October 25, 2016, 11:00 am
リスナーの感性を揺さぶる、圧倒的にキャッチーで中毒性のあるメロディ。日常にインスパイアされた、純情でひねくれたフレーズの歌詞。2014年、オルタナ・シーンに颯爽と登場したHelsinki Lambda Club のファースト・フルアルバム『ME to ME』が、10月26日(水)にリリースされます。プロデューサーにはAnalogfishの下岡晃が参加し、より色彩豊かでクオリティの高い作品に仕上がりました。——オルタナティヴという傍流から、ポップスを再定義するには——デビュー以来、彼らが向き合ってきた命題へのアンサーとなる同アルバムについて、下岡が与えた評価がこちら。「僕らの新しい選択肢(ニューオルタナティヴ)」。今回は、Helsinki Lambda Club のルーツである「ニューオルタナティヴの根底」というテーマで、メンバーそれぞれ3曲ずつ、プレイリストを作ってもらいました。
Interview:Helsinki Lambda Club
——10月26日(水)にHelsinki Lambda Club(以下、ヘルシンキ)初となるフルアルバム、『ME to ME』をリリースされます。プロデューサーには橋本さんが尊敬してやまないAnalogfishの下岡晃さんを起用されていますよね。
橋本薫(以下、橋本) 僕たちはずっとセルフプロデュースでやってきたんですけど、あまり音楽的な知識や理論がなかったので、頭の中に描いたものの言語化や、音にできないというモヤモヤを解消するのが難しかったんです。それが下岡さんとならできると思ったので。
——どうしてそう思ったんですか?
橋本 例えば、面識も無いプロデューサー然とした人が来ても、みんな萎縮してしまうかもしれない。だけど、下岡さんなら好きな音楽や考え方が自分と近いと思っていたので、それじゃあお願いしてみようということで、今回プロデュースしてもらう流れに至りました。
——外の要素を入れることに加えて、自分たちで特に意識していたのは?
橋本 アルバム自体もともとコンセプトがあった訳ではなくて、自分たちが良いと思えるものを、良いと思える形にすることがまず一番にあって。あとは、今まで曲数のあるパッケージで出したことがなかったので、今回のアルバムでヘルシンキのカラーを見せて、これが僕たちだと、リスナーの方々にちゃんと伝わればいいなと思って制作しました。
——今回は「ニューオルタナティヴの根底」というテーマでプレイリストを作ってもらいました。が、本題に行く前にまず、ヘルシンキというバンドのルーツを教えてください。
橋本 前身バンドの時は邦楽的な要素が強かったんですけど、メンバーも入れ替わって名前も変えるというタイミングで、コンセプトとしてもう少し洋楽を取り入れる方向に。その時に、共通認識というか、下地としてあったのがザ・ストロークスとか、ロックンロールリバイバル系が多かったかもしれないですね。基本的には僕の好きな色を出してしまっていたんですけど、メンバーみんなが楽しめるようアレンジとかを変えたりしていました。
——なるほど。ソングライターの橋本さんとしては、楽曲を作る際「キャッチーさ」についてはどう定義していますか? 以前から、ヘルシンキはキャッチーな曲にこだわりたい、とおっしゃっていましたが。
橋本 定義ってなると難しいな……そこは本当に、今まで培ってきた感覚の擦り合わせです。キャッチーなメロディにこだわる理由は、自分たちの音楽を聴く人の間口を狭めたくないから。コアな音楽好きの方にはルーツが見えてニヤリとする部分があると思いますし、全然詳しくない人が聴いても純粋に楽しめるものを作りたいという思いは、ずっと持っています。
——歌詞についてはどうですか?「日常」をテーマに据えていますが。
橋本 フィクションを作るのもアプローチとしては面白いし、全然ありだと思うんですけど……。やっぱり自分自身がグッとこないと作る欲が湧かないので、そうなると必然的に、生活や日常という身近で地続きにあるものが歌詞に出てくるんだと思います。
——では、話をプレイリストに戻しましょう。まず橋本さんが選んだのは、ニルヴァーナの“Molly’s Lips”。
橋本 ニルヴァーナはずっと大好きで、僕らの新アルバムも90年代オルタナの要素を感じさせる作品です。なぜ“Molly’s Lips”を選んだかというと、シンプルに同じコードで進んでいって、そこに抜群のメロディが乗るというフォーマットに痺れたから。そういうのに憧れているんです。
Nirvana – “Molly’s Lips”
——次はブリット・ポップを代表するブラーの“Country House”。 シニシズムとアンチ・ロックが共存した曲です。
橋本 ブリット・ポップってオルタナとは同時代だけど別物。でも最初に聴いたとき、意識せずに同列の音楽として聴いていて、同じように吸収しました。僕らも大切にしている「相容れないものの共存」ということで、この曲に。
Blur – “Country House”
——そしてスピッツの“恋は夕暮れ”。最も大衆に受け入れられたオルタナバンドといっても過言ではありませんが、中でもこの曲を選んだ理由は?
橋本 抜群にメロディが良い。大衆が聴いても良いメロディだと思うだろうし、すんなり歌詞も入ってくる。だけど、しっかり聴いてみると歌詞はエキセントリック。それをポップに昇華できるのが天才的です。僕らのアルバムに入ってる“目と目”という曲は、スピッツの影響も受けています。
スピッツ– “恋は夕暮れ”
Helsinki Lambda Club、橋本薫以外のプレイリストも公開!
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text&interview by Oike Karasuma
photo by Mayuko Yamaguchi
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October 25, 2016, 11:35 am
アーティストや著名人にテーマに沿ったプレイリストを作ってもらうことで、その人のパーソナルな思い出や、音楽的なルーツを紐解いていく恒例のプレイリスト企画。今回は通算8作目『ISLAY 』を10月26日(水)にリリースする4人組バンド、おとぎ話 の登場です。
前作『CULTURE CLUB』に続いて〈felicity〉移籍後、第2弾となる『ISLAY』は、先行7インチ・リリースも好評だった“JEALOUS LOVE”や“セレナーデ”のほか、小松菜奈と菅田将暉が主演の映画『溺れるナイフ』に書き下ろした“めぐり逢えたら”のセルフカバーも収録。人懐っこいポップさとエッジ、不思議な深みが同時に押し寄せる、おとぎ話ならではの世界を広げています。今回はリリースを記念して、「秋の夜に聴きたい曲」を依頼。有馬和樹(Vo, G)と牛尾健太(G)の2人に、この季節ならではのフェイバリットを選んでもらいました!
Interview:おとぎ話
有馬“「ずっと聴けるアルバム」という意味を込めてつけました。”
——最新作『ISLAY』がいよいよリリースされますね。制作前、メンバー間で話し合ったアルバムの方向性などはありましたか。
牛尾健太(以下、牛尾) 話し合ったりはしないですけど、きっかけはありました。1曲目の“JEALOUS LOVE”が出来たときに、「次はこういう曲を作りたい」ということをメンバーやレーベルのボスと話したんですよ。
——“JEALOUS LOVE”のどんな部分に魅力を感じたんですか?
有馬和樹(以下、有馬) 僕は最近のフェスでよくあるようなディスコっぽい曲が個人的に苦手で。だからこの曲は、全員で肩を組んでは踊れないディスコというか、リスナーが独り占めできるものを作ろうとした曲で。この曲が出来てからは、そのまま曲が揃った感じです。前作『CULTURE CLUB』を出すときに、30曲ぐらいデモがあったんですよ。そこから前作に入れたものもあれば、“セレナーデ”や”蒼い影”のように今回入れたものもあって、“めぐり逢えたら”や“JEALOUS LOVE”“夜明けのバラード”のような新曲が加わってアルバムになったと。
タイトルの『ISLAY』は、シングルモルトのスコッチウィスキーが造られている島の名前です(インナー・ヘブリディーズ諸島にあるアイラ島)。年月が経てば経つほど熟成するウィスキーのように、「ずっと聴けるアルバム」という意味を込めてつけました。
——今回はそのリリース・タイミングでの取材ということで、「秋の夜に聴きたい曲」というテーマで5曲ずつ選んでもらいました。そもそも2人にとって秋のイメージというと?
有馬 過ごしやすい(笑)。
牛尾 今回秋をテーマに選んでみると、アコースティックっぽいものが集まりました。俺は夏が好きなんで、それが終わった後の寂しい感じが出たのかもしれない。ひとりでたそがれたりね。
有馬 そういう季節だよね。まぁ、自分の場合、もともと切ない曲しか聴かないんですよ。ロックンロールとかも大好きですが、基本的によく分かんないんですよね。おとぎ話はガレージ系のバンドとも一緒にやることが多いけど、僕らだけちょっと異質というか。
——ああ、その雰囲気はよく分かるような気がします。では、選んだ曲にまつわる思い出や、選んだ理由、曲に感じる魅力をそれぞれ教えてください。有馬さんの1曲目は、プリンスの『Sign 'O' the Times』収録曲”Starfish And Coffee”ですね。
有馬 実はプリンスと誕生日と血液型が一緒なんですよ。それで中学の頃に聴いたら最初は声とか気味悪くて、「こいつと同じ誕生日はまじできついな」って(笑)。
でも、大学に入って“Starfish And Coffee”を聴いたら、この曲はゴスペルっぽくてよくて、そこからどっぷりはまりました。次のサザンの“Ya Ya(あの時代を忘れない)”は、子供の頃から聴いてた曲。横浜のはずれの出身なんで、みんなサザンが好きなんですよ。この曲は小4~5ぐらいのときに買ってもらった『バラッド '77〜'82』に入っていて、コードがGなんで、「いい曲を作ろうと思ったらGを使う」という、自分のキーになった曲。歌詞では「better days」という大学のサークル時代のことを歌っていて、僕らも大学で結成したバンドなんで、そこを重ねられるのも秋っぽいですね。
PRINCE – “Starfish And Coffee”
サザンオールスターズ – “Ya Ya(あの時代を忘れない)”
——フィオナ・アップルはどうですか?
有馬 この曲はめっちゃ暗いけど、ライブ前にみんなが盛り上がっててうるさいとき、ひとりで聴いたりします。来日公演も行ったし、性別は違うけど自分と同じことを歌っている感じもして好きですね。俺は頭がよすぎて世の中に迎合できる人より、こういう人の方が好きなんですよ。次のテレヴィジョンはセカンド『Adventure』の曲。
この曲は理屈抜きに「秋っぽい」。そもそも、アルバムが秋っぽいですよね。高3のときにラジオで”“Friction”を聴いて「すげえ」と思って、大学に入ってからセカンドを買いました。次のヴェルヴェッツのサードも秋って感じですね。NYのバンドって、枯れてる感じが秋っぽいのかもしれない。ソニック・ユースの『Murray Street』も同じ理由で好きだし。
FIONA APPLE – “Starfish And Coffee”
Television – “Days”
Velvet Underground – “Candy Says (Album Version)”
続いて牛尾健太のプレイリスト公開!
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オフィシャルサイト
photo by Kohichi Ogasahara
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October 31, 2016, 5:10 pm
1997年に活動を開始し、EPとアルバムをそれぞれ1枚残し2000年に解散。にもかかわらず大きなインパクトを残し、伝説となったエモ・バンド、アメリカン・フットボール 。
解散から約14年後の2014年には奇跡の再結成を果たし、2015年6月には来日。来日公演のチケットは瞬く間にソールドアウトとなった。そんな再結成ツアーを経て、ついに新作『American Football 』が2016年10月に発売となった。
今回は、完全復活を果たしたバンドのフロントマンであるマイク・キンセラが新作『American Football』の制作プロセス、先に行われた再結成ツアーから新作の制作に至った経緯から17年前と現在の音楽性の違いまで語ってくれた。
text by Ryosuke Suzuki
Interview:マイク・キンセラ(American Football[Vo&Gt])
——まずは、先頃の再結成ツアーを振り返って、いちばんの収穫は何でしたか?
長いことソロでやっていたから、収穫というとバンドで演奏することの楽しみを再発見したことかな。他の人たちと一緒にステージに立って、演奏中にサプライズがあったりすることさ。誰かと一緒に演奏することの楽しさに、また火が灯ったような感じだったよ。
——また、再結成ツアー、ならびにアルバムのリイシューに寄せられたリアクションは相当なものだったと思いますが、そうした一連の出来事を通じて、アメリカン・フットボールというバンドについて新たに発見したこと、あらためて再確認したことを教えてください。
自分たちがまだ少年だった頃よりも、お互いに良い付き合いができるようになったんだ(笑)。再結成してみてうまくいったことで、自分たちが想像していたよりも楽しいことなんだって気づいたよ。
音楽がヘヴィというか、必ずしも楽しい感じの音楽ではないから、それほど楽しい経験になるとは思っていなかったんだけど。とりあえず演奏してみたら、今でも(アメリカン・フットボールの音楽に)興味を持っている人たちがいることに驚いて、そのまま一緒に演奏して作曲も続けるようになったんだ。
@americfootball Instagramより
——そうしてバンドを再結成してツアーを行うことと、いざ新たなアルバムを作ることとの間には、大きな決断なり、クリアしなければいけない問題があったと思うのですが、この現在のメンバーで新たにアルバムを作ろう、となった決め手、あなたを突き動かしたものとは何だったのでしょうか?
さっきも言ったように演奏を続けるようになって、そのうちに同じ12曲ばっかり演奏し続けるわけにもいかなくなったんだよ。続ける理由が必要だった。「再結成」って名目だけでやれることはやりつくしたから、これを続けるなら新しい曲を作らないといけないねってことになって、僕らは全員違う都市に住んでいるし、仕事も家族もあるから全員のスケジュールを調整した。去年の8月にアルバムを作ろうと決めて、今年の3月に全員で集まって制作を始めようと決めたから、それまでに曲を作ることになったんだ。
——では具体的に、今回の17年ぶりとなるニュー・アルバムの曲作り、レコーディングはどのように始まり、どんなプロセスをへて進められたのでしょうか?
作曲作業の多くは、Dropboxのフォルダーでネット上のファイル共有をしながら進めたよ。誰かが曲の冒頭やアイデアを送って、そこからドラマーのスティーヴが家にあるドラムキットでドラムのパートを作って、ときには携帯のレコーダーとかでざっくり録音して僕らに送ってきて、それから僕ら残りの全員が加わる、って感じの流れだった。
そうやって18曲くらい書いた時点で、2回ほど週末に集まって全部を通して演奏してみて、方向性を確認してみる機会があった。実際のレコーディングは全員一緒に9日間やって、ドラムパート全部、ベースのほとんど、ギターパートの一部を録音した。ギターパートの残りは後日シカゴで別のセッションをやって、その時はほとんど僕とエンジニアのジェイソン(・カップ)だけだったよ。
細かいパートやヴォーカルをやるためのセッションで、他のメンバーが同席する必要がなかったからさ。結構バタバタしていたけど。今までやったどのセッションもそうだけど、終わるたびに「あともう数日時間があればいいのに」って思うものなんだ。でも、全体的に今回はよく計画を練って、うまく実行できたと思う。
——また、レコーディングにあたってあなた自身が重要だと考えていたことや描いていたイメージ、あるいはメンバー同士の会話で何か印象に残っていることがあれば教えてください。
うん、僕ら自身の間でも話し合ったけど、もう(前のアルバムから)かなり時間も経っているから、同じようなアルバムは作りたくなかったし、自分たち自身に無理に前と同じような音楽を作らせたりしたくもなかった。人々が前のアルバムのどんなところに惹かれていたのか、どういう部分を楽しんでもらえたのかについて話し合って、そういう要素を今回のアルバムにも組み込もうとしたんだ。
以前と今回とでは曲の作りかたも変化している。昔はただギターパートの連続だったのが今はもっと曲らしくなっているし(笑)、コーラスとヴァースもはっきりして、とっつきやすくなっていると思う。僕も自分自身の(ソロ)曲を書き続けてきたし、他のみんなもそうだから、その自然な結果じゃないかな。
——ソングライティングの意識や狙い、あるいは演奏に関するメンバー同士の関係性において、17年前と今回のアルバムとの最大の違いとなると、どんなところになりますか? 逆に変わらないところはどんなところですか?
曲は一見して前よりも直球になっていると思う。前よりも削ぎ落とされているんだ。前のアルバムでは殆ど自分たちのそれまでの経過をそのまま記録するつもりでやっていたし、自分たちが解散することも分かっていたから、短期間に一気にレコーディングしたような感じだった。今回はもっと自分たち自身で曲を分かった状態でレコーディングに臨んだから、より効率的になったんだと思う。
変わらないところは、僕らの間でも話していたんだけど、ロック・バンドじゃないんだ。あまりマス・ロッカーとか呼ばれたくはないんだけど、僕らはただ静かに演奏しても平気なんだよ。前より削ぎ落とされたと言っても、今回のアルバムでも一つのパートを長く演奏し続ける部分もあるし、すべてのパートで次の展開を急いでいるわけではないんだ。そういうのは前のアルバムを15年ぶりくらいに聴いて、みんな「これってクールだったね」って思った部分でもあったし、今でもやっていて気持ちのいいものでもあった。録音の点ではより今の時代らしく聞こえるようになってもいると思う。
最初に新しい曲を聞いた人たちのリアクションの中には、ヴォーカルが前に出過ぎていてラウドだっていう苦言もあったけど、僕らに質の悪い録音をして欲しいのか? 17年前と同じようなサウンドにするために、音質を劣化させて欲しいのか? と思うよ。
ジェイソンは素晴らしいエンジニアで、いい耳を持っているから、サウンドも良いものになっていると思う。前のアルバムのようなうぶさは無くなっているし、あのアルバムにあった、とにかくうぶだった故のひたむきさみたいなものが今回は無くなっているかもしれないけれど、僕らはもう成長した人間だし、今の僕らにできる最高のものを作ったのさ。
次ページ:17年前と今回の新作『American Football』との最大の違いとは?
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November 3, 2016, 11:00 am
mysoundが注目するアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードからアーティストの本質を掘り下げていくプレイリスト企画。8月に1stアルバム『Flavor 』をリリースしたMARQUEE BEACH CLUB からコイブチマサヒロ(Vo,.Gt,Syn)とイシカワヒロヒサ(Dr,Cho)の2人が登場です。
今回は、『MARQUEE BEACH CLUBのサウンドに影響を与えた楽曲』というテーマでプレイリストを作成。00年代終盤に頭角を表した海外のバンドからの影響を素直に感じさせるダンサブルなロックサウンドを軸に、日本人の耳に馴染むメロディやノスタルジーを織り込んだMARQUEE BEACH CLUBのサウンドや自由度の高いパフォーマンスのルーツとなるものが、プレイリストから見えてきました。
Interview:MARQUEE BEACH CLUB
イシカワ“ライブでのお客さんとの一体感もより高まったような手応えは感じています”
——まずは、8月にリリースされた1stアルバム『Flavor』のお話を。1曲1曲は抽象的で独立したものなのに、全体を通して聴くとひとつにまとまって情景が見えてくる、パズルのようなアルバムだなと感じました。記念すべき1枚目、どういったコンセプトで製作されたものなのでしょうか?
コイブチマサヒロ(以下、コブイチ) やっぱりどこを切り取っても勝負できるっていうのを意識しつつ、1枚目のアルバムなのでMARQUEE BEACH CLUBがどういうバンドなのかわかるような曲を詰め込みました。
イシカワヒロヒサ(以下、イシカワ) 『Flavor』を出したことでライブでのお客さんとの一体感もより高まったような手応えは感じています。ライブを重ねるごとに、お客さんとコミュニケーションが取れるビートやメロディっていうものがわかってきた気がしていて。その感覚は楽曲にも表れているんじゃないか、と。
コイブチ MARQUEE BEACH CLUBはもともと僕のソロプロジェクトとして始まったので初期の頃は特に僕の趣味趣向が色濃かったんですけど、『Flavor』はメンバー同士で音を提案し合いながら作ったこともあって楽曲にバリエーションが出たし、バンドの方向性もより明確になった気がしています。
——今回は、『MARQUEE BEACH CLUBのサウンドに影響を与えた楽曲』というテーマで、それぞれ5曲ずつ挙げてプレイリストを作っていただきました。まず、コイブチさんの1曲目。Passion Pit“Sleepyhead”。
コイブチ Passion Pitは、本格的に洋楽を聴くようになった頃、それまでの僕の中でのバンド像を壊してくれたバンドで。やってることは難しいのに、親しみやすいというか。彼らの曲が持っていうキラメキは、MARQUEE BEACH CLUBにも取り入れたいなって思ってます。Passion pitについては、イシカワ君とよく討論していたし、来日するたび一緒にライブも観に行っていて。こういうことを日本の音楽シーンでできたらカッコいいよなって思わせてくれたバンドです。
Passion Pit – “Sleepyhead”
——2曲目は、Bombay Bicycle Club“Shuffle”。MARQUEE BEACH CLUBの曲にも感じられる温度感ですね。
コイブチ デジタルなのに温かみを感じさせてくれる絶妙なバランスが、すごく素晴らしいなって思います。この曲の冒頭で昔のバンドの曲をサンプリングしたりしていて、手法を問わず作品としていいものになればいいのかなって思わせてくれた曲です。バンドに女性ボーカルを入れたいなと思ったのもBombay Bicycle Clubへの憧れからだし、音楽の自由さという面でいろんな気づきをもらいました。
Bombay Bicycle Club – “Shuffle”
——3曲目、Foals“Total Life Forever”。先の2曲と比べると、よりナマな人力のバンドサウンドが引き立つ曲ですね。
コイブチ ギターの音を歪ませずにロックをやっているのが美しいなと思ったし、ロックのギターってただ歪ませるものではないんだと、改めて思い知らされたというか。音で空気感や空間の広がりを表現することも学ばせてもらったし、メロディもすごく牧歌的で聴きやすいですよね。『Flavor』ラストの曲“Always”も、こういうなめらさを表現したいなと思って、参考にさせてもらいました。
Foals – “Total Life Forever”
——4曲目、Two Door Cinema Club“next year”。メロディアスで、一時期シーンを席巻したいわゆるデジタル・ロックというものからの深化を感じさせる1曲です。
コイブチ もう、最初に聴いた瞬間「これ、みんな好きなやつだ!」って思いました(笑)。作品を出すごとに音楽的に深みを増しているんだけど、ちゃんとリスナーのことも引っ張っていて素晴らしいなと思います。どんな歌詞が乗ってもメロディだけで感情を表現できているところなんかも、すごく見習いたいですね。あと、メンバーが同い年なので、なんとなく親近感を感じたりしてます(笑)。
Two Door Cinema Club – “next year”
イシカワヒロヒサのプレイリストも公開!
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photo by Mayuko Yamaguchi
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November 3, 2016, 11:30 am
テーマに沿ってアーティストのお気に入りの楽曲を選んでもらうことで、その人のパーソナルな音楽体験を紐解いていくプレイリスト企画。今回はシンガーソングライターのJQを中心とするバンド、Nulbaric の登場です。
彼らのデビュー作『Guess Who? 』は、ソウルやファンクを基調にしつつ、古今東西の音楽を豊かなタッチでブレンドした洒脱な雰囲気が印象的な1枚。今回は作曲/作詞を手掛け、ヴォーカルも担当するフロントマンのJQに、「好きなヴォーカリスト」をテーマに10曲選んでもらいました。
Interview:JQ(Nulbarich[Vo.])
JQ“「これが僕らだ」ということが伝わるアルバムが出来た”
——デビュー・アルバム『Guess Who?』は、本格的に世の中に登場するタイミングにふさわしいタイトルになっていますね。このタイトルはどんな風に考えていったんですか?
まったくその通りで、Nulbarichはまだ誰も知らない状態だと思いますし、「これが僕らだ」ということが伝わるアルバムが出来たんで、タイトルもそういうものにしたかったんです。今僕たちが「かっこいい」と思えるものを詰め込んだ、これまでのベストですね。
——リード曲の“NEW ERA”はファンクやソウルからの影響を感じさせつつも、サビはキャッチーでJ-POP的な魅力もあって、そのバランスが素晴らしいと思いました。JQさんのヴォーカルも、日本語と英語が自然に混ざり合うような雰囲気が魅力的ですね。
色んな方に言っていただくんですけど、実はあまり意識していないんですよ。メロディを作るときはデタラメな英語を口ずさむことが多くて。その母音や守りたい雰囲気が残っているのかもしれないですね。ヴォーカル面では、耳当たりのよさは意識しています。
——「耳障りのよさを大切にする」というのは、自分たちの音楽の聴かれ方にも繋がる話ですか? たとえば、「日常のBGMとしても聴いてくれると嬉しい」というような。
僕個人としてはその感覚ですね。僕が救われたり、思い出にしている曲は、自分の生活の中にたまたま流れていたものだったりするんです。たとえば初恋の女の子との思い出の曲が、その子と別れたら失恋の曲になるわけで、それがパーティー・チューンだという可能性もあると思うんですよ。その人の生活のどこに入り込むかで、曲の存在が変わると思うんです。
——今回はJQさんに「好きなヴォーカリスト」というテーマで10曲選んでもらいました。この曲を知ったきっかけや、ヴォーカリストとしてどんな魅力を感じるのかを教えてもらえますか? 1曲目はロビン・シックの“Lost Without U”です。
僕はもともとファレルが好きなんで、ネプチューンズやN★E★R★Dも大好きで。トラックメイカーやプロデューサーとしても影響を受けているので、「ファレルと一緒にやってるなら絶対チェックでしょ」というところから入ったんです。
Robin Thicke – “Lost Without U”
——じゃあこの曲は、後追いで掘って見つけたものですか?
今回選んだ曲はほとんどがそうですね。僕はもともとヒップホップが好きで、そこからフィーチャリング・アーティストを辿ることが多いんですよ。ロビン・シックは、僕にないダンディな声を持っていて、ポップに落とし込むのが上手い。シンガーって歌の上手さだけじゃなくて、声の個性やポップスに乗せたときの映え方も大事だと思うんです。次のディアンジェロも後追いで知った曲。00年代前半にヒップホップR&Bが流行って、その中でディアンジェロにも辿り着きました。それまでは、R&B自体あまり聴いてなかったんですよ。
D'Angelo – “Brown Sugar”
——ソウル・クラシックも聴いていなかった感じですか?
今は大好きですけど、当時はあまり好きじゃなかったかもしれないです。ディアンジェロはネオソウル系の中でも曲者ですよね。この人が曲を弾きながら歌っているライブ映像を観たことがあって、ローズ系のピアノにハマったのは、それがきっかけだったと思います。次のエリカ・バドゥは、神ですね(笑)。“Honey”は名盤のレコードをサンプリングしたMVもめちゃくちゃ好きなんですよ。確か最初は、先輩からグールーと一緒にやっていた“Plenty”を聴かせてもらって衝撃を受けました。僕はあまり歌い上げないような、クールな感じの歌声が好きなんだと思います。
Erykah Badu – “Honey”
——トラックと一緒になって魅力が増すタイプの歌声ですね。
そうですね。自分の場合も、トラックがバック・ミュージックという認識はあまりなくて、トラックにつられて歌が変わったりするんです。“Spread Butter On My Bread” はまさにそうだし、“hometown”も最初はギターの弾き語りで、そこからトラックも歌も大きく変化しました。ミュージック・ソウルチャイルドの“Love”は、シンガーの友達がカヴァーしていて知った曲。
Musiq Soulchild – “Love”
JQが選ぶ残り6曲とは?
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November 6, 2016, 4:00 pm
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November 13, 2016, 10:00 am
テーマに沿って作成してもらったプレイリストを軸に、アーティストを掘り下げていくプレイリスト企画。今回は、11月9日(水)に3rdアルバム『What's A Trunk?』をリリースしたKeishi Tanaka さんが登場です。
シングル3部作である、“Hello, New Kicks”、“透明色のクルージング”、“Just A Side Of Love”をはじめ、Keishi Tanakaの感性により、さまざまなエッセンスが織り込まれたオーダーメイドな楽曲たちを収録。いちシンガーソングライターの作品であると同時に、さまざまなミュージシャンとの共演により表現される豊かなバンドサウンドと多幸感が溢れたアルバムになっています。 今回は、「ソロミュージシャン」をテーマにプレイリストを作成、Keishi Tanakaに影響を与えた楽曲をレコメンドしていただきました。
Interview:Keishi Tanaka
Keishi Tanaka“誰かと何かをやることをもう1回しっかりやってみようかな”
——まずは、最新アルバム『What's A Trunk?』についてのお話を。シンガーソングライターとしての色を強く打ち出した1st・2ndとは一転、いい意味でソロシンガーらしくないなと感じました。
前作と前々作で自分が考えるシンガーソングライターらしいものを作ることができたから、今作では誰かと何かをやること意識してやってみようかなということで、バンドっぽい作り方をしました。正直、2枚目まではRiddim Saunterと比較していた部分もあったし、1人でやることへの意地みたいなものもあって。製作面でも、曲ごとに参加してもらう人を選んで、僕が思い描くものを演奏してもらう感覚だったんです。けど、今回はメンバーも固定だし、よりプレイヤーのアイデアを取り入れることが面白く感じられるようになりましたね。僕が曲を書いて僕が歌えば、Keishi Tanakaの作品になるっていう根拠のない自信があるから、アレンジは自由でいいかなあと思えるようになったというか。気持ちに余裕が出てきたのかな。
——ソロを突き詰めた前2作によって培われたのかもしれないですね。12月1日からは、リリースツアーも始まりますが、どういったものになりそうですか?
普段のライブに関しては、最初から形式を決めないっていうのをルールにしていて。1人で弾き語りをすることもあれば、10人の大所帯でやることもあるけど、お客さんからすればどちらにしても僕を観にきたことに変わりないわけで。だから、満足感は同じじゃないとダメだし、どんな状況にも応じられるようにしないといけない。……って考えてたら、10パターンくらいのセットが出来ちゃって。まあ、気分屋なんですよ(笑)。だから、いろんなやり方をすることでモチベーションを保っているところもあったりするので、来てのお楽しみです。
——では、本題に移りたいと思います。今回は、『ソロミュージシャン』というテーマでプレイリストを作成していただきました。
自分がソロでやるってなったときに、いろんなソロミュージシャンの音源を聴いたんです。今回のプレイリストは、そのとき聴いていた人の曲が多いですね。
——ロックの殿堂入りも果たした、ブルー・アイド・ソウルの歌手ですね。
自分がソロで音楽を作る上で、影響を受けたシンガーですね。軽やかだけど影のある雰囲気とかリズムチェンジとかおもしろくて、こういう作品を作りたいなっていうインスピレーションみたいなものをもらいました。他にもたくさんおもしろい曲があるんですよ。僕の音楽もブルー・アイド・ソウルぽいって言われることがあるんですけど、たぶん白人が黒人の音楽に憧れたように、それと同じような現象が自分の中でも起こっているんじゃないかなって思います。
Laura Nyro - “Lu”
——1975年リリースの曲。惜しくも今年4月に亡くなりました。
彼は、フィリーソウルという括りで話されることが多いですね。ストリングスが入ってメロウな雰囲気を持ったソウル、南部の土臭いソウルとは違ったものをやっている人ですね。どちらかというと僕もそういうフィリーソウル、フリーソウルとかモータウンとかに代表されるようなサウンドが好きです。DJのときに結構かける曲でもあります。いわゆる盛り上げる曲ではないけど、自分の好きなものをかけていいっていうときに最初のほうにかける曲ですね。
BILLY PAUL - Be Truthful To Me
——KINGS OF CONVENIENCEのメンバー。この曲は、アルバム『legao』収録曲です。
もともとKINGS OF CONVENIENCEが好きで。ノルウェーでレコーディングをしたとき、僕らがバーにいたら、オイエが入ってきたんですよ。それで、オセロで一緒に遊んだあとにライブが始まりました。それをきっかけに来日時に対バンをしたりっていうこともあります。とにかく彼の感性が好きだし、彼のように低い声で歌う曲もいつかやりたいなって思っています。
Erlend Oye - Who Do You Report To?
——カナダ出身でパリ在住のシンガー/ピアニスト/プロデューサーである彼の名が広まったヒットナンバーです。
彼はいろんな面で有名で素晴らしいんですよね。彼の周りに重要な人物が3人いて、FeistとMockyとJamie Lidell。好きなアーティスト同士が仲間なんだなっていうのもうれしいし、4人が一緒にライブをしている動画があるんですけど、ギター・ピアノ・パーカッションを持ち回ったりしていて楽しそうなんですよ。そういう音楽のやり方っていいなって。それぞれが1人のミュージシャンとして確立されていて、リスペクトし合っている感じは、僕がこの先やりたいことでもあります。
Gonzales - Working Together
——前項でも名前が挙がりましたが、彼もカナダ出身で、さまざまな顔を持つアーティストですね。
Mockyは、昔から聴いているんですけど、まだライブを観られてなくて悔しいんですよね。最近また自分のなかで再熱していて。ちなみに、Mockyの曲で“mickymouse mother fucker”っていう曲を深夜のラジオで流そうとしたら、スタッフから「それは勘弁してください」って却下されたことがありますね。番組終わって帰るとき、お偉いさんがいたんで、かけなくて良かったって思いました(笑)。
Mocky - Fightin' Away The Tears (Featuring Feist)
その他、Keishi Tanakaが選んだ曲とは?
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photo by Kohichi Ogasahara
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November 15, 2016, 7:00 am
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November 17, 2016, 10:00 am
<FUJI ROCK FESTIVAL>など国内外のフェスに出演し、イギリスのブリストルで開催されたポストロックバンドが集結する<ArcTanGent Festival 2015>ではヘッドライナーを務めるなど、現在のインスト/ポストロック・シーンのキーマンとなったLITE 。
前作から3年5ヶ月ぶりとなるフルアルバム『Cubic 』では、削ぎ落としたアンサンブルと磨き抜かれた一音一音が難解さを軽々と超え、音で会話するような愉快ささえ作り出しています。加えて、バンドと長らく交流のある根本潤をボーカルに迎えたナンバーや、タブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)参加曲でも新機軸が伺えます。
今回はニューアルバムのリリースを機に、ギタリストでメインコンポーザーの武田信幸 に、ニューアルバムについてインタビュー。そして彼が影響を受けた日本のアーティストをmysoundのアーカイブからチョイスしてもらい、新作の曲作りにも影響を与えたアーティストやその音楽性についても触れるプレイリストも紹介します。
Interview:武田信幸(LITE[Gt.])
武田“「これ笑っちゃうよね」みたいなのはすごく大事“
――非常に楽しいアルバムになったなという印象を持ちました。
すごく嬉しいです。前回『Installation』でできなかったことの一つに、どうしても僕一人のラップトップで完結してしまうようなところや、レコーディング直前に作って個々のプレイに落とし込めなかったところがどうしてもあったんですね。で、アルバム作り終わった後もそういうディスカッションをして、もっと個々に落とし込んだ作品にしていこうって方向性が決まり。その落とし込んだ曲っていうのは、アメリカツアーとか海外ツアー回った時に、ものすごい直接的にお客さんとつながれると思ったんですよ。
——今回は音そのものとか構成そのもので笑えるというか、すごく楽しくなれる部分が多いと思いまして。腕組んで見る感じじゃないというか。
それはまさに結構前から僕らも言っていたことなんですけど、「これなんか笑えるよね」っていうのが1曲目の“Else”だったと思うんですよね、最初にできた時にもう爆笑だったわけですよ、僕らの中では。その後も曲作りの中でそれは息づいているものがありますね。
——曲作りの視点が楽しめる方向に移行したということなんでしょうか。
やっぱり海外に出ると、お客さんってダイレクトなわけなんで、僕たちも応えていきたい気持ちが強くなってきて、それがゆえにこう、お客さんが楽しめるようなものを意識して作っていったような気がします。前からそういう意識はもちろんあったんですけど、今回は今までとは違う手法で、もっと直線的に無駄をなくして繋がっていきたいなっていうのはあったと思います。
——海外のどういうシーンやバンドと並走している感覚がありましたか?
例えばアメリカとか、アイルランド、イギリスとかって、僕らと同じぐらいの世代のバンドが結構出てきているんですよね。アメリカだとTera Melosとか、イギリスだとTTNGとか。あまり意識しないで自然と繋がっていったし、国境も関係ないような感じだし、一緒に日本でもアメリカでもツアーやったり、近いシーンが世界各国にあるなと思っていて。この間、中国も初めて行って、そういうバンドには出会わなかったですけど、実際にお客さんで来ている人たちは同じようなシーンのバンドをいっぱい知っていたりとか、やっぱり土壌としてそこにしっかりあって。つまりもう海外どこでも同じような環境でライヴができるような状況に今なっているんだな、って、すごく感じます。
——ネットの恩恵なんでしょうか。
間違いなくインターネット社会っていうのはあると思いますし、あと、なんでしょうね? 海外のお客さんもひと世代下の人が、また来ているような気がするんですよ。アメリカで対バンしたバンドは高校生の時、LITEを聴いていたらしくて、もう10年ぐらい経っている。そういう風に循環できるような音楽に、ポストロックっていうのは位置づけ的になっているのかなというのは感じます。
——今回、インストにこだわらないという点で根本潤さんが参加しているボーカル曲“Zero”も象徴的ですね。
もともとハードコア界では有名な人で。僕はその音楽から入っていった感じだったんです。それでライヴも見に行ったりして、最近までやっていたZってバンドと一緒に対バンしたりとか、で、僕らが初めて海外でCDを出したレーベルオーナーがいるんですけど、そのオーナーに僕がZを紹介して、ヨーロッパでもZを出したりして交流はずっとあったんですけど、もう大先輩で、僕の中ではちょっと恐れ多いような人だったんで、なかなか気軽に声をかけられないっていう中で(笑)、今回この「Zero」って曲ができて来て、これはもう根本潤さんしかいないなって、ピンと来たとこがあったんですね。で、ここでお願いしようって流れですね。
——タブゾンビさん参加の“D”での彼のトランペットもキャラが出てますね。
メインに据えて。この曲は実は3年ぐらい前にネタとしてもうできていて、だいぶ長いあいだかかった曲だったんですけど、なかなか完成に至らなかったんですよね。はじめはアフロビートみたいなところから着想を得て作ったり。途中のメロディも外したくない、いろんな活かしたいところがあったが故に、なかなかまとまらなかったんですよ。「歌でもないな、他の楽器だな」って話になって、後ろで鳴るっていうよりは主張する人が欲しかったんですよ。そういうイメージが合わさると、まぁタブゾンビさんかな?と。それで、お願いしたんです。
——そして、懐かしいワードですが人力ブレイクビーツ的な曲もありますね。
“Warp”とかは、ブレイクビーツとかテクノというか、そういうところが多分着想だと思います。しかもどんな環境のライブでも再現するというのが一つのテーマでもあったんで、シンセとかの上物を使わないという意味で、僕があえて歌うっていうのが必要だったんですよね。そこでもちょっと笑って欲しかったというか、「あ、LITE歌っちゃったよ。」って(笑)。あと、タイトにすればするほどミニマルになっていくところもあるし、そういう冷たいような印象は……このアルバムの雰囲気からすると逆行しているみたいなんですけど、自分たちがやりたいものとか、作ってきたものだったんですよね。それって、ずーっとルーツを辿るとここ(影響を受けた音楽)に戻ると、54-71ってほんとに無駄を削ぎ落としていて、そういう潔い手法があることに感銘を受けてきたので。やりたいことって結局、そこに端を発しているっていうのがどうしてもあるので、今回の『Cubic』でそこに帰ってきた感じですかね。
——今回は新作にもつながる部分で、mysoundの楽曲の中から武田さんが「影響を受けた日本のアーティスト」をチョイスしていただきました。まずはtoe。
僕らがインスト始めた時からいたバンドなので、「日本にもこういうバンドがいるのか」っていうのはすごい衝撃でしたよね。真似したいけど真似できない。toeでしかない曲だなっていう曲は、僕の中ではこの曲かなって感じです。
toe – “I Dance Alone”
——次に挙げていただいた54-71はミニマルなアンサンブルが特徴です。
最初は全然わかんなかったんですけど、やろうとしていることをだんだん理解するようになると無駄を削ぎ落としていて、かつ音楽で笑かそうとしている活動自体に衝撃を受けて。僕らがタイトに曲をやっていきたいなってルーツがここにあるんです。
54-71 – “i’m in love”
——NUMBER GIRLとの出会いも時期的には近いですか?
時期的には近いですよね。高校3年とか大学で聴いていて、「こんなに荒々しいバンドがいるのか」という感じで。あとは曲構成じゃないですかね? 「これがいわゆるプログレッシヴな曲ってやつか」みたいな(笑)。プログレへの目覚めでした、当時は。
NUMBER GIRL – “NUM-AMI-DABUTZ”
——他に近い時期に出会ったバンドと言えば?
54-71と並行してdownyも一緒にやってるライブを見に行きました。「これ日本語なんだ?」っていうのが衝撃で。日本語がこれだけ溶けているっていうのは単純にすごいなと思いましたね。で、今回のLITEのアルバムで“Warp”って曲を作っている時も少なからず意識したというか。「なに歌ってるかわかんない」みたいなところは、結構、引用させてもらっているところはあると思います。
downy – “弐”
——そして人力トランスの元祖とも言えるROVO。
LITE結成前の段階にも前身バンドが実はあって。その時はそれこそROVOみたいな人力トランスの曲をやっていたんです。ひたすらミニマルで繰り返しで。その当時、実は僕も歌っていたんですよ(笑)。
ROVO – “極星”
その他、LITEの武田信幸が選んだ曲とは?
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photo by Kohichi Ogasahara
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November 21, 2016, 6:30 pm
アンディとジェイムスによるデュオ、HONNE(以下、ホンネ) をご存知でしょうか? 聞いたことあるけど、「なんかお洒落過ぎるなー」って敬遠していませんか? 確かに二人のシュッとしたファッションも含め、洗練された都会的雰囲気を感じちゃうかもしれませんが、よく聴いてみてください。
二人のキャラクターにも通ずる温かみのあるサウンドと、メロディーラインには80年代のポップス的な懐かしさもあるし、時には日本の歌謡曲的な節すら感じる瞬間もあるはずです。日本のアーティストに例えるならばtofubeatsなんかが好きな人ならきっとこのホンネのことも気に入るはずです。
ここでホンネについて少しおさらいをしておきましょう。
アンディとジェイムスの二人はロンドン近郊の出身で大学のときに出会ったことをキッカケに音楽制作を始めました。そのサウンドは10年代以降、ジェイムス・ブレイクがその流れを決定的にした“エレクトロニック×R&B/ソウル”の形式を下地にしていることは間違いありません。ただR&B/ソウルといってもいわゆる”ルーツっぽさ”が希薄なところはまさに都会的な解釈という印象です。
サウンドクラウドやハイプマシーン、Spotifyといったストリーミング・サービスを経由して、アルバム発売より遥か前から曲単位で盛り上がりを見せつつ有名になっていったのも、この数年ロンドンから次々と現れる才気溢れるソロ・アーティスト(サンファ、ソーン、トム・ミッシュなど)たちとも同じパターンです。
HONNE - Warm On A Cold Night
このとっても「今」な要素を兼ね備えたデュオであるホンネに、デビュー作『Warm On A Cold Night 』の日本盤リリースに際してインタビューすることが出来ました。
アンディがかつて六本木に住んでいた理由から、なぜ二人がバンドではなくソロなのか、そしてホンネの音楽に欠かせない要素まで、まさに「ホンネがホンネである理由」について20分1本勝負で話を聞いてきました!
Interview:HONNE
——そういえば、さっきアンディは日本に住んでいたと聞いたんだけど。
アンディ うん、六本木一丁目にね。ガールフレンドが仕事で日本に来て暮らしていたことがあって、僕もついてきたんだ(笑)。
——そのとき君は何をしていたの(笑)?
アンディ ただブラブラしていた(笑)。っていうのは冗談で、その時もロンドンのジェームスと曲を書いていたよ。2年くらい前のことだね。
——そうだったんだね! 早速だけど日本での初ライブだった昨日はどうだった?
アンディ 日本でライブをするのは本当に夢だったから、それが叶って嬉しかった。お客さんも最高だった。
ジェームス みんな手拍子もしてくれたし、立ち上がって踊ってくれて、素晴らしかったよ。
次ページ:HONNEの二人が聴いて育った音楽とは?
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November 27, 2016, 10:00 am
蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(Gt)、澤村小夜子(Dr)、藤咲佑(Ba)が織りなすアンサンブルには、本来合うはずのない音同士が不思議な邂逅を果たすようなマジックがあります。それは、各々がまったく同じ感覚をシェアしているからではなく、異なるバックボーンをバンドに持ち込み、有機的な化学反応を起こしているから。というのは、以下のインタビューからわかったことなのですが、はたして、かつてないほどサウンドが大胆に変化を遂げているねごと の新しいEP『アシンメトリe.p. 』では、どんなアプローチやアイデアが交差したのでしょうか。BOOM BOOM SATELLITESからの系譜を意識したというこのサウンドには、バンドがこれからどこへ向かうかについての宣言が詰まっています。それは、エレクトロという新しい武器を手にして、バンドとしてどこまでも飛翔しようという決意。以下のインタビューから、それを感じ取っていただければ幸いです。
Interview:ねごと
蒼山“ねごとの新しい一面を見せたいという目的が元々あった“
——先日リリースされた『アシンメトリe.p.』ではエレクトロを大胆に取り入れ、ねごとのサウンドを大幅に更新しています。制作にあたり、「変化すること」は最初から目的として設定していましたか?
沙田 最近のライブで4つ打ちの曲を繋げてDJ的に演奏することが多くて、メンバーと「このテンションはすごく合うよね」という話をしていたんです。じわじわアガっていって、いつの間にか踊っているようなテンション。特に私はクラブミュージックが好きだったので、今回のアプローチについては積極的にメンバーに提案していました。
——そういう意味で理想的な“アゲ方”というか、ロールモデルはありますか?
沙田 クラウトロックが根底にあるアンダーワールドの世界観は近いかもしれません。
——表題曲の“アシンメトリ”はバンドの変化を宣言する一曲になっていますが、この曲が生まれた経緯を教えてください。
蒼山 ねごとの新しい一面を見せたいという目的が元々あった中で、はじめてメンバー全員でメロディを持ち寄ってみたんです。結果、採用されたのは私と瑞紀のアイデアでした。
沙田 それで、デジロックみたいなサウンドをやるんだったら、BOOM BOOM SATELLITESの中野(雅之)さんと組むことで一気に跳ねるんじゃないかと思ったんです。
——実際に中野さんがプロデュースに入ったことで一番変化したことは?
沙田 壮大さですね。今回はホールを通り越してアリーナ級のスケールになりました(笑)。ライブハウスでいいやって思えばそこに留まってしまうし、私たちは素直にもっと多くの人に聴いてもらいたいと思っていたので。
——テクニカルな部分ではいかがでしょう?
沙田 たとえば、“アシンメトリ”の2Aから始まるピアノの旋律なんですが、最初は正直「これはアリなのか」と迷いました。他にも、今まで使ったことのなかったシンセベースとか、打ち込みとドラムの融合とか、「これが変わるということか」と。
——“アシンメトリ”の話でいうと、打ち込みから生ドラムに入る瞬間にドラムのカウントをわざと入れていますよね。繋がりを明確にしていて、気が利いていると思いました。
澤村 そうそう。こういうことって、普通はあんまりやらないですよね。
——中野さんにプロデュースをお願いしようと思いついたのはなぜですか?
沙田 昔、“カロン”という曲を作る合宿をした時に、当時のスタッフから「サビは四つ打ちがいいよ」と言われたんですが、私にはその良さがよくわからなくて、何か代案はないかと悩んでいたんです。それで、ずっと聴いていたBOOM BOOM SATELLITESに立ち返って、四つ打ちじゃなくブレイクビーツを使えば格好良いんじゃないかと。だから、私たちはBOOM BOOM SATELLITESに恩があるんです(笑)。
——ただ、エレクトロをバンドでやるというテーマが明確なEPの中でも、大人なエレポップとでもいうべき“holy night”は趣が異なりますよね。
蒼山 これはプリプロ(曲の断片となるアイデアを持ち寄ること)をしていく中で生まれた曲ですね。
沙田 もっとも説得力のある一音を突き詰めて積み重ねた結果ですね。どこかオーガニックな質感があって、積み木ではなく組体操のような構成を持っている曲だと思います。
いよいよ、新しいねごとの指針となった楽曲プレイリスト公開!
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November 28, 2016, 6:00 pm
2016年、日本の音楽シーンきっての事件でもあり、音楽ファン垂涎の話題といっても大げさじゃないであろう、冨田ラボ のボーカリスト・フィーチャリング・シリーズの新章である『SUPERFINE 』。内容の一部がアナウンスされた8月下旬、何がリスナーを騒然とさせたかと言えば、筆頭は参加ボーカリストのラインナップだった。
水曜日のカンパネラ のコムアイ 、Suchmos のYONCE 、cero の髙城晶平 、never young beach の安部勇磨 ら、これまでの冨田ラボの熱烈なリスナーは驚き、逆に参加ボーカリストのバンドのファンは狂喜し、しかしやはり驚いた。すでにアルバムから6曲が配信とアナログ盤3枚リリースで世に出ているが、実際に楽曲を耳にして、現行の海外ジャズ、ファンク、ヒップホップと日本のポップス、そして今年になって、さらに充実する日本の20代バンド、いわゆるYOUTH WAVE的なシーンと、髙い音楽性と作家性を持つマエストロ=冨田ラボが邂逅。分断気味な各々のシーンと2016年らしさをポップスのフィールドで結合したこの作品について、冨田恵一自身はどんなモチベーションで臨んだのか? 話を聞いた。
Interview:冨田ラボ
——これまでの「Ship」シリーズなど、ボーカリストをフックアップして作られたシリーズと、今回の『SUPERFINE』の考え方に違いがあるとすればなんでしょう?
僕自身の音楽的な志向がどんどん変わってきて、音楽性の変化でも進化でもどっちでもいいんですけど、そこが一番大きいと思いますね。割と方々で言っているんですが、いわゆる現代ジャズ的なものに興味があって、その影響を受けてできた作品と言っていいとは思うんですね、モロにそれはやっていないと思うんだけど。で、それに関しては、僕は自分で演奏もするし、あとはドラムというものが大好きなので、ドラミングであるとか演奏ということに関していうとリアルタイムで色々トピックになるものを昔からずーっと追っかけてきたんです。
でも、僕の手法というのが、以前はシミュレーショニズムというか、70年代中盤から80年代とか、例えば何年代のどういった感じというのをシミュレートして構築するという手法だったんですけれども、それをやっている時でさえ、演奏やサウンドというものに関してはリアルタイムのものをずっと追っていたんですよ。
だから並行して流れていたんだよね、ずっと。だけれども2014年に『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』(2014年)という書籍を出しまして、その時は全然そんなつもりなかったんですけど、あれで70年代的音楽手法のことや、80年代には音楽制作にコンピュターも入ってきて云々かんぬんというものを書いて、その時は全然そんなつもりなかったんですけど、あれでシミュレーショニズムについては自分で一段落というか、そこでケリをつけちゃった感じが後から考えるとあるんですよね。
——『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』は今年の横浜国立大学の入学試験にも採用されましたね。でも、書かれたことでフェイズが移行したと。
うん。その年ぐらいから、僕はいろんなところで「新譜が面白い」というような言い方をするようになって、現代ジャズ的なものやドラミングから色々インスパイアされているんで、そういったものを過去のものよりも多く紹介するようになってきて。同時に、その頃のプロデュース仕事からだんだんそういう要素を入れるようになってきたんですね。
で、それらがまとまったのが2015年のbirdの『Lush』というアルバムで、そこでは完全にそちらのアプローチでやって。それで次の冨田ラボのアルバムもそういった方向になるっていうのは自分で思っていたので、さらにそれを明確にするには今まで接点のなかった若いボーカリストたちの声を乗せると良いんじゃないかと。変化を明確にプレゼンテーションできるんじゃないか? っていうのが発端ですね。
——なるほど。冨田さんが書かれたハイエイタス・カイヨーテについてのレビューで、聴き手のリスニングのスピード感の変化のようなものを示唆していらしたのが印象的で、そのことが今回の音源を聴いた時、非常に腑に落ちたんです。
そうですね。リスニングのスピード感ということでいうと今回共演した若いアーティストたちの音楽性とかにもすごく影響しているって印象を持ちましたね。もう僕は54なので、20代が80年代なんですけど、音楽の摂取のスピードが明らかに違うんですよね。なんだけれど、面白いと思うのが例えば僕は50代ですが、今の40代、または少し上の世代よりも、今回20代の方が多いんですけど、今の20代に割とシンパシーを感じることが多かったんですよね。
それは今の聴き方というか、例えばスマホでYouTubeとかで聴くのがまあ代表的だと思うんですけど、ほんとに大量の音楽を聴くことが容易になります。そうすると、自分の趣味に合ったライブラリーはすーごくたくさん作れるんですよね。そのときの自分から逸脱しないバラエティは作りやすくなる。深みとかは別にして、一貫性のあるバラエティではあるから、その辺りにシンパシーを感じたのかな、とも思うんです。
次ページ:冨田がSuchmosのYONCEに期待したものとは?
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November 29, 2016, 10:00 am
「明らかに違うんだけど……」
ちょっと間をおいた後、懐かしそうに振り返る阿部寛 さん。俳優デビューから約30年のキャリアで大きく変わったこと。
「パッと思い浮かぶのは、駆け出しの頃は演技を習ってきたわけではないので、セリフが魅力的であればそれでいいなと思っていて。だけど、それも1、2年すると行き詰まってくるわけですね、それでは続かないだろうと。それで、“こだわり”ってなんだろうって思い始めて、こだわっている人を見るようにしました。現場での興味はすごかったですね」
こだわり……阿部さんの俳優人生を支える上でとっても大切なこと。最新映画『疾風ロンド 』で、ちょっと頼りない真面目な研究員・栗林を巧みに演じる阿部さんは、様々な役者のこだわりを研究し、自分に取り入れてきた。でも一見すると、こだわりを持っている人ってちょっと敬遠されがち……。ファッションへのこだわり、髪型へのこだわり、音楽へのこだわり、演じることへのこだわり。若い俳優さんに囲まれ、役作りをする阿部さんの姿ってどんな風に見えたんだろう。
「たぶん滑稽に見えたでしょうね(笑)。僕がそれが分かるようになったのは、30いくつのときだから。彼らからしたら、何やってんだろうと見えるかもしれない。それも一つの狙いではあるんだけど。」
監督は、『サラリーマンNEO』で独特の世界観を描き出した吉田照幸さん。阿部さん自身も『サラリーマンNEO』の大ファン。吉田監督はガッチリした自分の世界観を持っていて、こうしましょう、あーしましょうと、演出方法を指示する人だと思っていた……が物腰優しく、ずっと見ながら一緒に芝居を作っていく監督で意外だったそう。予想を覆された阿部さんは、栗林を演じる難しさを味わった。さらに、「お互いの個性が噛み合ってない面白さができた」と話すように、若い共演者さんも予想とはちょっと違っていた。
「本読みしたときに、みんなものすごいテンポで来ると思っていたんです。そうしたら、大倉(忠義)くんはソフトな感じで自分の独特な世界観を持っていて、(大島)優子さんは優子さんの世界観で台本を読み込んで来られていたので、『あっ、こういう感じで来るんだ』と思いました。本読みの印象が、自分の中にあった撮影前の印象を変えさせてくれました。それから現場に入り演じていくうちに、お互いの個性の噛み合いが微妙にずれていて、その微妙にずれていることが面白く、これこそ監督の目指している“お互いの個性が噛み合っていない面白さ”だと気づきました。」
次ページ:生瀬(勝久)さんが持っているものは全部盗もうと思って(笑)
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November 30, 2016, 7:30 pm
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December 1, 2016, 10:00 am
三部作『homely』『100年後』『ペーパークラフト』で一つの地平に到達したOGRE YOU ASSHOLE (オーガユーアスホール)(以下、OGRE)から届いた2年ぶりのオリジナルアルバム『ハンドルを放す前に 』。デビューアルバム以来のセルフプロデュースとなった本作で、これまでプロデューサーの石原洋と培ってきたクラウトロックやサイケ、ソウル、時にはハウス的な様々なエレメントを昇華。さらに隙間が多くなったサウンドスケープや、聴こえ方としては前に出てきた出戸学のボーカルの全てが相まって、絶妙なバランスで成立したアルバムと言えるでしょう。バンドサウンドの定義からとてつもなく自由でありながら、楽器の音や歌についてごく自然に新しい発見をもたらすこのアルバムのリリースを機に、作曲を手がける出戸学(Vo、Gt)と馬渕啓(Gt)に「最近のお気に入り」の楽曲でプレイリストを作成してもらい、バンドの新作との共通項についてもお話をお聞きしました。
Interview:OGRE YOU ASSHOLE
出戸“今回は後退してるかもしれないですね。“
——今回はデビューアルバム以来のセルフプロデュースで、そこには何か大きな理由があったんですか?
出戸学(以下、出戸) 大きな理由は特にないんですけど、自分たちで音のジャッジしてみたいと思って、それを試したかったっていうのが一番ですね。
——前作の『ペーパークラフト』も相当、音数は少ないと思ったんですが、さらに音の隙間が多いアルバムだなという印象を持ったんですけど、それもやはりそういうビジョンがあったからなんですか?
出戸 そう、例えばドラムだと、あんまり部屋鳴りとかリバーヴとかなくして、タイトにしてそのぶん音の隙間を開けて、とか、そういう質感のものは揃えていった感じですね。
——ジャケットのアートワークも含め、トータルで「先に進んでいいのか、後退した方がいいのか。」という気持ちにさせるんですが。
出戸 今回は考え方によっては後退しているかもしれないですね。三部作はどっちかというとハンドルを放した状態のものが多くて。ちょっとまぁ諦め感とかが強く出ていたと思うんですけど、今回は放す前ってことなんで、時系列で言うとちょっと手前の感じですね。今の世の中って、思ったよりも悪くもならないし、かと言って決して良くもなってないんですけど、何か起こりそうな雰囲気は常にあるっていう感じが、今回の歌詞を作った要因の一つかもしれないですね。
——隙間だけでなくて、以前からあるメロウでちょっと気が遠くなる感じの曲にも新しい聴感がありました。例えば“なくした”とか。
馬渕啓(以下、馬渕) ちょっとソウルっぽい要素もあるんですけど、いわゆるソウルって感じにしたくなくて、こう、ロボットが血の通った音楽をやっているというか、そういうちょっと変な感じにしたかったんですよね。
——ではお二人に選んでいただいた「最近のお気に入り」について伺います。David Axelrodはギターの音など、OGREの音が好きな人も納得な印象です。
出戸 60年代からサイケやジャズのバンドのプロデューサーをやっていた人のソロ作品です。このスキャットというかハミングの気だるい感じの音がすごい好きで。あとは録音の質感とかもすごい好きですね。
David Axelrod – “house of mirrors”
——ソウルフルなバンドのイメージが強いBooker T & The MG'sにこういうマイナー調の曲があるのかと驚きました。
出戸 はい。ほんとは別のアルバムで、再結成後の77年リリースの『Universal Language』に入っている曲“Last Tango In Memphis”が最近はお気に入りなんですけど、まぁこっちはこっちでいいんです。出だしのイントロのベースとかが結構好きな音の感じなんですよね。
Booker T & The MG's – “L.A. jazz song”
——何がきっかけで触れたんですか?
出戸 子供の頃から家にレコードがあったりして、聴き馴染みもあるんですけど。これもそうなんですけど、最近実家の倉庫にあったレコードを引っ張り出してきて、何百枚かあるのを一個一個綺麗にして聴き直して、「ああ、こんな曲あるんだ。」みたいな感じで再発見してるんです。
——J.J.Caleの中ではこの曲はどんな曲なんでしょう。
出戸 J.J.Caleも70年代の頭ぐらいまでの音は質感が面白いのが多くて。ドラムとかも止まっていて、あんまり響きがないって感じっていうか。これもレゲエっぽいけどいわゆるレゲエに聴こえなのが面白くて好きですね。で、J.J.Caleのこの頃の曲は、今回のアルバムを作る前に「なんかこういう感じはいいよね」って話をした中の一つですね。
J.J.Cale – “crying”
——また有名どころですが、この曲はちょっと楽器の位置が不思議ですね。
出戸 この曲いいっすよね。コンガの感じが好きで。キャロル・キング、いい曲多いし、普通に好きなの多いんです。
Carole King – “ブラザー・ブラザー”
——スモーキー・ロビンソンのこの曲に関しては?
出戸 メロウでいい曲だなって感じですね。ノーテーションズ(シカゴのソウル・ボーカル・グループ)だっけ?変な歌い方はこの人の歌い方に少し似てるよね。
——語尾をシャウトするような感じですね。昔なんで当然ですけどトラック数もすごく少なくて、ギターがずっと左で鳴っています(笑)。
出戸 (笑)。タイトルがなんだっけな? “苦悩とエクスタシー”(笑)。
Smokey Robinson – “the agony and the ecstasy”
——出戸さんの5曲に関してはBooker.T以降は「実家再探索」ということで。
出戸 そうですね(笑)。有名どころで好きなテイストのものを選んだって感じですね。
馬渕啓の「最近のお気に入りの楽曲プレイリスト」をチェック!
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photo by Mayuko Yamaguchi
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December 5, 2016, 6:00 am
“中世アイルランドの音楽を現代に蘇らせる”というコンセプトのもと、1987年に結成されたケルティック・コーラス・グループ、アヌーナ 。複雑に変化する旋律と、ポリフォニックな声の重なりが創りだす神秘的な音場空間は、デビュー当初から圧倒的な評価を獲得した。アイルランドの歴史をモチーフにして全世界で大ヒットしたダンス舞台『リバーダンス』には1994年の初演時から参加。そのワールドツアーから離れた後も独自の境地を開拓し、いわゆるケルト音楽の枠にとどまらない活躍を続けている。
そのアヌーナが2017年2月、日本を代表する能楽師である梅若玄祥氏 (人間国宝)と、一夜限りの共演を果たす。題して<ケルティック 能『鷹姫』 >。もとになる演目の『鷹姫』とは、アイルランド人の作家でノーベル賞も受賞したW.B.イェイツ(1865〜1939)が日本の美意識に刺激され、今から100年前に執筆したもの。千数百年におよぶ能の歴史において唯一、外国人原作で今もなお演じられている新作能だ。
ともすれば「ケルトの神秘」的なキーワードで語られがちだが、アヌーナによって再構築された中世のコラール音楽(讃美歌)はきわめてモダン、かつ緻密な構造を持っている。グループの創始者/リーダーであり、ソングライティングと全楽曲のアレンジも手掛けるマイケル・マクグリン は自他共に認める親日家で、物腰の柔らかいジェントルマンだが、音楽と向き合う姿勢は誰よりも厳しい。そんなマイケルが、能というまったく違う土壌のパフォーミング・アーツとの共演を決めたのか──。ケルト音楽のみならず世界のコーラス・ミュージックをリードする“スーパースター”に、その本意と、プロジェクトにかける意気込みを聞いてみた。
Interview:マイケル・マクグリン
──まず、オファーを受けた際の第一印象を教えてください。
申し訳ないけれど、最初は無理だと感じました(笑)。そもそも、西欧人が「能」という芸能を理解するのは難しい。もちろん舞台を鑑賞して、わかった気になるのは簡単です。しかし、それがいかに生まれ、代々どう引き継がれてきたのか。シンプルに見える物語が実は日本文化のどんな部分を踏まえ、象徴しているのか──。そういった知識がないと、単純に表面をなぞっているだけで、本質には近付けないと思うんです。高度に洗練された日本のパフォーミング・アーツと自分たちのコーラスを、本当に同じ舞台上で繋ぐことができるのか。正直なところ、お話をいただいた時点で僕自身は懐疑的でした。
──それでも今回、<ケルティック 能『鷹姫』>に挑もうと思われた理由は?
1つは、梅若玄祥先生という素晴らしいアーティストと共演できるめったにないチャンスであること。それ以上に大きかったのは、いろいろ考えを巡らせていくなかで、分野こそ違えどお互いの追究している境地が意外に近いと思えてきたことです。それも見かけ上の意匠ではなく、もっと深い、表現のコアに関わる部分で……。
次ページ 能とケルティック・コーラスの共通点とは?
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December 6, 2016, 5:00 pm
カラフルでバラエティーに富んだミュージシャン達がごったがえす韓国のインディー・シーン。日本でも数年前より「チャン・ギハと顔たち」や、今年日本デビューを果たした「ヒョゴ」などこのシーンへの注目度は年々高まっており、次はだれが日本へ進出するのか? なんて気になっている人もいるのではないでしょうか。
そんな中、前者バンドに続くように今回日本デビュー果たすのが、この「スルタン・オブ・ザ・ディスコ(Sultan of the Disco) 」(以下、スルタン)というファンクディスコバンド。イギリスの<グラストンベリー>をはじめ、日本でも<サマーソニック>やライブハウス公演もしていて、そのインパクトありすぎるビジュアルとパフォーマンスで、韓国インディー・シーンに敏感な人はすでにご存知の方も多いはず。
12月7日(水)にはこのスルタンの魅力が十分に詰まったベスト版とも言えるミニアルバム『オリエンタルディスコ特急 』がリリースされます。ベスト盤とはいえ全6曲中4曲は新たに編曲をしたり、プロダクションを変えたりしてレコーディングし直したという韓国ファンも羨む内容。
さらに一番注目したいのが彼等の代表曲でもある“Oriental Disco Express”の日本語バージョンが収録され、その歌詞をなんと綾小路 翔が作詞しているという(!)。綾小路 翔と韓国音楽といえば、韓国の大御所グループ「DJ DOC」の“Run To You”を日本語カバーし大ヒットを飛ばしたあの“アゲ♂アゲ♂Every☆騎士(ナイト)”が記憶に蘇る。今回のスルタン日本デビュー作が、その綾小路翔氏による日本語歌詞ということで、個人的にはさらにテンションが上がってしまうところ。
【Teaser】 Sultan of the Disco - Oriental Disco Express
そんな華やかな日本デビューミニアルバムをリリースする彼らへ早速インタビュー。日本よりもちょっと肌寒いソウルはホンデにある彼らの事務所で、今回のミニアルバムに収録された各曲への思いや選曲理由などを聞いてきました。
Interview:スルタン・オブ・ザ・ディスコ
スルタン・オブ・ザ・ディスコ メンバー
【上段左から】J・J・ハッサン(Dance/Cho.)、ナジャム・ス(Vo./Syn./Dance)、【下段左から】キム・ガンジ(Dr.)、ジー(B.)、ホンギ(G.)
——今回ついに日本デビューが決まりましたね。おめでとうございます! 今の気持ちはいかがですか?
ナジャム ちょっとずつ実感がでてきました。最初この話がきたときは「なんだ?」「なにが起きたんだ?」って実感がわかなかったけど、日本デビュー用の衣装を用意したりレコーディングをしたりと準備をしていくうちに、日本デビューをするんだなと実感が湧き始めてきました。
——ほかの皆さんはいかがですか?
ホンギ とても嬉しいですね。
ジー 一生懸命やらなきゃなって思っています。
ガンジ 僕もとても嬉しいです。
ハッサン 日本で<サマーソニック>やライブハウスなど何回かライブをしてきましたが、今回日本盤も作って衣装も日本用に用意していくうちに「あー日本でデビューするんだな」って感覚が徐々に沸いてきました。
ガンジ(左)、ジー(中央)、ホンギ(右)
——12月7日(水)には日本盤ミニアルバム『オリエンタルディスコ特急』が発売されます。このアルバムの目玉となる日本語歌詞の“Oriental Disco Express”は、歌詞を綾小路 翔さんがされています。皆さんは綾小路 翔さんや氣志團の存在はご存知でしたか?
ナジャム もともと綾小路さんのことは知っていました。初期のスルタンの衣装コンセプトを決める際に、氣志團を参考にしていた部分もあったので。氣志團はリーゼントですが、ぼくたちはリーゼントの代わりにターバンを身につけたりして。雰囲気が似ている部分があると思います。
——今回の日本語の歌詞については日本のレコード会社から提案があったんですか?
ナジャム はいそうですね。その話を聞いた時はとっても嬉しくて。そこからさくさくと話が進んでいった感じです。
——私はこの曲を聴いて日本語の発音がとても自然だったので驚きました。「ざ」の発音など韓国人には難しい部分も違和感がなくて、かなり練習されたのではと思いました。
ナジャム おおー! ありがとうございます。その部分はディレクションをちゃんと受けましたね。韓国でレコーディングしたんですが、日本のスタッフが「発音はこうして」「雰囲気はこういう感じで」って細かくディレクションしてくれて、その結果とってもかっこいい曲ができました。
——レコーディングで一番大変だったところはやはりその発音の部分でしたか?
ナジャム 発音もそうですが、発音と曲の雰囲気を一緒に表現することが一番大変でした。発音だけに集中するとなんだか堅い雰囲気になっちゃうし、反対に自由に歌っちゃうと発音が変になって日本語っぽくなくなっちゃったりするし。そこは何回も、何回も良くなるまでやりました。今までやったレコーディングの中で圧倒的にきつかったですね(笑)。
——今回ミニアルバムの収録曲はメンバー自ら選曲されたそうですが、全6曲それぞれ、どうしてこの曲を選んだのか、そしてそれぞれの曲への思い入れなどもあれば教えていただけますか。
ナジャム まず1曲目の“Oriental Disco Express”ですが、この曲はスルタンの1stアルバム『ザ・ゴールデン・エイジ』に入っていて、当時のスルタンのスタイルがよく反映されている曲なんです。アジアの雰囲気やディスコの感じ、あとロックなどいろんなカルチャーが含まれているところがポイントで、誰が聞いてもどんなジャンルを聞いていた人でも自然に聞けると思っています。もちろん曲自体いいものだと思っているので、これを今回のミニアルバムの一曲目にしています。
[Live] (Sultan of the Disco) - (Oriental Disco Express)
ナジャム 2曲目の“Tang Tang Ball”は最近のスルタンを一番反映している曲です。この曲はアルバムに入っていない曲でシングルだけでリリースした曲なんです。ライブでは一番ハイライトになる曲なのにまだアルバムに入っていないのももったいなく感じていて、なのですぐ2曲目にこれを選びました。
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December 7, 2016, 4:30 pm
《2016バロンドール最有力候補のマイクロフォン担当》。これは沖縄出身のラッパー・CHICO CARLITO が、今年2月に発売されたKEN THE 390の『真っ向勝負』というアルバムの同タイトル曲にフィーチャリングした際のリリックだ。弱冠22歳(当時)の超大型ルーキーのその言葉が決してブラフでなかったことは、CHICO CARLITOの今年一年の精力的な動き、そして12月7日(水)に発売された待望の1stアルバム『Carlito’s Way 』によって証明されるだろう。
ラップを始めてわずか3年でフリースタイルバトルの全国大会・<UMB(ULTIMATE MC BATTLE)>で優勝、そして人気沸騰中の『フリースタイルダンジョン』に“モンスター”としてレギュラー出演。今年はコンスタントに音源も制作し、ついに1stアルバムまで辿り着いた。
順風満帆——傍から見ればそうなのかもしれない。ただし、ここへ至るまでにCHICO CARLITOが乗り越えてきたHIPHOP街道は、決して平坦なものではなかった。彼が『Carlito’s Way』で表現したものとは? 12月某日、B-BOYの聖地・宇田川町で、アルバムの話はもちろん、自身の生い立ちやこれまでの道のりについても語ってもらった。
Interview:CHICO CARLITO
——1stアルバム『Carlito’s Way』、聴かせていただきました。最初に聴いた時の率直な感想は、「USの王道1stアルバム」のようだなと思いました。それも“超新星”的なラッパーが出てきたときの1st。
嬉しいっすね。1stは特に自分の地元・沖縄のことを歌いたかった。ただ俺のイメージ的にも、みんなが想像してるより明るい曲が少ないと思います。自分の明るい面しか知らない人からしたら、少し面食らうかもしれません。
——自らの名を冠したリード曲(“C.H.I.C.O”)があって、沖縄を歌う曲が続き、“Skit”を挟んで徐々に内地のトピックへ……という流れですが、まずあの“Skit”は秀逸ですね。
みんなそう言ってくれるんですよね。まああれはプルルル……っていうのも実は全部自分で言っていて。ホントはLINEの音を入れようとしたんですけど、仮でプルルル……ってやってみたら、俺思ったより上手くて。あれは自分の日常が移り変わっていく感じをわかりやすく作れたと思います。自分のことをよく知ってる人ならなおさら「あの時そうだったよなー」って感じてもらえるかなと。
C.H.I.C.O./ CHICO CARLITO
——2015年の<UMB>で優勝された後、「来年は音源制作に集中する」ということを仰っていました。また先日もTwitterで「今年中にアルバムを出すと言っていて……」と書いているのを拝見しました。アルバムの制作が始まったのはいつ頃ですか?
レコーディングは6月下旬か7月頭ぐらいに始まって、9月ぐらいには完成してました。でも実際レコーディングが始まるまで、2、3曲しかリリックが書けてなくて。1回レコーディングしたら、次に録るものがないわけですよ。だから録って、書いて、録って、書いて……の繰り返しで、大変なところもあったけど楽しかったですよ。
——フィーチャリングのラッパーや、トラックメイカーはどのような基準で選びましたか?
アルバム全体のイメージは早い段階で出来ていて。MIXしてもらう人にもここまでは沖縄(の話)で、ここからは内地(の話)で……っていう流れを最初に聴いてもらって、レコーディングしました。その段階で足りてなかったのは、D.D.Sさんとの曲(“Champ Roots”)とかですね。フィーチャリングは、自分がやってるユニット・Bang Da RhythmのTENGGとARISTO以外は、沖縄の先輩です。トラックを作ってくれたJ-TAROやOsurek Bertopは俺らがいつもいっしょにやってるメンツだし、Sweet Williamも元々の知り合い。しいて言えばOlive(Oil)さんだけは面識がなかったですけど、RITTOさんとやるなら絶対Oliveさんって自分の中で決めてました。それでRITTOさんの所属する「赤土」にオファーしたら、その日の夜に電話が掛かってきて。そしたらたまたまOliveさんといっしょにいて、「『フリースタイルダンジョン』でお前のやつ見てたよ」って。「まじっすか!? いっしょに曲やりたいです」って言ったら「いいよ。じゃあOliveに代わるね」って感じで決まりました。
Orion's belt ft. RITTO/CHICO CARLITO Beats by Olive Oil
——成るべくして成ったメンツだったんですね。あとリリックに関してですが、「沖縄から愛を言う」「内地にないだろこんなノリ」といった沖縄をレペゼンするものがある一方で、「俺の身体に米軍の血」「背筋が伸びるほど根深かったバックボーン」といった、自身が背負うものへの葛藤のようなものも感じました。
俺は19(歳)で沖縄を出たんですけど、それまでは一切、東京のことを知らないわけじゃないですか。東京は日本のど真ん中、首都ですし、初めて来た時は電車の乗り方すら知らなかった。別に引け目は感じてないんですけど、いざそこに飛び込んでみた時に、感じるものは必ずあるわけで。そうなった時に、また少し違う角度で自分の地元だったり、自分のことだったりを見られるわけですよ。俺はずっと沖縄にいてもよかったし、別に内地に知り合いがいたわけでもない。ただ絶対に一度は沖縄を離れたいと思ってて。それは沖縄を捨てるとかじゃなくて、沖縄に“戻る”ために一回離れたかったんです。違う確度から沖縄、そして自分自身を見たかった。だからそういう部分がリリックに現れているのかもしれません。
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December 8, 2016, 10:00 am
テーマに沿ってアーティストのお気に入りの楽曲を選んでもらうことで、その人のパーソナルな音楽体験を紐解いていくプレイリスト企画。今回は11月30日にメジャー・デビュー・シングル『タカラバコ 』をリリースしたササノマリイ のご登場です。最新作『タカラバコ』は、これまでの彼の音楽性を踏襲しつつも、よりポップスとしての強度が増した傑作に。TVアニメ『夏目友人帳 伍』のOP曲としても話題の表題曲はこれまでのササノマリイの作品になかったタイプの真っすぐで清々しいポップチューン。カップリングの2曲も必聴の名曲です。邦楽洋楽年代を問わず、さらにはアニメやゲーム音楽にまで通じている彼の音楽性の秘密を探るべく、「音作りで影響を受けた楽曲」というテーマで10曲を選んでいただきました。
Interview:ササノマリイ
ササノマリイ“こういう音はどうやったら出せるのかと研究しました”
——今回は「音作りで影響を受けた楽曲」というテーマで選んでいただきました。いかがでしたか?
絞って絞っての10曲。かなり厳選しました。小さな頃から家のテレビのイヤホンにステレオケーブルを刺して、気に入ったアニメの曲をカセットにダビングしていたくらいなので、プレイリストを作るのは大好きです。今回も楽しかったです。
——さっそくですが、1曲目はbermei.inazawaさんとAnnabelさんによるユニット、anNinaの“Transcript Lover”ですね。この曲を選んだ理由は?
bermeiさんは『ビートマニア』で彼の存在を知って以来、ずっと尊敬して、目標にしている存在です。この曲は展開がめまぐるしく変わったり、管楽器、弦楽器、パーカッション等、様々な楽器や音が詰め込まれているにも関わらず、お互いがまったく邪魔し合っていないんです。職人技ですね。
anNina – “Transcript Lover”
——次はMassive Attackの“Teardrop”。Cocteau TwinsのElizabeth Fraserによるヴォーカルも美しい『Mezzanine』収録の名曲です。
真っ暗な絶望の中にある一筋の光のような曲。靄がかかったようなダークで退廃的なサウンドだけど、神々しさというか、ある種の崇高さがある。この曲に出会ったときはまだサンプリングの概念も知らず、こういう音はどうやったら出せるのかと研究しました。
Massive Attack – “Teardrop”
——次は新居昭乃さんの“覚醒都市”。“Teardrop”から続けて聴くと、何か通じるものも感じました。
はい(笑)。はじめて聴いたのは小4くらい。テレビを付けたら、TVアニメ『東京アンダーグラウンド』のエンディングでこの曲が流れていて、強烈に惹き込まれました。新居さんの歌詞も好き。素朴な言葉で、しかしとても繊細で純真であって、音と溶け合っていつも素敵な風景を見せてくれる。ひとりで聴きたい曲ですね。
新居昭乃 – “覚醒都市”
——次はDaft Punk。ヒット曲をたくさん持つ彼らの作品の中からこの曲を選んだ理由は?
僕が知ってるDaft Punkの曲の中で最もメロディが美しい曲。彼らってフロア向けのトラックとかそういうことを全く無視して、純粋に綺麗なメロディのポップ・ソングを作る時があって。そういうときのDaft Punkの曲がたまらなく好きです。この曲はその代表。Daft Punk流の王道ポップ・ソングです。
Daft Punk – “Digital Love”
——次はCAPSULE の“テレポテーション”です。
中田ヤスタカさん、つまり男性が作っているのに、不思議と音やリズムの節々に「女の子」を感じるんです。この曲は女の子が何かを求めて手を伸ばしながら歌っている感じがして。それを歌詞だけが説明するのではなく、サウンドでも表現しているところがすごいと思います。
CAPSULE – “テレポテーション”
——そしてサカナクションの“グッドバイ”ですね。
彼らはバンドだけどバンドではないと思っていて(笑)。世の多くのバンドがこだわる部分ではない部分にこだわっていて、そこが独創的だし、面白いです。この曲は他の代表曲と比べ、音の隙間が多く、異質な感じの曲。でも実は彼らの根底はこういう感じなのかなとも思います。全力で泣かせにきてますよね。大好きなので、影響受けているとか本当はあまり言いたくないんですけれど(笑)。
サカナクション – “グッドバイ”
ササノマリイの「音作りで影響を受けた楽曲プレイリスト」をチェック!
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December 11, 2016, 10:00 am
アーティストや著名人の方々にテーマに沿って選曲してもらい、その人と楽曲との思い出を紐解いていくプレイリスト企画。今回は東京を拠点に活動する3人組、The Wisely Brothers の登場です。16年はミニアルバム『シーサイド81 』をリリースし、Helshinki Lambda Clubへのツアー参加などを経て、年末にはカジヒデキ 主催の<BLUE BOYS CLUB 大忘年会スペシャル >への参加も決定するなど、今まさに飛躍を遂げつつある3人は、来年1月に『シーサイド81』にも収録の“メイプルカナダ ”をアナログ・リリース予定。B面にはBeipana によるリミックスも収録されます。今回はその発売を前に、各メンバーの「ルーツになった楽曲」を3曲ずつ選んでもらいました!
Interview:The Wisely Brothers
真舘“今の自分たちが表われているのはこの曲だな”
——アナログ・リリースが決まった“メイプルカナダ”は、どんな風に出来たんですか?
真舘晴子(Gt.Vo)(以下、真舘) 私は特に歌詞のことを覚えていて、「自分自身は今楽しいのに、何でこんなに暗いことを書いているんだろう?」という内容だったんです。でも曲が完成してライヴでもやるようになってから、その内容がぴったりくる時期が来て、本当に不思議でした。今では「歌詞もメロディも、今の自分たちが表われているのはこの曲だな」と思うようになりました。
和久利泉(Ba.Cho)(以下、和久利) 最初のヴァージョンだと、曲の最後が歌詞と一緒で落ちて終わるんですよ。でも今は最後に曲が盛り上がって終わるように変えているんです。
渡辺朱音(Dr.Cho)(以下、渡辺) その方が、本当にこの曲でやりたかったことや、晴子が歌詞を書いた時の気持ちに辿りついたような感覚があって。(歌詞は暗いのに)曲が明るいまま終わったことは、今の自分たちに繋がっている気がしますね。
真舘 サブテーマとしては、飛行機が滑走路をゆっくり動いて、だんだん加速して飛んでいく様子もイメージしました。2番に入ったら空の上で、どこに着くのかは自分次第という感じです。
和久利 実際、完成してから3人で飛行機でも聴いたんですよ(笑)。
——(笑)。今回は「The Wisely Brothersのルーツ」というテーマで3曲ずつ選んでもらいました。真舘さんの1曲目は、さっき話にも出てきたフランキー・コスモスですね。今年新作『ネクスト・シング』が話題になりましたが、これは14年のファーストの曲です。
真舘 たまたま山崎まどかさんのブログを見た時に載っていて、すごく好きだと思ったんです。この曲が入っているアルバムをめちゃくちゃ聴いてました。ロマンチックな部分もコミカルな部分もあるのが好きですね。歌っていることは少し変なんですよ。でも愛おしい感じがあって、テンポもドラムの音も、ギターも全部好き。歳も近いし、「アメリカにこんな女の子がいるんだ」と思いました。BONNIE PINKさんの“Lie Lie Lie”は、この曲が主題歌だった中島らもさん原作で、中原俊さん監督の映画『Lie Lie Lie』で知ったんです。映画のはじまりに、空き家みたいな家に住んでいる写植オペレーターの波多野さんが映る昼下がりの情景がすごく好きで。そこでこの曲が流れる。日本語を日本語らしく歌わなくていい、という感じがあって、言葉をありのまま出している雰囲気がたまらなく好きなんですよ。
Frankie Cosmos – “Buses Splash With Rain”
Bonnie Pink – “Lie Lie Lie”
——それは真舘さんのヴォーカルにも通じる部分かもしれないですね。
渡辺 そうですよね(笑)。私たちも、歌詞を見るまで何を歌ってるのか分からない時があるくらいで。
真舘 (笑)。次のパット・メセニーは、中学生の頃にジャズ・ライブに行って、そこで誰かがサックスか何かでこの曲を吹いていたんですよ。中学校の頃に吹奏楽部で音楽は好きだったし、父のレコードからジャズもたまに借りて聴いてはいて、そんな中で、この曲のメロディに、「何て素敵なんだろう!」と思ったんです。それでパット・メセニー・グループのCDを聴いて「メロディって何て楽しいんだろう」と思いました。
Pat Metheny Group – “James”
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The Wisely Brothers / メイプルカナダ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
photo by Mayuko Yamaguchi
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