるというのは斬新ですね(笑)。

ジェイク 自虐的とも言えますが(笑)。

――現在は〈4AD〉に所属されていますが、ジェイクさんにとって〈4AD〉はどんな存在でしょうか?

ジェイク 〈4AD〉に所属してるバンドで、好きな人たちは本当にたくさんいます。〈4AD〉は歴史が長いレーベルですが、彼らと同じレーベルに所属しているのは光栄だと思っています。その反面、少し現実味がないというか、自分はそこには属さないアウトサイダーなのかなという感覚もありますね。なので、自分と他のアーティスト達とは分けて考えるようにしています。

――今後の自分自身にどんな可能性を感じていますか?

ジェイク 他のアーティストの音楽を一緒に作ってみたいです。つまり、プロダクションという作業ですね。あとは新しいアルバム。僕は常に作曲をしているので、それはもう当たり前というか自然なことなのですが、今はほとんど1人でやっているので、他の人と一緒にやってみてできるかどうか試してみたいです。自分にとって他の人と一緒に制作することは課題、チャレンジなので。友人達とやり始めて、どうやったら効率的に作曲ができるかを学んでいるところなんですが、まだまだ学ぶべき事はたくさんあって。それが今年の抱負でもあります。

――誰かとコラボするとなったら、とても気になりますね。

ジェイク まだ、具体的に誰かと何かするっていう話はないんですけどね。今は僕と僕の機材だけです(笑)。

――最後に、メチル・エチルの世界観を構成するキーワードを教えてください。

ジェイク 「夢」ですね。夢というのは、目覚めた時に覚えている朦朧としたストーリーとか、断片的な自分の人生にあったこととか、誰かが言ったこと、何かを読んだことなど、いろんな破片が夢には詰まっていますよね。起きてから説明しようとしても上手く説明出来ない、感覚的なものとして微かに記憶にあるというか。それが僕の音楽に近いものかなと思っていますし、作曲しているときにもイメージしています。

――たしかにそれは感じます。

ジェイク ありがとう。もしかしたら自分はクレイジーなのかなとも思っていましたが、ちゃんと伝わって良かったです(笑)。

メチル・エチル

Photo by Hideya Ishima

Triage|トリアージ

メチル・エチル

Release: 2019.02.15

Tracklist

01. Ruiner 02. Scream Whole 03. All The Elements 04. Trip The Mains 05. Post-Blue 06. Real Tight 07. Hip Horror 08. What About The 37º? 09. No Fighting [Bonus Tracks for Japan from Teeth EP - 4AD0114CDJP] 10. Camber Baptist 11. Tilted 12. Lagotto Romagnolo 13. Chelyabinsk 14. H1 N1 A 15. Tutuguri

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栁俊太郎×志真健太郎|『SIN』を通して考えるそれぞれの「未来」

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LAPSE

現在公開中の映画『青の帰り道』や『デイアンドナイト』、SALU“Good Vibes Only feat. JP THE WAVY, EXILE SHOKICHI“や、向井太一“Siren (Produced by tofubeats)”のミュージックビデオなど話題作が続いているクリエイティブチーム〈BABEL LABEL(バベルレーベル)〉。

注目を集める彼らがオリジナル映画プロジェクト「BABEL FILM」が始動。 未来をテーマにしたオムニバス作品『LAPSE(ラプス)』が公開中。

映画『LAPSE ラプス』予告編

MOBILE CREATIVE AWARDグランプリを受賞した 『Converse 110th Anniversary SHOES OF THE DEAD』のWEB CMなどを手がける 志真健太郎監督は、『SIN』と題した作品で主演に栁俊太郎を起用。 幼少期に教育機関のシミュレーションで見た暗い未来が現実化し、苦しむ男を描く。

テレビドラマ『日本ボロ宿紀行』などを手がけるアベラヒデノブ監督が主演も務める 『失敗人間ヒトシジュニア』は、人間とクローンが共生する未来を舞台に、 自分がクローン人間の失敗作だと聞かされ、恋愛も破綻し絶望の淵に立たされた青年を主人公にした物語だ。彼と同じ境遇にある初美(ハッピー)を中村ゆりかが瑞々しく演じている。

Awich“紙飛行機”のミュージックビデオなども手がける、 〈HAVIT ART STUDIO(ハビットアートスタジオ)〉のメンバー今野里絵監督の 『リンデン・バウム・ダンス』は、人間が人工知能に医療を委ねている未来を舞台に、 主人公の大学生ヨウと寝たきりの祖母の関係や、夢の世界を軸にストーリーが進んでいく。 セリフの少ない感覚的な役柄のヨウをSUMIREが演じているのも見どころの一つ。

過去のSF映画が設定した時代をすでに迎えている今。 若手監督とキャストによる新しい「未来を想像する映画」が、 今回の「LAPSE=時の経過」と題されたオムニバスの軸にある。 そして3作品を通したキャッチフレーズは「未来に抗え」。

このオムニバス映画の主演俳優と監督のインタビュー企画を 『リンデン・バウム・ダンス』のSUMIREとHAVIT ART STUDIOの今野里絵監督、 『失敗人間ヒトシジュニア』の監督・主演のアベラヒデノブと中村ゆりかと届けてきたが、 今回は最終回として 「人は未来を知らされた時、どう生きるのか?」が主題である『SIN』について、 主演の栁俊太郎と監督の志真健太郎にインタビューを実施した。

Interview:『SIN』 栁俊太郎×志真健太郎

LAPSE

――まずBABEL LABELで映画を制作することの可能性についてお聞きしたいのですが。

志真健太郎(以下、志真) 僕たちはもともと自主制作で映画を作って、劇場に公開する活動が今の〈BABEL LABEL〉の母体になっていて。原点回帰というか、そもそもこういうことをするために集まったメンバーが、だんだん力を付けた中で公開しようっていうのが今回なんです。映画作りが、一番強いBABEL LABELの個性を表現できるのかなと思っています。

――今回の『LAPSE』はオムニバスですが、最初はまずテーマがあったんでしょうか。

志真 企画段階でありましたね。未来自体がいろんな可能性があるじゃないですか。誰もこの先どうなるかなんて知らないし、人それぞれにリアリティのある未来があると思うので、それを『オムニバス』で描くことには意味があるんじゃないかなと思って、企画がスタートしました。

――未来というキーワードから脚本を考える際にヒントはありましたか?

 

志真 描きたいことが先行してあって、主人公が自分の力で運命を変えるみたいな、よくある物語の形なんですけど、それをやるためにどういうふうに話を作ったらいいかな?と思って。そこから「未来が予測できる」という話を考えたんですね。明日がわかるということは、明日の次の日がわかって、どんどん未来が計算されていくだろうなっていうことで。その反復は無限にできるから、故にどんどん深まっていくし、確度も上がっていく。すごく科学とテクノロジーの力だなと思って。栁くんに演じてもらったアマがちっちゃい頃に未来予測される。そこからどう人間的にそれに立ち向かうか?を考えていったんです。

――志真監督はこれまでも『Stand Alone』で学校でのいじめも描かれているので、子供が置かれている状態を描く意味では視点としては近いのかな?と思いました。

志真 個人的な考えですけど、僕も16歳ぐらいの時に映画を見て、自分が弱いってこととか悩みとか、そういうものを解決したりしたので、映画は弱い人のためにあるっていう気持ちは根底にあるんですね。そういうものを見て自分も監督になろうと思ったんです。

――例えばどんな作品ですか?

志真 ケン・ローチ監督の『SWEET SIXTEEN』(02)って映画があるんですけど、それを見たときに「こんな映画あるんだ」と思って、考え方とかガラッと変わったというか。そこで描かれている人はものすごく悲しいのに、食らった衝撃はすごくポジティヴで。そういう強い映画をいつか作りたいなとずっと思っていますね。

LAPSE

――栁さんは脚本からアマという人間像をどう膨らませていきましたか?

栁俊太郎(以下、栁) 脚本を最初に読んで志真さんと会った時に『ブラック・ミラー』(海外のサイコスリラー・シリーズ)とか、そっち系の近未来の話をやりたいなって。なかなか日本でリアリティのある近未来のものってなかった気がするんですね。だから求めてたし、世界では結構進んでるものがなんで日本になかったんだろう?ってシンプルに感じていたので、脚本読んだときは「面白そうだな」って単純に思いましたね。

LAPSE

――これはもしもの話ですけど、自分の未来、例えば20年後がわかったらどうなんでしょう?単純にVRで見られるとしたら。

志真 見たいですね。知って、それが現状気に入らなかったら抗おうっていうタイプなんで。

 占いとかは信じないタイプですか?

志真 占いは信じないってすごい口では言ってるけど、ちょっと気にするタイプ。栁くんは?

 俺はすげえ気にしちゃうんで。良くないことだとマジで凹んだりするんで。まぁ大した占いじゃないと思うんですけど、それでテンション上がったり下がったりするから、あんまり聞かないようにしてます。

――じゃあ未来は見たくないですか?

 見たいんですけど、絶対見ちゃダメなんだと思います。アマみたいに抗うことができるか?って言ったら俺にはそのエネルギーはないかもしれないから(笑)。

LAPSE

――この作品が身近に感じられるのは、未来予測の映像に現実の時間が近づいていくところで。

 カウントダウンされてるじゃないですか。どんな感覚なんだろうな?って。何周も回って無じゃないけど、多分アマの表情はそうなってるんだと思うんですけど。

志真 誰もその辛さをわからない、例えば難病の人とかってすごく孤独を感じるし、それに近いものをアマはもっているとは思ってたんですけど、栁くんがやったらできるって勝手に思ってて。いざ現場に入たら案の定、そこのリアリティが他の人と違う。栁くんにやってもらったおかげで表現できた部分なのかもしれない。

――監督としては演技されすぎないことが良かったんですか?

志真 そこってセリフとかで表現するところじゃないと思うんですね。なんとなく寂しそうだなって人が、例えばバーで一人で飲んでる後ろ姿とか見たとき、「あの人、孤独なのかな」って思うことに近いから。冒頭のシーンで、バーに一人でいる柳くんの絵が俺は一番好きだし、そこは表現しにいってないから、佇まいがそうなんですよね。

――なぜ子供時代に未来予測されなきゃいけないのか?って理由は映画を見ていただくとして。子供を保護する施設も形を変えていくと映画に出てきたような目的になるのかな?という恐怖感がありました。

志真 あくまで仮定の話ですけど、普通の学校の教育が見方によっては一つの洗脳かもしれないと思っていて。漠然とした恐怖と、そういう状況を疑わない感じに対して、僕の中には作りたい欲求とか、「気づいてよ、見てよ」っていう気持ちがあるので、ああした設定を作って見た人に違和感を感じてもらいたいなと思ったんです。「現在と何が違くて、何は一緒なのか」っていうのは、映画に出てくるエルサっていう施設を見て感じて欲しいところですね。

LAPSE

ーー栁さんは出来上がった作品から気づきはありましたか?

 アマは割と自分に近いものがあるなと感じててーーというか、自分と近いところを出さないといけないなっていうのは思ってて。だからそういう意味で変に芝居したくない、セリフにしたくない。余計なことは言いたくないし、動きたくもないしと思ってやってたんですけど、作品になって見てみると、割と自分に近いところでやったはずなんだけど、「やっぱアマだな」みたいなことはすごい感じましたね。

――栁さんから見て、アマはどういう人ですか?例えば勇気があるとか。

 アマは残酷な世界で生きてるから、かわいそうとしか思えないです。でも自分にはない、自分はしないような行動だったりっていうのがあるから、ちょっと強い風に見えるけど、実際弱いな、めちゃくちゃ弱い人間だなと思いますね。なんか弱いからこそ、あんな不器用になっちゃうし、かわいそうだな(笑)。

志真 栁くんは入り込むんですよ。ほんとに自然に真剣に役に入って役を生きてるから、撮影期間中いつでもスタートかけられるぐらいの感じに僕はコミュニケーションをとってた。それで撮影から、今半年ぐらい経って役をすっと抜けて、久しぶりに会ったら「かわいそう」(笑)っていう感想なんだ?

 (笑)。というか、辛かったから。弱いくせに助けなきゃいけない人が周りにいて、でもそういう残酷な事実も小さい頃から突きつけられてるから。
LAPSE

――未来予測はまだ現実になってないにしても、例えば病気はそうですよね。

 余命を突きつけられてみたいな?

志真 すごいショックが大きいと思うんですね。自殺のする人の半分くらいの割合が病気を告知されたことだって言うし。それって未来が見えて、自分の余命がわかった時に「もう、じゃあいいや」って人がすごいたくさん出るっていうことだと思うんです。未知だからいいこともあるかもしれないって思うから人は生きていける。でも「こうですよ」って規定されることが一番辛いことなんじゃないかなって思ったんですよね。だから今、栁くんが「アマ、かわいそう」って言ったのがすごいピュアな感想だなと思いました。未来を宣告されるその事実もえげつないけど、告げられること自体がすごくショッキングな出来事だろうなと思って、改めて響きました。

――オムニバス全体には「未来に抗え」と言うキャッチフレーズが付いていて、今、監督がおっしゃっていたようなことがヒントかなと思うんですね。「未来に抗う」ってどう言うことだと思いますか?

 僕は正直わかんないです。未来を人それぞれどういう風にーー描いてる未来って違うじゃないですか。だから他の人はわかんないですけど、僕はもう「誠実に生きろ」みたいなことなんです。誠実に生きたら、生きることが難しくなる。でも誠実とも違うな、なんて言うんだろ?超単純で申し訳ないですけど、熱さとか人に優しくするとか、好きな人には好きって言うとか、間違ったことは間違ってるって言うとか、そういうことを言い続けることって難しくなってくるんだろうな、って僕は勝手に思ってて。やっぱそこを素直に言うことって当たり前なんだけど、側から見たら抗ってるように見られるって言うか、尖ってるように見られる。だから僕の中では今言った部分を信じて貫くことが未来に対して抗うことなのかなと思います。

――年齢や時代、キャリアとも相関していますか?

 そうですね。僕自身、その感覚って変わってきていて、子供の頃持っていた大切な部分がなっていってるなっていうのもあるし。それはなくしちゃいけないなっていう自分もいるから、わかっているんですけど、社会に出てこれからの社会を考えていった時に、その信念を持ち続けてやっていくことって結構、勇気がいることだなって思いますね。

志真 今話聞いてて、俺もそこで曲げちゃう時もやっぱりあるんですね。こういう映像を作る仕事してても、夜寝る時に「なんで俺、あの時自分の考えを言わなかったんだろう」とか。でも言ってたらちょっと変わることとかあるし。この映画を作ること、見てもらうこと、出てもらうこと全部で、未来を変えているっていうか。僕は「未来に抗え」ってコピーをみんなで考えた時に、ストーリーってことよりも、自分たちの姿勢とか、今、栁くんが言ったこと、そういうシンプルなことって確かに難しいよなと思って。でも、そういうことを発言できて思ってる人たちと、また一緒に成長していけば、また未来が変わるんじゃないかと思う。

LAPSE

――SFは未来を考えるきっかけになるテーマですね。

 70年代、80年代に作ってた時は怖さみたいなものはあったんですかね?僕らって科学とかが進んでいくことに対してちょっと怖い感じがあるじゃないですか。もちろん楽しみな部分もあるけど、昔は楽しみな部分が勝っていて、今は俺ら含め「怖いな」と思ってる人多くないですか?進んでいくことに対して。

志真 70年代までは科学の力、テクノロジーに夢があったけど、それが実は幻想だって気づいた社会で生きてて、それだけじゃ豊かにはなれないんだって感じてるけど、まだその先って見つかってはいないんですよ。ただ、今は科学最高!みたいな映画を作れないというか、作ってもそこはリアリティは持てない感じはする。

――今回の映画の設定にある20年、30年、50年先の未来だけでなく、どんな未来がこれからあったらいいと思いますか?

志真 今の世の中はすごい分担されて、ジェンダーもそうだし、国境も肌の色も無限と境目があって。昔はもっと狭かったから、その境目があるってことさえも人々が発見してなかったと思うんですけど、逆に行き来ができるようになって境目が見えている状態だと思うんです。この映画の中でも、東京とか日本とかいう概念がちょっと薄らいでて、「エルサ」に黒人の子供もいたりするんですね。生まれで規定されないというか、大変だけどそっちの方がいいんじゃないかな?って、って思います。ちょっと大きな話だと思いますけどね。

 好きなことで繋がるっていうのはもちろんいいんですけど、難しいと思うんですよ。秩序って何かが崩れることによっていろんなことが崩れるじゃないですか。だから今回の映画でもーーあれは極端ですけど、秩序を崩さないように囲んで囲んでの世界じゃないですか。あれとかは怖いし、もちろん壁のない社会にした方がいいですけど、これを考えると果てしないですね。今、生活してる中で、思うことはもちろんありますよ。ただ普通にこの日本という国は一応安全と言われていて。もちろんいろんな事件あるし、ほんと安全なのか?って聞かれたらわかんないですけど、今僕が生活してる中では、国とか関係なしにいろんな人が混在するとなると正直怖いとこもあるんです。だからオリンピックってちょっと不安だし、それに対してビビってる自分もいるし。もちろん志真さんが言ったことに賛成ですし願ってるけど、怖いなって部分もちょっとありますね。

志真 俺もわかる。子供がいたら絶対止めるし。だけど、そういう理想の未来を目指してちょっとでも動いていく経過自体が、自分の人生だったらいいなと思う。

 それがまさに未来に抗うことですね。

果たして未来とは、受け入れるべき運命なのか、自ら切り開くものなのか。近未来に起こり得そうな世界=映画『LAPSE』が送るメッセージはそれに向き合ういいチャンスとも言える。異なるテイストの3作品を続けて見ることで、あなた自身の未来を思考してみては。

LAPSE

Text 石角友香 /Photo 横山マサト

BABEL LABEL が描く3篇の未来の物語 『LAPSE(ラプス)』 2019年2月16日よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開

映画『LAPSE ラプス』予告編

SALU 主題歌『LIGHTS』コラボMV

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志真健太郎 監督・脚本 『SIN』 出演:栁俊太郎、内田慈、比嘉梨乃、 平岡亮、林田麻里、手塚とおる

アベラヒデノブ 監督・脚本 『失敗人間ヒトシジュニア』 
出演:アベラヒデノブ、中村ゆりか、清水くるみ、ねお、信江勇、根岸拓哉、深水元基

HAVIT ART STUDIO監督・脚本 『リンデン・バウム・ダンス』
 出演:SUMIRE、小川あん

 

主題歌:SALU『LIGHTS』

監督:志真健太郎、アベラヒデノブ、HAVIT ART STUDIO 撮影:石塚将巳/佐藤匡/大橋尚広 照明:水瀬貴寛 美術:遠藤信弥 録音:吉方淳二 音楽:岩本裕司/河合里美 助監督:滑川将人  衣装:安本侑史 ヘアメイク:白銀一太/細野裕之/中島彩花 

プロデューサー:山田久人、藤井道人 製作:BABEL LABEL 
配給:アークエンタテインメント

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マイルス役・小野賢章が語る、憧れのスパイダーマンを演じて感じたマーベル熱

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小野賢章

スパイダーマン初のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が2019年3月8日に公開される。キングピンの策略により時空が歪められた! 阻止しようとしたスパイダーマンは絶命。世界中が悲しみに暮れる中、特殊能力を得たブルックリンの中学生マイルス・モラレス(以下、マイルス)は、新たなスパイダーマンとして活動をはじめるがパワーを自在に操れずにいた。そんな彼の前に現れたのは別の次元で活躍するスパイダーマンたち。モラレスは多くのスパイダーマンたちに支えられながら成長し、キングピンへと挑んでいく。 さまざまな次元(マルチバース)に存在するスパイダーマンが一同に集結するという驚きの世界観、手書きとCGを融合させた斬新な映像、マイルスの心の成長を軸とした感動的ストーリー、最先端のカルチャー描写にハイテンションな音楽など、あらゆる面が最高。MCU版スパダーマンとの共存など懸念材料もあったがジリジリと評価を高め、遂にアカデミー賞長編アニメーション部門ノミネートも果たした。 たしかにお馴染みの悪役の登場など過去作を知っていると楽しめる面もあるけれど、これがファースト・コンタクトでもまったく問題ないどころか、ここからいろいろなスパイダーマンを楽しんでいこう、と思えるようになっているところがスゴイ。本当にスゴイ。脱帽。 このスパイダーマン史に名を刻むであろう名作の主人公マイルスの声を担当した小野賢章さんに、声優として参加した感想を聞いた。小野さんとマイルスのハマり具合もスゴイのです!

Interview:小野賢章

小野賢章

──最高のスパイダーマン映画になっていますね!  ありがとうございます。元々スパイダーマンが好きだったんです。いや、もはやファン。そういう感じだったので、自分が演じるのはどうなんだろうと思った面もありました。だって、他の方が演じているほうが純粋に楽しめるじゃないですか。僕だって楽しみたい。だから、ちょっと迷いました。でも、マーベルヒーローになることは僕の夢だったので、それが叶った瞬間でもありました。特にスパイダーマンはもっとも好きなマーベルヒーローで、まさか自分が演じることになるとは。いざ完成した作品をみたとき、自分の声であることも忘れるくらいに夢中になりました。ストーリーのおもしろさ、スピード感。マイルスの成長を思わず応援したくなる映画になっていると感じましたね。 ──まさかマーベルヒーローになりたかったとは! もう完全に仲間ですね。きっかけはどの作品ですか? トビー・マグワイア時代のスパイダーマンからずっと好きですが、最近のマーベル熱は『アベンジャーズ』(2012年)からですね。そして、『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)を観たときは衝撃を受けました。何も知らずに観ていたら、いきなりスパイダーマンが出てきたんですから。僕が映画を観ているということは、既に誰かが吹き替えはやっているということじゃないですか。すぐに調べました(笑)。 ──スパイダーマンが好きな理由とは? 戦い方が好き。あといちばんいいな、と、思うのは、応援したくなるところです。他のヒーローはムキムキで何とかしてくれそう感が出ていますが。スパイダーマンはひょろっとしていて、メガネもかけていてヲタク気質もあり、どこにでもいそうな人物像じゃないですか。ヒーローになることに葛藤もあったり、人間味があるところが好きで応援したくなります。 ──マイルスも、まさに応援したくなるキャラクターですよね。 スパイダーマンは愛嬌があってコミカルな印象を持っていましたが、台本読んだ時もそういう描写がありますし、シリアスの中に軽いボケがあって、スパイダーマンの愛らしさやポップな感じが出ていると感じました。マイルスの可愛らしさやおちゃらけた部分もうまく出して、応援してもらえるキャラクターになればいいなと思って演じました。 ──マイルスに共感できる面はありましたか? 親に反抗するところ。内緒で自分の心に素直に従ってやりたいことをやっているところですね。厳しい学校を抜け出しておじさんのところに行き、スプレーで絵を描いているところは印象的。僕もそういう反抗的な時代があったなって。 ──たくさんのスパイダーマンが登場し、仲間に支えられてマイルスは成長します。小野さんご自身は仲間というものをどのように捉えていますか? 僕は舞台にもよく出演するのですが、長期間に及ぶ舞台も多く、それが最後までやりきれるのは共演者という仲間がいるからだと日頃から感じています。ひとりじゃ何もできない。体力的、精神的に辛いときも友だちや仲間の支えがあるから乗り越えられます。足を引っ張り合うのは仲間じゃないですよね。仕事の話になってきますが、お互いに尊敬できるところがあったうえで切磋琢磨して、芝居の技術を向上させたり。友人関係でも、親しい仲にも礼儀ありという考え方はあって、大事にしてもらいたいなら大事にしないといけないけれど、そういうことすら意識せずとも自然とそういうことがお互いにできるのが仲間かなって思います。

小野賢章

──たしかにそうですね。マイルスとスパイダーマンたちの関係性にも近い気がします。 でも、今回の吹き替えはたったひとりでの収録だったんですよ。ひとりでマイルスに入り込んでいって…。 ──そうなんですか! アクションシーンなどはかなりのテンションが求められるじゃないですか。それをおひとりで演じるのは大変だったでしょうね…。さて、ストーリーと共に斬新な映像も話題です。 新しいものを観たな、という感覚を持ちました。キレイなだけじゃないですし、実写に近づけようと作っているわけじゃないところがおもしろかったです。CGの中に突然アメコミみたいなところもあるし、いろいろなジャンルのアニメーションが織り交ぜられていて、不思議な感覚になりましたね。最先端のファッションやアートを観ているかのような感覚というか、舞台であるニューヨークのポップカルチャーやストリートカルチャーに寄り添ったアートというか。ひたすらきれいな映像を目指したものとは違いますね。 ──アメコミ調になるところは本当にオシャレですよね。映画なのにまるでアメコミを紙で読んでいる感覚に陥りました。まさにアメコミ映画という感覚で。 マーベル好きだと、冒頭の「MARVEL」ロゴ登場のファンファーレで泣けたりするじゃないですか。 ──まさに! あれは不思議です。本編に入る前に一度泣けてしまうんです(笑)。 あれを見た瞬間にテンション上がりますよね。それが今回ピカイチにカッコイイので、ぜひ楽しみにしていてください。僕も冒頭でテンションがぶち上がりましたね。マーベル作品って実写なイメージがありましたけど、アニメーションにも向いていると思います。生身の人間が戦うのと同じくらいアニメーションのアクションシーンもカッコイイんです。見応えあると思います。 ──スパイダーマンは、昨年亡くなったスタン・リーさんが生み出した等身大のキャラクターです。彼がキャラクターに背負わせたテーマが、ものすごく明確に描かれている点も素晴らしいですよね。 スタン・リーさんのメッセージがこの一本に集約されていると思います。僕の家にはスタン・リーさんのサイン入りのスパイダーマンのフィギュアがあるんです。むちゃくちゃ高かったんですけど(笑)、がんばって買ってよかったです。 ──小野さんにとって、この作品はどんな意味を持ちますか? ずっと夢に描いていたマーベル作品に出るということが叶い、とても光栄です。その個人的な気持ちを取り除いても、こんなに素晴らしい作品に参加できたことは今後の人生に大きな意味を持つと思います。僕が好きなシーンに、マイルスと父がドア越しに語り合うシーンがあるんですね。ほぼセリフはないんですが、家族の絆や誰かのために勇気を出してがんばる心とか、繊細な感情が上手に表現されていて。そのシーンを機にマイルスが立ち上がる重要なシーンだと感じたんです。僕は、ヒーローの在り方がこの作品で変わる気がしています。ヒーローって強いだけじゃないし、悩みもある。スパイダーマンは「親愛なる隣人」と言われていますが、誰でもスパイダーマンになれる可能性があるんじゃないかと思わせるような作品になっているので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。あ、でも僕は仮にスパイダーマンになっても、前線系じゃなくて遠距離系、遠目から能力を使うようなサポート系がいいです(笑)。

小野賢章
小野賢章

Photo by Kohichi Ogasahara Interview by maomao

『スパイダーマン:スパイダーバース』 2019年03月08日(金)公開

ニューヨーク、ブルックリン。マイルス・モラレスは、頭脳明晰で名門私立校に通う中学生。彼はスパイダーマンだ。しかし、その力を未だ上手くコントロール出来ずにいた。そんなある日、何者かにより時空が歪められる大事故が起こる。その天地を揺るがす激しい衝撃により、歪められた時空から集められたのは、全く異なる次元=ユニバースで活躍する様々なスパイダーマンたちだった――。

原題:Spider-Man:Into The Spider-Verse   全米公開:12月14日 製作:アヴィ・アラド、エイミー・パスカル、フィル・ロード&クリストファー・ミラー(『LEGO(R)ムービー』『くもりときどきミートボール』)、クリスティーナ・スタインバーグ 監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン   脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン 公式サイト:spider-verse.jp 公式twitter:@spiderversejp 公式Facebook:SpiderVerseJP 

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ブランディングディレクター行方ひさこが行く、RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー

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奈良

RCRアーキテクツ」という名前を聞いたことがあるでしょうか。 1988年にラファエル・アランダ氏、カルマ・ピジェム氏、ラモン・ヴィラルタ氏が、バルセロナから150kmほど離れた彼らの故郷、スペイン・カタルーニャ地方オロットに設立した、建築スタジオです。2017年には、「建築と敷地の関係、素材の選択、幾何学を駆使して自然環境を生かしながら、建築にまとめ上げている」と評価され、 建築界のノーベル賞とも称される「プリツカー賞」を受賞しました。 いま世界中で注目を集めている「RCRアーキテクツ」が、 現在、東京・乃木坂の「TOTOギャラリー・間」で 展覧会<RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー>を開催中。 展覧会の一般公開前日に行われたレセプションには、 ピジェム氏、ヴィラルタ氏が来日しました。

RCRが想い描く“夢“の一大プロジェクト

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この展覧会では「RCRアーキテクツ」(以下、RCR)が、スペインのカタルーニャ地方で進行している「ラ・ヴィラ」プロジェクトを紹介しています。「ラ・ヴィラ」は「夢」をテーマに、人々が集い、自然を体感し、「開かれた研究の場(ラボラトリー)」が作られることを標榜し、「森林と水の流れ、そして記憶の住まう土地(ジオグラフィー)」に、研究施設や工房、宿泊施設、パビリオンなどを配する一大プロジェクト。 その広大な敷地は、140万平方メートル(東京ドーム30個分)にも及ぶのだとか。 その「ラ・ヴィラ」プロジェクトのひとつが、「紙のパビリオン」です。

奈良

「紙のパビリオン」は、奈良県吉野町の人々の協力で吉野の木材を使用したもので、今回の展覧会では「紙のパビリオン」の構造体の一部を展示するほか、RCRが吉野町の山林や製材所をめぐる旅や、オロットではオフィスの様子やラ・ヴィラの森などをとらえた、ドキュメンタリー映像も紹介しています。

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“今の東京に必要なこと”を感じる特別な空間

レセプション後、昨年11月に奈良県吉野町とも所縁のある<奈良の木見学ツアー>に参加されていた、ブランディングディレクターの行方ひさこさんに、今回の個展の感想をお聞きしました。

奈良

行方 RCRのお二人がおっしゃっていた、『建築を通して夢を実現する』『建築は人と人との関係を濃密にさせていくもの』『自然と戯れるような建築を作りたい』という言葉が印象的でした。その視点で改めて彼らの建築物を見ると、全然異なる印象になります。また、『風景を最大限にいかすものが建築』とおっしゃっていましたが、作品はもちろん、彼らの空気感にもそれが表われているような気がして。今回、来日したお二人が大切にしているもの、人となりが伝わってきます。チャーミングで、ナチュラルな感じが、ジェーン・バーキンを彷彿させます(笑)。大都市ではなく、地元の田舎で事務所を構えたのは、彼らの意思表示なんでしょうね 行方さんは、彼らの佇まい、作品が作り出す空気は、 「今の東京にものすごく必要なことだ」と感じたと言います。

奈良

EVENT INFORMATION RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー

〜2019.03.24(日) OPEN 11:00/CLOSE 18:00(月曜・祝日休館) 入場無料 TOTOギャラリー・間 〒107-0062東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F

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kamui × illicit Tsuboi 対談 | 2人の出会いからアルバム制作背景まで

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kamui

ラッパーのkamuiがビートメイカー、u..と共作した“ディストピアSFラップ“とでも言える『Yandel City』(2016年)、自伝的要素を盛り込んだ“ゆとり世代からの逆襲“とでも形容したくなるソロ・アルバム『Cramfree.90』(2018年)——両者のトータル・アルバムとしての緊密度の高さ、kamuiの作品作りへの集中力には目を見張るものがあり、鬼気迫るものさえ感じる。 この2枚は、近年の国内のラップ・ミュージックにおいて過小評価されてきた作品ではないだろうか。もっと多くの人に聴かれるべき作品だと思う。

kamui / Soredake feat.QN & Jin Dogg (Official Music Video)

kamuiは“言いたいことのある“ラッパーだ。徹底して“個の音楽“をやっているがゆえに、“みんなの音楽“にもなり得る。そして、それをいかに伝えるかを模索してきた。その彼の試行錯誤をミックス・エンジニアとして強力にサポートしてきたのが、あのillicit Tsuboiである。 illicit Tsuboiは、kamuiがなかむらみなみと組むヒップホップ・ユニット、TENG GANG STARRのデビュー作『ICON』のミックスも担当している。そんな、kamuiとillicit Tsuboiの対談がここに実現した。 この取材の翌日、恵比寿のBATICAのステージにラッパーのkamuiとillicit Tsuboiは立っていた。イベントは、kamuiとTENG GANG STARRが主催する<TEN Gene #テンジェネ>だった。illicit TsuboiがラッパーのライヴDJを引き受けること自体、非常に珍しい。そこではkamuiのラッパーとしての意地、そしてkamuiとillicit Tsuboiの信頼関係を目の当たりにすることになった。 対談は、2人の出会いの話からスタートした。

Interview kamui × illicit Tsuboi

kamui

――2人はどういう出会いをしたんですか? kamui 俺は名古屋出身で、東京に来てからずっと1人で何もない状況から音楽をちょっとずつ作りはじめていたんです。エンジニアの人とか全然詳しくないし、誰に頼めばいいのかわからなくて。Tsuboiさんしか知らなかったんですよ。それで思い切ってダメ元で『Yandel City』のデモ音源をメールで送った。「こんな活動しています。良かったらミックスしてください」って。Tsuboiさんはレジェンドだし正直期待はしていなかったです。やってくれたらいいな、ぐらいの気持ちだった。そうしたら、30分後ぐらいに、「この作品はヤバいからやります」みたいなメールが返ってきた。 illicit Tsuboi 俺のレスポンスは、30分後か30時間後かって感じなんです(笑)。だから、その返答するスピードからもわかるように衝撃的だったんですよ。はじめての方からオファーされることも多いんですけど、それでもだいたい相手が誰かを知っていたりする。でもkamuiくんの存在は全然知らなかった。他のエンジニアの人に取られる前にやらないとぐらいの勢いでした。ただ一方で、俺がやらなくてもいいんじゃないかっていうぐらいに完成していた。すでに自分の作りたい形、骨格、世界観が見えているなって。 ――Tsuboiさんは『Yandel City』の何にピンときましたか? illicit Tsuboi いまや音楽は配信がメインになっているから曲数が集まったから形にしたってアルバムがほとんどじゃないですか。そういうアルバムを手掛ける場合、勝手にスキットを作って入れちゃったりする。それでマスタリングが終わってから、向こうが「知らない音が入ってるんだけど!」って驚くことが多々ある。仮に作っている側がコンセプトを明確にして作っていなかった場合でも最終的には聴く人にコンセプトを提示する形のアルバムに仕上げた方がいいと思っているんです。例えば、PUNPEEくんなんかは最初からそういう意識があるじゃないですか。だから、何も心配がない。でも、そういうのがないと心配になっちゃうという自分の癖がある。だから、リリックや曲順が決まっていたらその状態で送ってくれって絶対言うんですね。kamuiくんの『Yandel City』は、むしろ逆にもうちょっと隙間を作った方がいいんじゃないかってぐらい、そういうコンセプトというか情報量があった。 kamui Tsuboiさんがミックスしてくれた音源をはじめて聴いた時にめっちゃ感動したんですよ。こんなに変わるんだって。それでどうしても直接会いたくて恵比寿の〈BATICA〉に行ったんです。ECDさんとTsuboiさんのライヴの時だった。ライヴの後に、Tsuboiさんがラウンジで乾杯している時に肩を叩いたんです。「すいません、kamuiです」って。俺はむっちゃ緊張していた。その時の俺はPVも出していないし、アー写もない。挨拶を事前にしに行くとは言っていたんですけど、まったく俺の顔をわかっていないはずなのに、「わかってるよ。こっちで話そうぜ」って言ってくれたんです。それがすごく嬉しくて。Tsuboiさんは、音楽とかリリックを聴き込むことで俺の身なりすらも見抜いていたんじゃないかなって思っていますね。 illicit Tsuboi へへへ!

kamui

kamui 東京に来てはじめて俺に才能があるって言ってくれたのはTsuboiさんだったんです。いままでそんなことを言ってくれる人は誰もいなかった。それで自信を持って良いって思えた。その時に「1曲1曲が渾身だからもっと行間を作っても良い」ってアドバイスをもらった。だから、スキットとかはミックスの時に入れたんです。 ――電話越しに女性が話している映画のワンシーンをサンプリングしたみたいな“slighted love”なんかもスキットですね。これ、好きです。 kamui エロチックですよね(笑)。『Yandel City』の頃、俺はめちゃめちゃ内省的に、自分のためだけに音楽をやっていたんです。そもそも世の中に対する鬱憤とか、そういった気持ちを吐き出すツールとしてヒップホップを選んだ。踊るためとかモテるためじゃなかった。『Yandel City』を作っている時は自分の卑屈な面さえも作品に表現しようとしていた。だから、作品を作ることに関しては冷静なわけですよ。どうやったら伝えることができるだろうって。そこで、何も媒介にしないで直接的に表現するより、「Yandel City」っていう近未来の架空の街を舞台にしたSFにしようと考えた。SFのディストピアの世界に自分の気持ちを落とし込んだ方が見える気がしたんです。それでコンセプト・アルバムにしようって決めた。だから、『Yandel City』には物語があるんですよ。でも音楽作品の中で1から10までは説明はできないじゃないですか。それで自分のリリパの時に行間を埋めるように脚本を書いたんです。登場人物が織りなす群像劇を50ページぐらい。で、お客さんに配布した。俺も自分の分がなくなっちゃったけど、たぶんもらった人は誰も読んでいないですよ。 ――そんなことないでしょ(笑)。読んでるでしょう。 kamui でも、読んでくれていたら話題になるはずなんです。まあでも、そうやって作っていきました。登場人物はだいたい3人ぐらいいて。アーサー・Cっていう培養したドラッグを火星から密輸して追われているヤツとかデモをやっているリーダーとか、そういう登場人物の設定があって喧噪が渦を巻いているような感じで描いた。でも最後の曲の“Beyond”だけは、リリックの中で「俺はkamui」って言うんですよ。そこまでは物語に沿って歌っていたんですけど、最後は自分を表明して終わりたかった。次は自分のことをラップするアルバムを作ろうって感じを持たせて終わったというか。

kamui

――そして、『Cramfree.90』につながっていく、と。『Yandel City』にTsuboiさんはどのようなミックスをしたんですか? illicit Tsuboi 自分もよくやってしまう悪い癖なんですけど、1曲の中の情報量が多かったんです。Kamuiくんも一発目の作品だったし、やりたいことがいっぱいあっただろうから。だから、作り手が伝えたいスピード感に聞き手が追いつかないんじゃないかっていうのがあった。最初にもらったデモはそれが満載で。俺はマニアックな世界観が大好きなので、「ヤベエ!」って感じだったけど、この作品を聞き手に伝わるようにトランスレーションするのはなかなか大変だぞとは感じた。その作業に時間がかかったのはあります。音を消すんじゃなくて、リリックや声の量感を減らして聴かせるテクニックっていうのが自分の中にあって。要するに骨はあるから肉付けをしていくことで聴きやすくする方法がある。やってみて思ったのはこっちがどう変えようと何しようと骨格がすごいしっかりしているということ。そういう作品はやりがいがありますよね。やっぱり作り手に伝えたいことがないよりはある方がいいじゃないですか。 ――“Yandel City Blues”と“Reality Dance”のラップの言葉の詰め方、情報量なんてすごいですよね。 illicit Tsuboi そのへんが紙一重ですよね。kamuiくんのラップは気持ち良い、悪いかのどちらかで言ったら悪い部類に入る(笑)。普通の人が聴いたら、このラップはちょっとリズムがズレているんじゃないかって感じるかもしれない。なぜズレるかというと、言葉数が多過ぎて入らないんですよ。この生き急いでいる感じを出すために、「これはダメでしょ」に行く寸前のスレスレのところを狙って音を作ったことを思い出しました。 kamui だから俺のラップは言葉ありきなんですよ。まず、自分が言いたいことを言うってところから音楽をはじめている。自分の気持ちを表出するというか、海面に石を叩きつけるような感じなんです。だから、ある一文字を抜けばリズムや音として気持ち良くなるってところでも言いたい言葉を優先しちゃう。何が本当に言いたいのかっていうのは常にラッパーとしての戦いだと思うんです。いまはもう少しナチュラルになりましたけど、『Yandel City』を作っている当時は初期衝動が全開だった。俺はあんなラップをもうできないですよ。 Illicit Tsuboi はははは! 無理だよね。

kamui

――“Black---out”とか、この3、4曲目はすごい kamui 主人公は逃走ルートを敷いて追手から逃げていたんですけど、その日たまたまデモ行進がやっていたことで逃げ道を遮られちゃって万事休すになる。それで自分の持っていたアーサー・Cっていうドラッグを致死量打ってオーヴァードーズする。そこから“Black---out”って曲にいく。“Black---out”は生死をさまよう描写なんですけど、これは実体験に基づいていますね。『Yandel City』を作っている時は本当に精神的におかしくなっちゃって、最終的にお皿も持てないぐらいになってしまった。これはまずいなと。それで心療内科に行ったら、「精神科に行ってください」って紹介状をもらって。もう本当にああいう状態はやめにしたくて、その紹介状はいまでも保管してありますね。その時期は音楽をやるのも苦しくなってどん詰まりになりそうだった。そんな時Tsuboiさんはすごい応援してくれて。そこから自分を変えようと思って、TENG GANG STARRにもつながっていくんです。 illicit Tsuboi 俺は最初「もっとやれ!」って言っていたけど、さすがにこのままだとヤバイなって時期はあったね。 kamui やっぱり人から評価されたかったわけですよ。もっといろんな人に自分の音楽を聴いてもらったりライヴを観てほしかった。それがあまり上手くいかなかったから開き直ったというか、自分の明るい面もどんどん出したいなと。それでTENG GANG STARRもやるようになる。当時トラップが日本にやってきた時って自分の中で衝撃だった。MPCとかすごい苦手で曲作りはできなかったんですよ。それで諦めていたんですけど、トラップだったら作れるなって思って(kamuiはTENG GANG STARRのアルバム『ICON』の複数の収録曲のビートを3-i名義で制作している)。VICE Japanで観たトラップの特集がやっぱり衝撃的でしたね。音楽的な知識はないけど、太いベースと低音を出して暴れるのがめちゃめちゃパンクだなって思った。それでハマった。 ――ちなみに『Yandel City』を共作したビートメイカーのu..さんはどんな方ですか? kamui Tsuboiさんもあったことないと思います。俺は本当に天才だと思っているんですけど、評価されないとアーティストは”死”ぬんですよ。才能がいくらあっても世間に認められないと”死ん”でしまう。だけど、『Cramfree.90』の“Intro”だけはu..さんがビートを作ってくれています。そう言えば、この間、SIMI LABのHi’Specくんに久々に会ったんですけど、俺が様変わりしちゃっていたから驚いてて。Hi’Specくんは俺がロン毛でタトゥーも入ってない、いかにもアンニュイなヤツって雰囲気の時に会っているんで、俺がこんな風になってすごいびっくりしたらしいんですよ。「kamuiなのこれ? 変わったな」って思ったらしいんですよ。でも『Cramfree.90』の“Intro”を聴いて「何も変わってねぇ」って言ってくれて。それは“Intro”がu..さんのビートだったのもあると思うんですよね。ある意味感慨深い。俺の中で『Cramfree.90』の“Intro”は『Yandel City』から地続きなんで。 ――『Cramfree.90』のビートはどうしたんですか? kamui いまでは日本でも多くの人がType BeatってYouTubeで検索して海外からトラップとかのビートを買ったりしていると思うんですよ。ただ、これは自負しているんですけど、俺は日本でType Beatをいち早く利用した第一人者だと思っていますね(笑)。『Cramfree.90』は『Yandel City』の発売後すぐに作りはじめたんです。2年前ぐらいですね。その頃は日本のビートメイカーともつながりがなくて。でも作品を作りたいわけですよ。で、ビートをどうするかって時にType Beatっていうのがあって海外からPayPalで買えると知った。それでとにかく超漁ったんですよ。当時はこんなに流行るとは思っていなくて。『Cramfree.90』は2018年の頭ぐらいには完成していたんです。 illicit Tsuboi 遅れたのは全部俺のせい。俺が単純にミックス作業に手がつけられなかった。ただタイミング的にTENG GANG STARRのミックスもやることになったから、TENG GANG STARRとkamuiくんのアルバムを出す双方のレコード会社がジョイントして、両者のカラーリングを合わせると面白いことになるんじゃないかなって。それでやってみた結果、面白いリンクの仕方になった。これを怪我の功名って呼んでいるんですけど。 kamui ははははは! 調子いいなー、まじで(笑)。世間的にはTENG GANG STARRの『ICON』(2018年9月リリース)の発売1ヶ月後に『Cramfree.90』が出たんですけど、『Cramfree.90』は1年前のラップなので、ある意味で俺はTENG GANG STARRでアップデートしているんです。

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――『Cramfree.90』は自伝的な要素もありますよね。“同じ日”や“Flyaway”なんかの柔らかいビートも『Yandel City』からの変化ですね。 kamui 『Yandel City』は個人的にすごく好きで気に入っているんですけど、観念的だとは思うんです。形而上学的でもある。だから、次のソロ・アルバムはヒップホップのアルバムを作ろうって決めていたんです。あんまり難しい言葉は選ばずに、より自分の気持ちに素直になろう、と。だからビートも柔らかい感じのものを選んだ。自分の過去とか、振り返りたくないことがすごく多くて、でも1度全部肯定したかったんです。そこから先に行きたかった。それが今回のアルバムを作るきっかけでした。 illicit Tsuboi 俺は単純にラップがめちゃくちゃ上手くなっちゃったな、と。上手く“なったな”と“なっちゃったな”という両方の気持ちがありますね。もちろん上手くなるのは良いことで、ワンステップ上がって作業はすごくやりやすくなった。一方で、“なっちゃったな”っていうのは、俺はとにかくなんだかわからないけど初期衝動をぶつけている感じを推奨している人間なんで。 kamui 本当にそう言ってもらえると自分でも『Yandel City』の価値が見出せます。あの作品はあの時にしか作れなかったものだから。本当に八方塞がりで「ビートに乗せるとか関係ねえよ、クソ!」っていうぐらいの前のめり感というか。だから『Cramfree.90』はめっちゃわかりやすくしたつもりなんです。それでもなかなか伝わらないなっていうのもわかって。「Rap Genius」じゃないけど、言葉のディティールをもっと解析してくれるのかなって思っていた。もちろん俺の知名度がまだまだというのもありますけど、日本のラップ・シーンはリリックをおざなりにしすぎていると思う。俺はラップの内容を深めてもらわないと評価されないタイプなんですよ。俺は頭が良くて損しているタイプってことですね(笑)。 ――「HARDEST」のインタヴューで、kamuiさんは、「(ケンドリック・)ラマ―の『Section.80』はクラックベイビーズって呼ばれてる世代を代弁したアルバムで、それにかこつけで『CRAMFREE.90』ってしたんですけど、「CRAMFREE」は造語で、「ゆとり」って意味。ゆとり世代が抱えてる閉塞感、真の自由ってなんだろうっていうところをラップしようと思う」って語っていましたね。例えば、ワイドショーか何かで若者論をぶっているコメンテーターの発言をサンプリングしているような4曲目の“skit”とか皮肉が効いていますよね。 kamui そうですね。大まかなテーマは、俺なりのゆとり世代の総括でした。ケンドリック・ラマーは『Section.80』で80年代に生まれた自分たちの世代を振り返って、世間で言われているのとは違う自分たちのリアルを提示したわけですよね。それをアメリカのどメジャーの人気スターがやっている。それなのになぜ日本のラップはそれをやらないのか。じゃあ俺がやるわってことでゆとり世代についてラップした。でも、あくまでも自分の人生からしか語れないから、ゆとり世代と自分の自由についてセットで考えたんです。“Intro”で「すべては自由さ/俺も君も自由さ 自由 自由」ってくり返していると、鉄格子がガッシャーンと閉じる。そこから自由を探すためにこのアルバムは始まるんです。それで最後からの2曲目の“Free”で終わる予定だったんですよ。

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――“Find me”はこのアルバムの他の曲とだいぶ毛色が違う1曲ですね。 kamui マンハッタン(『Cramfree.90』のリリース・レーベル)に送ったデモも“Free”で終わっているんです。Tsuboiさんには“Find me”も送ったけど、ラップなしのインストだった。俺は“Free”で自由っていうものの答えを提示したわけですよ。「風のように/鳥のように/生きるように」って。だけど、“Find me”を入れることでそれがひっくり返っちゃう。最初は入れるつもりはなかったからほとんど一発録りなんです。“Find me”には『Yandel City』の俺のダークサイドが出ている。で、これをあとからTsuboiさんに送ったんですよ。そしたら「これだよこれ」って。 illicit Tsuboi これは絶対なかったらダメだっていうぐらいの曲だった。“Free”で閉まっているのはわかるんです。例えば、PUNPEEくんの『MODERN TIMES』も最初は“Hero”の前で終わっていたんですよ。だけど、“Hero”を入れることが自分でも予想できないポイントになる、と。kamuiくんが最後に“Find me”っていう曲を入れるのもそういうこと。“Find me”を入れるとひっくり返っちゃうのはわかるけど、だから絶対に入れた方が良い。 kamui ある種のディスカッションというか問題提起ですよね。俺の中で『Cramfree.90』の物語を“Free”で完結させたけど、“Find me”でそれを全部ぶち壊す。優しさや人を認め合うことを積み重ねながら自由に行き着く。だけど、一方ですべてが醜く見えて、自由なんてないという閉塞感や孤独感からは逃れられない。そういう自分をただただ見つけて欲しいという気持ちしかない。だから、そういうことを歌う“Find me”が最後にあることで、一辺倒の説教じゃなく、本当に深い作品になったなって勝手に感動しました。 illicit Tsuboi 俺は閉じたものよりも開かれたものが好きなんで。“Free”で終わると一つの作品のパッケージとしては完結するんです。でも、そうじゃなくて、“Find me”みたいな聴く側の受け取り方がさまざまな曲を入れることで伸びしろがあっていいんじゃないかなって思います。 kamui  Tsuboiさんのすごいところは、あくまで作品としてどうかを考えているところなんです。“Free”が最後だったとするとメッセージとしては開かれて終わるんです。世間とか社会が言う自由ではなく、それぞれが自由を見つけるべきだ、と。けど、それは作品としては閉じられている。作品を開くためには曲としては閉じている“Find Me”を入れる必要があった。この逆転というか。

kamui

――"Find Me"を聴いて、『Yandel City』を聴きたくなる人もいると思います。 illicit Tsuboi それもある。一石二鳥ですよ。 kamui 俺はもう戻れない(笑)。 illicit Tsuboi 本人は戻れないけど、『Yandel City』のことを知らない人はこの曲をきっかけで聴こうと思えるよ。 kamui あと、ぜひ『Cramfree.90』の感想を聞きたいです。 ――いまの日本のラップを見ていると、同世代同士の競い合いや競争、ヘイターに対するカウンターが目立つ側面がありますよね。それが一概に悪いということではないんですけど、この作品でのkamuiさんはより広い視野で社会のエスタブリッシュメントに"反抗"しているなと感じて、そこに自分も鼓舞されました。“Eazyyy”の「バブルを知らないcramfree世代/勝手にバカだと思われてる Fuck it/またすぐにリタイアすると思われてる/でもテレビで見たぜ/また総理大臣が辞めたらしいぜ」って、ここすごい良いパンチラインですよね。 kamui いまは逆にぜんぜん辞めてくんないですけどね。当時はコロコロ変わっていたんですよ。「日本の代表だれ?」ぐらいの感じで。そういうのをこっちとしてはテレビでずっと見ていて。その一方で、俺らの世代は上の世代や大人からすぐにバイトを辞めるとか、そういう風に舐められるんですよ。でもこの国のトップが一番辞めてるじゃん。ふざけんなと。ファックですよね。 ――あと、このアルバムでは「君」っていう単語が多く出てくると思うんです。「君」に問いかけたり、呼びかけたりしている。この「君」っていうのは誰やどういった人たちを想定しているのかとても気になりました。 kamui それはとてもこの作品の大事なポイントなんです。この作品で一番使われているワードは「君」と「自由」。そこは聴き逃してほしくないからくどいぐらい使ったんです で、俺にとってのアルバムのハイライトは“濡れた光”なんです。この曲は自殺してしまった当時付き合っていた恋人に捧げた曲なんです。当時は音楽にできるような状態でもなかったですし、ただただ悲しいだけだったんですけど、少し時間が経って曲にできるかなと思って。最初に鳴る教会の音が「死」の象徴で、そこからカラスの鳴き声なんかが入って不穏な雰囲気が出てくる。“Flyaway”では救急車の音も入っている。そうやってどんどん“濡れた光”に向かうように仕掛けてはあるんです。自殺したことについてその人が選択した道だから許してあげたいというか、悲しいことだけど、美しいことでもあるっていうことを歌う曲だった。「愛も平和も苦しみもない 世界を君は選んだ」ってサビで歌っているんです。花のようにそっと咲いただけで、悲しむようなことじゃないと。だから、ゆとり世代や自由というテーマもありますけど、一方で自分の人生を振り返って一度全部を浄化したかったというのもあって。だから『Cramfree.90』は俺の中で出し切った感じがあります。さあ、次はどうするかなって。最近は単にカッコいいヒップホップをやりたいですね。 ――QNとJin Doggとやっている“Soredake”はカッコいいヒップホップですよね。 kamui あれもちょっとゆとり世代のチョイスなんですよ。だからあんまりベテランを選ばなかった。あと俺が誘わないと実現しないコラボだなって。見てみたいものを実現していく。 ――プロデューサー気質ですよね。 illicit Tsuboi そう。そうやって全部できるからすごい。さらに自分の殻を破るとより可能性が広がるんじゃないかなって。だから、kamuiくんにどんどんみんないろいろ言ってあげたほうがいいんじゃないかな。ケンドリックも『Section.80』が出た時の衝撃がすごくて、その後続くのかどうかって思われたけれど、ああやって音の変化はありながら一貫してやっていっている。kamuiくんも作るのをやめなければ良いんじゃないかなって気がしますね。俺はいつも一緒に作った人に言うんですけど、アルバムを出した1ヶ月後か2ヶ月後に何かを出すぐらいの気持ちでやった方が絶対に良いよって。燃焼しちゃうのはわかるんですけど、もっと先に行ったほうがいいって。俺はkamuiくんに、『Yandel City』が終わった時からずっと言っていたよね。「次はどうすんの?」って。 kamui 彫り師みたい(笑)。俺は同じようなことはやりたくないですし、自分のやりたいことを忠実にやれたらいいなってことですかね。TENG GANG STARRのおかげで自分で曲を作れるようになったし、俺なんか日の当たるような場所にいなかったのに、2018年は怒涛の1年だった。本当にいろんな出会いがあって、ビートメイカーやラッパーにもいろんな知り合いはできたし、そういった人たちと何かやれたらいいかなって思います。

kamui

Text by 二木信 Photo by Kazma Kobayashi

RELEASE INFORMATION

Cramfree.90

Tracklist 1. Intro 2. Caterpillar 3. 同じ日 4. skit 5. Gift 6. Soredake feat.QN & Jin Dogg 7. Flyaway 8. Eazyyy 9. Aida 10. 15 11. Wake Me Up 12. 濡れた光 13. Free 14. Find Me 品番:LEXCD18016 JAN:4560230527556 レーベル:Manhattan Recordings

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SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

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SHURE

高遮音性設計により周囲の騒音を最大37dBまでカットする、SHUREイヤホンのエントリーモデルSE215が巷で話題だ。 SHUREといえば、マイクロホンで知られているメーカーだが、90年代後半に開発されたプロ用のインイヤーモニターシステムを、多くのミュージシャンが「イヤモニ」としてステージで利用するようになり、 そのままオフでも装着している様子が口コミなどで拡散されたことによって、ファンや一般ユーザーの間で広まっていったという。プロのステージからカジュアルなリスニングまで、その音質と高遮音性に信頼が寄せられているのは、そうした経緯があるからだろう。 そこで今回、ライブのステージやレコーディング・ステージなどで、SHURE製品を愛用しているTAARAAAMYYY(Tempalay)、そして大井一彌(DATS / yahyel)の3人に、SE215とSE112を試してもらいながら、イヤホンへのこだわり、SHUREへの思いなどを語ってもらった。なお後半では、3人に事前に作ってもらった「SHURE SE215で聴きたい楽曲プレイリスト」を発表してもらい、その聴き心地についても聞いた。

Interview TAAR×AAAMYYY(Tempalay)×大井一彌(DATS / yahyel)

SHURE

──みなさんが、初めてイヤホンを使ったのはいつですか? 大井一彌(以下、大井) 僕は、親が持っていたMDウォークマンを、付属のイヤホンで聴いたのが最初ですね。 AAAMYYY 私もMDウォークマン!最初はイヤホンていうか、耳にパチって貼り付けるクリップ型のやつだったと思う。 TAAR ああ、あったね。懐かしい! 俺はウォークマンではなくラジカセでした。ずっと音楽はスピーカーで聴いてたんですけど、あるときラジカセ本体の裏側に、ジャックを挿し込める穴があることに気づいて。そこにイヤホンを挿して聴いた時に「なんだこの立体感は!?」ってなったのを覚えています。それが原体験ですね。その時のイヤホンは、今とは比べ物にならないくらいチャチかったのだけど(笑)。 AAAMYYY 飛行機とかで配られるようなやつ? TAAR そうそう!(笑) 大井 カナル型のイヤホンを初めて付けた時も衝撃でしたね。耳の中にめっちゃ入ってきて、最初はエグイくらい気持ち悪いんだけど、慣れるともう病み付きっていう感じでした。 TAAR 遮音性がちゃんとあって、音楽に没頭できるんだよね。

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──ヘッドホンとイヤホンを、どのように使い分けてます? TAAR プライベートはイヤホンですね、どこにでもパッと持っていけるし。ヘッドホンはどちらかというと「モニタリング」というか、仕事をするときに使っています。 大井 僕もそう。僕は2つ持っていて、ミックスダウンが終わったときにチェック用として使っているのが、アップル純正のやつ。おそらく、世界で一番使われているイヤホンだと思うので、これを「スタンダード」として音のバランスをチェックしています。で、普段リスニング用に使っているのは、聴いていて気分が上がるような、ちょっと音に色付けがされているモノを使ってますね。 AAAMYYY 私もそんな感じです。 ──イヤホンを選ぶときは、どんなところをチェックしていますか? 大井 僕は「一体感」ですかね。付けていることを忘れさせてくれるイヤホンを、リスニング用には求めています。 TAAR やっぱり「遮音性」が気になりますね。ノイズキャンセリングがあまり好きじゃないので、ノイキャン機能を使わずにしっかり遮音してくれるイヤホンを求めています。スピーカーやヘッドホンよりもイヤホンが優っている部分も、個人的にはそこだと思っているので。 ノイズキャンセリングって、周囲の騒音をイヤホンやヘッドホンに付いているマイクで拾って、その周波数とは逆の位相をぶつけることで音を聞こえなくしているわけじゃないですか。でもそれって「作られたサイレント」というか。本当の意味での「遮音」は、密閉型のイヤホンにあると思っているんです。そういう意味でも、このSHUREのSE215は素晴らしいですね。

SHURE

──ちなみに、皆さんのSHUREに対するイメージってどんなものですか? 大井 SHUREといえばマイクで、僕らミュージシャンにとっては切っても切れない関係ですね。特にSHURE SM57、SM58は誰もが一度は必ず使っているマイクだと思うし。ボーカルはもちろん、僕はスネアにも大抵はSM57を立てている。 TARR アンダーソン・パークとか、コーンの凹んだSM58でドラムを1ショットずつサンプリングして、それでこないだのアルバム(『OXNARD』)を作っていると聞きました。 大井 世の中にいいマイクは沢山あるんですけど、中でもスタンダードな音が録れるマイクといえば、この2機種ですね。今までも、そしてこれからもスタンダードであり続けると思う。 AAAMYYY 私も色んなマイクを試したんですけど、最初に手にしたSM58に戻りましたね。曲によって、自分が聞かせたい声の周波数って変わるんですけど、それをどれもちゃんと拾ってくれるのがSM58。オールマイティなマイクという気がします。

SHURE

──AAAMYYYさんはイヤモニにSHURE SE215を使っているそうですね。 AAAMYYY そうなんですよ。色々探した中で、いちばんコスパが良くて、いちばん装着感がよくて遮音性も高かったんです。 TAAR AAAMYYYちゃんのやつ、白いカラーリングがめっちゃ可愛いね。SHUREのイヤホンは、リスニングというよりプロユースというイメージがあります。耐久性の高さがその理由だと思うけど。SHUREは元々マイクも、ライブで使うということを想定して作られたものだし。 ──今回、大井さんとTAARさんは初めてSE215を試したそうですが、まずは率直な感想を聞かせてもらえますか? 大井 さっきTAARくんも言っていたけど、今まで使ったどのイヤホンよりも密閉性が優れていました。例えば、歌モノで音数の少ない曲を聴くと、息遣いとかもクリアに聞こえてくるし、それが街の中で聴いていても聴こえるんですよ。それって凄いことだなって。周囲の騒音から閉ざされた「無音状態」を、街中に持ち出せるということじゃないですか。 ──確かに。ちょっと世界が変わる感覚を味わえそうですね。 TAAR そう、「音が鳴っていない瞬間」をどこでも楽しめる。僕はまず、SE215とSE215 Special Editionを両方ともワイヤードで聴き比べてみたんです。SE215の方がイヤモニに近いというか、ライブのステージにあるコロガシ(足元のモニタースピーカー)が、そのまま耳の中に入ってくる感じなんですよね。正しい音のバランスで再生してくれているというか。 SE215 Special Editionは、それをタウンユースに寄せたという感じ。音楽を楽しむためのチューニングがされているのかなって思いました。「SE215が持っているドライバーのポテンシャルで、音楽をこんなに楽しむことが出来るんだよ?」っていうSHUREのメッセージというか、哲学を勝手に感じましたね(笑)。 AAAMYYY 音質もとても良くて。アナログシンセでしか出せない音の太さや立体感も再現してくれる。私は普段、ワイヤードのSE215をイヤモニとして使っているんですけど、今回Bluetoothを使ってみたら、その部分が全く変わっていなかったことにも驚きました。 TAAR ケーブルが着脱可能なのも嬉しいですよね。今、色んなメーカーや、個人工房などで様々なケーブルが出ていますけど、その中から自分好みの組み合わせを見つける「リケーブル」の楽しみもあるじゃないですか。そもそも、Bluetoothのイヤホンで着脱式になっているって珍しいですよね、他に見当たらない。すげえな!って素直に思いましたし、オタク心をくすぐられました(笑)。 ──装着感はどうでしたか? AAAMYYY 私はよく髪をいじるので、普通のカナル式だと耳からスポッと抜けてしまうことが多いんですけど、耳にかけるタイプのSE215ならその心配がないですね。

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大井 僕、こういう耳の穴だけじゃなくて、耳の穴周辺までユニットが密着するタイプのイヤホンを色々試してみたことがあるんですけど、形が合ってないと耳が痛くなっちゃうんですよね。でも、これはずっと着けていても全然痛くならないんです。「そうか、SHUREが想定した耳の形なんだな、俺は」と思って嬉しくなりました。 (一同笑)

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──耳の形にあったイヤホンを見つけるのも、なかなか難しいんですよね。 大井 そう。耳の型を取って作るイヤホンもありますが、ものすごく高価じゃないですか。こんなにリーズナブルでフィットしやすいのは嬉しいですね。 AAAMYYY 私は耳の穴が小さいので、遮音パッドのサイズを大中小の中から選べるのも助かります。 TAAR 耳に装着した時に、SHUREのロゴが外から見えるのもワクワクしますね。「俺、SHUREのイヤホンつけてるんだぜ?」っていうアピールポイントになる(笑)。だって、タウンユースでSHUREのイヤホンつけてる人を見かけたらグッとこない? AAAMYYY グッとくる! 大井 「あいつ、本気で音楽聴いてるんだな」って思うよね。
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──ちなみにSE112はいかがでしたか?? TAAR 僕はすごく好きでした。最初のイヤホンとして、SE112を手にしたらかなりラッキーじゃないかな。1万円を切る価格でこのサウンドクオリティはちょっとびっくりです。バランスも良いし、しかも軽いんですよね。

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──イヤパッドも、SE215よりは密閉性が低い分、街の中でも程よく音が入ってくるから「安心」というのもありますよね。さて今回、みなさんには「SE215で聴きたい曲プレイリスト」を作成してもらいました。 大井 僕はさっき、外に「無音空間」を持ち出せるって言いましたけど、そんなSE215だからこそ楽しめる楽曲を中心に組んでみました。曲を聴き進むにつれて、だんだんアンサンブルが厚くなっていくように並べているんですけど、まずはMichael Van Krückerというドイツのピアニストによる独奏です。音の隙間を活かしたような演奏で、その空気感が伝わってくる。2曲目は、映画『メッセージ』のサントラ。Jóhann Jóhannssonが手がけているんですけど、この曲は声の定位が立体的で、雑踏の中で景色を俯瞰しながら聴いているととても気持ちいいんです。 3曲目は、フィンランドの男女混成アカペラ・グループ。この曲も、SE215で聴きながら歩いていると、自分の足音も聞こえないくらい遮音性が高いので、なんだか宙に浮いているような気分を味わえます。Clannadはアイルランドのエキゾチックな音楽なんですが、パキッとしたサウンドがリファレンスに向いていて。ライブハウスでよくPAさんが、ドナルド・フェイゲンの“The Nightfly”を流すじゃないですか(笑)。あんな感じで、定位感やリバーブ感の確認にぴったりなんですよ。Luca Citoliはノイズミュージックで、どれだけヤバイ音が出せるか確かめようと思って入れてみました(笑)。どの曲を聴いても、ちゃんとその世界に没入できるイヤホンだと思いましたね。 AAAMYYY 私のプレイリストは、普段聴いているボーカリストの曲を中心に作成しました。Sabrina Claudioは、彼女の息遣いや、アコースティックな楽器のニュアンスがどう聴こえるか、いつもイヤホンを選ぶ時にチェック用として聴いているんです。次のブラッド・オレンジは、「自分が好きな曲を聴きたい」と思って入れたんですけど、これもバッチリ(笑)。JILは、パッドシンセの厚みみたいなものが、どう再現されるかを確かめたくて。アナログシンセの「うねり」みたいなものが、臨場感たっぷりに伝わってきましたね。 ロイル・カーナーは、音数も少なくて家の中でセッションしているような雰囲気の曲なんですけど、その環境音や、遠くで歌っている人の距離感などがちゃんと聴こえました。ZHUとTame Impalaのコラボ曲は、私の好きな低音感がしっかり再現されていると思いましたね。

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TAAR 僕のプレイリストは「リファレンス」がテーマ。SE215でどう聴こえるか?を確かめたくて選んだ曲なので、ジャンルとかバラバラなんですけど……。1曲目は自分の手がけた楽曲ですが、いちばん聴き慣れているのでリファレンスとしては最適かなと思って。マスタリングが砂原(良徳)さんで、音にもめちゃめちゃこだわったんですけど満足な音質でした。次のコーネリアスも、とても緻密な音作りである上に「無音」も存在していて、ある意味「イヤホン〜ヘッドホン泣かせ」な楽曲だと思うんですけど(笑)、聴いていてとても心地よかったですね。特にボーカルの再現力が素晴らしくて、SE215は歌モノに向いているなと思いました。 青木孝允さんの楽曲は、特に高域のノイズが左右にパンニングするなど、イヤホンで聴くとより楽しめる音像で。SE215は中高域の立体感もしっかりと再現してくれているので、聴いていてとても気持ちよかったです。ディスクロージャーも、左右の広がりが凄いんですよ。その分、ボーカルが目の前で歌っている感じも伝わってきて。これ、どうやってミックスしているのか未だに謎ですね。ここまでの4曲は、高域から低域まで満遍なく音が鳴っていて、左右の広がりも奥行きもしっかりあるんですけど、最近のちょっとローファイ系のヒップホップなどよりも、こういうイヤホンの真価が試される音像でこそSE215は威力を発揮するんだなと思いましたね。 ──なるほど。ちなみに僕はYMOの『SOLID STATE SURVIVOR』を聴きながらここまで来たのですが、アナログシンセの厚みや、高密度の音像などがめちゃくちゃにクリアに再現されていて感動しました。 AAAMYYY 確かに、YMOを聴くのにめっちゃ良さそう! TAAR で、最後のトロ・イ・モアは「自分が好きな曲」ということで入れました(笑)。アルバムの中で、この曲がいちばんローファイ的なアプローチをしているんですけど、これはこれで気持ちよかったですね。 ──これだけ高音質なイヤホンが普及することで、皆さんが作っている音楽も変わってくると思いますか? 大井 そう思います。みんなのプレイリストも、結構ハイファイな音作りがされているものを選んでいるなと思って。例えば、レコーディングの時に本物のアナログシンセを使ったのか、ソフトシンセを使ったのかは、チープなイヤホンだと聴き分けは難しい。でも、これだけいいイヤホンだったら分かると思うんですよ。リスナーの皆さんが、そういう環境で僕らの音楽を聴いてくれるようになったら、ますます音作りにこだわりたいと思うし。 AAAMYYY 私もミュージシャンとして、すべての音に気持ちを込めて作品を作っているし、それをどうやって届けたらいいのかをいつも考えているので、リスナーの方たちと、私たちの間にあるツールはメチャクチャ大事だと思います。 TAAR 音楽って「主役」にもなれば「BGM」にもなると思っていて、イヤホンってその両方を楽しめるツールだと思うんですよ。ヘッドホンだとどうしても音楽が主役になるし、スピーカーも、ちゃんと聞こうと思ったら向き合わなければならない。このSE215は、遮音性が高いゆえに「主役」にもなるし、イヤホンだからこそ、何か他のことをしながら聞き流すことも出来る。自分次第で色んな音楽の楽しみ方を選べるのが、他のサウンドシステムにはないSE215の魅力だと思います。

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Text by Takanori Kuroda Photo by Ryutaro Izaki

INFORMATION SEイヤホンシリーズ

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SE215ワイヤードイヤホン:Clear /SE215-CL-A

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SE215 iOS/Android対応イヤホン:Translucent Black / SE215-K-UNI1-A

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SE215 SPECIAL EDITION ワイヤレスイヤホン:Translucent Blue / SE215SPE-B-BT1-A

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SE215 SPECIAL EDITIONワイヤレスイヤホン:White / SE215SPE-W-BT1-A

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SE112ワイヤレスイヤホン:Black / SE112-K-BT1-A

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ZONE鼎談|新世代の誕生、6バンド+DJが作る新たなインディシーン

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2018年はTempalayやTENDOUJIら、インディシーンで愛されてきたバンドが軒並みブレイクスルー。さらにここ2〜3年で上のステージで活躍するceroや水曜日のカンパネラといったグループがポピュラーミュージック・シーンで重要な存在となり、内外のビッグフェスや独自企画も行うようになった。言わずもがな、Suchmosは9月に横浜スタジアム・ワンマンを控えている。いずれもインディシーンに出自を持つバンド、アーティストだ。 では現在進行形のインディシーンでオリジナルな胎動を見せる動きとは何か。今回、キュレーターと6バンドが主催する<ZONE>を通じて、今、東京を中心にインディシーンに起こっている事柄、注目すべきバンド、そして彼らのスタンスを探り、その胎動をリアルにすくい上げたいと思う。 対談に召喚したのは、DJでイベント<New Action!>を星原喜一郎と主催、2016年からはclubasiaで<Ajam>を始動した遠藤孝行と、メインの6バンドから4バンドのメンバーが参加。Group2の石井優樹、SUPER SHANGHAI BANDのKentaro Yoshimura、I Saw You Yesterdayのスズキカズシゲ、Yüksen Buyers HouseのTsukasa Miyawaki。 彼らから<ZONE>というイベントの特徴を聞くことで、現在進行形のインディシーンも見えてくる鼎談になった。ちなみにすでに発表されているゲスト、uri gagarn、JABBA DA FOOTBALL CLUB、pavillion xool、ravenknee、Dos Monos、maco maretsに加えてトリプルファイヤーも決定。このラインナップ決定やジャンルのハイブリッド感の無邪気かつ腑に落ちる理由が見えるはずだ。

Interview:ZONE2

きっかけ

――まず、<ZONE>はどういうきっかけで始まったのでしょうか。 遠藤孝行(以下、遠藤) 2016年の12月末にGropup2(以下、グル2)と<New Action!>でリリースパーティを新宿MARZでやったんです。そこで石井くんと知り合って、その次の年の8月にLOUNGE NEOで、グル2の「MILK」ってシングルのリリパをやったんですよね。で、「6バンドでなんかやりたいと思ってるんですけど」って話をもらったのが、その年の秋ぐらいで。だったら僕、渋谷clubasiaで働いてるのでasiaの周年が3月にあるから、そこに向けて動かない? ということで始まったのが<ZONE>です。 ――6バンドで主宰するというのは石井さんの発案ですか? 石井優樹(以下、石井) もともと仲が良くて、「なんかやりたいね」っていう話はしていて。LOUNGE NEOのリリースパーティがいい感じにできて。バンドとラッパーやトラックメーカーを融合したような雰囲気のイベントをやりたいってなって、asiaの周年のタイミングが合致して、みんなに話したら「やろう」ということになったんです。 ――遠藤さんとしては今まで手がけてきたイベントと<ZONE>は何が違いましたか? 遠藤 今やっている<New Action!>はDJの星原喜一郎のパーティーで、僕は最初DJとして参加している感じで、<New Action!>は僕主体でやるってことがあんまりなくて。asiaに入ってから自分で動いてやった一番大きいイベントが<ZONE>なんです。メンツでいうとさっき石井くんが言ってたようにラッパーやトラックメーカーを積極的に呼ぶイベントっていう意識です。他は同じようなバンドを呼んでやろうとしがちなんですが、そことは違う面白いところを組み合わせてると思います。 ――そのスタンスは6バンドで共有してるんですか? スズキカズシゲ(以下、スズキ) どのバンドもいろんなジャンルを組み合わせたイベントもやってるし、僕らはリミックスをpavilion xoolにやってもらったり、Yüksen Buyers House(以下、ユクセン)は音自体、シンセがガンガン入ってて踊れるエレクトロな感じもあるし。SUPER SHANGHAI BAND(以下、スーシャン)もいろんな界隈に知り合いがいたりして、そういう雰囲気はもともとあった気がするんですが、どうですか? Kentaro Yoshimura(以下、Yoshimura) そうです(笑)。俺らスーシャンが一番潰し効かない音楽でしょ? でもスタンスとしてはトラップも聴くし、クラブも行くっていう、音楽に対して全部丸く行ってる感じ。なんならクラシックも聴きたい感じのスタンスではあるんです。それが自分の表現に表出してなくても、企画とか場って形でコミットできたら面白いかなと思ってるし。 石井 あと、ライブハウスとか下北とか場所に固定されてない。クラブでもイベントやったり、場所は意識します。 ――そういう意図を持って開催した去年の<ZONE>は結果どうでした? 遠藤 一応、成功だったと思います。 Yoshimura やってる側も見てる側も自然体で楽しめてる感じはありましたね。 石井 フェスとかだといろんな人出てると思うんですけど、ああいう規模のイベントであれだけいろんなジャンルの人が出てるの、<ZONE>ぐらいしかないなっていうのはあって。maco maretsとか、小林うてなさん、SUSHIBOYSもいて、「あんまりない、いいイベントだ」っていろんな人に言われましたね。

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――今年の<FUJI ROCK FESTIVAL '19(以下、フジロック)>の第一弾発表とかすごくバランスがいいじゃないですか。 石井 ああ、最高。 ――そういうことの中規模とか小規模のイベントをいろんな人が実現したら楽しいなと思っていて。 遠藤 目指すべきはそこですよね。 石井 <フジロック>はあんなに大きいイベントなのにみんなが知らないアーティストをブチこんできたり、ああいう遊び心があるのは凄いと思います。

出会い、繋がり

――皆さんが出会った経緯というのは? Tsukasa Miyawaki(以下、Tsukasa) まずグル2とユクセンで出会って、グル2も当時イベントをやってたね。 石井 僕らがバンド組んですぐに自主企画みたいなものをRUBY ROOM TOKYOでしたんですよ。2015年の末とか2016年のはじめかな。その時にユクセンを呼んだんですけど、呼んだ理由はCairophenomenonsのギターと僕が一緒の大学で、バンド一緒にやったりしていて、で、Cairophenomenonsをすごく呼んでる<Rhyming Slang>っていうイベントがあるんですけど、そのイベントに遊びに行った時にユクセンが出てて、俺が「めっちゃやばい、いい!」って、喋ったらめちゃくちゃ仲良くなって。 ――その段階でユクセンのどういうところが好きだったんですか? 石井 いやもう、なんだろ?超好きです。<SUMMER SONIC>出てくれみたいな(笑)。ユクセンはポップさもあって、結構アングラなとこでやってるし、そういうところにいる人たちって尖りがちだけどユクセンはポップさを持って、キャッチーな部分を忘れないとこがすごくいいなと思ったし、音もかっこよくて「こういうバンドいるんだ」って、その時思いました。 ――そこからどう広がっていくんですか? Tsukasa それで石井ちゃんの誕生日イベントみたいなのが六本木であって。一緒に出てたのがI Saw YouYesyerday(以下、ISYY)で、そこでISYYとも仲良くなって。 スズキ そうだね。俺らとグル2は〈Ano(t)raks〉っていうレーベルのコンピレーションに同じ時に入ってて、そのリリースイベントに出たタイミングで出会って。

Ano(t)raks コンピレーション『Azur』

石井 スーシャンはどこでだっけ?……スーシャンはBASEMENT BARのイベントでお客さんあんまいなくて、なんか俺だけ踊ってて。 一同 ははは。 石井 それこそFidlarとかむちゃくちゃ好きだから、「もう、あれやん!」て感じで、ライブ終わった後話したらいい感じで。<New Action!>をMARZ、motion、marbleでやったイベントに最後の1バンドって感じで呼んで。 Yoshimura 駐車場でライブ見てもらった10分後ぐらいに誘われて(笑)。 石井 その<New Action!>にこの6バンド全員出てたんですよ。 Yoshimura そこだ! 石井 今見たらすごい。意味不明。このmotionに出てるバンドがユクセン、ISYY、スーシャン、で、LADY FLASHも出てる。これが原因だ(笑)。

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それぞれのスタンス

――ところでインディシーンと言っても各々の背景は違うんだろうなと思って。皆さんの根っこにあるものって何ですか? 一同 (考えて考えて、考え込む) ――では、どういうスタンスのバンドが好きなんですか? Yoshimura さっき石井ちゃんがユクセンに対して言ってた尖ってるけどキャッチーさを兼ね備えてるみたいなやつ、だいたい好きで。デカイとこだとThe1975とか、ああいうスタンス持った人たち。自分たちのやりたいことを追求しつつも、ちゃんと今に落としこんでたり、多くの人にアプローチできる形。音楽性云々というよりそういうスタンスって気がします。

The 1975 - TOOTIMETOOTIMETOOTIME

石井 僕らも他のバンドと同じことをやりたくないっていうのがあって、聴いたことない音楽をやりたいから。なんかクサくても個性を出していきたいっていうのはGroup2は特にあります。 ――ユクセンはどうなんですか? Tsukasa ユクセンの場合はインディーロックより結構ポップ寄りなのが好きで、最近はみんなヒップホップとか好きなんです。それで最近はより新しく流行ったものをどんどん取り入れていこうみたいなのを大切にしてて。だから去年、流行ったポップスとかをみんなで聴いて分析して、それでやっていこうみたいな話をしてて。 ――USのヒットチャートを聴いて分析するんですか? Tsukasa ポップスっていうのはほんとにポップス。テイラー・スイフトとかあの辺の流れとかも全部。The1975も好きだし。で、The1975もいろんなバンドとかプロデュースしてて、すごい全部いい曲で新しさもあるから、そういうのって面白いなと思って。 スズキ 俺らは多分ユクセンと逆で、俺らが出てくる前はシティポップとかすごく流行ったと思うんですよ。それって70年代とか80年代のリバイバルだなって話をメンバーとしてて、俺らは根っこに90年代のオルタナが好きだっていうのがあって。ま、70年、80年ってきたら次は90年代のリバイバルがくるんじゃないか?ってことで、90年代のThe Smashing Pumpkinsとか、90年代のオルタナをやろうという。

The Smashing Pumpkins - 1979

――そこはサウンドプロダクション面で? スズキ サウンドプロダクションではかなり勉強しました。それプラス、シティポップが流行ったことは念頭に置いてます。――シティポップが好きとかではないんですけど、聴きやすさっていうのは踏襲して、90年代のサウンドを取り入れたら面白いなってところでやってます。

イベントって?

――今のインディシーンは、スズキさんが話してくれたようにシティポップ後なわけで、そのワードとかカテゴライズは大人がくくっただけですが、数年前と今でどう違うんですかね? いいキュレーションしてるなぁと思うイベントに変化はありますか? Yoshimura 恵比寿BATICAの<FATAL>っていうイベントがあって、それは一応BATICAの主催なんですけど、Ceremonyっていううちの元ドラマーがフロント張ってるバンドもブッキングに関わってて、それはまだ2回しかやってないけどめちゃくちゃ面白い。DJが豪華でMars89さんとか出てたし。あと、謎のめっちゃいい外人(笑)。情報なくてインスタとかフォロワー何十人とかなんだけど、めっちゃいい、「どっから見つけてきたんや?」って人が出てて。なぜかお客さんもめっちゃ入ってて、あれは去年一番ショッキングでしたね。

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――知名度がなくてもフックアップされるのって、サブスク経由だったりしませんか? スズキ 結構、リスナーが雑食気味にはなりつつありますね。サブスクですぐ聴けるっていうので。 ――いいプレイリストに入るとよく聴かれるとか。 石井 大事みたいですね、今。「小袋(成彬)事件」ってのがありまして(笑)。DMが来て「Group2めっちゃ聴いてます。今、BIM(THE OTOGIBANASHI’S)と飲んでます」って。 一同 ははは! スズキ 俺らも去年、MV出した時にいきなりBIMさんから「いいね」もらって。 ――ところで皆さんがバンドを結成した頃のいいイベントってなんだったんですか?もちろん<New Action!>はそうだろうけど。 石井 <Rhyming Slang>と<New Action!>の二つはでかいかも。もちろん有名な人気のあるバンドが出てたら人は集まるけど、<New Action!>は平日にやってて、DJメインのイベントなのにお客さんめっちゃきてて。すごいなと思います。 スズキ バンドに依存してない。 ――コンピレーションアルバムの『New Action! ~ Compilation Vol.2』とか今見るとすごいラインナップで、その先見性は感じるというか。 遠藤 コンピの話だと今でも星原とあのバンドにもお願いしておけば良かったよねという話はします(笑)。ただ振り返ると先見性があったというよりはその当時は、何か始まる空気感と熱があってそこに上手く<New Action!>が乗っかれたのかなと思います。そのピークだと思うのが、Suchmos、never young beach(以下、ネバヤン)も出てくれたこれなんじゃないかなと。(と言ってNew Action!とYogee New Waves主催の<UTOPIA SHANGRI-LA TOGENKYO>のタイムテーブルを見る)

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一同 これやばい! 石井 これだってさ、MotionでSuchmos、ネバヤン、小袋さん(笑)。 遠藤 これが2014年だね。 ――ドラスティックにシーンが変化し始めるタイミングですね。 遠藤 そうですね。これをきっかけに<New Action!>の評価がどんどん上がっていった気はします。当時はSuchmosもヨギーも普通にいろんなライブハウスに出てて。コンピを出して、イベントやって、その後に星原がカナダ行くんですけど、それ以降は集客面とかこのヨギーとの回を超えられなくて。だから今回もそこを目標にしてるとこはあります。

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石井 何人くらいきたんですか? 遠藤 500ぐらいかな。だからこれを超えたいよね。 ――ところで皆さんが活動してる以外のバンドシーン、いわゆる邦ロックフェスとか絶対出ない感じがあったじゃないですか。でも大きいフェスも新しい出演バンドが必要なように見えて。 石井 結構<ROCK IN JAPAN FESTIVAL>にミツメが出てたりする。 Yoshimura <BAYCAMP>とかも全然出てる。 ――だんだんその辺の境目が溶解してきてるなと思うんです。邦ロックフェスと呼ばれるフェスも絶対出ないという意識でもない? Tsukasa 全然抵抗はない。 石井 いろんな人が聴いてくれれば。知ってもらうだけでもチャンスは広がると思います。 ――今挙げたのは極端に大きなフェスですけど、いろんなイベントが存在していて。 石井 <SYNCHRONICITY>とかは僕らも出させてもらったことあるんですけど、凄く良い空気感でした。 Yoshimura 地方っていうか、地元なんですけど、福岡でやってる<Sunset Live>、あれなんかここ2、3年ぐらいでメンツぐっと変わって、結構オーバーグラウンドになって。 遠藤 <Sunset Live>はちょっと<GREENROOM>とか近い感じ? Yoshimura そう。<Sunset Live>はビーチだからチルな感じで。 Tsukasa 地方フェス面白いよね。

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<ZONE2>の役割

――地方フェスにも今の色がどんどん出てきてますね。<ZONE>の話に戻すと、今回のゲストアクトはどういう風に決めたんですか? 遠藤 みんなで呼びたいバンドを一気に出して、それを大きめのジャンルでくくって、この中から何バンド、この中から何バンドみたいな感じですかね? 石井 どのバンド、最初に呼びたいってなったんだっけ? スズキ トリプルファイヤーって去年も声かけてた? 遠藤 かけてた。そう、今回トリプルファイヤーも決まってて。 ――トリプルファイヤーに感じる何らかのシンパシーって何ですか? 石井 意味わかんないとことか(笑)。 Yoshimura 音かっこいいしね。 石井 イベントに合うと思ってて、やりたいこと一致してる。 Yoshimura わかる。トリプルファイヤーって絶妙にどこにも属してない感じある。 石井 逆にどのバンドとも対バンできる。それがかっこいいなと。

トリプルファイヤー「アルティメットパーティー5」のすべて

――マック・デマルコに指名されたし。 Yoshimura そうだ、それだ(笑)。 石井 maco maretsは僕らがコラボした楽曲を出していて、その流れもあって誘いました。pavilion xoolもISYYのリミックスとかやってるんで。

Group2 - PEAK TIME feat. maco marets Music Video

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Yoshimura Dos Monosは誰かが言って、「いいね」って流れになって。 石井 ラッパーは絶対誘いたいっていうのがあって、Dos Monosいたら面白いんじゃないかって。グラミーとかもラップが多いし。僕、ニューヨークでトラヴィス・スコット見たんですけど、1万人キャパを余裕で埋めてて、アメリカはポップもだけど、ラップの方がめちゃくちゃ勢いがあるし、金持ちだし。

Dos Monos - in 20XX

スズキ 日本だとさっきも話したけど、シティポップがラップとの境目をちょっとぐちゃっとした感じはあって、聴きやすいヒップホップ、環ROYとかもそうだし。 ――音楽的にラップをやってる人たちという印象を受けます。 遠藤 ラインナップで話したのは、いろんなジャンルを入れるっていうのもそうなんですけど、ちょっと上の世代というか、Tempalayとかは僕が思うにちょっと上で。そこを呼ばずにもう一つ上の世代の人たちを呼んでイベントしようっていう話は最初にちょっとした。 ――確かにTempalayとかドミコやMONO NO AWARE好きな人はそこに関してはもうわかってますからね。 遠藤 そこを呼んでも面白くないんじゃないかな?っていう話はしたかな。もちろんTempalay大好きですけどね。 スズキ それは個人のイベンターやライブハウスのブッカーがやればいいですよね。バンド主体でやるなら違うことをやりたい。 Tsukasa 俺らの色を出したいし、もっとデカくなって対バンしたいみたいな気持ちもあるし。 ――では、大きなお題なんですけど、<ZONE2>は今年、インディーシーンでどんな役割を果たすと思いますか? 遠藤 引っ掻き回すってことですよね、シーンを。 石井 一石投じたいみたいな気持ちはみんなあって。 スズキ 年末ぐらいに「あそことあそこやってたよね」みたいな感じにはなりたいですね。 Yoshimura さっきの2014年の<New Action!>みたいな感じは面白い。 石井 俺ら自体、<ZONE>をやることで成長したいよね。普段あんまり対バンしないんです、正直、<ZONE>で集まるみたいな感じだから、いい場所だなと。 ――2014年のあの当時はあのメンツの凄さは当時は名づけられなかったわけですよね。 遠藤 ああ、そうですね。まだシティポップみたいな呼び方もなかったし。そこがドン!てなったから、後でシティポップって言われたような感じもある。 ――もしかしたらみなさんも意に沿わない括り方をされるかもしれませんが(笑)。 Yoshimura 「新・渋谷系」? 一同 ははは! スズキ かっこいい(笑)。 石井 「新・渋谷系」、なりたい(笑)。 スズキ 逆にそういうの自分たちから言うっていう(笑)。 石井 言われたいね、「ZONE世代」。 遠藤 Group2のベースのしんちゃん(上田真平)がイベントタイトル、「ZONEでいいんじゃないか?」って言ったんですけど、タルコフスキーの映画『ストーカー』から来てて、その中に登場するんです。「ZONE」って言う、楽園じゃないけどみんなそこへ行くみたいな。 Yoshimura 答えが見つかるみたいな。「ZONE」の中はすごい危険なんですよ。でもすごい低予算で作られてるからおっちゃんがみんな何もないところで「気をつけろ!」とか言ってて、すごい変な映画(笑)。 遠藤 渋谷で雑多ないろんな人が集まって、危険なエリアみたいな意味でもいいかなと思ってます(笑)。

ZONE2

Text by 石角友香 Photo by Ryogo Suguro

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Group2 - MILK Music Video

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SUPER SHANGHAI BAND - FAIL

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Yüksen Buyers House - Slowdance(Official Video)

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I Saw You Yesterday "Topia"(Official Music Video)

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LADY FLASH

LADY FLASH/デジタルな神様(Music Video)

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ZONE2×Ajam -clubasia 23rd Anniversary-

ZONE2

2019.03.10
 clubasia & LOUNGE NEO
 ADV ¥3,400/DOOR ¥3,900 
Drink代¥600別途

GUEST ACT トリプルファイヤー uri gagarn
 JABBA DA FOOTBALL CLUB
 pavilion xool
 ravenknee
 Dos Monos 
maco marets Cairophenomenons PRANKROOM okkaaa

ZONE ACT Group2
 SUPER SHANGHAI BAND
 Yüksen Buyers House
 I Saw You Yesterday 
Coughs 
LADY FLASH

GUEST DJ LITTLE DEAD GIRL 星原喜一郎(New Action!) eitaro sato(indigo la End/MISTAKES)
BYE CHOOSE) DJ KiM(Vandalism/GEEKS AND FREAKS/ALTER-NITE/GROOVER) 
JUDGEMAN(Alegre/LUCKY SPIRITS) CAT VIRUS 
トミー・アラカキ

DJ 遠藤孝行(New Action!) 
TANACHU
 斎藤雄(Getting Better/TIPS) 村田タケル(SCHOOL IN LONDON)


FOOD
 みやん軒 ミンキッチン

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Jon Spencer来日インタビュー|激動のロック転換期と共に歩んだ半生と今後のビジョン

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Jon Spencer

Jon Spencer Blues Explosion(ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン)の個性について語ろうとしたとき、そのバンド名以上の言葉が思いつかない。1950年代~60年代のオーセンティックなブルーズ/R&Bへの愛と、1970年代後半~80年代のパンクやハードコア、ニューヨークのノーウェーヴ、ヒップホップなど、さまざまなカルチャーの誕生とそのアティチュードに感じた衝動を、ベースレスのギタリスト2本、タムやクラッシュシンバルのないシンプルなセットのドラムで音にして爆発させる。プリミティヴな魅力はそのままに、ガレージでできることの限界を強引に突破しようとする、ワイルドな攻撃性が生む唯一のサウンドは、90年代のオルタナティヴ・ロック・シーンにおいてひときわ輝く個性を放っていた。 以降も、00年代のロックンロール・リヴァイヴァル期にはその元祖的な存在として新作や旧作が注目を集め、インディペンデントなロックンロールが商業的な数字やシーンの規模感としては明らかに失速した10年代においても、そんな流れとは関係のない異次元の新作をリリース。また2017年に公開された映画『Baby Driver』のオープニングを飾った彼らが、1993年にリリースしたシングル“Bellbottoms”でその存在を知った人たちや、色褪せない魅力を再認識した人たちも多かったのではないだろうか。

BABY DRIVER - 6-Minute Opening Clip

そして2018年、バンドのフロントマンであるJon Spencer(ジョン・スペンサー)は初のソロ・アルバム『Spencer Sings Hits』をリリース。彼がJon Spencer Blues Explosionを結成する前に率いていたバンドPussy Galore(プッシー・ガロア)を象徴するサウンドの一つであるメタル・パーカッションをあらためて採り入れたり、ニューヨーク・パンクに直結する曲があったり、持ち前のファンクやヒップホップからくる自由且つ腰の据わったグルーヴが炸裂したりと、自身が積み重ねてきたことを、キャリア史上もっともポップな感覚でアウトプットした作品となった。 そんな同作とともに、約3年半ぶりに来日したJonにインタビュー。先に述べた90年代のオルタナティヴ・ロックや、00年代のロックンロール・リヴァイヴァルといったビッグなムーヴメントの波をどのように感じていたのか、ロックの転換期と彼の歩んだ歴史を振り返るとともに、今後のヴィジョンについても話を聞いた。

Jon Spencer

Interview:Jon Spencer

―Jon Spencer Blues Explosion(以下、JSBX)が結成されたのは1991年。Sonic Youth(ソニック・ユース)のサーストン・ムーアが“The Year Punk Broke” = “パンクがメジャーを壊した年”だと言ったように、シアトル発のグランジが大ブレイクし、後のオルタナティヴ・ロックの隆盛に繋がった、ロックが大きな転換期を迎えた時期でした。その頃のシーンに、あなたは何を感じていましたか? JSBXを結成したのはちょうどNirvana(ニルヴァーナ)の2ndアルバム『Nevermind』が世界的にヒットした年だった。でも、アメリカでパンクがもっとも熱を持っていたのは90年代ではなく、それより前だと思う。 ―ハードコア・パンクのことでしょうか。 そうだね。俺は1985年くらいからJSBXを結成するまでPussy Galoreというバンドをやっていた。当時のアメリカのアンダーグラウンドには、一つの大きなシーンがあったんだ。まずはルーツとして、Ramones(ラモーンズ)やNew York Dolls(ニューヨーク・ドールズ)、Velvet Underground(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)もそうだと思うんだけど、60年代や70年代のニューヨークのパンクは大きかったと思う。ハードコアは70年代の後半くらいから80年代にかけてのムーヴメントで、ニューヨークやロサンゼルスだけではなく、アメリカ全土に広がっていったんだ。音楽的には俺の好みのすべてではなかったけど、10代や20代の若者がDIY精神で自分たちのシーンを作っていたその姿勢に大きな刺激を受けて、目がカッと開いたような感覚になった。「バンドってこうすればいいんだ」、「こうやってパーティが開けるんだ」、「頑張ればツアーだってできる」って、熱い思いに駆られたんだ。

Jon Spencer

―ハードコアのDIY精神がPussy GaloreからJSBXを結成し現在に至るまでのあなたの核にある。 俺が音楽をやっているのはとにかく演奏したいから。ツアーがしたいから。Pussy Galoreの頃は、アメリカをツアーで回っているといろんなバンドと出会って、近い考え方を持った仲間との繋がりを感じることができたんだ。俺たちのやってる音楽は主流ではないアウトサイドだけど、とにかくエキサイティングだった。だけど、JSBXを始めた頃から、あまりそういう繋がりを感じられなくなってしまったんだ。それは、単純に俺たちが年を取ったからかもしれないし、俺たちの音楽はいわゆるオルタナティヴにカテゴライズされていた多くのバンドと違って、アメリカのルーツ・ミュージックに傾倒していたからなのかもしれない。だからと言って、それからも俺たちは何も変わらなかった。

Jon Spencer
Jon Spencer
Jon Spencer

―グランジやオルタナティヴ・ロックが隆盛を極めたことは、バンドに影響しなかったのでしょうか。 特に意識はしてなかったけど、Nirvanaが商業的に成功したことによってすべてがぶち壊しになったとは思ってる。石を持ち上げるとたくさんの虫たちがちりちりばらばらに逃げていくだろ?ちょうどあんな感じ。彼らがヒットしたことで、シーンにたくさんの企業や金持ちが乗り込んできて散々な状態になったんだ。そのせいで、これまでにいたアーティストの多くも、後に出てきたアーティストも考え方が変わってきた。バンドをやったら金になるとか、ロックスターがどうだとか、そんな話ばかり。すごく悲しかったね。 ―80年代の商業的なハードロックに対するアンチでもあったオルタナティヴ・ロックに商業ベースが移った。その在り方によっては本末転倒ですよね。 俺は有名になりたいとか、プールのある家に住みたいとか、そんな夢を抱いて音楽をやっていたわけではなかった。ただの音楽に憑りつかれてどうしようもなくなったバンドマン。なのに、頭の上に$マークが見えるような奴らが湧いてきて、主流を壊したものがその対象と同じような主流になっていったんだ。JSBXのメンバー、Judah(Judah Bauer)もRussell(Russell)もそうだけど、俺が真の友達だと思ってる仲間は、Nirvanaの成功によってできた環境を「これこそ俺たちの求めていた世界だ」とは決して思わなかった。あれは俺たちが望んでいる世界じゃなかった。

Jon Spencer

―そこであらためて、バンドのサウンドについて話し合あったことはありましたか? いや、なかったように思う。ツアーのスケジュールとかブッキングとか、そういうことはもちろんよく話してたけど。みんな言わずとも思いはわかっていたし、音楽的なことは考えるより勘で貫いていたんだ。 ―あなたらしい答えだと思います。 そう言うとカッコいいけど、今になって過去の作品を振り返って聴いてみると、周囲の動きに対して、俺自身やJSBXが理想とするものからブレたくない、俺たちのなかにある真実をだけを突き詰めていきたい、そういう気持ちがかなり強く出ているようにも思うけどね。 ―時代は繰り返すもので、90年代後半から00年代にかけては、商業化したパンクやラップメタル、そしてポスト・グランジなるロックが流行し、インディペンデントなロックは厳しい時代に入ります。そこから00年代に入って、ガレージ・ロック・リヴァイヴァル、ポスト・パンク・リヴァイヴァルといったパンクやオルタナティヴ本来のエッジを持ったロックが再び広く世界からの脚光を浴びることになりました。Jon Spencer Blues Explosionは日本からの目線だと2000年に<SUMMER SONIC>のトリを飾り、2002年にはアルバム『Plastic Fang』を、2004年にはアルバム『Damege』をリリースします。これまでのキャリアと時代の流れが噛み合って、いい追い風が吹いていたと思うんです。 うん、言ってることはわかる。 ―しかし活動を休止します。ここまでの話しからすると、休止の理由と今私が話したムーヴメントとは、関係ないですよね? その通り、関係ない。さっきも話したけど、JSBXはPussy Galoreのように、ほかのシーンやバンドと繋がりを感じていたわけではなく、パーソナルな音楽への情熱だけが心を覆っていたから、俺たちの信じた道を止まることなく走ってきた。腕を磨くことこそが重要で、ゴールド・レコードになんて何の興味もなかったんだ。流行の入れ替わりなんて、いつの時代にもあって、君が言った商業的なパンクだとGreen Day(グリーン・デイ)がその引き金になった。Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)のようなエレクトロニック、DJミュージックがヒットした時にも「ロックは死んだ」って言う人がいたよね。00年代にインディペンデントなロックが流行ったことも、潮流の一つでしかない。ニューヨークだとThe Strokes(ザ・ストロークス)やYeah Yeah Yeahs(ヤー・ヤー・ヤーズ)、ほかにもThe White Stripes(ザ・ホワイト・ストライプス)やThe Hives(ザ・ハイヴス)もそこに入れるべき存在だよね。ロックンロールがクールだって時代になったのは、いいことだと思ったよ。でも、でもそれによって自分たちが大きなオーディエンスを獲得できた実感はなかったし、彼らと何かコラボしたわけでもない。俺たちは85年からロックンロールをやっていたし、今さらそこに出て行ってああだこうだ言うものでもないとも思っていた。 ―そして2015年にはかつてのニューヨークがもっていた文化的エネルギーへの憧れを示すタイトルのアルバム『Freedom Tower: No Wave Dance Party 2015』をリリースしました。また今回のソロ・アルバム『Spencer Sings Hits』には、Pussy Galore期に今の感覚でアプローチしたような曲もあります。あなたは今、過去をどうとらえているのでしょうか。 この2作は過去を認めルーツを確認するようなアルバムになったと思う。でもノスタルジーでもなければ今の時代を否定しているわけでもない。俺が憧れるカルチャーがそうであったように、常に前進していきたいんだ。

Jon Spencer - I Got The Hits

―『Spencer Sings Hits』は、あなたの特徴であるベースレスの低音がアップデートされています。その強さや太さ、野性味がよりはっきりと聴いて取れる、まさに”前進”を象徴している部分だと思いました。 『Spencer Sings Hits』とJSBXやBoss Hog(ボス・ホッグ)との違いは、ソロという文字通り自分一人で曲を書いたこと。Pussy Galoreも初期はそうだったんだけど、かなり昔の話だし。バンドでリハーサルをして曲を作り上げていくのではなく、まずは自分自身で曲を完成させることが先だった。アルバムの制作はSam CoomesとM.Sordと一緒だったけど、できあがったパートを渡してるから根本的にこれまでとは違う。彼らに自分らしさを出してもらえるように幅は持たせてるし、それぞれの個性も出てはいるけどね。君が褒めてくれた低音もソロだからこそ出てきた発想の一つ。今まで使ってきたエレキ・ギターではないし、エレキ・ベースも入ってない。ストリング系ではなくシンセを使いたいと思ったんだ。

Jon Spencer - Do The Trash Can

―弦では出せない低音。それは時代感として今を意識したんですか? そう取ることもできると思うけど答えはノー。Devo(ディーヴォ)やKraftwerk(クラフトワーク)、The Residents(ザ・レジデンツ)、自分が昔から好きなバンドへの敬意や愛情が溢れてきたことが、シンセを使った理由だね。 ―今回はソロ名義での作品を初めてリリースしましたが、これからあなたはどうなっていくのでしょう。 JSBXは、俺のなかではもう終わってる。正式に発表はしないけどね。未来はわからないから。<Freedom Tower: No Wave Dance Party 2015>のツアー途中でJudahが病気になって、キャンセルした公演もけっこうあったんだ。今はもう大丈夫なんだけど、まだ再びツアーができるまでには回復していない。JSBXはJudahとRussellと俺の3人意外には考えられないバンド。だからここ1、2年はずっと悲しかった。2017年に映画『Baby Driver』で俺たちが94年に出した“Bellbottoms”が大きくフィーチャーされた時も、まさかの引きがあったのに3人で演奏はできないことが辛かった。Boss Hogのアルバム『Brood X』も出したけど、Boss Hogは「俺たちのバンド」と言えるものとはニュアンスが違う。ミュージシャンとして一歩前に踏み出したいけど踏み出せない状態が続いていたんだ。そんな気持ちに区切りをつけて前進するには、JSBXは終わったと考える必要があった。今はようやくソロ・アルバムを作り終えて、こうして日本にも来られるようになったことが嬉しいんだ。この先のことはおいおい考えていくよ。

Jon Spencer 「Spencer Sings The Hits」

This Is Jon Spencer Blues Explosion

text by Taishi Iwami photo by Kohichi Ogasahara

RELEASE INFORMATION

Spencer Sings The Hits

Jon Spencer

Jon Spencer 2018年11月7日発売 SICX-114E/¥2,400(税別) Sony Music Japan International

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【25’s view】プロボクサー・京口 紘人|25人の25歳へインタビュー

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京口 紘人

「大人でもなく子供でもない。じゃあ私たちは何者なんだろう。」

人生の分岐点といわれる25歳 その節目に何を感じているのだろうか?

写真家・Ryoskrr(リョウスケ)が 25人の25歳に「いまの答え」をインタビューし 写真に記録する連載シリーズ。

第三回目となる今回登場するのは、プロボクサーの京口 紘人

25's view 京口 紘人 / プロボクサー

京口 紘人
京口 紘人

――自己紹介をお願い。

京口 紘人。プロボクサーです。

京口 紘人
京口 紘人

――25歳の今どんなことを感じてる?

自分が小さい頃に思っていた25歳はすごく大人だったけど、 意外となってみるとそんなに大人じゃないなって。 少年ってほどでもないけれど、子供だなあって。 でも、それ以上に12歳から始めたボクシングで、 今の自分が”ボクサー”としては大きくなれたと思いますね。 そう意味ではボクサーという職業にプライドを持って、やっています。

京口 紘人
京口 紘人

――紘人さんがいま持っている、生きていく上での覚悟は?

「命と天秤にかけられるもの。」 ですね。 自分の命と天秤をかけた時にバランスが取れるほど、 命をかけられないと”覚悟”って持てないと思うんです。 だから、覚悟を持ってそれをやるってことは、 命をかけてやるっていうことだと思うんですよ。 “覚悟”は自分の中では、それくらい重いものですね。 生半可な覚悟じゃ生き残れないボクシングの世界で、 みんなが命をかけてボクシングをやっているわけで、 さらにその中でテッペンを狙う、獲るってことは そういうことなんですよね。 そのくらいじゃないと世界チャンピオンにはまずなれないです。

京口 紘人
京口 紘人

「なりたいじゃくて、なる。」だから、そのために命をかける。 そういうことです。 例えば世界チャンピオンになるって決めて行動する10年と、 そうでない10年だと大きく差が出ますよね。 僕の恩師の辰吉丈一郎さんが 「世界チャンピオンになりたいでは絶対になれんぞ。なるって言い切れ。」 っていう教えの人だったので、その影響も大きいのかもです。 俳優の方でも歌手の方でもどんな職業でも、 本気でやっている人達は精神的に命かけてると思うんですけど、 ボクシングの場合は相手との殴り合いなんでね。 物理的にも命をかけてるってことです。

京口 紘人
京口 紘人

――座右の銘は?

「為せば成る」ですね。 成るには為さなくてはならないですよね。 どんな分野でも、それを実現させようと思ったら それに必要な行動を起こすわけで。 自分の場合はボクシングを始めた頃から、 世界チャンピオンになるっていうことを決めて、 それに対する行動を行ってきた結果が”今”なんです。 努力が必ず報われるっていう訳じゃないですけれど、 成功してる人間は全員が努力をしているんで、 やっぱり、為さないと成らないんですよね。 でも、僕自身は全く自分が努力をしてるって思ってもないんですよ。 というのは、人から見たら並外れた努力に見えても、 自分の目的のためにはそれは当たり前のことなんだって考えてるんです。

京口 紘人
京口 紘人
京口 紘人

――最後に、5年後の自分へ一言。

どこまでいけてるかわからないし、命を落としているかもしれない。 世界チャンピオンとして防衛続けてるかもしれないし、 3階級制覇をしてるかもしれない。 でもどんな時でも、 変わらず自分の目標に向かって行動し続けてるでしょうね。 そのためにまずは、今の階級で防衛し続けます。 その後は、僕以外の3団体のチャンピオンにもなりたいですね。 これまで練習し続けて、積み重ねてきましたから。 うん。 自信は、ありますよ。

京口 紘人

京口 紘人

25歳、プロボクサー。

辰吉丈一郎さんに憧れて12歳からボクシングを始める。大阪商業大学に入学し、主将を務める。大学時代には国体優勝などを経て大学を卒業後上京し、ワタナベボクシングジムに鳴り物入りでプロデビュー。そして国内最速、デビューから1年3ヶ月でIBF世界ミニマム級王座を獲得。二度の防衛後に階級を1つ上げ、2018年大晦日、マカオにて世界二階級に挑戦し見事10RTKO勝ちを収めWBA世界ライトフライ級スーパー王座を獲得し、世界二階級制覇を達成した。

ワタナベジムHPInstagram

Ryoskrr(リョウスケ)

1992年生まれ。 ストリートカルチャーへのアプローチと新たな表現を求めて、NYやLA、イタリアでのスナップからフォトグラファーとしてのキャリアを開始。その他、アーティトや俳優のポートレート、ファッションフォトなど幅広い分野で活動中。渋谷西武×HIDDEN CHAMPION主催の"POP&STREET展 -AN ANNUAL- 2018"に選出されるなど、写真作家としての活動も行なっている。

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SHURE×フレデリック|発信しつづける独自の「フレデリズム」そのルーツを紐解く

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発信しつづける独自の「フレデリズム」そのルーツを紐解く

4人組ロックバンド、フレデリックによるセカンド・アルバム『フレデリズム2』が2月20日にリリースされた。 前作『フレデリズム』からおよそ2年4ヶ月ぶりとなる本作は、古今東西のダンスミュージックに影響を受けたグルーヴ感溢れるリズムと、日本人の琴線に触れるどこか懐かしいメロディが融合した、これまでの路線を基軸としつつもさらにヴァラエティに富んだ内容。 モータウンのリズムやEDMの要素を取り入れつつも、一筋縄ではいかないアレンジによって「フレデリック流」ともいえる作品に仕上がっている。

フレデリック 2nd Full Album「フレデリズム2」全曲トレーラー

そこで今回は、バンドのフロントマンである三原健司(Vo.Gt)と康司(Ba.Cho)の兄弟に、SHURE 高遮音性イヤホン SEシリーズのエントリーモデル「SE215」で新作『フレデリズム2』を試聴してもらい、その聴き心地などを伺いながら、バンド結成の経緯やルーツとなる音楽、自身の楽曲の中でも思い入れのある1曲について、たっぷりと話してもらった。

フレデリック

Interview:フレデリック(三原健司/三原康司)

──まずはお二人の、音楽との出会いについて教えてください。 三原康司(以下、康司) うちは両親が音楽好きで、小さい頃から色んな楽曲を聴いて育ったんですけど、自分から進んで音楽を聴くようになったのは中学生の頃でした。中二くらいになると、自分の将来のこととか思い悩むようになって、「高校に入ったらどうなるんだろう」みたいな感じで落ち込んでいた時に、自分のことを慰めてくれたのが音楽だったんです。初めて触った楽器はベースで、そのままベーシストとして今に至るのですが、そのきっかけはクラムボンの“シカゴ”という曲でした。 三原健司(以下、健司) 僕ら双子で、小さい頃から野球でもサッカーでも、何をするにも一緒だったんですよ。中学でも一緒に陸上部に入ったんですけど、その頃から弟が音楽をやり始めて。何をするにも一緒だった弟が、なんか一人で楽しそうなことをやってるなあという感じで見ていましたね(笑)。しばらく音楽は聴く側に回っていたんですけど、康司が文化祭でベースを演奏している姿を見て、「そうか、音楽はやる楽しみもあんねや」と。それで興味を持ち、高校に入ってすぐ軽音楽部に入部しましたね。 ──聴いていた音楽も、2人とも似ていたのですか? 健司 APOGEEやSUPER BUTTER DOG辺りですかね。それから、たま。個人的に、特に衝撃を受けたのが「たま」でした。小学生の頃はずっとJポップを聴いていたので、その耳で聴いた時にとにかくビックリしたんですよ。あまりにも異彩を放っているし、そもそも普通のバンド編成じゃなくて。「そうか、音楽ってこんなに自由なんや」と思いましたね。4人とも曲を書いて歌えるのもカッコいいと思ったし。初期のフレデリックはかなり影響を受けているかもしれない。 ──フレデリックを結成する前から、2人でバンドはやっていたのですか? 健司 僕が入った軽音楽部に康司も所属して。僕が部長で康司が副部長になって、バンドもずっと一緒にやっていました。高校を卒業してからは、僕は音楽の専門学校へ行き、康司は芸大に行って、暫くは別々にバンドを組むなどしていたんですけど、「このままプロとして音楽をやっていくんだったら、やっぱり康司の書く曲が歌いたい」って強く思うようになって。それでまた彼を誘って結成したのがフレデリックでした。

フレデリック
フレデリック

──バンドではどのような活動をしてきましたか? 康司 結成後いきなりオーディションを受けて、そのままプロ契約とかはなくて。3年くらい経験を積みたいと思って色んなライブハウスに行き、どんな企画にも率先して参加するようにしていました。ただ、どのライブハウスへ行っても「フレデリックって、どういうアーティストを対バンにしたらいいか分からない」と言われました。だったら逆に、どんなジャンルでもやってやろうと思って(笑)。ハードコアバンドのイベントから、弾き語りシンガーソングライターのイベントまで、出られるものなら何でも出ていました。 そのおかげで、関西のライブハウスシーンを色々知ることが出来ました。港町の神戸はシーンも盛んで、踊ってばかりの国やキュウソネコカミ、女王蜂など一筋縄でいかない人たち、その一夜に全てをかけるツワモノ揃いの街だったので、2年くらいはただただそういう人たちと共演する日々でした。そこで鍛え上げられた音楽性を武器に、結成して4年目の1年間は、ひたすらオーディションを受けまくりました。時には上手く行きかけたり、あるいは箸にも棒にもかからなかったりを繰り返しているうちに、今の事務所に決まりました。 ──自分たちの楽曲の中で、特に思い入れがあるのは? 健司 僕は“シンクロック”という曲ですね。元々僕らの楽曲にはラブソングが少ないんですけど、「音楽への愛」を歌った曲は結構あるんです。“リリリピート”とかもそうなんですけど。その中でもこの“シンクロック”は、バンドの信念としてすごく大事に取っておきたい楽曲というか。フレデリックの全てがここに詰まっていると言っても過言じゃない曲です。 康司 僕は今回の新作に収録されている“飄々とエモーション”ですね。この曲は、初めてのアリーナ公演のアンコールでやったんですけど、作曲者として「アリーナで鳴らす音楽」という意識を強く持って書いた曲でした。この曲があったからこそ、今回のアルバム制作でも自分の気持ちの向き合い方が、以前と比べて変化した気がします。そういう意味でも思い入れのある楽曲ですね。

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──さて今回、お二人にはSHUREの高遮音性イヤホン、SE215を試してもらいました。まずはSHUREというメーカーに関するイメージを教えてもらえますか? 康司 音楽をやっている側なので、とにかくお世話になっているメーカーというイメージ(笑)いつでもどこにでもいてくれる存在というか。特にマイクですよね。SM57やSM58は、レコーディングでもスタンダードな楽器ですし。ライブハウスには必ずボーカル用でSM58がある。機材を色々知っていく上で、最初に通るメーカーというイメージもありますね。確か、うちのギターの(赤頭)隆児も持っていた気がする。 健司 SHUREのマイクは、楽器で使うことが多いです。スネアやギターアンプの音を録る時によく使っていると思います。 ──では、SE215で『フレデリズム2』を聴いてみた印象は? 康司 例えばアルバムに収録されている“LIGHT”や“YELLOW”、“対価”という曲は、BPMも速くないし割と一つ一つの音もよく聴こえると思うんですけど、あえて“スキライズム”のような速い曲を聴いてみると、しっかり音の粒まで見えるというか。特に僕は休符の使い方もすごく気にしているんですけど、そういう細かいニュアンスもちゃんと再現してくれている。それでいて音も柔らかく、今日も外で聴いていたんですけど、包み込んでくれるような気持ち良さがありましたね。

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──休符もしっかり再現できているのは、ドライバーの性能に加えて、遮音性の高さも関係しているのかも知れないですね。 康司 それはありますね。イヤパッドもすごくしっかりしているので、密閉度もバッチリです。 健司 僕はイヤホンを選ぶ時に、「遮音性の高さ」を気にするんですよ。ノイズキャンセリング機能を使わず、それでも遮音性の高いイヤホンで「自分と音楽だけの時間」にのめり込みたくなる。そういう意味で、『フレデリズム2』には本当にいろんな楽曲があるので、周りの雑音から遮断された空間で、楽曲に没入したくなるんですよね。そういう体験を、外に持ち出せるのがすごく嬉しいです。 あと、個人的には今回「歌のニュアンス」もすごく気をつけていて。休符の使い方などは実は、ジェイソン・ムラーズにも影響を僕は受けているんです。そういうニュアンスを大事にしながら作ったアルバムなので、そこがちゃんと再現されていたのは嬉しかったですね。 特に“シンセンス”はブレスの使い方、語尾にちょっと高い声を入れてみるとか、そういうのもしっかりと再現できていて。ボーカリスト冥利に尽きるなって思いました(笑)ちなみにこの曲は、ギターのカッティングから始まるんですけど、弦1本1本の粒立ちまではっきり見えるようなサウンドでした。 ──SHUREのイヤホンはこのSE215から上のモデルは、リケーブルも出来るので、BluetoothワイヤレスやiOS/Android対応のユニバーサルケーブルなど用途によって使い分けられるのも嬉しいですよね。 康司 それは本当に便利ですね。出歩く時とかワイヤレスはいい。最近はワイヤレスのイヤホンで音楽を聴いている人が、街中にたくさんいる気がしていて。そうやって気軽に音楽を持ち出してくれるのは、作り手としてはすごくモチベーションが上がります。 今って、音楽もiPhoneのスピーカーから直接聴くこともあるじゃないですか。でも作り手からすると、すごく細かいところにもこだわり抜いて作っている。このSE215なら、そういう部分をより広い層に伝えてくれると思います。

フレデリック

フレデリック

フレデリックを紐解くフレデリズムなプレイリスト

三原健司さんと康司さんがセレクトしたフレデリックを紐解く“フレデリズムなプレイリスト”を公開!SHUREの高遮音性イヤホン、SE215でぜひ二人のルーツを辿ってみてください。 1.音楽を好きになったきっかけの楽曲 2.バンドを始めた当初好きだった楽曲 3.バンドを始めた当初、影響を受けていたアーティストの楽曲 4.バンドで共通して好きだったアーティストの楽曲 5/対バンしたアーティストの中で思い出に残っているアーティストの楽曲 6.一番思い出に残っているライブで演奏をした楽曲 7.フレデリックの中で一番思入れのある楽曲 8.新作アルバムの中でSHURE SE215で聴きたい楽曲

三原健司プレイリスト

三原康司プレイリスト

INFORMATION SEイヤホンシリーズ

SE215 SPECIAL EDITION ワイヤレスイヤホン:Translucent Blue / SE215SPE-B-BT1-A

SE215 iOS/Android対応イヤホン:Translucent Black / SE215-K-UNI1-A

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Bearwearから紐解く“エモ”の新たな可能性。2019年インディシーン注目の若手バンドは何を考える?

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インディロックやシューゲイザー、ビートミュージックなど多様なジャンルのバンドが出現し、音楽の聴き方はストリーミングが主流になり、自分の趣味嗜好に合うバンドをすぐに探せるようになった近年、“エモ”というジャンルを聴いている人は今どれぐらいいるだろうか? 2017年に結成をしたBearwearというバンドはインディロックやドリームポップのなかに“エモ”の要素を残し、“エモ”を聴かないシーンの人たちへ必然的にそれを聴かせている。 彼らは結成2年にも関わらず、MVの再生回数が1万回を超え、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの‎後藤正文氏にもSNS上で評価をされたバンドであり、ライブの本数も結成1年目に比べると10倍増えたそうだ。また今年に入ってからは<BAYCAMP201902>のオーディションを勝ち抜いてA'TTICステージへ出演、渋谷 CLUB QUATTROや都市型フェス<SYNCHRONICITY'19>の出演も決定し、勢いを増す活動に東京インディ・シーンの中でも目が離せない存在となっている。 今回は現代の音楽性を取り入れつつもトレンドの追随ではなく、揺るぎない意志を持って自分たちの音楽を表現しているBearwearに、これまでの活動を振り返ってもらい、彼らが発信する“インディエモ”の新たな可能性を探ってみた。

bearwear

Interview:Bearwear

――Bearwear結成の経緯を教えてもらえますか? Kou Ishimaru(以下、Ishimaru) 僕とヴォーカルのkazmaはTwitterで知り合いました。僕がTwitterで「ポップパンクからインディエモみたいなバンドをやりたいんだけど、ヴォーカルがいない」というのをツイートしたのをkazmaが半年後ぐらいに見つけて、連絡くれたのが始まりですね。初めて話した時に根底にある部分や共通している部分が多くて、意気投合して結成に至りました。 ――2人体制でバンド活動を行なっていると思いますが、理由はありますか? Ishimaru Bearwearとして初めて2人で集まった時に、自分たちが一緒にやりたいと思った人に声をかけようってなったんですけど、指名した人が全員他にもバンドをやっていたので、口説き文句としてサポートでお願いをすることして、それがきっかけで2人体制になりました。あとは単純にうまい人たちとやりたいからですね。 ――なるほど。 Ishimaru プラスして、バンドの方針を決めるときに2人で話す方が早くて。僕たち2人だとバンドの話とプライベートの話の境目がないんですよね。普通の話をしながらバンドの話をしたり、ミーティングも特になくて、2人でイベントに行った帰りにこの流れ考えちゃおうって、決めたりとか。 ――柔軟に動けるのはいいですね。先ほど「ポップパンクからインディエモみたいなバンドがやりたい」というツイートがきっかけで結成をしたとおっしゃっていましたが、Bearwearの根底にいるバンドやロールモデルになっているバンドはいますか? Ishimaru Bearwearとして核となるバンドがTRANSITとTurnoverっていうバンドで。どっちもポップパンクのシーンにいるようなバンドなんですけど、2010年あたりからシューゲイザーやインディロックの要素を入れるような流れがあって。全く同じことをしている訳じゃないんですけど、自分たちもインディエモの中にそういった別のジャンルの要素を取り込むようにしています。

Turnover - Good Nature(Full Album Stream)

――だからインディエモだけじゃなく、インディロックやドリームポップの雰囲気も持ち合わせているんですね。Bearwearにとって2018年はどんな年でしたか? Kazma Kobayashi(以下、Kazma) バンドにとって良いことしかない、プラスの1年です。結成してまだ2年ですが、昨年はBearwearを聴いてほしいと思っていた人達や、自分が憧れていた人へしっかりアプローチができたと思っています。燻ったこともなくて、2018年は駆け足で進むことができました。 ――良いことって具体的にどんなことですか? Kazma “e.g.”という楽曲のMVを2018年の2月に出したことがまず最初の一歩ですね。自分達が足を運ばなくてもそのMVが勝手に一人歩きをしてくれたおかげで、周囲の反応が変わり始めました。そこからライブ本数がその前の年に比べて10倍は増えましたし、届けたい場所へ自分達の音楽を届けられたと感じています。 Ishimaru でもMVは戦略的にやったというよりは、僕がプリプロで作ってできた曲をせっかくだから出そうかっていう流れで、何も考えずに出したんです。 ――MVは誰にお願いをしたんですか? Ishimaru Pennackyという監督にお願いしています。彼はアンテナを張っているところが似ていたりして、シンパシーを感じるものがありました。だからこそ、映像と楽曲が共鳴したMVが出来たと思います。MVのお陰で色んな人にBearwearの存在を知ってもらうことができたよね。 Kazma そうだね。あとは10月にアルバムをリリースしていて。1年目にそういうアプローチができてなかった分、2018年はMVを計3本とアルバムをしっかりと発信したことで、周囲にちゃんと活動をしているバンドっていうイメージを持ってもらえたんじゃないかなって思います。

Bearwear "e.g."(Official Music Video)

――10月にリリースをしているアルバムの『DREAMING IN.』にそのMVになっている“e.g.”が入っていますね。『DREAMING IN.』はBearwearにとって初のアルバムになると思いますが、アルバムを制作に至った経緯は? Ishimaru アルバムとして完成度が高いものを作りたいってKazmaが言ったのがきっかけです。それまで曲単体で楽曲の制作をしていたのですが、『DREAMING IN.』はアルバムとしての完成度を意識して、アルバムの全体のイメージを自分の中で固めてから、楽曲の制作をしました。 ――『DREAMING IN.』のイメージってどんなものなのでしょうか。 Ishimaru 自分たちはエモと呼ばれるジャンルやインディロック、パンクが好きで、『DREAMING IN.』をリリースする前のBearwearはそういった楽曲がほとんどだったんですけど、今回はパンクとかエモを作っていたときにはなかったユルさとか、“2018年っぽさ”を体現したいというのがコンセプトにあって。それを軸にした結果、自分達がそれまでアンテナを張ってなかったユース・カルチャーへ自然と向かっていった感じですね。 Kazma “e.g”はそういった意味でも、アルバムの基準になっています。エモやパンクをやっていた僕たちにとって、“e.g”は未知のジャンルだったので周囲からどんな反応があるか正直わからなかったんですが、アルバムリリース前に先行配信リリースとMVを出したら思ってた以上に反響があって。だから、その反応を踏まえて“e.g”を気に入ってくれた人が求めている楽曲と、“e.g”の流れを意識しつつも、僕たちの根底にあるエモの要素を取り入れた楽曲をアルバムに詰め込みました。ドリームポップやシューゲイザー、エモにインディロックなど色んなジャンルの要素が混じり合っているのがIshimaruの言う、僕たちが体現したい“2018年っぽさ”だと思ってます。

――確かに“e.g.”の前に入っている楽曲はドリームポップやシューゲイザーよりですが、その後に入っている楽曲はエモやインディロックの要素を感じます。 Kazma その通りで、ちょうど両側にいけるモノを作りたかったんです。“e.g.”のおかげで、それまでBearwearが活動をしていた場所ではない、全くちがう場所に発信をすることができたので、自分達の根底にあるエモやパンクを聴かない人にも“e.g.”を通して、そのジャンルを聴いてもらえるチャンスだと思いました。なので“In The Wood”みたいな、その要素の強い楽曲も入れて、自分達の根底の部分もしっかり伝えられるようにしています。

――“e.g.”はバンドの軸にもなった楽曲でもあるし、バンドの可能性を広げてくれた楽曲なんですね。 Kazma そうですね。今からするとBearwearにとっては中間地点の曲ですけど、お店のBGMに使われてたり、思わぬ歩き方を見せたときに、やっと今いる場所から一歩外に出れた、次のステップにいけた曲だなと思ってます。 ――次のステップって? Kazma “e.g.”を配信してから、だんだんとフェスや自分達がよく呼ばれて出ていたハードコアバンド以外のイベントにも出演したいという意欲が湧いてきました。それまではハードコアの人にもウケるインディロックをやりたいと思ってて、今もそれは変わってないんですけど、“e.g.”あたりから発想が逆になって、ドリームポップやシューゲイザーを聴いてる人にも、エモ要素がある音楽を聴かせたいと思うようになりました。それまでのBearwearの音楽性は流行りとは遠いいところにあったんですけど、“e.g.”を軸にした瞬間から、みんなが受け入れ始めてくれて。なので、次のステップとして、自分たちにとって新しい場所へエモを発信したいと考えています。 ――その為に何か考えていることってありますか? Ishimaru バンド活動をする上で、音楽以外の要素も入れていかなきゃいけないと思ってます。自分達の映像を撮ってくれた映像監督とか、自然とそういうクリエイティブな人たちとコミュニケーションを取っていく中で受けたインスピレーションがバンド自体に出ることが多くて。ここ1年で人から受けたインスピレーションがかなりプラスに働いているのを強く感じています。だから、これからも音楽以外にも広く色んな分野にアンテナ張って、たくさんの人とコミュニケーションを取って、吸収をしていきたいですね。

bearwear

――確かに。人から受ける影響はありますよね。Bearwearは海外のバンドと共演やツアーを一緒にまわったりしていますが、海外のバンドから何か感じる事はありましたか?また同じステージでライブをしてみてどうでしたか? Kazma 僕たちが意識して影響を受けているのは、そういった海外のバンドばっかりですね。 Ishimaru 海外のバンドはサウンド作りが平面的じゃなくて立体感のある空間を作っているのが印象です。そういうのを意識的に参考にしたりはしてます。 Kazma 日本に来日するバンドって現地では1000人とか10000人規模でライブしてるような人たちで、そういうバンドとライブハウスで対バンできるのは、アプローチの仕方やジャンルの違いとか、いい意味でも悪い意味でも影響を受けるっていうか。僕たちはICE GRILL$っていうエモやインディロックのバンドだけを日本に呼んでいるツアーマネージメント会社があって、そこが呼んだバンドと数回共演させてもらったですけど、その時だけ初めて正々堂々勝負ができたと思ってます。 ――そう感じる理由ってありますか? Kazma 日本でこういったジャンルのバンドをやっている人たちが周りにいなくて、ライブする度に土俵が違うから、自分達のバンドの実力がわからなくなってくるんですよね。どのバンドと共演しても珍しがられるし、盛り上がるバンドと一緒に共演して、僕らのときは盛り上がらなくても、それがいいとも捉えられるし、聴いたことがないような音楽だから、印象に残ってるときもあって。でもICE GRILL$が呼んだバンドだと土俵が一緒だから、色眼鏡とか抜きでお客さんの反応を比べて勝負ができているなと思ってます。

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――なるほど。向こうの同じジャンルのバンドと共演をする機会があるのは、日本にBearwearみたいなバンドがいないからこそ、比較もできるし、自分たちの成長にもなりますね。 Kazma そうですね、憧れている海外のバンドと共演することで、そこに近づけている気もしますし。 ――いまの課題はありますか? Ishimaru 課題はBearwearとしての表現がまだ確立できてないというか。今までメインで活動をしていたのがエモのシーンだったので、Turnover直系のバンドが現れたとか、ドリームポップとエモを掛け合わせたバンドっていう印象を築けたんですけど、更にもっと広いシーンでやっていくってなった時の、更に強いBearwearとしての表現がまだ確率できてないと感じています。今はそれを探しながらどんどん曲を作っていく時期で、ここからが本当に勝負だと思いますね。 Kazma 僕は大勢の人を掴める、その曲だけを聴くためにライブへ行ってみたいなって思わせるぐらいの楽曲を作りたいと思ってます。今はまだそれがたりてないって思ってて。 ――心の琴線に触れる曲みたいな? Kazma 偶然、耳に入っていいなっていうより、ふとしたときにあの曲が聴きたいから今すぐ流そうとか、ライブへ足を運びたいなって思わせるぐらい、人を引き寄せる力がある曲ですね。

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――<BAYCAMP>に出演をしてみて、どうでしたか? オーディションで審査が通り今回の出演が決まっていますが、手応えはありましたか? Kazma あのオーディションが僕らにとっては初めて、他のバンドと勝負して勝てたオーディションでして。去年リリースしたミニアルバム中心の楽曲で挑んで、それを聞いた審査員がバンドに可能性を感じてくれたっていうことはかなりの自信になりました。 Ishimaru 審査員で見てくれていたタイラダイスケさんが、僕らの音楽性の美学に共感してくれて、その根っこの部分を汲み取って理解してもらえたのが初めてだったかもしれません。エモとインディーロックのクロスオーバーと言ってもらえたり、ジャンルとして注目されてきたことはこれまであったのですが、それよりもさらに根底にある美意識について触れてもらえたことで、今までこだわってきたことが間違っていなかったんだなと再認識できました。 Kazma <BAYCAMP>の当日は、サブステージでトッパーだったのですが、<BAYCAMP>のお客さんが純粋に音楽を好きな人が多く、無名の僕らのことも多くの人が見に来てくれたのが何よりも嬉しかったです。このタイミングでフェスのステージを経験したことで、次のステップへ進むための課題も自分たちで気づけたこともあり、ひとつバンドとして成長できたステージだったと感じました。 ――今回の<BAYCAMP>に出演していたアーティストはTempalayやMONO NO AWARE、TENDOUJIなど、Bearwearが今いるグラウンドから、大きなステージに上がったバンドが揃っていましたね。ライブをみてどうでしたか? Kazma その辺りのバンドは憧れの対象過ぎて自分たちのいまいるグラウンド出身っていう認識はしてなかったんですよね。<BAYCAMP>の会場でTENDOUJIのメンバーに「この前<New Action!>出演してたよね? 俺らもよく出演してたし間違いないイベントだよ」と言ってもらった時に、いまメインステージに立ってるバンドたちもスタート地点は僕らと同じだったのかなと初めて知りました。 Ishimaru 今回のラインナップはまさに僕たちが今目指してるステージにいるバンドばかりだったので勉強の連続でした。インディーな音楽で今より大きな場所でやっていくためにはどんなことが必要なのだろうかと考えながらずっと見てました。 Kazma 僕らとは全く別のジャンルなのかなと思っていたナードマグネットが、ライブを見てみたら一番学ぶことが多くてかなりの衝撃でした。良いライブすぎましたねあれは。 Ishimaru 我慢できなくて最前まで行って見ながら号泣してました。

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――同じく2月には渋谷 CLUB QUATTROでのライブもありましたね、いまのシーンにいるバンドとして注目が集まってきているのかと思います。何か気持ちの変化はありますか? Ishimaru どんなフィールドでもやれることをイメージしてきたのですが、正直なところあの規模のステージでどういう音が鳴らせるか想像できてなかったです。実際にやってみると、いつもどおりのプレーでも大きなステージで勝負できるんだなと知れたのはひとつの大きな気持ちの変化かもしれないです。 Kazma 間違いなくバンド人生で一番大きな規模の会場だったので、もうただただ演奏していて気持ちよかったです。あの今注目されている新進気鋭のバンドしかいないメンツに僕らが組み込まれたことも嬉しいですね。一度あの大きいステージからやる気持ちよさを知っちゃったので、早くまたクアトロで今作ってる新曲とかをやりたくてウズウズしてます。 ――同世代のARSKNとSUPER SHANGHAI BANDとのスプリットツアーへの想いは? 新しいシーンができそうな気がしてます。 Ishimaru まず最初に、3バンドで行うこの<NEO GARAGE SESSION TOUR>は、SUPER SHANGHAI BANDの吉村くんが「ARSKNとDIYな感じのツアーをやりたいんだけど、Bearwearはそのバイブスを共有できると思った」と急に連絡が来たことがきっかけでして。前々からARSKNとSUPER SHANGHAI BANDは、自分たちで頻繁に企画を打ったり、面白いZine作ったり、バンド以外のカルチャー巻き込んだりしてる活動の仕方を見てきて、一方的にリスペクトしていた2バンドだったので光栄でした。 Kazma SUPER SHANGHAI BANDは一度だけ対バンしたことがあったのですが、ARSKNは本当にこれまで一切接点がなかったので、僕らの音源やライブ映像を見て近いものを感じ取ってくれたのはめちゃくちゃ嬉しかったです。ツアーが決まってすぐにARSKNのライブを見に行ってみて、実際にリョウナくんとじっくり話してみると、音楽に対する思いや、日本のバンドシーンの現状に満足していないことなど共有できることだらけでした。3バンドとも自分たちのサウンドに近いバンドばっかと対バンしているのではなく、違ったジャンルのライブに飛び込んで勝負しているという共通点もあり、バンド同士のジャンルは違えどかなり芯のしっかりしたツアーができるなと確信しました。 Ishimaru このツアーは各公演のゲストバンドも、近い世代の同じマインドを持ってそうなバンドを集めているのでかなり面白くなると思います。

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――Petalの来日公演のツアーファイナルを主催してますが、これはどうやって決まったんですか? Kazma 本当にいろいろあって最終日を僕らが任せてもらえることになりました。 Ishimaru Bearwearがライブハウスで自主企画を主催するのは初めてなんですよ。 Kazma Petalはもともとメンバーもみな聴き込んでいる大好きなシンガーソングライターで、所属しているレーベルもRun For CoverっていうTurnoverを始めとする僕らが大好きなバンドをいくつも輩出しているところっていうこともあって、来日の話を聞いたときは大興奮でした。 ――ブッキングもされているんですよね。それぞれのアーティストをブッキングする際にどんなことを考えていましたか? Kazma シンガーソングライターでありながら、インディロックやエモの要素もあるPetalは、様々なバンドと相性が良さそうで、どういうバンドを組み合わせたライブにしようかとかなり悩みました。The Firewood ProjectとCharlotte is Mineは僕らのように「インディ/エモ」というジャンルを自称している国内でも数少ないバンドで。そしてLucie,Tooは以前地上波のインタビューでメンバーがAmerican FootballやNow, Nowなどのエモ、インディロックなバンドをルーツに挙げていたということもあり、この3バンドがいれば僕らが目指すインディとエモを軸にした理想のイベントが開催できると思って声をかけました。

bearwear
Ishimaru インディエモの魅力が伝わるイベントになればいいと思います。僕らはこれまで散々「インディエモ」という表現を使ってきましたが、その言葉だけでは表せない魅力がたくさんあって。このイベントを見ることで海外と国内の現行のインディエモという音楽の良さを体感してもらいたいです。 Kazma 大成功させたいですね。 ――年明けからすごく活発的に動いていると感じているのですが、何か新しいものができそうな予感はしますか? Kazma Bearwearを結成してやっと2年が経ちましたが、年明けてからのこの2ヶ月間が間違いなく今まで一番濃かったです。活発的に動いていると見えているのならば嬉しいですし、このペースを維持して今年は存在感をどんどん示していきたいです。 Ishimaru 新しい作品も今年中に出したいしね。 Kazma 最近は現場と同じぐらい、インターネットやSpotifyを通して受ける刺激が大きくて、これからの世代のバンドは現場とネットで両方からリアルタイムで刺激を受けることで今まで以上にスピード感のある活発的な動きをしているように見えると思います。 Ishimaru 3月にはツアーや自主企画などもあり、その後もターニングポイントになりそうなイベントがたくさん決まってきているので、数カ月後、半年後には自分たちがどんなバンドになっているのか想像もつかなくて楽しみです。 Kazma 1年後、2019年を振り返った時に今年はBearwearの1年だったなって思ってもらえたら嬉しいです。

Bearwear "Proxy"(Official Music Video)

Photo by Kodai Kobayashi Interview by maomao

Bearwear

Bearwearは2016年にKazma(Lyric/Vo)、kou(Music/Arrange/Ba)の2人を中心に結成されたインディ・ロック・バンド。サポート含めフレキシブルな体制で活動をしている。

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Bearwear presents Petal 2019 JAPAN TOUR FINAL

ペタル

LINEUP Petal Bearwear Lucie, Too The Firewood Project Charlotte is Mine

SYNCHRONICITY’19

SYNCHRONICITY '19

2019年4月6日(土)、4月7日(日) OPEN/START 13:00(時間予定) TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-Crest、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE、clubasia、VUENOS、Glad、LOFT9(東京・渋谷) 4月6日(土)、7日(日)通し券:¥11,000(ドリンク別) 4月6日(土)、7日(日)1日券:¥5,800(ドリンク別)

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【メールインタビュー】Mndsgn|ちぐはぐした世界観

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マインドデザイン

〈Stones Throw〉からMndsgn(マインドデザイン)が来日する。ヒップホップ/ビート/エレクトロニカからウェッサイなファンクまで手掛けるビートメーカーの彼はそのユニークさが世界中で人気を得ており、日本でもD.A.N.との対バンでチケットをソールドアウトするなどお墨付き。オオクボリュウとのコラボでは、その世界観が音楽好き以外の人も虜に。 また昨年にはProphetの新作『Wanna Be Your Man』をトータル・プロデュースしたほか、西海岸テイストのミックステープ『SNAX』をリリース。今年もリリースをする予定だという彼は今一体どんなモードなのか。メールインタビューを行った。

Interview:Mndsgn

——昨年はProphet氏との共作『Wanna Be Your Man』がリリースされましたね。 ProphetとはたまたまStones Throwのスタジオで会ったんだ。彼とそのチームは翌日のライブに向けて『Right On Time』のインストを撮り直してたんだけど、結局その夜は僕の家で3カットくらい録ったよ。そのライブのあと、毎週僕の家に来るようになって、くつろぎながらも彼のいろんなデモをリメイクしたんだ。その作品の多くが、一緒に作った『Wanna Be Your Man』に入ってる。

Prophet - Wanna Be Your Man

——また、昨年はリミックス/ブレンドの作品『SNAX』をリリースされています。あのコンピレーションはどういったアイデアから生まれたものだったのですか? 『Snax』は僕がDJでかけてるリミックスとかループを集めたコンピレーション。既存のものを全く新しい作品にするのは好きな手法の一つで、『Madlib Remixes』みたいにリメイクした作品に敬意を示せてるように感じられるから良いよね。僕は本当にいろんな種類の作品を作ってるんだけど、このアルバムに全部の作品を入れることはできなかった。 ——リミックスやブレンドを制作する際のこだわりはありますか? 対照的な要素を組み合わせるのはインパクトがあるよね。古い作品を新しい作品と、スピード感溢れるものをスローなものと、悲しい感情を多幸感溢れるものと組み合わせたり。曲の文脈を再構築するには無限と方法があるよ。僕はアカペラを最初に出してから、何かがひらめくまで色々弾いたりするのが好きかな。 ——『SNAX』のジャケットはすごい可愛いですよね。映像やジャケット、ヴィジュアル面でどういったものが好きなんですか? 僕は子供の頃から絵が好きで、落書きとかラフなスケッチみたいなのを手書きで描いたりするんだ。描いた絵のちぐはぐした感じがすごい好き。

——ちなみに今最も気になっているモノ・コトは? 健康とどう付き合うかかな。ミュージシャンの生活はいわゆる活動的なものではないから、もしダイエットや身体的精神的な活動、瞑想から自分の健康状態を最大限に活かせたらどうなるのかを考えると、とても興味深い。僕は運動とかに自分の時間を管理するのがすごい苦手なんだけど、間違いなく考えるべきことだと思う。 ——最近気になっているガジェットとかありますか? 自動運転車。その日は近いよ。まだ乗ったことないけど、興味あるな。

Riding in a Driverless Taxi at CES 2019!

——今後、一緒に制作してみたいアーティストはいますか? 僕の友達はみんなすごい才能を持ってるから一概には言えないけど、少し名前を挙げるならJoyce WriceやDevin Morrison、Swarvyとは今後も一緒に色々作っていきたい。 ——2019年はどのように活動される予定ですか? 『Snax』に続くコンピレーションの『Snaxx』をリリースしたい。Jon BapやPink Siifu、Asal Hazelとの作品が収録されると思う。あと、制作中のアルバムがもう一枚あって、それを完成したい。 ——日本のライブではどんなセットを用意していますか? キーボードを弾きながら、自分のブレンドトラックとかその日のためのエクスクルーシブをプレイするよ。お楽しみに。

マインドデザイン

MNDSGN ASIA TOUR 2019

Mndsgn

2019.03.15(金)@名古屋JB's

OPEN 22:00|CLOSE 5:00 ADV ¥3,000|DOOR ¥3,500

Main Act:MNDSGN from Los Angeles(Stones Throw) Guests:BudaMunk from Tokyo(Jazzy Sport/King Tone)、DY from Osaka(Sucreamgoodman) DJs:T2、岡崎のヒロシ、PEACE LIVE:Toshi蝮、写楽 DANCE:AYLAH、まだかいな、G-Flappers MPC SESSION:10game & DY

詳細はこちら:http://www.club-jbs.jp/pickup.php?year=2019&month=3&day=15

2019.03.16(土)@神戸Troopcafe

MAIN ACT:MNDSGN from Los Angeles(Stones Throw) Entrance Free(with 1 Drink Order at Entrance)

Support DJs: KOTA(Stones Throw Asia) GREEN WORKS(Soulpot Records) SHOWTY(Okey-Dokey) Naoki Matsumoto(Noteassort) DANCER: TAKE-C×KOSSY×Atsuki DEBOC

詳細はこちら:http://troopcafe.jp/music-program/1711

2019.03.17(日)@大阪NOON + CAFE

OPEN 16:00 |CLOSE 00:00 ADV ¥2,800(+1D)|DOOR ¥3,500(+1D)

Main Act:MNDSGN(Live)*Live will start around 9PM.
 Tour Support DJ:Kota(Stones Throw Asia) LIVE:YOSHIMARL(BACKROOM)|KZYBOOST|TECHNOMAN(19-t) 
DJs:QUESTA(Hoofit|Between Music)|CH.0|Mayumikiller(LOSER|DUBLAB.JP)|AFR


2nd Floor 
LIVE/DJs:MAGANO|Dyelo think(FUZZOSCOPE)|DJ SHUCREAM|EDAMAME CREW|JOHNNY KUROKI|DJ 侑士 
 SHOP:STONES THROW|LOSER  
FOOD:Appy The Chef|HIKOBOSHI|TAWAN中華

詳細はこちら:https://jp.residentadvisor.net/events/1231759

mndsgn

2019.03.20(水|木・祝)@東京VISION

OPEN 22:00|CLOSE 5:00 ADV ¥2,800|DOOR ¥3,500

【GAIA】 LIVE:Mndsgn(LA)/ONYX collective(NY) DJ:MURO/tofubeats/Fran-key/Mat.jr(tokyovitamin)/Soushi(Kirime) 【Deep】 LIVE:Sauce81 DJ:Zen La Rock/MAHBIE 【WHITE】 DJ:Nico Adomako/Disk Nagataki(tokyovitamin)/NIGHT TRAIN/Vick Okada(tokyovitamin)/Kenchan(tokyovitamin) 【D-Lounge】 DJ:HIKARU Arata(Wonk)/SAKUO(HOUYHNHNM)/MOSSGREEN/Yohji Igarashi/Floppy Spam/Msd.

詳細はこちら:http://www.vision-tokyo.com/event/stones-throw-presents-mndsgn

Mndsgn

キーボード、ビートメイキング、歌もこなすLAシーン屈指の新世代ビートメーカー/プロデューサー:マインドデザイン。 ニュージャージーで生まれ育ったマインドデザインは、ゴスペルミュージックやB-Boyカルチャー、90s R&Bから多大な影響を受け、10代からビートメイキングを始める。同世代のレーベルメイトでもあるノレッジと出会い交流を深め、共にLAへ拠点を移す。LAビートシーンの登竜門でもあるLow End Theoryで定期的にゲスト出演しシーンから認知度を高め、2014年には1stフルアルバム『Yawn Zen』をStones Throwからリリース。ヒップホップ/ビート/エレクトロニカなど多方面から高い評価を得ることに成功し、デトロイトのラッパー:ダニー・ブラウンへの楽曲提供や、日本でもSpace Shower TVのCMに楽曲が抜擢された。2016年にはStones Throw から待望の2ndアルバム『Body Wash』をリリース。ヒップホップをベースにディスコ、ファンク、R&B、ブギーなどのクラシックを吸収し、独自のメロウネスとサイケデリックな音像で現代のダンス/ビート・サウンドを作り上げ、US人気音楽誌Pitchforkでも2016年のベスト・エレクトロニック・アルバムの一枚にも選ばれた。2017年2月には、東京でソロライブを@Sound Museum Visionで披露し1,000人オーバーの動員をしたほか、翌日には初のバンドセットを日本の新世代バンドD.A.N.と対バン形式で@WWW Xで披露し、こちらも前売りチケットが即完するまでの注目を集めた中、内容も大きな反響を呼んだ。2017年7月には沖縄で開催されたCorona Sunsetsフェスティバルからもオファーを受け出演。2018年にはレジェンドファンクアーティスト:Prophetのアルバム『Wanna Be Your Man』のトータルプロデュースを手がけた他、ミックステープ”Snax”をリリースし自身のビートとリミックス曲を多数収録している。2019年には、ビート集”Snax Vol.2”のリリースと、その後には現在制作中の待望のフルアルバムがリリース予定である。

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【チョーヒカル・インタビュー】最強の女性が最高!『キャプテン・マーベル』が照らすアベンジャーズとマーベルの未来

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チョーヒカル

世界興行収入 No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作『キャプテン・マーベル』が、ついに3月15日(金)、日本で公開された。昨年4月に公開された『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃的な結末に絶望感を味わったマーベルファンは、続けて8月に公開された『アントマン&ワスプ』でもそれを振り払えず(アントマンはあのテイストが最高なんだが……)。しかし、マーベルはこのタイミングで満を持してとっておきのヒーロー、キャプテン・マーベルを登場させた。

『キャプテン・マーベル』は、宇宙からの脅威もヒーローたちの存在もまだ知られていなかった1990年代半ばのアメリカが舞台。原作ファンにも人気の高いキャプテン・マーベルが自らの過去と向き合い、ヒーローとして覚醒する過程を描くとともに、アベンジャーズ誕生の秘密が明かされていく。本作は、4月26日(金)に日本で公開する『アベンジャーズ/エンドゲーム』へ繋がる重要なエピソードなだけに、ファンは決して見逃すことのできない作品と言えるだろう。 この超大作の公開に合わせて、Qeticではさまざまな角度からキャプテン・マーベルを特集。今回は、本作のテーマである“女性の強さ”や“アイデンティティ”という観点から、リアルなボディーペイントが話題のアーティスト・チョーヒカルさんに試写直後のインタビューを敢行した。 これまで映画などで描かれる女性像にどこか不満があったというチョーヒカルさんだが、キャプテン・マーベルのカッコ良さにスッキリしたご様子。サノスの圧倒的強さに絶望したマーベルファンのみんな! 大丈夫だ! 地球にはキャプテン・マーベルがいる!

Interview:チョーヒカル

チョーヒカル

キャプテン・マーベルがブッ飛ばす、ありがちな“女性像”

——いやー……面白かったですね。試写直後なので、まずは率直な感想を伺えますか? もーめちゃくちゃ面白かったです! 終わった後も小声で「めちゃくちゃ面白かった」って言っちゃいましたもん。今まで見た作品と比べても、痛快さがズバ抜けてあったと思います。今の時代って女性がメインで描かれる作品がけっこうあると思うんですが、結局……すごく肝心なところで男性を入れてくるんですよ、多様な形で。あと物語の回収要素を“愛”にしちゃったりして、別に悪いわけじゃないんですけど「そういうことじゃないじゃん!」みたいな。この作品はキャプテン・マーベルが自分と向き合う過程にしっかりフォーカスが当たっていたのが良かったです。 ——ストーリーが痛快でキャラクターもすごく魅力的に描かれていましたよね。 そう! 本当に恋愛が始まらなくて良かったです。それっぽい役が出てくると「ロマンスが始まるんじゃないか……」と思ってドキドキしちゃいました。やっぱり、これまで女性がメインの映画は愛で〜みたいな感じが多くて。でも違うじゃないですか。女性は、自分で自分のことを探って強くなれるっていう映画が観たかったんです。 ——確かに「強くなるきっかけが愛」のストーリーはよく見ます。 多いですよね、そういう精神論みたいなのはあまり好きじゃなくて。今回も、すべては彼女の中にあったんですよ。

チョーヒカル

——観るとそれがわかります。本作の告知では“サスペンスフル・アクション”という謳い文句があったので、もっとダークな世界観なのかと思ったらそんなことはなくて。もちろん謎解きの部分もあるのですが、ハートフルだったし、コメディ要素も多かったように感じます。 そうですね、めちゃめちゃハートフルでコメディ。キャプテン・マーベルは一つ一つのセリフがコミカルだったし、全体を通して面白かったですね。私は血がすごく出るような強めのアクションシーンとかは苦手なんですが、アクションシーンも痛快でした。

チョーヒカル
チョーヒカル

——血すらも出させないほどの強さでしたね。 しかも「ヤバイぞ!」みたいな時に一回余裕を見せるような皮肉の効いたセリフを挟んでくるじゃないですか? あれいい……チャンスがあったらやりたい! ホント最強でしたね。あとこのシリーズの伏線回収に次ぐ伏線回収というか、すごいうまくストーリーが組まれていた気がします。マーベル好きの人だったら大喜びみたいなネタがたくさん入っていて良かったですね。

チョーヒカル

——あと、時代で言うと本作は1990年代半ばのアメリカ・ロサンゼルスが舞台なので、街の様子や流れている音楽など、懐かしい小ネタもたくさんありました。 キャプテン・マーベルが落ちてきたビデオショップ(1990年代当時、アメリカ各地に存在したビデオレンタルチェーン店“ブロックバスター”)は、映画の中で見たことがあります。あと音楽がすごく入ってくる映画でしたね。戦闘シーンも大音量で音楽が流れていて気持ち良かった。やっぱり明るい音楽が流れている時に、悲しいことは起きないじゃないですか? ——安心感? はい。心配なく最高のアクションが見られるぞって感じでしたね。 ——あと、キャプテン・マーベルを演じるブリー・ラーソンと、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズではおなじみニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン。本作がマーベル作品以外を含めて3回目の共演になるのですが、この二人の掛け合いは見事でしたね。サミュエル・L・ジャクソンはCGで20年以上前に若返ったフューリーになっていましたが。 え! そうなんですか……あの一つ一つのシーンが。お金が掛かってますね。

チョーヒカル
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——ブリー・ラーソンの演技はいかがでしたか? ラーソンにとって初の本格的アクション映画なので、あれだけ動く彼女を観るのは新鮮だと思うのですが。 いい意味で異質な感じがしました。今まで小気味の良いことを言う女性ヒーロー役ってあまりいなかったような。ブラック・ウィドウともまた違うし、違う畑の人だからこそ持っている演技の魅力みたいなものが表現されているような気がしました。 ——強い女性を描く時に出がちな“必死さ”を感じなかったですね。 頑張って、頑張って……というより、むしろ抑圧されていた、みたいな感じ。キャプテン・マーベルの力が解放された時にそう思いましたね。人間味100%でしたもん。 ——力を解放した時の人間味はヤバかったですね。 ハハハ! めちゃくちゃ「楽勝だぜー!」って感じでしたね。「こんな強い人出しちゃって大丈夫?」ってぐらい。あと、いろいろなヒーローが持っている過去からくる重圧とか、それによって生まれた仁義みたいなものが重すぎず、自然体で強かったのですごく好感が持てました。

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チョーヒカルにとってのアイデンティティと原体験

チョーヒカル

——本作はキャプテン・マーベルのアイデンティティの部分もテーマにあったと思うのですが、それもあまり重く描かれていないのが良かったのかなと。チョーヒカルさんはご両親が中国の方とのことですが、その点はどのように感じましたか? 私もその部分は彼女自身の内面にしっかりフィーチャーされていたので良かったと思います。私は両親が中国で、言ったら……地球人の両親を持って、日本に来た……今のは忘れてください。 ——(一同)ハハハハハ! 

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日本生まれ日本育ちで、第一言語も日本語です。だから血とか愛国心とかは苦手で、大義のためにお国のためにみたいな感覚はよくわからなくて。日本も中国も好きですが、祖国みたいな価値観はあまり無いんです。 ——その感覚はもしかしたらキャプテン・マーベルに通じる部分かもしれませんね。チョーヒカルさんが身体に絵を描き始めたきっかけとして、予備校に通っているときに「紙が無かったから身体に描いた」というエピソードがすごく好きです。 あ〜あれは落書きしたい時に紙が無くて。地下に画材屋さんがあったけど降りるのは面倒だし、紙も1枚36円とかして高いんですよ。それを買わなかったらキャラメルが3つ買える。「じゃあ手でいいじゃん!」と思って目を友達の手に描きました。

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——もともと人体そのものとか、身体に描くことに興味があったんですか? 絵を描くのが好きな人って、最初は人を描くことから入ると思うんですよ。でもやっぱ美大の受験は“みかんと鎖”とか描くんですよ。あとは“アクリル棒と花”とか、静物ばっかりなので。 ——まず“人が描きたい”から、“人に描きたい”になった……? まあそれは本当に紙の代わりだったんですけどね。でも18、19歳の頃の私は承認欲求の塊だったので、お恥ずかしい話ですが、それをTwitterに上げたらすごいイイねされて。初めて承認欲求が満たされたんです。昔から私はアナログなものが好きだったんですけど、今ってデジタルが発達していろいろなことが可能になっているので、「アナログで絵を描く技術ってもう必要ないんじゃないか」と思っていた時期があって。でも私が描くものって到底CGには見えないし、だから最初に手に目を描いた時にそれだけ反応があったことで、アナログにはアナログの強い魅力があるってことを再認識したんです。

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——それがチョーヒカルさんにしか描けないアートに繋がっていったんですね。少し強引に話を戻して申し訳ないのですが、これまでさまざまな人に描いてきたチョーヒカルさんが、例えばキャプテン・マーベルがキャンパスになった場合、何を描きますか? やっぱりグースを描いちゃいますね。グースは一番描きがいがあって、奥行きも出せそう。 ——ボディペイントでも動物をたくさん描かれてますもんね。猫好きですか? 猫めちゃめちゃ好きです。拾ってきた雑種の子を実家で飼ってますし、グースも飼いたいですね。猫の仕草のシーンもわかってるな〜って感じでした。「そういう行動する!」みたいな。

チョーヒカル
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——自然でしたね。あとキャプテン・マーベルは記憶を失って、夢によるフラッシュバックに悩まされるわけですが、チョーヒカルさんは夢をよく見ますか? すっ……ごい、アカデミー賞ものの夢を見ますよ。 ——……アカデミー賞? めちゃくちゃ面白くて脚本賞受賞ぐらいの夢を見ます。でも起きて忘れて「あー!」みたいな。覚えている時は携帯にメモしたりするんですよ、「コッペパンに鉄を混ぜる」とか。それを人に食べさせるとすごい強くなって、その人を戦場に送りだす……。 ——それは夢では面白……い? でも基本的にポジティブな夢が多いですか? スパイものとかも見ますね。でも言われてみると、基本的に明るいかもしれません。 ——まあでも今回のことがあって、キャプテン・マーベルも明るい夢を見られるでしょう。 ハハハ! 何ですかそのまとめ! そうだといいですね。

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キャプテン・マーベルにはこのまま100%自然体でいてほしい!

チョーヒカル

——マーベル側もここまでシリーズが長くなってきたので、このタイミングで女性のヒーローを登場させて新しい風を吹き込むと同時に、新しい層の人にも観てほしいって想いがあると思います。 確かに、キーになるキャラクターにも女性が多かったですね。 ——今回は監督や脚本、衣装デザインなど製作陣にも女性が多いですし。 多分そのみなさんも、これまで描かれがちだった女性キャラクターみたいなのが嫌いなんでしょうね、フフフ。そういう強い意志は感じました。私も同じ気持ちだったので、それを汲み取ってくれるヒーローの描き方やストーリーが嬉しかったです。

チョーヒカル

——言えないことも多いですが、最後は希望で終われた気がします。そして、キャプテン・マーベルも登場する『アベンジャーズ/エンドゲーム』がもう来月に迫っていますね。 キャプテン・マーベルはずっとこのままでいてほしい! いろいろなことを経験して分厚いキャラクター……とならずに、このまま100%自然体で。これは願いです。ヒーロー映画の女性は強い人の奥さんで、家でずっと待っててくれて、負けそうな時に力をくれるとか、強さ的にはそれほどじゃないけどチームの一員で、機転を利かせて戦うみたいな感じが多かったので。キャプテン・マーベルみたいに、「ただただ強い!」っていうのはいいですよね。そういう女性像は新しかったです。コスチュームも女性キャラクターはセクシーなものを着せられがちだけど、今回はそういうのも無かった。この映画は小学校とかで教材として見せてほしいですね。 ——教材になるマーベル映画、いいですね。あと海外の映画館だともっと「フォー!」とか盛り上がりそう。それほどシンプルに興奮するシーンが多かったです。 確かに! アメリカの映画館だともっとみんな喋りますよね。それにもっと爆笑してると思う。あと日本でまだマーベルの作品を見たことない人には、一番いい作品なんじゃないですか? ストーリーとしてもシリーズの最初の時代を描いている作品だし。初の単独女性主人公のヒーローってことですが、もはや女性っていう枠だけじゃない。あえて女性ヒーローを強く描くぞっていう感じが無かったし、「最強の女性が最高」だったっていうことだと思います。

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キャプテン・マーベル 大ヒット公開中

原題:Captain Marvel 監督:アンナ・ボーデン/ライアン・フレック 製作:ケヴィン・ファイギ 出演:ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ  全米公開:2019年3月8日 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©Marvel Studios 2019

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interview&text by ラスカル(NaNo.works)

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Photo by 高見知香

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